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ユーザー「mitsahne108」の検索結果は以下のとおりです。

お前がパパになるんだよ!

「ややこができたのじゃ」
馬鹿なことを言うものだと、晃牙は零の顔から視線を落として目を見張った。
薄いはずの腹が膨らんでいる。赤子ひとり入るには小さすぎるが、生命を宿すには十分な大きさだ。零の両手に大事そうに抱えられ、ベストの合わせ目から覗いている。
「わんこのややこじゃ」
俺様がパパか。多幸感あふれる零の笑顔を見てから二度見すると、なるほど愛おしさが込み上げる。
「……名前」
「うん?」
「名前、考えるか」
かっこいいのが良いなと呟いたら、零が笑って、大きなお腹がぽこんと蹴られた。「ややこは女の子かもしれんのう?」
晃牙は受け入れた。できたんなら仕方ない。この歳で学生結婚するとは思わなかったがママと子どもと3人で仲良くやれるだろう。未来のことも、自分はともかく零は早めに産休をとらせよう。ハロウィンまでには生まれるだろうか。子どもに見せる初めてのライブが零の心待ちのS1だなんて嬉しい誤算だ。こんなに元気にお腹を蹴るのだから、寒くなる前に生まれるかも…………にしてはなんだかお腹を蹴りすぎやしないか?
「あっこれ、予定日はまだじゃ、あっ、ああ、あー」
はたして零のシャツの裾から元気に生まれてきたのは前足の大きなコーギーだった。
「あああ……せっかく寝ておったのに……」
わらわらと部室を駆け回るコーギー2匹を回収すると、零は肩を落としてネタばらしした。親戚が飼い始めて1週間たらずで急な用事に家を空け、子守を一任されたらしい。
「リッチ〜は」
「『コーギーの飼い方よく知ってるでしょ?』って……」
なるほど月光色の毛並みなんかは晃牙の弟と言っても不思議でない。俺様は狼だ、と言い返すには幼い姿に心惹かれ、晃牙は1匹だけ抱かせてもらった。あたたかい。悪くない。
「ガキも悪かね〜けど、まだいいだろ」
新婚だし。
そうこぼして不覚をとるはずの唇は、子どもの真上で零の唇に塞がれた。

湯たんぽいぬ

「誰が吸血鬼ヤロ〜となんざ帰るかよ!」
と言ったのは10分前の大神晃牙だ。
今現在の大神晃牙は、襟足の寒々しい首にお気に入りの紫色のマフラーをぐるぐる巻いて、宝物のギターをしっかり背負い、
「奇遇じゃのう、おぬしも今から帰りかや?」
「……おう」
正門前で仁王立ちしている。
「別にテメ〜を待ってたんじゃね〜からな。たまたま用事があっただけだぜ」
「して、その用事は終わったのかえ?」
「……フン!」
すたすたと先を行く晃牙に、零は笑いを噛み殺した。
愛犬はすぐに止まって不機嫌顔でこちらを振り向く。こね〜のかよ、と言わんばかりの愛らしいジト目が冬の灯りできらきらして、そんなところまで犬らしい。
『まて』をさせたまま横並びに追いつくと、嬉しそうに鼻を鳴らして大股歩き。
「寒くなかったかえ」
「別に」ツンと上向けた鼻は赤い。
「テメ〜こそ風邪ひいてんじゃね〜ぞ。ライブ入ってんだからな」
「心配無用じゃ。我輩体調管理には人一倍厳しいからのう」
「……グラウンドで寝なくなってから言いやがれ」
見ておったのか、と聞けば気まずそうに目を逸らされた。
自慢の愛犬はとてもかしこい。
ふと、寒気がした。気のせいだろう。チェスターコートとマフラーを着込んだ零の身体は、北風すら抱けやしない。
……あるいは1匹のわんこなら、抱けるだろうが。
「くっつくんじゃね~よ、鬱陶しい」
「どうにも独り寝が堪えるようじゃ」
「あ?」
「なにやら寒気がするのう」
「……あったかい布団でしっかり寝やがれ」
「湯たんぽが必要じゃのう?」
この手みたいに、と17の手を握り返す。
湯たんぽいぬは顔まで熱したようだった。

