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カテゴリー「大帝国」の検索結果は以下のとおりです。

パフェ

真希ちゃんと喫茶店で上司の帰りを待つこと30分。
頼まれた2つのパフェは遅れたことを詫びる様に私と向かいの少女の前に現れ、人伝いに注文した主はまだ来ない。
とけちゃうから食べようよ、と笑う面影は大人びていたけれど、きっとどっさり乗ったホイップクリームも甘酸っぱい苺シャーベットも、さくさくのチョコがけフレークだっておいしくないに違いない。
現にパフェは減るより早く溶けていく。溶けたアイスはチョコレートのソースと混じり、容器の端から涙のように垂れた。
行儀が悪いのを知っていて、真希ちゃんの指は控えめに甘い涙を掬って舌に運ばれる。それでも父親は来ない。タイミングよくここに現れて自分をしかってくれやしないかと、祈るような気持ちでふざけたのに。
だから私は叱るかわりに彼女の顔のクリームをふき取るけれど、それだって本当は誰でもない父親にしてもらいたいのだろう。
来てくれればいいのに。
そう思いながら、パフェスプーンでフルーツをすくって食べる真希ちゃんの唇をぬぐおうとして……私の手ごと、紙ナプキンが止められた。

夕暮れ時にしては閑散とした禁煙席に、長い影がひとつ、ふたつ、そして……みっつ。
頼まれた1つのジュースと2つのコーヒー、それにサンドイッチは歓談する私達の前に現れ、注文した父親は私の手付かずのパフェを茶化し、愛娘の指先を拭っている。
文句のひとつでも言ってやろうとあんなに待ち構えていたのに、今わたしはただ父子水入らずの食事を隣で眺めている。
かまわない。それでいい。多くは望まない。
パフェを共に食す相手も悪戯をとがめる相手も、指先を拭う相手も、今はまだ、眺めるだけでいい。

モブダグお題と妄想

いともかんたんにベッドに縫い止められたダグラスに、ファンだという男はしきりに赦しを請うた。「ごめんね、ごめん。」君を金で買うような真似をしてごめん、と。謝るならその薄汚い手でオレの腹筋をさするなファックと言いたいダグラスは、けれど唇を引き結んで責め苦に耐えるしかない。もうこのクソッタレな世の中に反抗する力はなかったのだ。不名誉な噂を流し、命すら消してしまう力の輝きを男の背後に見ていたから。

モブダグへのお題:いともかんたんに/「ごめんね、ごめん。」/ナイフを持ってることはひみつ http://shindanmaker.com/122300

 

 

twitterの方でついカッとなって垂れ流したのをまとめた
!注意 モブ相手にダグラスくんが体を売ることになる妄想です
わたしのかんがえるモブダグ

前提:年表つくるの大好き(私が)

 

ダグラスくんは幼い頃、自分のために色々してくれるお姉さんのために「オレも働こう!」と思うんだけど、外で何をすればいいのかわからない
そこをお金持ちのおじさんに声をかけられて、女の子の服を着てくれればこれだけあげるよ、という甘言にホイホイ「やとわれ」ちゃう
それでちょっといいホテルなんかでかわいいワンピースを着せられたりして、こんなのでお金もらっちゃっていいのかと思ってるダグラスくんのお尻をお金持ちおじさんが撫でる
撫でるだけじゃなくて揉まれたりさすられたりして、気持ち悪くなってきたダグラスくんは正直に拒否
お金持ちのおじさんは優しかったのでダグラスくんを家に帰してくれるんだけど、ダグラスはこのことがトラウマになって、普通の力仕事とかで働くように
それから大学を出て、演劇の道に進んで、大スターから海軍司令官、そして大統領候補へ!
→落選
どうして落選したかというと、若草会にすごい噂を流されたからですね
「ホモでマゾで女装癖」 噂というものは嘘のように信憑性がない、しかし火のないところに煙は立たないし、真実の隠れていない嘘は信じられにくい
幼い頃のちょっとした出来事に煙を立てられたダグラスくんは、酒を煽りながら「因果応報ってヤツか……」と何ともいえない気持ちに
せっかく姉さんのおかげでここまで来たのに俳優にも海軍にも戻れなくなって、マンションを追い出され、酒浸りの日々の末に無一文となった頃、大統領選の頃の噂を聞きつけ、同性愛者でダグラスくんのファンだったモブがダグラスくんのもとを訪れます
泥酔し失うものは何もないとばかりにモブに連れられてホテルの門をくぐったダグラスくんは処女喪失、精液に塗れながら明け方まで泣きます
枕元にはドル札が
痛みばかりの処女喪失でしたが、その翌日も違うモブが同じように飲み代を払いドル札をくれたので、ダグラスくんは次第にお酒のために体を売るようになります
待ち合わせは場末の酒場の一番奥、酔いつぶれる前に客に拾われて、ホテルでドロドロになります
たまには寝床の路地裏でまぐわうことも
このままどうにでもなればいい、どうにかなってしまわないと姉さんとキャロルを思い出してしまうから、と二束三文で買い叩かれるダグラスくんが、モブにレイプレイプレイプされる

