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カテゴリー「タイカヅ」の検索結果は以下のとおりです。

プリズムプラス

『Over the Rainbowが恋愛ゲームになりました。ジャンルはシミュレーションではなくコミュニケーション。3人の中から1人選んで、高校に通いながら恋人生活を送るというゲームです。もちろんプリズムスタァとしての彼らも応援できます。彼らの魅力を再現した3DCGが、画面を所狭しと踊り、歌い、時にはあなたを指導してくれるのです。ゲームは現実の時間に合わせて進行するので、オバレのライブもモチロン開催されます。たとえチケットが当たらなくても、ゲームの中ならカノジョの特等席で楽しめますよ。
あなたの日常にプリズムの煌めきをプラスする、“プリズムプラス”。好評発売中です』


「とっくに持ってるっつーの」
タイガは動画の広告に律儀にツッコんで画面を消した。オバレの公式チャンネルは煩わしい。プリズムプラスーー通称プリプラの広告が挟まって、『俺のカヅキ先輩』以外の『カヅキ先輩』がいることを教えてくるからだ。
「何が『国民的プリズムスタァ、デビュー!』だ……」
『カヅキ先輩』は半年前の発売日からタイガの『カレシ』で、今や称号は『めちゃうまデュオ』。とっくにデビュー済みだ。
広告のせいで会いたくなった。寝転んだまま手を伸ばして、枕元の携帯ゲーム機を取り上げる。電源を入れれば画面中央にパジャマ姿の『カヅキ先輩』がやってきて、寝ぼけ眼を擦りながら『どーした……?』。『先輩』が早寝早起きなのも、ジャージではなくパジャマ派なのも、プリプラで初めて知った。
「会いたくなったんで」
『へへっ、嬉しいな……明日起きれなくなるぞ?』
「先輩が起こしてください……」
タッチパネルを突いて『先輩』の頬にキスを落とす。『あ! こら』イタズラを叱る声は甘い。
タイガの心にプリズムの煌めきとは違うあたたかさが広がって、すぐに跡形もなく消え失せてしまった。後に残るのは罪悪感だ。
画面を見ずに電源を落とすと、照明まで消して膝を抱える。
――明日は、カヅキさんに指導して貰うのに。
現実の、『カヅキ先輩』ではないカヅキさん。憧れのプリズムスタァで、先輩で、タイガの想い人。
プリプラでプリズムの煌めきをプラスするたびに、カヅキさんの真剣な横顔を思い出す。タイガには手の届かない顔だ。届かないから、届く『カヅキ先輩』を傍に置いて苦しんでいる。それを知ったらカヅキさんは幻滅するに違いない。
きゅうと痛むこの胸の、どこに煌めきが残っているだろう。真っ暗闇が丸めた背中を撫でていくのを、タイガはじっと感じていた。

フォーチュンボーイはお年頃

 

 

「あ、あのっ、脱がしたいっす」
「いいぜ」
「そりゃそうっすね、いくら恋人でもされるがま……えっ?」
――山田さんも寝静まる深夜のエーデルローズ寮。香賀美タイガ、つまり俺の部屋。
普段使いしている方のベッドの上で、一生のお願いはいとも容易く叶えられてしまった。
「いいんすか!?」
「おう。……つっても、あと下着くらいだけど」
「それは別にいいっつーか、それがいいっつーか」
後ろを向いて、小さくガッツポーズ。
いざそういう雰囲気になっても、カヅキさんの着衣は絶対不可侵領域だ。先輩の服を脱がせるなんて恐れ多くて申し出られなかった。その最たるもの、つまり下着を剥かせてもらうなんて何度抱き合っても考えてもみなかったが、そこは健全な男子、いざ隙だらけの下着姿を見ると口が止まらなかった。
「いいんすか? いいんすよね……?」
「狼狽えんなって。俺がいいんだからさ」
かわいいよなお前、なんてこぼして、カヅキさんは俺の頭をくしゃくしゃ撫でる。俺に何度も聞き返されたせいか、カヅキさんの頬までうっすら赤い。
カヅキさんがベッドの端から俺の目の前まで近づいて、細いのに逞しい両腕を俺に伸ばす。両手を広げて、welcomeのポーズ。
にぱっとしたいつもの笑みではなく、ふたりきり限定の笑顔が視界一杯に広がった。
「……俺ら、付き合ってるもんな」
マシュマロみたいなキスの感触と慰撫するような甘い声に、生ぬるいんすよと憎まれ口を叩くしかなかった。