メリークリスマスとか今そういうのいいから

「のうわんこ、何も良い事はないのじゃよ? お腹いっぱいだからお肉も奢れぬし、くたくただからおぬしの好きな演奏もお預けじゃ。スタフェスと打ち上げでクリスマスを満喫したおぬしと我輩はもはや家に帰って寝るばかり。残り半刻を同じ部屋で過ごすためだけに我輩を招くなぞ、まるで……まるで、」
そこから先は言わせなかった。俺様は『待ての出来ない駄犬』だから、告白も返事もすっ飛ばしてあんたの唇に噛み付いたんだ。嫌だった? ぜって〜嘘だろ。だってどこもかしこもフワフワのイチゴショートみたいに甘くて柔らかくて、あんたの舌は嘘みたいに蕩けてた。
なあ吸血鬼ヤロ〜、もっかいシたい。肉もセッションも今はいいから、焦がれたあんたと甘ったるいことして〜んだよ。ここならレオン以外見てね〜し、明日からは冬休みだし。明日は朝から晩まで肉もギターも吸血鬼ヤロ〜も全部ぜんぶ楽しんで、テメ〜の返事も聞くからよう?

 

※ ※ ※

 

(没文)

「のう、わんこ? 今おぬしが我輩を家に招待しても、何もイベントは起こらぬぞよ? お腹いっぱいだから肉も奢れぬし、くたくただからおぬしの好きなセッションも出来ぬ。本当に寝に帰るだけ、共に眠りに就いて日の出を待ち、共にクリスマスの朝を迎えるだけじゃ。それはまるで……まるで、」
そこから先は言わせなかった。告白も返事もすっ飛ばした俺様は、待ての出来ない駄犬だろう。だけど噛み付いた唇はとても甘くて、打ち上げのケーキに塗りたくったクリームを舐め取ったら今度は柔らかくて、飽きずに口の中までねぶり合ったコイツの返事は待つまでもなかった。
プレゼントを抱きかかえた俺様はその肩越しに夜道を見た。濃紺の世界に舞う雪があたりを白く染めてゆく。こんなにも美しい深夜だけれど、聖夜を祝う魔物というのもおかしいだろう。だから俺様は冒涜的なキスで呪ってやるのだ。ファッキンメリークリスマス。

コウモリ柄のエプロンに

肉の焼ける匂いで目が覚めた。カーテンから朝日の薄く透ける部屋、にそぐわぬ濃い匂いは、その続きの一口コンロのキッチンから漂っている。夜の疲れを引きずる足で向かうと、エプロン姿の吸血鬼ヤロ〜が朝っぱらからフライパン相手に苦戦していた。
「……はよ」
「もう少し寝ておれ」
踊り狂うように跳ねる油と焼肉のタレ。その高カロリーの海に漂う炭の塊。グラム500円のラベルと空パックの転がる中に、記憶の底に眠らせていた弁当箱。
「……それかあっちを見ておれ」
困ったような怒ったような顔の恋人が愛おしくて、気づけば体をかき抱いていた。
「……うまそう」
焼肉もあんたも。
こんなにも欲情しているのに、コウモリ柄のエプロンに染み付いた糊と油の匂いが、いつか嗅いだ母親の匂いを思い出させた。

「悪いおてては」(R18)

