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晃零スケッチ


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■なんじゃって
父の日の翌週の金曜日は“犬を連れて仕事に行こうデー”イギリス発祥の素敵な習慣 #takeyourdogtoworkday - Togetter https://togetter.com/li/1240579

「……なんじゃって」
「じゃあ俺様も#takeyourvampiretoworkdayだからな」
「…………」
「嫌なこと人にすんなよ」
「いやその、所有格がのう」
「は? …………!」



■バレンタイン書きかけ
「そういえば、次の休みはバレンタインじゃったか」
 零は脚の先まで俺に洗わせながら、俺に持ってこさせた手帳を開いて言った。
「あぁ……気持ち良いのう。湯は苦手じゃがマッサージは格別じゃ。ほれ晃牙、左脚もよろしくな」
「なんで俺様が……」
「おぬしがシャワーを浴びろと言ったんじゃろう。はぁぁ……極楽極楽……♪」
 ユニットバスの狭いバスタブに男2人、三角座りで入ると動けない。だから零の長い脚を片方ずつ俺の肩に乗せて泡まみれにし、胸や肩に適当にシャワーを掛け合って暖を取る。そんな訳わかんね〜ことしてるせいで俺も零もびしょ濡れ泡まみれだが、零は喉を鳴らしてご機嫌だ。
 ……それにしても、爪の形まで惚れ惚れするほどカッケ〜な。
「変わったところを撫でるのう?」
「ううううっせ~! バレンタインがなんだって!?」
「おぉ、そうじゃな。バレンタインじゃけども、学院に顔でも出さんか?」
 ふくらはぎを揉まされつつ聞くところによるとこうだ。ふたり揃っての次のオフ日が2月14日、つまりバレンタインデーなので、後輩兼来年度のライバルの様子を見にショコラフェスに行きたい。チケットはOB用のがあるし、後輩の信頼の厚い俺が行けばきっと喜ばれるだろう。怪物ユニットの2winkは午前の部の大トリを務めるらしい……。
「……行くか」
「不服そうじゃのう」
「別に。卒業して業界入ったら先輩後輩関係ね〜し、敵情視察しろっつ~のはもっともだろ」
 零の胸にシャワーをおもいきり浴びせた。真っ白な泡が流れてさらに白い肌が現れる。
「くく……顔に出ておる。ふたりきりでないバレンタインは嫌かえ」
 零は脚で俺を引き寄せると右手で俺のペニスを擦りだした。大きな手。男らしく節くれだっているのに、肌は女よりもなめらかで色気がある。
 機嫌を取られるのが悔しい。けど気持ちいい。
「ぁ、う……く、」
「本当にういやつじゃ……飼い主冥利に尽きるのう」
 可愛がってやらねば、と囁いた唇でペニスを飲み込まれ、かろうじて射精を堪えた。俺が唸る間も零の唇に扱きたてられる。 弾ける直前に引き抜いたせいで、精液が零のまぶたにどろりとぶち撒けられた。 零が深いため息を吐く。
「飲ませてくれんのかや……」
「させるかよ。ぜって〜クソ不味いだろ」
「おいしいぞい?」人差し指で精液を掬って舐める零。綺麗なツラに男のものを垂らすのも、擦れて赤い唇もエロいのに、同じくらいギリシャ彫刻みたいに神々しい。 この人を前にすると、自分のイライラが小さなものに思えてくる。
 ……零とふたりきりのバレンタイン、を、期待してなかったと言えば嘘になる。時期的に外に出られないならどっちかの部屋に行って、楽器触ったり録画見たり……1日中だらだらするのもいいかと思ってたから。最近忙しいし、忙しくなくても零の傍にいるのは恋人なら当然だし。……チョコも、貰えるかもしれね〜し……。  けど、零の1番はいつだって俺がいいから。大神晃牙を欲しがられたいから、俺のじゃなくて後輩のライブを観たいと言われたら、なんかこう、ムカついたのだ。
「……チョコ」
「んむ?」
「俺様にぴったりの、最高にロックなチョコを用意するなら、ショコラフェスでもどこでも行ってやる」
 零は猫のように笑うと、俺の首筋に擦り寄った。