「じゃ、よろしくな! ……けど、」
カヅキさんは素直にうつ伏せになると、顔だけ振り向いて、
「前からの方が取りやすくねーか?」
恥ずかしそうに言った。
「…………」
わからない。わからないが、カヅキさんの小ぶりな尻が褌をキュッと挟んでいるのを、まじまじと見る。
六尺褌は日本男児の証だ。ストリート界のカリスマとして誰よりも雄々しく振る舞うカヅキさんに良く似合う、チャラチャラしない男らしい下着。……のはずなのに、先輩の浅黒い肌が着けると妙にいやらしい。
「タイガ?」
「――はっ、ハイ! 失礼しゃすっ」
両手が震えている。聖域を侵す緊張は抑えきれないが、何もしないでいるのも先輩を不思議がらせる。
南無三、と褌と尻の間に指を差し込んだ。
「う、」
いざ触れてみると、先輩の尻は搗き立ての餅のような程よい弾力で人差し指を押し返してきた。そりゃそうだ、先輩は男なのだから。
脂肪でぷにぷにしているでもなく、カチカチの筋肉質でもない。プリズムショーで鍛え抜かれたしなやかな筋肉は、俺の指の下で静かに息づいている。
「……けっこー、キツイっすね……」
誤魔化すように褌を話題にすると、「踊ってるときにずり落ちないようにな」なんて妄想を逞しくさせる回答が返ってきた。ずり落ちたらカヅキさんはどうなってしまうのだろう。恥ずかしがるのだろうか、男らしくその場で締め直すのだろうか。
……脱がしたいとは言ったものの、褌の構造は知らない。布きれ1枚で、どういう着け方したらこんなに締まるのだろう。
現に尻肉に褌の跡がついている。擦れてヒリヒリしないんだろうか? いたわるようにそこに触れると、カヅキさんが息を詰めた。
「す、スンマセン」
「っあ、こそばい、って」
先輩の腰がくねって俺の指から逃れる。追い付いてもう一度撫でる。
「は、んん」
「カヅキさん……」
「ぅあ、っく、はっ」
親指を沈めるようにゆっくりと撫で上げると、親指と人差し指の間に乗った尻肉がつられてむっちりと持ち上がった。桃尻とはよく言うけれど、カヅキさんのそれは本当に齧り付きたくなる見た目だ。それも、ジューシーな果汁の代わりに肉汁が溢れ出そうな、ふかふかの肉まんじゅう。おもわず両手の指を広げて掴めば、肉まんじゅうがびくりと強張った。「おい……っ」あわてて謝りながら、五指を揃えてむちむちの皮膚を撫で上げる。
尻たぶに指をくまなく往復させた次は、谷間の線をなぞることにした。割れ目と言うほうが正しいだろうか。肉まんを割る要領で尻たぶを押し開き、褌の下に指を滑らせる。尾てい骨のあたりまでつーっとなぞってみても反応は薄い。ふだん歩くときとかに褌と擦れるから、気にならないのかもしれない。
どさくさに紛れて窄まりのシワを押せば、先輩の口から吐息ひとつ。思いがけず快感を拾ったらしい。
「馬鹿、そんなとこ撫でんな……っ」
「…………」
エロい。
先輩に気付かれないようこっそり生唾を飲み込む。
こうして見てみると、なんともいやらしい光景だ。ハリのある尻肉は刺激に備えて締まり、愛らしい尻えくぼができている。寄せられた尻たぶの最奥、純白の木綿からそっと覗くのは薄ピンクの窄まりで、妖しく誘われている気さえした。