「悪いおてては……こうじゃ♡」
両手にするりと絡められた指に、晃牙は息を飲んだ。
いわゆる『恋人繋ぎ』というやつだ。自分達がするにはおかしい、けれど晃牙の青い心を鷲掴みにする繋ぎ方。
「――――」
夕暮れ時の部室にはふたり以外誰もいない。晃牙が吸血鬼ヤロ〜に吠え始めると、双子はいつもそそくさと姿を消す。
そう、喧嘩をふっかけていたはずだ。なのにいつの間にか妙な雰囲気になっている。逢う魔が時のせいだと零はよく言うけれど、間違いなく吸血鬼ヤロ〜の仕業だ。
「は、はなせよう!」
「なんじゃ生娘みたいに。キスもまぐわいもしておるじゃろう……?」
股間に血液が集まるのがわかった。怒りマラに加えて零の指の滑らかさ。この先を意識しないほうが難しい。
「がううっ」
振り払われまいと追い縋る両手はやはり零らしく、晃牙の手を愛おしそうに握っている。
振り払いたくない。だけど振り払わないとかなりマズイ。
違和感に揺れる腰まで、零の視線が落ちてゆき……
「……おや? なるほど、興奮しすぎて勃起しておったか」
「〜〜〜〜っ!」
こうなるからだ。
「真っ赤になってかわいいのう♪ 若くて青臭くて、恥ずかしいのう……♪」
「ぐううう……! わかっただろ、さっさと離せよ!」
「我輩から手を離すというのかや……?」
「ぐっ」
妙に寂しげに言うから、晃牙はまんまと大人しくなった。
すると嘘だったようにニッコリ笑いを浮かべられ、
「ふふん、それでよい♪ ーーあぁ、じゃがこのままでは鎮められんのう?」
「うぁ……っ!?」
あっさりしゃがんで、晃牙の股間にキスをひとつ。
「我輩が口でするしかあるまい……♡」
晃牙が呆然とする間に、零は器用にも口だけで前を寛げ、すっかり勃ち上がった性器を引きずり出した。

 

「おぉ……♡」
零は屹立をうっとり見上げた。
「相変わらず、おちんちんだけは狼みたいじゃのう……♡」
カリ高で竿の太い、雄々しい男根が零の唾液でぬらぬらしている。かわいい顔に似合わぬ凶悪なイチモツだ。
「……っ」
ピクピクしておる、と呟いた息が、腫れた亀頭をくすぐった。
今からこんなに張り詰めた雄をしゃぶるのだ。想像するだけでじゅわっと涎が込み上げる。
「っ、しやがるなら早くしろよ!」
「そう急かすでない。ゆっくり、ゆっくり、あ〜…………ぁむ♡」
「くぅ……っ!?」
「んんっ、んぢゅ、んく……♡」
血管の位置まで覚えるように、零は頰の内側を添わせて扱き始めた。
「っは、あ、ぁー……!」
すこし口を動かすだけで、晃牙のそこは一回り大きく張り詰める。
たっぷり溜めた唾液が亀頭を包んでめちゃくちゃに刺激するのだろう。わざと音を立てて吸い上げるから、それも耳の良い晃牙にはひどい責め苦になるはずだ。
……それにしたって早すぎるけれど。
「溜まっておるのかえ? んン、まあここのところ、はむっ、んぅ、『革命』でっ、んぢゅっ、んはっ、忙しかったからのう〜?」
「はっ、ぁぐっ、くぅぅっ!」
「暗躍しておると、んんぅ、んっ、我輩も相手してやれんしっ? んぁむっ」
「うぁ、ばっ、くそ、あぁーー」
「ーーわんこは『猪突猛進』なところもあるし、おちんちんも持ち主に似るんじゃろうか」
「ぐうう……っ」
最後だけわざと怒った顔で言うと、悔しそうな、泣きそうな表情で唸られる。
当然だ。挑発に乗って無理な勝負を引き受けたことへの叱責は、『革命』以来初めてのことだったから。
「……な〜んてのう? 怒っとらんよ」
「……っ」
と茶化しても、性器はへにゃりと萎えている。
「よし、よし……♡」
手ではなく、舌でれろぉっと裏筋をなぞる。
ちらりと上目遣いで見てみれば、切なげに揺れる瞳とぶつかった。根は優しい子らしく、自分の未熟さを意外と後悔しているのだろう。
伝えるつもりはないけれど、わんこのそういうところ、好きじゃよ。
……なんて本音は隠して、優しく囁く。
「失敗は成功の母と言うじゃろう。おぬしのアイドルとしての道は長い。ここ一番というところで成功すればよかろ?」
「……っさく」
ついでに、甘い汁も吸う。
「なに、心配せずともよい。我輩がたぁ〜んといじめ抜……鍛え上げて、一人前のおちんちんにしてやるぞい♡」
『Trickstar』のようにのう♡
そう呟くと、見せつけるように根元から先まで舌で舐め上げた。
ぱくりと咥えれば、あとは零の独壇場だ。


