真夏色でぃれいっ☆
晃牙くんお誕生日おめでとう!の2016年設定
「大神晃牙くんっ、お誕生日おめでとうございます☆」
☆ ☆ ☆
「誕生日おめでとう、晃牙♪」
「何回目だよそれ……」
いってきますのキスに続けたお祝いに、晃牙はわざとらしくため息をついた。
「そんなにめでたかね~だろ、誕生日なんざ」
そっぽを向いて照れ隠しのポーズ。
爽やかな空気の夏の朝、学校に行く晃牙と恋人を見送る零を冷やかすように外の鳥がさえずっている。もう少し遅く支度していたら外は熱風とセミの大合唱だろう。
鞄と一緒に持った団扇で仰ぎながら、晃牙が続ける。
「単に俺様が生まれた日ってだけだし」
「我輩の誕生日ならどうじゃ?」
「そりゃ盛大に……ってちげ~だろ!」
「盛大に祝ってくれるなんて、わんこは飼い主想いじゃのう~♪」
「わんこって言うな俺様はオオカミだ! しかも飼い主じゃね~しカレシだし」
「顔が赤いぞい?」
「テメ~もな。ふん!」
もう一度そっぽを向いた恋人に、今度こそ零は笑みをこぼした。まったくかわいい恋人だ。
零は靴箱の上の時計を確認した。ふたりして玄関にたどり着いてから10分。そろそろ遅刻しそうだが、晃牙は足の裏から根を生やしたように動かない。
少しでも長く相手と過ごしたいのは零も同じ。高校3年生で2人ユニットのリーダーを務める晃牙と、新進気鋭の吸血鬼アイドルの零。いつもは活動時間が違うふたりなのに、今日――7月18日は零だけ丸一日もオフなのだ。それがわかっているから零も靴箱に寄りかかって話を引き延ばしていたが、ここは年上の恋人としていさめるところだろう。
「では、帰ってきたらお祝いするから、もう行っておいで」
「…………」
「あと5分で朝礼じゃろ」
「……ダッシュしたら間に合う」
「校門ダッシュとか後輩に示しがつかんじゃろ?」
「うっせ~な、つかなくてい~し」
「晃牙が舐められたら我輩悲しい」
「悲しんどけよ」
「……し、UNDEADメンバーの面汚しだな」
「ぐっ」
「いってらっしゃい」
しぶしぶドアに手を掛けた晃牙の背中に零が笑顔で声をかけると、斎宮宗みたいな舌打ちが返された。
「晩飯行く前に一度帰ってくるからよ」
「うむ。待っておるよ」
「それと……」
ドアノブを捻る前にもう一度、と柔らかい感触が零の唇に伝わる。
「……いってきます」
目を瞬かせた零に照れくさそうな顔を向けて、晃牙は颯爽とドアの向こうへ消えていった。
☆ ☆ ☆
晃牙を見送ると、零はいつも通りの家事に取り掛かった。
いつも通りといっても食器洗い機を回して掃除機をかけるだけだ。昨日の汚れ物は夜中に洗って朝食の前にふたりで干した。『新婚さんみたいじゃな♪』『ほぼ新婚だろ』とかなんとかイチャイチャしながら、そのときも嬉しくなって口付けた後おめでとうと言ったのに、零は晃牙が仕事に行ってしまうと思うとものの30分も経たずにお祝いし直したのだった。ふたりともオフの日だったら、1日で30回以上も晃牙の誕生を祝うことになる。
「けれどまだまだ祝い足りないのじゃ……」
はあ、と零は肩を落として食卓に突っ伏した。
プレゼントも用意したしおめでとうも言いすぎてるし、ディナーは晃牙お気に入りの鉄板焼屋に予約を入れた。コースランクは誕生日ケーキを買わない分1つ高めだ。寝る前に求められることを考えて、ローションとゴムの在庫も補充してある。
なのに何だか物足りない。
やはり……パーティーグッズを『あまぞん』で買うべきだっただろうか?