もちろんカヅキさんにそんなつもりはないのだろう。かわいい恋人の性質の悪い悪戯だとすら思っているかもしれない。そう思うと、カヅキさんの厚意につけこんでくすぐることに罪悪感がわいてくる。
それでも思春期真っ盛りの好奇心が、指先を無遠慮に動かしてしまう。すみませんカヅキさん、カヅキさんの肉まんもとい尻を揉める機会なんて、そうそうないと思うんです。こんなに淫猥なことをしてしまったら、次から先輩に断られる気がして。
「はっ、あ、……っ……さっさと……なあ……ッ脱がせてくれよ……っ」
尾てい骨の上、腰骨、脚の付け根……わざとゆっくりとした動きで褌と肌の合間をなぞっていけば、カヅキさんの息も上がっていく。
先輩の尻たぶは両手に収まるほど小さいけれど、筋肉で張り詰めている。その筋肉が、指の動きに感じて引き締まったり緩んだりするのはすごく面白いし……エロい。
いつの間にか汗ばんでいたからか、カヅキさんの尻が俺の手のひらにしっとり吸い付いてくるのなんてたまらない。
「――ひゃ、っ」
あえて頭の方に向かって布を引っ張り上げると、先輩はとうとうあられもない声を上げた。急いで両手で口を覆っても遅い。先輩のかわいい声はとっくに記憶している。
「こ、こら! ……っあ!?」
もっと聞きたくて何度も小尻に食い込ませれば、その度にカヅキさんは女みたいな声を零して泣く。「あっ、あ、うぅ!」当然だろう、褌を引っ張り上げるということは木綿に包まれた性器も持ち上げるということで、マットと体に挟まれた先輩のペニスは擦れて気持ちいいに違いない。いわゆる床オナ――カヅキさんがオナニーしてるところなんて想像つかないが――状態だ。
「ぁ、ア! ひっぱんなっ、よぉ……っん……! あっあ、ひぃ……っ!」
「カヅキさん、やらしーっす……」
「はっ、んン、ふざけっ、くうぅ……っ!?」
カヅキさんの腰が大きく跳ねた。俺の手が前張りごとペニスを掴んだからだ。散々尻を苛められたおかげで、そこは先走りでぐっしょり濡れている。
イヤイヤとかぶりを振るカヅキさんの後頭部を見ながら、わざと性器を強く擦った。もちろん褌を性器に張り付かせるように、だ。
「ひっ! あ、ばか、ぁーっ……!」
そうして10分は先輩をいじめて、褌を弄るのに飽きた頃には、カヅキさんの後孔は真っ赤に腫れ上がりひくついていた。
広くない部屋に、二人分の呼吸の音がやけに響く。ぐったりとマットレスに沈む先輩の尻には、褌だったものが申し訳程度に纏わりついている。行き当たりばったりだったが、褌を脱がせることには成功したのだ。
……でも。
「カヅキさん」
「んう……?」
「このまま挿れていいスか……?」
先輩は真っ青になって振り向いた。抱き合うために脱がされているのだと忘れていたらしい。
そんなかわいそうなカヅキさんに「大丈夫っす、痛くしないんで」とは言えない。優しくする理性なんてとっくに擦り切れたのだ。
カヅキさんの表情とは裏腹に、窄まりは期待するみたいに収縮している。