のが 私の頭の中のモブダグです

~完~

このモブダグのちょっと後にキャロルと再会→COREの餌食に、という流れになると思ってる
ハワイ―カナダルート?だったら酒場で一二回客に買われたあたりでキャロルと再会するんじゃないかなー
二束三文で買い叩かれてる時期に再会して日本軍に加入した頃になって後ろが疼いて仕方なくなるダグラスくんもかわいいと思う
多分そうなると下手に相手も見つけられないし東郷やキャロルの手前なんにもできなくてこっそり玩具を通販するんじゃないかな
尻穴狂い@eraのダグラスくんまでもう少し!
そういう訳で私は朝起きるとパソコンのデスクトップの片隅にeraDTK(era大帝国)のショートカットが出来てないかなあ、と夢想するのです 

夕立

ちょっとした用事を済ませて外に出ると、見計らったように雨が降り出した。
「夕立か」
「そのようですね。えぇと……」
腕組みをして空を見上げる東郷の横で、秋山はごそごそと小脇の鞄を漁る。
行きがけに二人分の折りたたみ傘を放り込んだはずなのに、いくら漁っても出てこない。自分の勘違いだろうか。
そうこうする間にも雨はどんどん激しくなる。小雨のうちに駅まで走ってしまえばよかったのに、すでに軒下のここから一歩出れば土砂降りだ。傘を差しても歩けるかどうか。
「……申し訳ありません東郷長官、傘を忘れてきてしまいました。車を手配しますので、しばらく中でお待ち下さい」
「いや、いい」
「え?」
「じきに止むだろう」
携帯ごと腕を引かれて、秋山は東郷の胸に倒れこんだ。身を起こす間もなく顎に指をかけられて、そのまま口付けられる。実に手馴れた様子に、雨宿りをするときはいつもこうなのだろうか、と考えてしまう秋山の歯列を、東郷の舌がやわやわとなぞる。
まるで職人のようだ、と秋山はぼんやりと思った。
……気まぐれに口付けられて、気まぐれに心をもてあそばれる。
こうして部下の失敗をカバーするような振る舞いをするのも、気まぐれの一種なのだろうとは思うけれど、そんな気遣いをしてくれる東郷が、秋山は好きだった。
(好きです、東郷長官。好きです……)
角度を変えて何度も口付けると、東郷が口の端だけで笑った気がした。
夕立は止まない。雨粒は激しくアスファルトに打ち付けられてけぶり、外界とこちらとを仕切る幕のよう。
ふと東郷の後ろに視線をやれば、磨き上げられた壁面に上官のたくましい背中が映り、真っ白な制服の布地の流れをさえぎるように、二本の傘が腰に差されているのが見えた。
……傘?
「東郷長官……」
「ん?」
「……いえ、なんでもありません」
気のせいだろう、そう思うことにしよう。秋山はぶるぶると頭を振って、東郷の首に腕を回す。
夕立は止まないし、傘は見当たらない。わかっててやってるんじゃないか、とは思えても、そんなことをしてまで口付けてくる上官が秋山は好きなのだ。

 

 

東秋へのお題:雨にかくれてキスしよう/(すき。すき。)/かがみの中に落とし物 ttp://shindanmaker.com/122300

落とし物というか忘れ物

傍に

酷くありきたりなことを言われたような気がしたので、秋山はその意味を理解するのに少しばかり長い時間を要した。
眼前に大海原へとつづく浅瀬を捉え、足元の堤防には青緑色をした波が打ち寄せては白い飛沫を上げる。海水浴にはあいにくの天候不順で湿った海風は、波打ち際特有の磯臭さを重苦しく運び、日頃調味料に慣れ親しむ秋山の鼻孔に未加工の塩の匂いを届けた。
見上げれば曇天、見下ろせば荒波。塩気でごわつく髪を押さえながら元上官を振り返れば、愛娘を抱えた東郷が、再び形の良い唇を開くところであった。

