パフェ
真希ちゃんと喫茶店で上司の帰りを待つこと30分。
頼まれた2つのパフェは遅れたことを詫びる様に私と向かいの少女の前に現れ、人伝いに注文した主はまだ来ない。
とけちゃうから食べようよ、と笑う面影は大人びていたけれど、きっとどっさり乗ったホイップクリームも甘酸っぱい苺シャーベットも、さくさくのチョコがけフレークだっておいしくないに違いない。
現にパフェは減るより早く溶けていく。溶けたアイスはチョコレートのソースと混じり、容器の端から涙のように垂れた。
行儀が悪いのを知っていて、真希ちゃんの指は控えめに甘い涙を掬って舌に運ばれる。それでも父親は来ない。タイミングよくここに現れて自分をしかってくれやしないかと、祈るような気持ちでふざけたのに。
だから私は叱るかわりに彼女の顔のクリームをふき取るけれど、それだって本当は誰でもない父親にしてもらいたいのだろう。
来てくれればいいのに。
そう思いながら、パフェスプーンでフルーツをすくって食べる真希ちゃんの唇をぬぐおうとして……私の手ごと、紙ナプキンが止められた。
夕暮れ時にしては閑散とした禁煙席に、長い影がひとつ、ふたつ、そして……みっつ。
頼まれた1つのジュースと2つのコーヒー、それにサンドイッチは歓談する私達の前に現れ、注文した父親は私の手付かずのパフェを茶化し、愛娘の指先を拭っている。
文句のひとつでも言ってやろうとあんなに待ち構えていたのに、今わたしはただ父子水入らずの食事を隣で眺めている。
かまわない。それでいい。多くは望まない。
パフェを共に食す相手も悪戯をとがめる相手も、指先を拭う相手も、今はまだ、眺めるだけでいい。