「あっ、んぐ、っ、ア、ぁっ」
後ろから何度も前立腺を抉るように突き上げると、カヅキさんは喉を震わせて甘く泣いた。
根元まで押し込んだらすぐカリ首まで引き抜いて入口の肉をめくれ上がらせる。そうするとカヅキさんの中はきゅうと吸い付いてわななくのだ。亀頭が腸壁にゴツゴツと当たって気持ちいいのだろう。腰を打ち付けるたびに締め付けが強くなり、今や腰を引くにも苦労するほどきつく咥え込まれている。けれどそれは同時にカヅキさんも苦しめているということで、カヅキさんは排泄感に似た快感にすすり泣くばかりだ。
「ぁう、っ、アッ、いい、いぃ……っ」
「カヅキさんっ、カヅキさん……っ!」
後ろからだと顔が見えなくて悔しい。きっとカヅキさんはとんでもなくいやらしい顔をしているのだろう。伏せたまぶたを震わせて、薄い唇は半開きで、ストリートのカリスマだなんて忘れたようなだらしない顔。
3歳も年上のこの人が、後輩の手で良いようにされて泣いている。先輩をここまでにしたのは他の誰でもない自分だ。キスすら恥ずかしがる先輩に土下座して頼み込んで、ベッドの上でおそるおそる下を触れ合わせるところから始めたのに、カヅキさんはいつの間にか誰よりも男らしく快楽を求めるようになった。だから俺もカヅキさんとより高みへ上っていけるよう頑張って――AVとか雑誌とか見て――技を磨いた。ベッドの上も男の戦いの場だ。
今日は最初の攻めが効いたのか、俺の圧勝だ。カヅキさんは言葉を忘れたように喘ぎっぱなしの感じっぱなし。男冥利につきる。
カヅキさんの真っ赤な耳たぶを甘噛みする。「ぁ、」オバレの基本衣装は先輩のかわいい耳を隠すのが惜しい。先輩は感じやすいから仕方ないのかもしれないが。たとえばこんな風に。
「……カヅキさん、好きです」
「ひっ……!」
「すげぇ嬉しいっす、こんな、俺」
毎日祭りっす。何がどう祭りか囁かなくても、頭のいい先輩はわかったらしい。キツい後ろをさらにきゅうきゅうに締め付けて、直腸全部でハグしてくる。
無限ハグするのは恥ずかしい、と先輩は言っていた。そのままでいてほしい。そうすればこうして全身で抱き締められるのは香賀美タイガただひとりになる。
先輩に俺を刻みつけるために腰を大きくグラインドさせる。先輩は後孔のヒダの引き攣れる感覚に背中を反らす。追いかけるように背中を抱きしめる。その拍子にさらに深く繋がって、カヅキさんがぶるりと頭を打ち振る。
そうして、振り向きざまに、言う。
「……っお、れも、ぁ、す、すき……っ! すきだ……っあぁああぁ!?」
――反則だ。
奥の奥に捩じ込むように腰を打ち付けながら、先輩の無邪気さに歯噛みした。「あっあぁ、ア! なんで……っ!」さらに質量を増した俺自身に愕然としたらしい先輩は、前立腺を突かれてまた直ぐに言葉を忘れたようだった。今にも射精しそうな硬さの性器が膨らんだのだから当然の反応だ。はじめての大きさと硬さでガツガツと抉られて、カヅキさんの喉が仰け反る。
「はっ、ぁ、たいっ、たいがぁ、あぁっ」
「カヅキさん……っ」
お互い限界が近い。カヅキさんの理性は途方もない快感に塗りつぶされ、獣のように尻を揺さぶらせている。
こみ上げる射精欲と戦う俺は、そんなカヅキさんから目が離せなかった。
あんなに男らしいプリズムジャンプを魅せるカヅキさんが、俺のことを性的な意味で好いて、四つん這いで犯されて感じている。頭をガツンと殴られたような感覚だ。まだカヅキ先輩のことを神様か何かだと思っているのだ。カヅキさんも人間でオトコで、セックスもする。
こんな風に、甘ったるい声で喘いで尻を突き出して、俺を欲しがってる。
「……イく……っ!」
――そのとき。
カヅキさんが顔だけで振り向いた。予想通りのトロトロ顔、ではなく俺という獲物を捕らえた雄の顔をしている。捕らえただけじゃない。雄獅子が獲物の喉笛に牙を立てて仕留めた顔で、カヅキさんはうっそりと笑う。
「――ッ」
カヅキさんの腹の中で、屹立がぶわりと膨らんだ。精液が精?から勢いよく送り出されてくるのを感じる。先輩に求められている。直腸ヒダが精液を渇望するように俺の根元から亀頭に向けてぞりぞりと締め付け搾り上げ、一滴残らず吸い取ろうとする。
「カヅキさん……っ!」
「ぁ、あぁ――……!」
そうして俺は、先輩の最奥に熱い精液をぶちまけた……。

