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2016年05月26日の記事は以下のとおりです。

In the Rye

キミは芝居掛かった仕草が抜けないね、と監督に言われた。深夜帯の学園ドラマの撮影だった。残念なイケメン吸血鬼という役で売っているから、あるいはそう売るように学院で指導されてきたから抜けないね、と言われる。零はしょんぼりとしてすいませんと言う。すいません、気を付けます。次からしないよう気を付けます。
「馬鹿馬鹿しい」
そういう話を聞かされた宗は2回舌打ちをして零の道化さを笑った。
「そういう役作りで売っていると思わせるのが君だろうに、あざとさを鼻につかせるなど」
完璧であるところの斎宮宗は人形の糸を見破るのが早い。
「お手の物だろう。謝る気などないくせに」
宗はバナナケーキの先端をフォークで切って食べた。バナナがキャラメリゼされて美味しそうだと零が行きつけのケーキ屋で見かけておもたせにしたのだった。バナナケーキ。3つ、家主の宗とお客の零と居候のみかの分。
いつまで茶番をするのかねとみかの分のケーキを箱に戻しながら問われた。どちらかというと責める口調だった。大きな箱にバナナケーキ1ピース、ボール紙で固定して片道分の保冷剤を入れ替える。蓋を閉じる。零に渡して持って帰らせる。零は受け取る。
お茶会から帰宅した零は箱を開けて、綺麗な絵柄の皿にケーキを乗せるとリビングで待つ晃牙にフォークを添えて差し出す。
「ひとつ? いらね~の? 半分こしようぜ」
綻びが出ないよう気を付けます。

 

 ※

 

彼の茶番を聞きながら、作るならケーキよりタルトだろうと宗は思った。
ケーキよりタルト。キャラメリゼよりチョコレートがけ。土台だけ焼いて一緒に作るのもいいかもしれない。
「バナナと好きなフルーツを買ってきたまえ」
タルトにするからね。思いのほかやさしい声が出たことに驚いて、キャラメル焼けだと納得する。あるいは電話のマジック。
土台のクッキー生地をキツネ色にした頃に、みかが息咳切らして帰ってきた。「こんなに買ってどうするのかね」「ぜんぶ乗せてスペシャルにしよ思てん!」
ぜんぶ切って乗せた。
「乗りきるもんやねえ、マド姉」
『みかスペシャルね、みかちゃん』
ケーキナイフを慎重に入れる愛し子ふたりを、宗は見ている。
「ノン! 余所見していると崩壊するだろう」
言ったそばからラズベリーが転げて落ちた。みかの手が拾って食べた。
「あっ!先に食べてもた! お師さんごめん」
タルトの縁の高さまで王国建設完了それでおしまい。

 

夜長

2016年春の晃+零

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