「一生、俺の隣にいてくれないか」 

性別の壁を前にして安易に勘違いできるほど秋山は世間知らずではないし、以前も東郷の老後の心配をしたときに同様の内容を匂わすような発言をされてはいたのだから、今回も東郷の冗談とも本気ともつかぬ戯れだと一笑に付すことも秋山には可能であった。
しかし士官学校時代には苦楽を共にし、此度の大戦では海軍長官の参謀として誰よりも間近にいた秋山が、夏休みの家族旅行と称して連れられた海辺で聞かされるには、あまりに多くの意味を含むのではないか。そう、秋山は考えた。考えて、期待せざるをえなかった。
気が付けば駆けだしていた。距離にして数歩、けれどずっと届かないと思っていた相手の元へ。女癖の悪さに胃と胸を痛め、無鉄砲な振る舞いに不安を抱える度に、秋山は東郷を呪った。どうして貴方はそうなのだと。どうして自分を裏切るような真似をするのだと。しかし東郷への恨み辛みは的はずれであるとも、聡い秋山は気付いている。東郷の振る舞いは今に始まったことではないし、自分の意に沿わぬ事に従う義務もない。東郷は東郷らしくあり、そんな東郷へ勝手に理想を押しつけたのは、自分ではないか。お門違いの恨めしさを秋山は自覚していた。けれども同時に、それを一人で抱えることにも疲れていたのだ。自分は右腕となるに足らないのか、と。
それが、雰囲気や情緒に重きを置く東郷が、ありきたりな言葉で、らしくもない状況下で、言ったのだ。
それだけで、秋山は東郷に認められた気がしたのだ。 

まろび出るように東郷の元に駆け寄った秋山は、酷く弱い力で東郷の両腕を掴んだきり、無言で頭を垂れている。
片腕で愛娘を抱き、もう片腕で秋山を抱き寄せた東郷もまた、何も言わない。
父親と秋山に挟まれた真希は、一度だけ大きく身じろぎして、秋山の肩口から広がる海を見た。

 

 

あなたは2時間以内に 5RTされたら 堤防で受が攻に縋っている東←秋を 描(書)きましょう。

http://shindanmaker.com/65527

 

 

東郷長官は秋山を犠牲にできるのかという妄想

東秋へのお題:あの頃に戻れたら/(もう会えないって、知ってるよ)/うつろいでゆく、 

http://shindanmaker.com/122300

というお題から「秋山を犠牲にしなければ自分と娘が助からないような状況で、東郷は秋山を犠牲にできるのか」ということを悶々と考えてる
ロンメル救出のときは東郷側に「秋山なら四方を囲まれても乗り切れる」という確信があったからこそ秋山を収容所の兵士たちの群に押し込んだと思うんだけど、もし窮地を乗り切るために秋山が犠牲にならなければならない状況に陥ったとしたら、東郷は秋山を敵軍に突っ込ませることが出来るのだろうか
多分海軍長官として状況を冷静に判断した上で、自分と秋山のどちらが犠牲にならなければならないのか考量して、最後の最後に私情で秋山を労って別れを告げるんじゃないだろうか
本音を言えばこんなところで秋山を失いたくないんだけど、自分は人である前に海軍長官なのだと
秋山を抱擁して、名残惜しそうに見えないよう厳しい顔で離すんだけど、その途端秋山が笑顔で敬礼するものだから、敬礼を返す手が震えてしまう
秋山も震えていて、どちらからともなく唇を一瞬触れ合わせて、お互い無言で背を向ける
そんな戦場東秋に股ぐらがいきり立つ
(最後で台無し)

東秋140

 

力のままに掻き抱かれて、秋山の身体は歓喜に打ち震えた。
声もなく肩口に顔を伏せる東郷は涙に暮れている。最愛の妻を失った上司の肩は細く、きっと秋山が一瞬の後に引き離して万感の思いを口づけに変えたとしても、貴方は悲しみに飲まれて抵抗しない。
嗚呼、あれ程望んだ人が、今はこんなにも近い。