 

 

「……俺も、ボクサーパンツでも穿こうかなぁ」
「えっ!」
先輩の体を濡れタオルでくまなく清め終えると、カヅキさんは擦れ切った声で呟いた。
「なんでですか! すげぇカッコいいのに!」
「なんでって……」
わかるだろ、と言葉を濁した先輩の頬が赤い。カヅキさんには珍しいジト目で見上げられて、俺はすぐに自分のしでかしたことに思い至る。
「すすすスイマセン! すんませんマジで馬鹿でした……!」
「ったく……もうすんなよ? すげーヒリヒリするから」
体液でぐしょぐしょなのと後孔が擦れて痛いのとで、今のカヅキさんはノーパンもといノー褌だ。心もとなさに脚をもぞもぞさせては俺の方を恥ずかしそうに見るから、申し訳なさと愛おしさがこみ上げてくる。
「……けど」
俺にタオルケットを掛けられながら、カヅキさんが頬杖をつく。片足はお尻の方に蹴り上げて、楽しいことを思いついたときみたいにぶらぶらさせている。みたい、というよりその通りなのだろう。
隣に寝転んだ俺を引き寄せて、破顔一笑。
「タイガも褌にするなら、考えようかな」
「ええ……!?」
そしたら覚悟しとけよ、と笑うカヅキさんは最高にカッコよくて、俺は不安と不純な期待にドギマギしながら朝を待つのだった。

 

純情♡トキメキ公園デート

カヅキくん今日はオフかい、サッカー上手いね、理工学部は忙しいだろうけど応援してるよ、これオマケ。
「はふひはん」
お友達もと2個多く盛られた唐揚げを頬張りながら、タイガは公園の隅のベンチで呼びかける。
「んぐ、カヅキさん」
俺はカヅキさんの友達じゃねぇしカレシだし、理工学部は忙しいけどカヅキさんはそれを理由に頑張らないヤツじゃねぇ。なによりカヅキさん、カヅキさんはこれデートだと思ってますか、この草サッカー。俺たちデートしてるんですよね。
「ほふ?」
「うまいっすか」
「ん、おう!」
……とは聞けなかった。
「ここの唐揚げ、大好きなんだよなー。運動した後は特にうまくてさ」
それでダンスの練習しにきてた、と笑うカヅキの視線を追って、タイガは一面の芝生に目をやる。 大勢の子供が駆け回るその下で、生えたての芝生が陽光に照らされて輝いている。やわらかな黄緑と快晴の青は青春の色だ。始まったばかりのふたりの恋路を応援するように、きらきら煌めいて見えさえした。

新緑あざやかな6月の週末は久しぶりの全日オフだ。タイガにはエーデルローズの行事が入らず、カヅキの大学は一通りの新歓行事を終えたところ。高校の頃からカヅキが続けている実家の手伝いも、今はちょうど人手の余る時期らしい。 だからタイガは決死の覚悟でカヅキを誘い、カヅキは「どこ行くか俺に任せてくれねぇか?」と答えた。
それがこれだ。
つまり公園での草サッカーデート、ただしギャラリーと大勢の仲間つき。
もちろんタイガも男の子だからサッカーは楽しい、楽しいけれど、デートとはなんだったかと、頭を抱えずにはいられない。
とうとう休憩中にカヅキの手を引いて抜け出して、遠く離れた木陰の近くで間食を買って、今に至る。
「お茶あったっけ……っと。ん、んく」
「……っ」
カヅキの喉がお茶を飲んで上下するのを、タイガはじっと盗み見る。 プリズムスタァに大騒ぎしていた子供達(あるいは同年代達)は、カヅキ達のことなど忘れて思い思いの遊びに夢中になっているだろう。サッカー、キャッチボール、縄跳び、あるいはダンス。たまに誰かが通りかかって手を振るけれど、キャアキャアとうるさい声から木陰の下は隔離されている。パス、いけ、オッシャ、なんて掛け声が飛び込んだり、涼やかな風がタイガとカヅキの間を通り過ぎたりするくらいだ。
これはデートなのだろうか。カヅキさんは、自分と恋人同士だとわかっているのだろうか。こんなに無防備な姿で、みんなに笑いかけて。先輩後輩の距離を変えずに、近くて遠くて。
「ぷはっ!」
「あのっ」
オトコならぐだぐだ悩まずに切り込むべきだ。そう決心してカヅキに体ごと向かい合うと、無垢な笑顔と目が合う。
「う……」
「ん? も1個食うか? 育ち盛りだし」
「……あざっす」
「いっぱい食べて大きくなったら、大和の背も抜きそうだな」
デート中に他のオトコの名前を出すなんて生温いんすよ、なんて非難は心の中に留めて、カヅキの容器から唐揚げを摘まむ。大和アレクサンダーとは最悪の出会いだったけれど、カヅキの良いライバルなのだ。迂闊なことを言ってカヅキに中傷だととられるのは避けたい。
かすかな苛立ちを唐揚げに八つ当たりしたら、再出撃。
「あの」
「うん?」
「その」
不満も不安も、言葉にならない。
「おー、慌てんなよ?」
「っ、スンマセン、あのっ」
あの、と切り出したところで唐揚げのかけらが喉に詰まる。 タイガがおもわず咳き込むと、カヅキの手が慌てたように背中に伸びた。さする手つきが優しくてあたたかくて、タイガの心はどんどんはやる。
「大丈夫か?」
「ごほ、っ、く、ごほっ……けほ……」
これだって恋人の手つきじゃないのだ。好きな人の体に触れることを躊躇わない、何の気ない触れ方に、昔のタイガは何度も心を震わせた。ようやく手に入れた恋人のポジションで、あのときと同じ気持ちになっている。
――俺は恋人らしいこと、たくさんしたいのに。
――そう、たとえば俺の部屋に行くとか。
「……昼から走りっぱなしで疲れたなぁ。マックとか行くか?」
「……っ、行かねぇっす」
とっさに口を突いて出た返事に、そうか?とカヅキが小首を傾げた。
こてんと音のするような仕草に胸が高まる。 大きくてまん丸な瞳がタイガを見つめている。
間が空いた。思いがけず。マックには行かない、ならどうする、恋人同士で。 木のベンチの上で拳を握る。
漢タイガ、決めるなら今だ。ホイッスルが鳴る。
「行かない、っす。これから俺の部屋、行くんで」