……と思われたが。
「んんっ、んっ」
「…………」
「んぷ、んン、んく」
「…………」
「……まだ出ぬのか?」
気まずそうな、怒ったような顔で尋ねられる。
「『鍛え』足りね~んだろ」
突き放して言えば、信じられないとでも言うように目を見開かれた。怜悧な目元が仕草ひとつで幼くなり、晃牙をじとりと見つめる。
「むう……我儘じゃのう? けれども我輩、そろそろ疲れてきたのじゃ……んん」
舐めて舐めて、一休み。
それでも射精しない。
……当然といえば当然だ。単調な刺激をずっと加えなければ『おちんちん』は射精できないのだ。吸血鬼ヤロ〜も同じオトコだろうに気づかないのだろうか。あるいは、自分がとてつもない魅力の持ち主だから、ひと舐めでイかせられるとでも思っていたのか。
「……くははっ♪」
ありえるかもしれない。
「……遅漏」
「あぁ?」
「遅漏。遅漏め」
むかつく、と言わんばかりの呟きが耳に届いた。
褒め言葉にしかならないそれに、晃牙の頬はますます緩んだが……
「あ"っ! ぐああ……!」
急に引きつらせて呻き始める。
「ほぉれ、『がぶがぶ』してやろう……♪」
零が自慢の吸血歯で陰茎を噛み始めたのだ。
「いっ、ぐああ、やめ、あ"ーっ!」
「嫌なら早うイくのじゃな♪ がぶがぶっ♪」
「無理っ! イけるかクソボケ〜っ!」
こうなればもう文字通り押し問答だ。両手で押し合い押し合い、相手の口と下半身をどうにかしようと奮闘する。
しゃがんだままの零の方が若干不利だ。両手を封じられているから、晃牙が後退しても、その細腰に抱きつくこともできない。しかしデリケートな部分を刺される晃牙は必死で逃げる。
勢い、後退りされる分を見越して顔を寄せるがーー
「ーーひゃ、」
「っうぁ!?」
勢い余って、亀頭が零の舌で擦れてしまう。
「うぇえ……むごいのじゃ……」
「っ……これだ」
「ん、う? んぁ……?」
居住まいを正した晃牙に、零が上目遣いで訝しむ。口の中で晃牙の雄が下を向いたのだ。代わりに根元の近くが零の歯列に引っかかり、上顎を持ち上げる。
「えあ、」
「口、すぼめろよ」
亀頭を舌に押しつけると、揃いの紅玉がとろりと蕩けた。
意外とMっ気があるのかもしれない。
「ひゃひふ……んっ、指図するでない」
「いいから……」
わざと耳元で熱っぽく囁く。零の細い指がびくりと強張り、一瞬の後にぎゅっと絡め直された。縋るような、もどかしがるような強さだ。
「……っ仕方ないのう」
そう言いながら、双眸は快楽への期待に濡れている。
「苦しかったら言えよ。すぐに止めるから」
「言う前に止めるという発想がおぬしにはないのかえ? ……ン」
ぐうの音も出ない程の正論を告げた口が、鬱血した亀頭を招き入れる。命令通り舌で鈴口を塞ぎ、唇を竿に添わせると、
「多分、これなら苦しませる前にイける」
晃牙はゆっくりと腰を動かし始めた。

 

 