東秋へのお題:抑えきれる程度の想いだったらよかった/(ようやく会える)/見せず聞かせず、最後に口を塞いでしまおう ttp://shindanmaker.com/122300

 

 

愛しい人に呼ばれた気がして振り向けば、貴方は娘を抱き上げたところだった。
娘を膝の間に立たせて滑り降りると、雲間から覗く太陽が、後を追うようにゲレンデを照らす。娘は七色の反射光に歓声を上げ、夢見るように父に寄り添った。
銀世界を先行く貴方のシュプールに、私のそれは交わらない。

東秋へのお題:虹色のシュプール/「ほら、おいで。」/どんなに想ったところで伝わらない、届かない ttp://shindanmaker.com/122300

 

 

夜のとばりは落ちて、部屋の照明も長官のしなやかな指によって落とされた。
その指はそっと髪を掻き分けて私のうなじに辿り着き、じきに私を素晴らしい夢現に連れて行くけれど、私はその優しさが明日のとばりの裾あたりで他の女性に与えられることを知っている。
時間よ止まれ。
願う端からよがあける……

東秋へのお題:とくべつなこと/(時間なんて、止まればいいのに)/夜のとばりは落ちて、 ttp://shindanmaker.com/122300

 

 

昼食を前にして合わせた手は、「秋山、お前の力が必要だ」と東郷先輩に引かれて競技場の日を浴びた。
聞けば昼休みに賭け試合をするらしい。
20人相手じゃ不利だから、と後輩を呼んでどうするのだろう。
「お前さんがいたら無敵だろう」
そうしてあの時の焼き豚定食は冷め、私は恋い焦がれ続けている。

東秋へのお題:どんなにかっこわるくても。/(たすけて、くるしい。きみがほしい)/きみがいること=無敵ってこと ttp://shindanmaker.com/122300

書いてから「これはねーわ」と思った。反省している。

 

 

孫の遊ぶ姿を妻と茶をすすりながら縁側で眺めるのが夢なんです、と言うと貴方はじじくさいと笑って、叶うといいなと言った。
軍人らしからぬ夢だったから。
なのに貴方の厚意を裏切って、私は日も高い内から艦内の自室で快楽を貪っている。
性を覚えたての子供みたいに。
他ならぬ貴方と。
ねえ東郷長官。

東秋へのお題:蹴ったのは夢だった/「わらってよ。」/中学生が笑うほどの欲望 ttp://shindanmaker.com/122300



ふと手に寂しさを覚えると、見透かしたように長官の両手が私の手を包んだ。振り向くと、長官が穏やかな笑顔で私を歓迎している。ここは私と東郷さんのちいさな箱庭。私は何を求めてもいいし、東郷さんに何をされてもいい。だから、愛して下さいと言うより早く、私は東郷さんに唇を塞がれる。男を愛する趣味はないと言っていたはずなのに、不思議なことだ。けれどどうしようもなく嬉しくて、背中に回した腕が離せない。
四肢に回された機械の管も、きっと離されない。

東秋へのお題:手をつないで、微笑んだら/「あいして、」/ちいさな箱庭のなかで ttp://shindanmaker.com/122300

 

 

夏の東秋

仕上げに項から結い目にかけて一撫ですると、
「ひゃう!」
と奇妙な声を上げて、秋山は体をすくませた。
「どうした秋山」
「どうしたもないでしょう! いきなり何をするんですか」
振り返る秋山の顔は苦渋に満ち、目にはありありと非難の色が浮かんでいた。しかし素知らぬ顔をして見つめ返してやれば髪をまとめたことで露わになった耳から頬にかけてほんのりと朱が差し、伏し目がちに視線を逸らせるので、こちらに他意のないものと思いこみ自分の憤りを恥じたのだろう、と東郷は納得した。
間違いを正してやるために、
「ひゃうっ」
もう一度撫でてやるが、今度は疑いととまどいの視線を寄越されるだけで、子犬の噛みつくような抗議をしてこない。
秋山は生真面目だ。

 

