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2016年05月27日の記事は以下のとおりです。

吸血鬼村は地獄ですか?

コーギーの絵本があるらしいのう、としどけない寝姿で言われた。
コーギーの絵本。にんげんの、子どもが読むための絵本で、コーギーについて絵と文でかかれた本。そういうニュアンスで言われたので、晃牙はそっと息を吐いた。
「コーギー村のクリスマスのお話なんじゃと。……あぁ、これじゃ」
闇の中、立ち上げたパソコンで書籍販売のページを見せてくる。まぶしい、闇の中で見ることを想定していない画面の明かりが、棺桶の内側を照らすので、晃牙は外側で跪いて覗いた。
明るい絵柄の表紙。クリスマスツリーを囲むたくさんのコーギー。服を着たり眼鏡を掛けたりしている。一様に舌を出し、期待のこもった眼差しを向ける。
「クリスマスのプレゼントにいらんかえ?」
「持ってる」
「おお……そうか」
そうかや、吐いた息が夜闇に溶けた。
棺桶から離れて、闇の色を確認した。藍色をしていた。晃牙は棺桶模様のネクタイを締めた。零のぼんやりとした眼差しを感じた。
母親に買い与えられた、とは言わなかった。答えてしまえば、わんこのご母堂もコーギーなのかやと聞かれ、自分の母親も吸血鬼であると話し出すに違いなかった。
晃牙の想像を裏打ちするように、零は去りゆく晃牙に「おやすみ」と言った。
おやすみ、吸血鬼村にまたおいで。
吸血鬼村は地獄ですか。はい地獄です。

 

地獄であるところの吸血鬼村の話。
昔々あるところに吸血鬼がいました。吸血鬼は吸血鬼一族の長男でした。吸血鬼は絶滅しつつあったので、というのは吸血鬼狩りに狩られていたので、吸血鬼狩りに国内外を追われました。
というのは嘘で、吸血鬼一族は夜の世界に生きていました。健やかに生きていました。
ただ、夜の世界で生きるには一芸が必要だったので、才能を見出された長男だけが母親と国内外を飛び回りました。夜の世界は世界として確立されており、吸血鬼も等しく住人でした。母親も一芸で夜の有名人でした。
ところで長男はアイドル養成学校に興味を持ちました。吸血鬼でしたが昼の世界の学校に入りました。母吸血鬼の制止は振り切りました。弟吸血鬼も入学しました。
アイドル養成学校で長男は楽しく過ごし、なんだかんだあって人間の男と恋に落ち、幸せに過ごしました。おしまい。

盛り上がりのない寝物語を、晃牙は横になって聞いた。しどけない姿でダブルベッドに寝ている恋人の横で、うつ伏せに寝ていた。午前3時。吸血鬼と人間の男の愛の巣。
地獄の要素がなかった。それでよかった。選び抜かれなかった逸話は散逸し、なかったことになった。
事後、恋人とピロートークした。それだけの話だった。

 

ハニーレモンシロップ(みか+宗)

「またそれかね!」
 おおごえをだす『おしさん』に、みかちゃんはおどろきとびあがりました。せなかにかくしたふくろのなかで、きいろいあめちゃんがころんとなります。
 ここはゆめのさきがくいん。『あいどる』をそだてるがっこうに、みかちゃんと『おしさん』はかよっています。みかちゃんは2ねんせいで、きょうは2ねんせいは5げんまでです。
「ぼくにかくれて、また『だがしや』にいったね」
 『おしさん』は『だ』をにあくせんとをつけていいました。
「『だがし』はからだによくない! そんなもの、やひなにんげんしかたべないのだよ」
「でも、おいしいんよ? ちょっとだけやし」
「くちごたえするのかね!」
 ぴしゃり、しかられたみかちゃんはちぢこまりました。
 『おしさん』がきびすをかえしてあるきだしたので、みすてられないよう、おいすがります。
「おしさん、ごめんなあ。あしたはがまんする」
「あさっては!?」
「あさっても!」
「あさっても、しあさっても、おまえのおやつはぼくがかんりする!」
 きがつくと、『おしさん』はかふぇのちゅうぼうではくりきこをもっていました。みかちゃんはめをこらします。はくりきこは、はくりきこではありませんでした。
 ほっとけーきみっくすです。
 『おしさん』は、ほっとけーきみっくすと、たまごとぎゅうにゅうと、ぼうるとあわだてきとふらいぱんとで、さっさとほっとけーきをつくりました。
「きょうからこれをたべたまえ!」
 ほっとけーきはふわふわ・ふかふかおいしかったので、みかちゃんはあしたもあさってもおいしいといってたべたのでした。