しん、としたのは一瞬で、すぐに公園の喧騒が戻ってきた。木漏れ日を喜ぶように、新緑の煌めきが視界のそこかしこで踊っている。煌めきの中央にはカヅキ先輩がいる。新緑をイメージカラーにするこの人の、零れんばかりに見開かれた両目の下で、褐色の頰が色づいている。
「あ、う、」
カヅキの唇がわなないた。 タイガの頰も熱い。遠くの方から子供の掛け声が聞こえる。いけーシュートだ、走れー。プリズムショーならプリズムジャンプを決めるところだろう。応援されてるみたいだ。昔のタイガなら馴れ合うなんてと怒っただろうが、もう気にならない。
だってタイガは高校1年生、カヅキがエーデルローズ入学を決めたのと同い年だ。
「俺、貴方とふたりきりになりたいんです」 2連続。
とっさにカヅキの手を取る。意外と華奢な指先が震えている。
「たい、」
「カヅキさん」
ぎゅっと握り込んで、3連続。
いけータイガ、ジャンプだ!
「やさしく、するんで!」

  ※  


「おかえりぃ〜……って、カヅキじゃん。どうしたの〜?」
「……ご無沙汰してます、山田さん」
茜さす玄関をくぐる来訪者に、山田とミナトは目を丸くした。華京院学園を卒業したばかりのカヅキが、在学生の不良息子を背負って帰ってきたのだ。
もちろん背負うには大きすぎて、半ば引きずるような体勢だ。カヅキはミナトの手を借りつつタイガを下ろすが、未だふらつくようだったから2人で慌てて肩を貸す。
「タイガ、どうかしたんですか? ぐったりしてる……」
「気付けなかったんですけど、熱中症っぽくて。俺、連れ回しすぎました」
カヅキが自分の迂闊さに唇を噛むのを、ミナトが気遣わしげに見やる。
世紀の大宣言の後、タイガは鼻血を出して倒れたのだ。原因は炎天下でのサッカーと、おそらく寝不足だろう。慌ててタイガを抱き上げたときに、下瞼に濃いクマが出来ているのを見つけたから。
そして、寝不足なのは、たぶん……自分とのデートを楽しみにしてくれていたからだ。
「カヅキさんも顔赤いですよ、大丈夫ですか……?」
「あ、あぁ、うん、俺は……うん」
2階に上がりタイガの自室のドアを開けると、カヅキは使われていない方のベッドに恋人を寝かせた。寝起きしている方には地域情報誌が広げてある。きっとタイガが今日のために見てくれたのだろう。
「カヅキさぁん……」
ふと、パーカーの裾が引っ張られた。振り返るとエメラルドグリーンの瞳がカヅキを呼んで揺れている。
「ごめんな、タイガ。傍にいるから」
「……生殺しっすよぉ……」
オトコがすたる……と唸るタイガの手を、カヅキは小さな両手で包んだ。それがまた生殺しになるのだと気づかないカヅキの後ろで、ミナトと山田が顔を見合わせ苦笑している。
「純情派も大変だねぇ」
「そうですねぇ……」
それがタイガの良いところなんだけど……と言いかけて、ミナトはぽんと手を打つ。
「そうだ、今夜は唐揚げ定食にしよう。それで元気出して。カヅキさんもどう?」
「いや……ちょっと」 思い出すから、と俯くカヅキのうなじがほんのり染まっている。
「……唐揚げは……もーいい……」
唐揚げも公園も懲り懲りだ。……などと言うには元気が足りない。
だから、
「…………」
「タイガ?」
せめてカヅキ先輩の手を引き寄せて、タイガはお部屋デートの代わりにするのだった。