「んぅ、ウ、」
「はぁっ……はっ……」
「うぁ、う、ぅん……っ」

ーーこんなの、違う。

『舌』で感じながら、零は愛犬を見上げた。
「はっ、はーっ、くそ……っ」
晃牙は夢中で腰を振っている。喉奥まで突き入れることなく、カリがようやく口に収まるくらいの浅いところを、舌の真ん中目掛けて延々と。
喘ぎ声を漏らしてはいない。けれど鈴口からは絶えず先走りがトロトロと溢れ出て零の喉まで流れ込んでいるから、フェラよりずっと感じているのだろう。悔しいが、金色の瞳もセックスのときみたいに零を求めてギラギラ輝いている。
「ウ、ぁえ、っ、んうぅっ」
ーー違うのは、自分。
突かれる度に全身をビクビクさせて感じてしまう、吸血鬼の方。
「ぐっ、んぅ、うあ……っ」
つるつるで柔らかい亀頭が、同じくらい柔らかい舌とキスして。
ぐに、にちゅ、と押し付けられると、そこから爪先まで電撃が走ったみたいに気持ち良くなる。
「……っ、く!」
「ウ、うぅー……っ!」
また、犯されてビリビリする。
いつも最奥でどんなことをされているかわかったからかもしれない。唇を後孔みたいに窄めると、カリが引っかかって晃牙を仰け反らせるのもいい。すぐに突かれて口を開いてしまうのは逆だけれど。
亀頭だけに吸い付く後ろに見立てたら、オナホールになった気分だ。
「わっ、わがはっ、おな、」
高貴なる吸血鬼の我輩が、自慰の器にーー
あまりにも不敬で甘美な妄想だ。
それに形を与えるように、強く突かれてた舌が縮こまりーー
「ーーぁ、ぉぐっ、ウ、うぇ、っ……!」
「だい、」
じょうぶか、と続けようとした晃牙が、零を見て生唾を飲んだ。
酷い顔をしているのだろう。涎を溢れさせて、涙まで滲ませて……陶然と、晃牙に舌を突き出して。
でも、それくらい欲しい。何もかも気にしないくらい、舌を犯してほしい。
「んっ、だい、大丈夫じゃ、だからはやく……っはやく挿れておくれぇ……っ」
晃牙が、欲しい。

「ウーッ、うぁ、ァっ」
「っ、は、ちくしょ、はぁっ」
「んン! んっ、ーーッ!」
声が裏返る。
あたまが熱い。脳が、神経が焼き切れる。
「ぁ、こぅ、んんぅ!」
ビリビリして、わんこを呼べなくなる。
「イくっ、イくぞっ、零っ」
「ぅんっ、はぁ、ア、ひへ、」
きて、晃牙。
もっと突いてーー
「ーーーーッ!!」
「あ、あぁあぁぁ……っ!」
爪先まで全部、晃牙を感じさせてーー

 

 

そして、3日後の軽音部室。
「『ごっくん』はNGじゃ」
股の間を見下ろすと、真剣な眼差しとかち合った。
「いくら咳き込んでも、ねばねばが取れた気がせんかった。我輩吸血鬼じゃけども精液には勝てん……」
聞き飽きた言葉を、子どもに言い聞かせるように懇々と投げかける。あの後えずきまくったお陰ですっかりトラウマらしい。絵画の女神のように美しい顔が顰められている。
「だいたい味もウェってなるし……んっ」
そのくせ……口でするのは止めない。
「んんっ、はぁ、なのに、んちゅ、癖になってっ、はふぅ、やめられん……っ♡」
晃牙の猛りをうっとり眺めては、根元まで咥えてねぶり上げる。
広げた舌に亀頭の先を押し付けてやると、零の体がビクビク跳ねた。
「はっあぁっ♡」

ーーあれから、毎日呼び出されている。
零の目的は舌コキだ。しかも、する側ではなくされる側。この前さんざん舌を使われたのが忘れられないらしい。
『我輩、オナホールになってしまったのじゃ……』とかしおらしく言った吸血鬼ヤロ〜こそ、晃牙をバイブか何かと勘違いしている。あのときの罪悪感を返してほしい。
「のうわんこ、我輩の舌をいじめておくれ? ココでたっぷりシゴいておくれ?」
「遅漏っつった癖に」
「わんこはイジワルじゃ」
「テメ〜に言われたかね〜よ!」
逃げようと腰を浮かせると、両腕でがっしり抱きつかれる。
『悪いおてて』はどっちだ。
「……っこの、クソ吸血鬼ヤロ〜!」
非難を込めて見つめると、トロトロの真紅の瞳にハートマークが浮かんでいる。……ように見えた。
「我輩をハマらせた責任、とってもらうぞい……♡」