 けれど、あさってのつぎのひもほっとけーきをつくるのは、かんぺきしゅぎの『おしさん』にはゆるせませんでした。
 かんぺき、つまり、あきのこないこと!
 『おしさん』はどーなつをつくることにしました。
「あぶらたっぷり、どないしたん?」
「きをつけたまえ! むこうでみているのだよ」
 ちょうりだいをはさんだむこうで、『おしさん』はきじをこねこね。
「おなじざいりょうで、べつのおやつ。かんぺきだ」
 『おしさん』はうっとり。すぷーん2つですくったきじを、あぶらにうかべて、まるまるときつねいろになったらあげます。
 ほれぼれするようないろです! みかちゃんは、よだれがあふれそうです。
「うまそうじゃね~か。ひとつくれよ」
「あ!」
 ところが、だれかがたべてしまいました。
「りゅ~く! いじきたない!」
「うめ~な、あいかわらず。ごちそうさん」
 『りゅ~く』とよばれただれかは、おれいをいうと、さっさとかえってしまいました。
 なんてすきかってをするのだろう。
 みかちゃんは『おしさん』をみました。『おしさん』は、おこったような、こまったようなかおで、『りゅ~く』のせなかをみつめました。
 そして、わらいました。
「しかたないな」
 わらったのです。
 みかちゃんはおちこみました。『おしさん』は、みかちゃんといるときはおこってばかり。あんなふうにわらったりしません。
 『どーなつ』も『りゅ~く』にたべてもらったほうがいい。『おしさん』をわらわせたほうがいい。みかちゃんは、えんりょしたほうがいい。
 そうおもうのに、あまずっぱいかおりがすると、よだれがとまりません。
「まだ、れもんのしろっぷにくぐらせてないのに」
 『おしさん』は、はちみつをおゆでうすめて、しぼったれもんを1てきいれました。そこに『どーなつ』をいっしゅんいれて、ひきあげます。
「かんせいだ! さあ、たべたまえ」
 いただきますをして、みかちゃんは『どーなつ』をかじりました。
 あまずっぱい! おもわずかおをすっぱくさせると、『おしさん』がわらいます。
「れもんがきいているだろう。カカカカカ!」
「おしさんのおやつ、せかいいちおいしいわあ」
「とうぜんだ! かんせいひんをたべられないなんて、あいつはかわいそうなやつだね」
 みかちゃんはわすれていました。『れもんのどーなつ』は、みかちゃんのためにつくられたおやつでした。『おしさん』は、みかちゃんのおやつがれもんのあめちゃんだと、おぼえていました。
「あついうちにたべるのだよ」
 ひとくち、ふたくち。もったいなくてゆっくりたべて、もうひとつ。みかちゃんのてはとまりません。
 なみだがでるほどすっぱいれもん! ああ、すっぱい!

 こうしてみかちゃんは、いつまでも『おしさん』のおやつにとりこにされました。
 めでたし、めでたし。

⭕️⭕️⭕️⭕️

大神の期末が酷いのでどうにかしなさいと言われた。何点だったんですか。12点。あまりに酷すぎるから、そして零は人の心がわからなかったから仲間内でさんざ笑って、でも俺内申もっと酷いし、でもう一度爆笑した。
「勉強くらいしろよ」
パイプ椅子を突き合わせて勉強をみてやると、晃牙は首まで真っ赤にしてせんぱいといるほうがたのしいんすと言った。ツインギター、せんぱいと、永遠に弾けるんす。
だからピックを摘む要領で、指先でなぞった。答案の4つの赤丸と「あ」答えを綴る利き手の甲。
「もっと首輪をさ、掛けさせろよ」
膝が触れた。震えていた。歓喜が愛し子の中を駆け巡り、胸元の赤ネクタイを弾ませた。

「勉強くらい、しろよ」
それが5人の仲間内で流行った。全員勉強しなかった。しないからこそ敗れ、膝をついたのだと零は思っている。
「なんじゃわんこ、おしっこかえ?」
4つの首輪をやりくりして、零は犬を飼っている。

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