恋宿り

下駄箱を出たときは薄曇りだった空はみるみるうちに崩れ、坂を下りきる頃には辺り一面土砂降りだった。おかげでタイガとカヅキは中央線の高架下から寮へと行き先を変えなければならなかった。
「夕立かあ」
2歩先に玄関をくぐったカヅキが頭を拭きながらのん気な声を上げる。
つづくタイガも寮長からタオルを投げ渡されて、ふかふかのパイル地の間から外を振り仰いだ。「夕立っつか、ふつうに雨だと思うんすけど」前庭を彩る新緑が豪雨に打たれて頭を垂れている。東北の夏の午後を思わせる、つややかな景色だ。
「午後から明後日までずっと雨だってさ。天気予報、見なかったかぁ?」
「……」
じわり、とカヅキの頬が染まった。寮長の垂れ目がふたりの寮生とその手元を交互に見て「ははーん」「……んだよ」笑いかけたまま多くは語らなった。おかげでタイガはカヅキの顔を窺えない。
「別に?」
寮長は寮生の外泊状況を知っている。香賀美タイガ、6月×日外泊。久しぶりの外泊先は、寮から少し離れた仁科家。連れ立って帰ってきたふたりのどことないよそよそしさが、口ほどにものを言ったのだろう。
「別にじゃねーだろ! こ、……ッ」
「まっ、仁科も泊まってけば? 部屋ならいくらでも空いてるし、空いてなくても香賀美の部屋あるし」
「すんません」
「いいよいいよ。じゃ、風呂沸いてるからなー」
寮長が手をひらひらと振って去るのを、タイガは歯噛みして見送った。「……離してくださいよ」幼いトラは今にも飛び出さんばかりに身を乗り出して、噛み付こうと思っていたのに……繋がれた手に止められているから。
「……何もしねーっすから」
「いやだ」
「なんでっすか」
「俺が繋ぎたいから繋いでるんだ。いいだろ?」
「つな、」
「風呂、入ろうぜ」

地面を叩く雨の音が、タイガとカヅキの世界を囲んでいる。
身体は爪先まですっかり冷えて、けれどカヅキの右手とタイガの左手にだけ熱が灯っている。天気予報を見る余裕もないくらいなのに、いつもよりふたりの距離は離れているのに、カヅキはタイガの手を離さない。
「……カヅキさん」
離したくない、なんて思われていたい。
「――そうだ!」
「はっ?」
タイガの恋人は、急に振り返ってタイガの右手に手を伸ばしてきた。
慌てて手を引っ込めたタイガに、笑いかける。幼い手の中のものを……傘を、指して。
「傘、ここで乾かしとくから……開いてくれねーか?」

――肩がぶつかるのすら恥ずかしくて、腕しか入れなかった折り畳み傘。
緑色をして、男子中学生ひとりにも小さなその傘は、タイガの右手とカヅキの左手でまっすぐ広げられた。
やっぱふたりじゃ開けにくいな、なんてカヅキが笑う。タイガは当然っすよとそっぽを向く。
折り畳み傘を玄関のすぐ横に置くと、ふたりは脱衣所へとゆっくり歩いていった。
お互いの手を握って、あたためて、相合傘ができるくらい、肩を寄せ合って。

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