■炭酸飲料のCM
 ライブハウスを音と光の暴力が支配する。ステージの上で禍々しい出で立ちの晃牙が叫んでいる。口元に血の色の紅を差し、手錠を繋がれた腕でギターをかき鳴らす姿はまさに地獄の番犬。晃牙との確かな繋がりを求め、少女達が両手をかかげて踊り狂う。
 サバトのような光景を、しかし壁際の零は冷めた目で見ていた。零にとってそれは変わり映えしない風景。
 虚飾の衣装を纏い、美しい女を侍らせても、虚ろな心は満たされない。
 晃牙と目が合う。勝ち誇った目。片頬を吊り上げ、お前に興味はないとばかりに視線を逸らされる。
 零は足元のペットボトルを拾う。中身を煽る。
 腕で唇を乱暴に拭うと、ひとっ飛びに少女の群れを掻き分けステージに上がる。
 晃牙の不意を突かれた顔。紅い唇。その血の気配に誘われるように、胸ぐらを掴むと、唇に己のそれを重ねーー

 ーー炭酸飲料の見本写真が、ふたりの接合を隠す。
 『刺激がほしい? ーーINAZUMA GINGER、誕生』
 販売元のロゴの後ろで晃牙が零に殴りかかっている。零は笑っている。唇にうっすらと紅をつけて。心底愉快そうに。





■推しを砂糖漬けにして食べたい(概念)
 目を覚ますと全身が砂糖に漬かっていた。比喩ではなく事実だ。
 じゃりじゃりする砂糖の海を掻き分けると、ときどき紫色の湿った布のような塊にぶつかる。
 真っ白な視界で紫のそれを避けたり退けたりしながら泳ぎ続け、3枚目の布を顔から剥がしたとき、晃牙の目の前には微笑を浮かべる朔間先輩がいた。
「夢か? これ」
「さて……」
 いつの間にか先輩は水面の白い波に腰掛け、爪先で優雅に砂糖しぶきを蹴っている。晃牙も真似してみたが、無情にも尻から白い海に沈み、砂糖をたらふく飲んでしまった。
 しかし、と海面から顔を出した晃牙は思った。
 先輩と会えてよかった。果てのない砂糖海原、先輩とふたりなら怖いものはない。
「むぐ」
 先を行こうとした晃牙を、先輩が後ろから抱きしめる。
 振り向くと首筋を舐められた。
「ひゃあ! て、テメ〜! 何すんだよ!?」
 先輩は答えずに晃牙の首筋に歯を立てた。皮膚を覆っていた砂糖が唾液で溶け、べたべたになったところを舌で綺麗に舐め取られる。
 砂糖の波がふたりに押し寄せた。濡れた首筋にたっぷりと砂糖がまぶされて落ちない。
「うが〜! 舐めんな!」
「甘いのう〜。すっかりわんこの砂糖漬けじゃのう」
 わんこの砂糖漬けってなんだよ、と言おうとした唇も先輩に食べられたので、晃牙は目の前の肩を掴んで先輩を引き剥がした。
「俺様は甘いのは嫌いなんだよ!」
「では我輩も嫌いかえ?」
 俯いた零を白い波が攫いそうになる。
 晃牙は零の体に両腕を伸ばして引き寄せると、噛み付くように口付けた。
 砂糖の麻薬めいた甘さが舌先から脳天を突き抜ける。花のような瑞々しい香りはバッドトリップの見せる幻覚だろうか。先輩の舌の濡れた柔らかさが妙に鮮明で、甘いのはもういいと思うのに唇と舌を隙間なくくっつけたくなる。
「うう〜、頭イかれちまいそう」
 泳ぐ気力がなくなった。別にいいか。先輩とふたりなら、どうとでもなる。
 先輩が近くにあった紫色の布を自分の体に巻きつけた。紫がよく似合う。先輩が晃牙の肩にも掛けたので、晃牙も紫色になった。
「そろそろ頃合いかのう?」
 先輩がにっこり笑って晃牙の唇を舐めると甘い。
 やり返す晃牙の舌も甘い。
 砂糖が体じゅうに染みて、もう真っ白だ。
 こうして砂糖漬けができたのだった。

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