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湯たんぽいぬ

「誰が吸血鬼ヤロ〜となんざ帰るかよ!」
と言ったのは10分前の大神晃牙だ。
今現在の大神晃牙は、襟足の寒々しい首にお気に入りの紫色のマフラーをぐるぐる巻いて、宝物のギターをしっかり背負い、
「奇遇じゃのう、おぬしも今から帰りかや?」
「……おう」
正門前で仁王立ちしている。
「別にテメ〜を待ってたんじゃね〜からな。たまたま用事があっただけだぜ」
「して、その用事は終わったのかえ?」
「……フン!」
すたすたと先を行く晃牙に、零は笑いを噛み殺した。
愛犬はすぐに止まって不機嫌顔でこちらを振り向く。こね〜のかよ、と言わんばかりの愛らしいジト目が冬の灯りできらきらして、そんなところまで犬らしい。
『まて』をさせたまま横並びに追いつくと、嬉しそうに鼻を鳴らして大股歩き。
「寒くなかったかえ」
「別に」ツンと上向けた鼻は赤い。
「テメ〜こそ風邪ひいてんじゃね〜ぞ。ライブ入ってんだからな」
「心配無用じゃ。我輩体調管理には人一倍厳しいからのう」
「……グラウンドで寝なくなってから言いやがれ」
見ておったのか、と聞けば気まずそうに目を逸らされた。
自慢の愛犬はとてもかしこい。
ふと、寒気がした。気のせいだろう。チェスターコートとマフラーを着込んだ零の身体は、北風すら抱けやしない。
……あるいは1匹のわんこなら、抱けるだろうが。
「くっつくんじゃね~よ、鬱陶しい」
「どうにも独り寝が堪えるようじゃ」
「あ?」
「なにやら寒気がするのう」
「……あったかい布団でしっかり寝やがれ」
「湯たんぽが必要じゃのう?」
この手みたいに、と17の手を握り返す。
湯たんぽいぬは顔まで熱したようだった。

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