軍属として秋山と迎える何回目かの夏、既に勤務艦は冷房の完備されたものしか指定されなくなったが、休日に娘と繰り出す街であるとか日本と似た気候の侵攻星域であるとかで、夏のうだるような暑さは未だに暦の上での夏の到来と共に感じることができる。
であるから、夏だなあ、と感慨深くなると、次いで項に汗の滲む感覚が思い起こされ、真希のあせもの心配をし、真希の髪をつむじのあたりまで上げてやろう、ついでに秋山のも上げてやろう、と考えることになるのが初夏の東郷現海軍長官の思考過程であった。
かくして東郷自室に常のように夕食を作りに来た秋山を引き留め、まあ麦茶でも、と座らせたとしても、秋山は例年のごとくおとなしくその場に留まるのだが、それは今夜されなければ明日される、明日されなくても夏の終わりまで逃れられぬ、という一種の諦念からであって、決して東郷と親密な時間を過ごすことができるからという訳ではないのだろう、と東郷は思っていた。
去年までは。
「似合うよあーちゃん!」
「ありがとう、真希ちゃん」
「えへへ、お揃いだねっ」
目の前の鏡で前を向いたり後ろを向いたり、ポニーテールが歪んでないか、シュシュは綺麗にまとまっているか、真希は色々な角度から乙女のチェックを一通り終えて、秋山に走り寄る。
何度も鏡を見つめるのは、気に入らなければ直そうと思っているのではないらしい、と秋山に聞かされたのは、ほんの数日前だ。どうやら父渾身の作品を鑑賞しているらしい。父親として、娘がポニーテールを気に掛けるのは、気恥ずかしいやら嬉しいやら、複雑な気分である。
一方秋山は、東郷の目の前に座したまま、真希のポニーテール自慢に頷いたり笑いかけたり、良い聞き役に回っている。秋山が頭を傾ける度に、同色のゴムで結われた黒髪が揺れ、白い軍服の表面を微かな音を立てて流れる。
なんとも夏らしい音だと東郷は思ったが、真希も秋山もその音には気づかない。
高く髪を結ったふたりが、自室で話に花を咲かせる。それが東郷にとっての夏の風物詩であった。
「――長官、東郷長官」
「……ん?」
秋山の呼ぶ声で、我に返る。
何とはなしにふたりの様子を眺めていたはずが、辺りを見回すと真希の姿はなく、秋山も腰を浮かせたまま東郷に耳打ちする姿勢をとっていた。傍に置いた麦茶のグラスに大粒の露がまとわりついているあたり、どうやら思いの外時間が経っていたらしい。
「もうそろそろおいとまさせて頂こうと思います。明日も早いので……」
「あぁ、そうか。悪いな」
「いえ」
声をひそめて、暇を告げると秋山が言う。しかし、そう切り出して、そのまま動かない。
「秋山?」ふと秋山の顔を見ると、一瞬視線が交わって、すぐに手元のグラスに落とされる。そっと窺うように、秋山の黒い目が東郷を見つめ、逸らし、もう一度見つめたところで、ようやく東郷は秋山の目の奥に情欲の炎が燻るのを見た。
「東――」
秋山に名を呼ばれるより早くその腕を引き寄せれば、驚きに見開かれた目とぶつかった。眼鏡を押しつけない角度で秋山の薄い唇に口を寄せ、尖らせた舌先で緩く隙間をなぞれば、秋山の舌が温もりを求めるように口腔から東郷を招き出た。
うっとりと、待ち望んでいたかのように、秋山が東郷と舌を絡ませる。
「……ん」
そうしてものの十秒もせずに唇を離すと、開けた視界には秋山の戸惑う顔があった。
伏せた目の端が微かに垂れ、濡れた唇と相俟って物欲しげな様子であるのに、視線はひどく落ち着かない。さては欲しがるのを躊躇っているのか、と東郷が腰を浮かせれば、はっと何かに気づいた様子で立ち上がり、バインダーを抱える。
「失礼しますっ」
「あ、おい――」
「あーちゃん帰っちゃうのー?」
ばたばたとあわただしく入り口の向こうに消えるのを、盆に自作らしいデザートを載せて居間に戻ってきた真希と見つめる。
「もー、おとーさんまたあーちゃんにいじわるしたでしょー」
「そうかなあ……すまんな」
「もー」
あの時、白く綺麗な項にキスのひとつでも落としてやればよかっただろうか。
後悔と言うには満たされた感情を胸にともしながら、東郷は秋山の残したグラスの結露を見つめ続けた。

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