大団円に向かう
ドリンクバー三往復まで、という縛りは正しかったのだろうか。
一向に減らないダリウスのメロンソーダを見つめながら、ウィルフレドはグラスの底に残ったコーラをストローで啜った。片や二杯目おわり、片や最初のドリンクを持て余していて、周回遅れのダリウスはそれでもソーダに口を付けない。手持ち無沙汰なのか、たまに氷とソーダをかき混ぜる他は、かれこれ30分間なにも語らず何もなさなかったのだ。
恋愛相談なのに。
恋愛相談。ウィルフレドがその言葉を舌に乗せると、ダリウスの肩が小さく震えた。彼にその名目でファミレスまで連れ出されたとき、ウィルフレドは相手を十分に想定することができた。正義バカで朴念仁のアホーネストと心の中で呼んでいる、まさにその彼である。
アーネストに対する躊躇いを含んだ態度や愁いを帯びた眼差しから、ダリウスの気持ちを察することは容易であったし、恐らくこのバカ二人以外の皆がその懸想を知っているだろう。それでもこの片割れはこちらが何も知らないものと信じて切り出し方に迷うし、そもそもの相談の是非すら決められずにいる。
しかしこちらはすべて知っているのだ。同じ軽戦士であり貧困の出でもある自分にシンパシーを感じているのであろうダリウスが、アーネストへの想いに悩んでいることも、悩んで悩んで、身分違いだとか唯一無二の親友たる彼への裏切りだとか色々な理由をつけて片恋を終わらせようとしていることも、……そして、思い人たるアーネストもまた、親友からの信頼と親友への恋心とで板挟みになって悩んでいることも、よくよく知っている。
……と、そこまで思いを巡らせて、ウィルフレドは脱力した。
(……なんだ、バカみたいだ)
答えはもう出ているじゃないか。ダリウスはアーネストが好きで、アーネストもダリウスが好き。ならば遅かれ早かれ(鈍い彼らがそんなに早くくっつくとは思えないが)ふたりはお互いの想いに気づくか告白大会を経るかして、無事友達以上恋人未満の関係に終止符を打つだろう。ウィルフレド達外野ができることと言えば、ゴールへとそれとなく誘導することくらいである。
あるいは、ふたりの惚気にも似た相談事を、話半分に聞き流すか。
じゅ、と思い切りストローを吸えば、はじかれたようにダリウスが顔を上げた。高圧的な態度を予期した怯えが、彼のきれいな瞳に滲んでいる。それをウィルフレドは曖昧に笑って交わし、「もう一杯とってくるだけだから」切り出し方を考えておいてくれ、と言外に匂わせつつドリンクバーに向かう。やだやだ、結末のわかる物語なんかつまらない。それも身内の恋愛事なんて、惚気以外の何物でもないじゃないか。そうは思いつつも、ウィルフレドはドリンクバーでこさえた清涼飲料水のちゃんぽんをグラスの縁まで注いでみる。結局好きなのだ。大団円に向かうお話は、過去の自分とアイツを見ているようだから。