『特訓』の成果は、晃牙ではなく零に出たようだった。

またたく夜

肌寒さに身を縮こます秋の夜更け。
大神家のベッドの森に生まれたままの姿で迷い込んで、息を潜めて横たわって1時間。
「わんこ~我輩お腹が空いたのじゃけども」
事後の気だるい空気を情緒なく破ったのは零だった。
「んだよ……」
「お・な・か・が空いたのじゃ」
真夜中のワガママに、寝ぼけ眼の晃牙が顔をしかめる。せっかく自室のベッドで恋人に腕枕をして(いつもは棺桶に迷い込むが、そこに腕枕のための空間はない)良い夢を見ていたのに、と据わった目が言っていた。
けれど吸血鬼の小さなお腹が空くのも仕方がないのだ、と零はきゅうきゅうのお腹を抱えて言い訳する。
「やはりハンバーガーはセットにすべきじゃった」
家に着くなり睦み合ったから、晩御飯は放課後の買い食いだけ。何度も体位を変えての『捜索』に、ハンバーガーと野菜ジュースでは役不足だ。
「……もう11時だろ、寝ろよ」
「まだ11時じゃ」
「っばか……あしたのあさな……」
寝たら空腹も忘れんだろ。
言外にそう言って、晃牙の手が零の細い腰を抱き込む。決して離さないとばかりに腕の力は強いのに、指先は駄々を捏ねる恋人にやさしく触れて、まるでガラス細工扱いだ。自分が晃牙にとってキラキラ輝く美術品なのだと言われたようで、夜闇を総べる魔王はまんざらでもない。
「むう……」
まんざらではないけれど、お腹は空いた。
「イジワルするならわんこを食べてしまうぞ~?」
「……っ」
言うが早いか晃牙の首筋にかぶりつく。しょっぱい。肉の味なんてせず、代わりに獲物の恋人が肌を震わせる。
どうじゃ、痛いじゃろう。
してやったりの顔で恋人を見ようとしたら、大きな手に黒髪をかき混ぜられた。
「こもりうた、うたってやんぞ……」
聞き分けのない子ども扱いか。
ふくれっ面をしてみると、長い前髪をそっと掬われる。
「あ……」
視界が開けて見えたものに、零はつい見入った。
幼さの残る輪郭に囲まれて、ひときわ目立つ2つの瞳。愛おしさに満ちたハシバミ色が、夜の帳の向こうで揺れている。
とろりと零れそうなそれは瞼に隠されたり現れたり……
固まる零にふと近づいて……
「おやすみ……」
「――っ、……おおう?」
とうとう今度こそ、瞼が瞳に覆い被さった。
「おっ、お~い」
「…………」
「わんこ~、朔間センパイじゃよ~?」
「…………」
「我輩達の時間じゃよ~?」
「…………くぅ」
すこやかな寝息。
「……オオカミなんて嘘じゃろう?」
そう唇で拗ねてみても、ついたため息は幸せ色をしていた。
「……ばかもの」
――おおきな手のひらで、そっと瞼を下ろしてくるのが悪かった。
眠りに落ちる直前の、晃牙の仕草を思い出す。そっと瞼を下ろして、おやすみのキス。いつも強請って強請ってようやく貰えるのに、こんなときだけさりげなく頬に落とすのだ。こどもにするみたいだ。だけど晃牙は零の最愛の恋人で、おかげで瞼も頬もまだまだ熱が引きそうにない。
……恋人。好きで、好きになられた相手。
「仕方ないのう……」
わんこの我儘をきいてやるかのう。
そう嘯いて、零はいつの間にか剥いだ布団を引き寄せた。……代わりに晃牙の足がはみ出た気がするが、自分の脚を絡めてやればいいだろう。
足指でなぞった晃牙の足の冷たさに、秋の深まりを感じる。
「明日は早起きして、とびきり美味しい朝食をつくるのじゃぞ? ミネストローネとスパニッシュオムレツと、生ハムサンドじゃぞ?」
せっかくだから襟足の寒々しい首にも抱き付いて、耳元に朝食の希望を囁く。すっかり寝こけた恋人は、「……くぅん」と寝言で返事して、やっぱりオオカミなんかじゃない。
「フルーツを切るくらいなら我輩も……指切ったら眩暈しちゃうから止められそうじゃな?」
……くぅ、くぅ。
「ククッ……はやく明日にならんかのう」
おやすみのキスの仕返しは、唇にした。ちょっとだけ長く、愛を込めて。零の頭の中にはとっくに幸せな朝食が出来上がっているから、そのお礼だ。
そして、瞼を下ろす前にもう一度だけ、恋人の顔を見つめる。……零の我儘も知らない、あどけない寝顔。

――ガラス細工みたいにキラキラしていているのは、おぬしに向けられる愛じゃろう?