「そうじゃ、クラッカーあたりはあったはずじゃな。渉君がすごいのくれおったし。すごいの……なんか家が爆発するとかいうの……じゃったか?」
首をひねりつつ廊下に出る。向かって右手が衣装部屋、使わなさそうな物は引越しのときにその部屋の奥の方にしまった覚えがある。そして衣装部屋はあんまり掃除しない。お互いがそこは相手の管轄だと思い込んで掃除をサボるからだ(「似た魂はここまで育ってるんですね」とはこの前招いたプロデューサーの談)。
「まだ処分してないはずなんじゃけども……なかったのう~?」
黒とか紺とか暗色ばかりの服の群れをかき分け、たまにそれっぽい箱を見つけて中を覗いてみるが、くだんのキケンすぎるクラッカーは見当たらない。
そもそもそんなに危ないものをお祝いに使うのかと躊躇わなくもない零だったが、まあホントに爆発したらそのときじゃろ、いざとなったら実家で同棲すればいいし、とのん気に考えている。
「う~む、うむ、うむむ……? ……うぬぬぬ……」
が、見つからない。
そうこうするうちにお腹が空いた。お昼時だ。居間まで戻って買い置きの焼きそばパンとスポーツドリンクを口に詰め込み、部屋荒らしもといクラッカー探しを再開する。クーラーは居間の扉を開け放してガンガン効かせているから、零を阻むのは埃とよくわからない箱の山だけになった。晃牙がよくわからない物ばかり買うから……とため息をつく零は、その晃牙も朔間先輩が覚えたてのネット通販で色々買うからと呆れていることを知りもしない。
取っ替え引っ替え、開けてはひっくり返しの繰り返し。たまに出てきたアルバムを眺めたり。
×時間はすぐに過ぎて、ようやく、ようやく琴線に触れるものが見つかった。
「う~む…………お、おぉっ!?」
3年生と書かれた箱の底のよく見知った紫色に、零は歓声を上げた。
「こ、これはデッドマンズ時代のではないか……!」
同じ箱から全部取り出して床に広げてみる。
紫のストライプシャツに同柄のスラックス、UNDEAD衣装によく似たジャケットと帽子と、ハートのバックルがかわいい白ベルト。2年生になってから何度も腕を通し、踊り狂っては体じゅうの汗を吸わせた思い出深い衣装だ。
3年生のときも返礼祭で着て晃牙を驚かせた。あのときの晃牙といったら見ものだった。普段あんなに悪態をついて、「吸血鬼ヤロ~なんざ朔間先輩じゃね~!」みたいな態度だったのに、顔を輝かせて熱い視線を送ってきたのだ。よっぽど『デッドマンズの朔間先輩』と再会できたのが嬉しかったのだろう……。
そこでふと、頭の中に浮かぶ。
――憧れの先輩時代の零からも祝われるのはどうだろう?
「これじゃ!」
零はすばらしい思いつきに飛び上がって喜んだ。
さっそく着替えてみる。もちろん埃っぽいからシャワーを浴びて、全身磨き上げるように洗った爪先をズボンにそっと入れる。
……太ももで詰まった。
「ふ、太ってないぞ! 返礼祭で洗ったから縮んだのじゃ!」
太ももとお尻をぎゅうぎゅう押し込む。押し込む。飛び跳ねて押し込む。無事にジッパーが上がりきったので、零はほっとしつつ「気のせいだったようじゃ」とひとりごちた。まるで格好のつかない勝利宣言だ。
幸いシャツとジャケットは昔と変わらぬ着心地だった。居間の姿見の前でくるっと回れば、どことなくお尻がムチムチしている気はするが、それでも俗世のあれこれには興味がないと言い切った頃の朔間零が立っている。
「あ~、あ~……俺様は夜闇を統べる魔王だ。……こうだったか?」
もうちょっと気怠そうだったかのう? 年中低血圧みたいな感じじゃったしのう?
鏡に向かってポーズを取っては首をひねり、もっと雰囲気を出そうと思いつく。アクセサリーもしてマニキュアだって塗って、鏡の向こうに1年坊主の大神晃牙がいると思って踊ってみれば、嬉し恥ずかしで口の端がむずむずした。このまま出迎えたら俺様笑っちゃうんじゃね~か?
ああでもないこうでもないと試行錯誤するうちに、
ピンポンピンポ~ン!
