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2016年07月の記事は以下のとおりです。

冒頭練習

「1学期より背ぇ伸びた!」
 と、喫茶店に来るやコーヒーも頼まずに報告するものだから、零は目の前の後輩を生温かい目で見つめた。
「うっ……んだよ、マジなんだからいいだろ。アイスコーヒーひとつ」
「サンドイッチもおくれ」
 アンティークの家具を揃えたこじゃれた店内のいちばん奥の席には、晩夏の光の代わりに美しいシャンデリアが輝いている。まわりの席には誰もおらず、入口に近い2席でそれぞれ恋人が見つめ合うのみなので、はつらつとした晃牙の声はよく通った。
 零の最近の楽しみは、ここで『朝食』のコーヒーを飲みながら後輩の学校の話を聞くことだった。後輩、つまり晃牙の放課後に待ち合わせしてコーヒーとか軽食を奢るのだ。なかなかじじくさい楽しみだが、アイドル活動の息抜きだから問題ない。今も晃牙は零の注文から「長話OK」のサインを受け取り、注文を受けて立ち去るウェイトレスには目もくれずに話し出した。
「1センチ伸びたんだけどよ。1センチって、けっこ~でけ~よな」
「そうさのう」
「ふふん、そうだろそうだろ。あんたを見下ろすのも時間の問題だな!」
「我輩の背がこのままじゃったらな」
 はっ、と晃牙が顔色を変える。
「まさか伸びてんのか……?」
「まさか」
「だよな~!」
 自慢気に腕を組んだまま晃牙が笑う。それに零は曖昧な笑みを浮かべて応えてみせた。
 このかわいい後輩は気づいていないらしいが、背の伸びる時期は成長ホルモンの出る時期と一致している。成長ホルモンのいちばん出る時期は12歳から17歳であり、晃牙は成長期を過ぎているのだ。これ以上身長が伸びることは期待できそうにないし、伸びたとしても残り4センチ近い差を埋めることはできないだろう。
 真実を告げることが常に最良の選択である訳ではない、と実感した零は、代わりに晃牙の頭を撫でる。
「うわっ、なんだよ撫でんじゃね~よ! 抜かされるのがそんなに悔しいかよ!」
「そうではない。……おぬし、別の急ぎの用事があるじゃろ。身長測定の結果を報告するためだけに息せき切ってここに来た訳ではあるまい」
 零の腕を振り払おうと必死になっていた晃牙は、零の言葉に図星を差されておとなしくなった。幼さの残る眉間に皺を寄せて、どう切り出そうか悩んでいるようだった。
 晃牙の大先輩は、晃牙に無理難題をお願いされても引き受けられるよう、キッと居住まいを正して待った。
「実は……」

 ☆ ☆ ☆

零くんが6人いる例のアレのイントロ

 二人分の食器を片付けると、晃牙は台所からお盆にスイカを載せて戻ってきた。
「お袋が朔間先輩と食べろってさ」
 かっこいい恋人によろしくねだってよ、と言い切らないうちに赤い部分にかぶりつく。
「晃牙とおばさんは好みが似ておるのう~?」
「あんたは誰が見てもかっけ~だろ」
「そうかや?」
「そうだよ」
「我輩は晃牙にかっこいいと思ってもらえば十分なんじゃが」
 しゃくしゃくと食べすすめていた晃牙が、ふと手を止めた。
「俺様は十分じゃね~し」
 晃牙は地球のように丸かったスイカの切れ端に大きな口でかじりついて、口元を果汁で濡らした。顎に垂れる前に手の甲で拭おうとすると、大きな手が晃牙の腕を引き留める。温かいものが唇に触れて遠ざかった。
「……何も言ってね~だろ」
「言ったぞい♪」
「そ~かよ」
 真っ赤な顔でスイカに没頭する晃牙にならい、零もぬるくならないうちにと尖った先端を食べた。冷たくて甘くておいしい。

 スイカのしゃくしゃくという音を楽しみながら食べるうちに、2切れ目もすぐなくなってしまった。お盆にはもともと6切れ載っていたから、あと1切れは零のものだが、完食するにはお腹が苦しい。
「いくら貰ったのじゃ?」
 3切れ目の中ほどに歯を立てた晃牙が、呆れたような目を向けてくる。
「半玉だけど……まだ食うのかよ」
「我輩吸血鬼じゃけどさすがに無理じゃ」
「吸血鬼関係ね~し。あ~、食べ切れるかってことか? 朝飯にすりゃいけんだろ。あと昼?か夜食」
 明日の昼はふたりとも仕事でいない。夜遅くに寝に帰る頃には、せっかくのスイカもしなしなになっているだろう。
「我輩があと5人おればのう~?」
「どんだけ食うんだよ」
 皮だけになったスイカを片付けながら、そうなったら俺様が大変すぎんだろ、とひとりごちる晃牙だった。

真夏色でぃれいっ☆

晃牙くんお誕生日おめでとう!の2016年設定

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完全無欠のラヴヴァンプ

真夏日

今日は真夏日だ。晃牙も零も、ソファーにぐったりと身を投げ出し、クーラーでは冷めない熱を持て余している。
「あつい~~あついのじゃ~~~~」
おもむろに零が立ち上がった。晃牙が眺めていると、そのまま体を引きずるように移動して、寝ているレオンの隣に腰を下ろす。
「おぉ……晃牙、ここ涼しいぞい」
「かわいそうなことすんなよ、レオン逃げてんじゃね~か」
そうは言いつつ晃牙もいそいそと向かう。
零の隣に座ると、なるほど頭上からクーラーの冷気が直撃。むしろ冷やっこい。
「さみ~んだけど」
「ふむ、近う寄れ……いやそうではない、くっつくな」
「いいだろ」
「逆に暑、んっ」
「…………」
「んぅ、は、ぁん……これっ」
「勃ってら」
「おぬしなあ……」
「いいだろ、暑いし。後で水風呂しよ~ぜ」
「む、むう…………アイスは?」
「サーティーワンもつけてやる」
「スイカバーでいい」
「安上がりになったなああんた……俺ガリガリ君な」
「いいから、ほれ、早く」
「へいへい」
「へいは1回じゃ」
「はいよ」
「ククク……」

 

「やっぱりサーティーワンがいい。今ならダブルがトリプルじゃ」
「はあ? めんどくせ~」
「さっきの甲斐甲斐しさはなんだったのじゃ。飼い主の言うこと聞くのが忠犬の本懐じゃろ」
「犬とか呼びやがったからやる気なくした」
「のう、ダ~リン? お願いじゃよ?」
「…………」
「あぁっDVじゃ、視線のDV!」
「んなモンね~だろ。帰ったらもう1発な」
「わんこのエッチ」
「……!……!」
「およ? あれなるは薫くんではないかえ? お~い! 晃牙とサーティーワン行くのじゃ! おぬしもどうかえ?」
「バカップルふたりで行ってよ……晃牙くんの奢りね」
「なんでだよ!」

 

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