目を閉じれば瞼の裏にガラスの欠片が瞬いて、子守歌みたいにキラキラ輝きつづけていた。

晃牙のグルメ

「ふふん、今日の晩メシはひと味違うぜ」
どんぶり茶碗に山盛りご飯を1杯分。
今夜の大神家のメインは鮭ふりかけ――秋の味覚を堪能できる逸品だ。
「ワン!」
大神レオンの夕食はドッグフードだ。
「お前のは後でな。……っと」
利き手に鮭ふりかけの袋を構え、主食のごはんをじっと見る。
つやつやの白ご飯から湯気が上がっている。炊き立てで、新米。そこに鮭ふりかけを散らすと、橙色の粒がほんのり湿って美しくかがやいた。
「……っ」
夕焼けの色。紅葉の色。何より、秋鮭の色だ。アクセントの白ごまも薄橙に染まっている。細かく切られた海苔でさえ。
実りの秋の色が瑞々しい白米の山に広がり、積もっている。
「……いただきますっ」
ふりかけが溶け切らないうちに、その山を箸でたっぷり掬って――口の中に入れる。
「~~~~っ」
悶絶するほかなかった。
アンサンブルだ。秋鮭の豊かな脂と新米の甘みが、口の中でアンサンブルしている。
新米の繊細な柔らかさが旬の濃い旨みをあまさず受け止めていた。咀嚼される前のつややかな米肌でも、柔らかく噛みしめられた後の米全体でも。受け止めて、舌と喉に鮭の身の逞しさを教える。
そして、匂い。焼き上がりの香ばしさは口に入れた瞬間そのままに、鼻の奥を駆け上がる鮭の匂い――そう、いっそ磯臭さすら感じさせる鮮やかで濃厚な香りが、秋の盛りを感じさせる。
鮭が五感に訴えかけ、指先まで旬で満たしてゆく。
「……やっぱうめ~なぁ」
こぼれた吐息にすら鮭を感じる。
もう一口。
「~~~~っ」
悶絶。

「…………」
それを、じっと見ている吸血鬼。
「……なんだよ」
孤独のグルメを見つめられた晃牙は、羞恥に頬を染める。
零の前にも同じ茶碗が置いてあった。晃牙がわざわざ昔買ったところでもう1膳探したのだ。
そうやってペアにした茶碗には、少なくよそったご飯。
手をつけない。
「ふふっ。た~んとお食べ?」
「当たり前――」
手を付けないのは、
「今夜も子作りがんばってもらうからのう♪」
食後の運動に備えるためだった。
「――ッ!? ゴホッ、げほ、げほっ」
「クックックッ、ややこはやっぱり吸血鬼かのう?」
咳き込む晃牙を尻目に、零は未来の息子に想いを馳せる。「吸血鬼は黒髪赤目と相場が決まっておるし、吸血鬼なら我輩似かのう? しかしわんこそっくりの赤ちゃんオオカミも悪くはないのう。ふたりのややこじゃから、かっこよさ2割増しじゃろうて。……おやレオン、なんじゃ? ふむ、おぬしみたいな男前なわんこも良いと。ふふっ、考えておこうかのう」
「げほげほっ。このっ、てめ~っ!」
恋人の気管支の危機に目もくれないどころかレオンの前足を握って戯れるとは何事か。
……そう非難しようとしたのに、ふと紅い目と合う。
「わんこ」
「……っ」
妙に真剣な表情が――蕩ける。
「たっぷり……愛しておくれ?」
「うが~~!」


こうしてひと味違う夜が更けていくのだった……。

 

 

 

 

「ご馳走様じゃ♪」
「……ご馳走様でした……」
「さてわんこ、共に眠れない夜に溺れようぞ……?」

 

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