と 、インターホンが鳴る。
「あっ、晃牙! 晃牙~、おかえり~♪」
「ただいま…………なぁ!?」
やっぱり笑ったまま駆け寄ってドアを開けると、散歩から帰ったばかりのコーギーみたいな顔だった晃牙が一変、大口開けて固まった。
「どうだ? 朔間零様の復活だぜ!」
呆然としたままの晃牙の目の前で、腕を組んで仁王立ちする。と、こういうキャラでもなかったと気付いて斜に構えるような立ち方に変えた。やはり雰囲気は重要だろう。
「俺様に会いたかっただろ? 埃まみれの老体に鞭打って来てやったぜ」
「…………」
「うわっ!?」
両肩を勢いよく掴まれた。
「なあ朔間先輩、いや零さん……昔に戻ろうとしなくても、俺はあんたが大好きなんだ」
「おう……?」
「俺はデッドマンズ以前のあんたに憧れてるけどよ、UNDEADになってからのあんたも同じ朔間零だってわかってるし、朔間零の歌も踊りも外見も年々凄みを増してることに畏敬の念すら抱いてる。まあ、吸血鬼ヤロ~呼ばわりしてた頃の俺の態度は悪かったけど……あんたは今も昔も変わらず俺の憧れなんだ。その気持ちに偏りはない」
「お、おう……」
突然のシリアスな告白に、零は頬を赤らめる隙もなく頷いた。告白するには思いつめた目と声音をしている。
昔がどうとか、なんか変に真面目なことを考えさせてしまったらしい。そんな深い意味はないのに、晃牙は根が真面目で優しいから。
う~ん変なことになった、困った。どうしようか考えを巡らせながら、いっしょに視線も彷徨わせると、晃牙の股間が目に留まった。緩くだが、夏服の上からもわかるほど勃ち上がっている。零の視線に気付いた晃牙も、頬を染めて視線を逸らした。
「……その割には反応してんじゃね~か」
「これはっ、……これは、しゃ~ね~だろ。あんたの昔の動画で、何百回も抜いてんだから」
開き直った言い訳の方が股間よりよっぽど恥ずかしい。
そうか、何百回も俺様の動画で……。
でもそれなら、この格好の自分とするのは憧れのシチュエーションなんじゃなかろうか?
「クックックッ……やっぱ俺様天才じゃね~か……」
「朔間先輩……?」
「晃牙」
「お、おうっ!」
「ベッド行こうぜ……♪」
妖しく笑う『朔間先輩』に、晃牙は真っ赤な顔で頷いた。
☆ ☆ ☆
「なぁ、どこが好き? 俺様のどこでヌいたんだ?」
息継ぎを忘れるようなキスの合間にそう問うと、晃牙の気持ちよさそうに伏せた目が急に泳ぎ出した。
「蒸し返すなよ。別にいいだろどこでも」
「よくね~から聞いてんだろ! なぁ?」
「ぐあっ」
零が晃牙の太股の上で体を揺らす。あぐらをかいた晃牙の上に向かい合うように座っているので、跳ねるたびに晃牙の股間にダメージ3。
「なぁ、なぁ~?」
「ぐっ、うぁっ!」
「晃牙ぁ~」
「わかってやってんだろ! ……ったくよう」
ため息をついた晃牙は、答える代わりに零の手を取った。
「ん?」
動きを止めた零に笑いかけると、指の付け根から爪の先まで、ゆっくり、愛しさを込めて撫でる。
「最初にイイなって思ったのは、あんたのソロライブでさ。俺、ジャズとか全然好きじゃなかったし、ジャズダンスなんてナヨナヨしてて女みて~って馬鹿にしてたのに、あんたの踊りを見た瞬間、全身ぶわ~っと震えたんだ。
ステージの端から端まで狂ったみたいに踊ってんのに、爪先まで、魂がこもってるみたいに動かしてて……動かしてんじゃなくて生きてるんだ、グルーヴそのものなんだ、って鳥肌たって。なんかもう、すげ~かっこよかった」
熱烈な告白とは裏腹に手つきは穏やかだ。関節を優しく愛撫した指の腹が、夢見るように爪の付け根に伸びる。エナメルで黒々とした爪が撫でられると、あの日照明が当たってそうなったように、ツヤツヤに輝く。
急ごしらえの『朔間先輩』像が、ひとりの熱意で全身に魂を吹き込まれていくのだ。
想いを込めた手は、手の甲から腕を伝って肩を撫でる。
「圧倒的な存在感の割に、肩は華奢でさ。腕も足も長いのに。外国の本に出てくる妖精って、あんたみたいなヤツだと思った」
そして、浮き出た鎖骨、薄い胸、
「こんなに薄い胸の奥に、あんたの命が詰まってんのか、とか。吸血鬼って杭で心臓を打たれたら死んじまうんだろ? あんたすぐにジャケット脱ぐし、命さらけ出して踊ってんのがゾクゾクした」
肋骨のいちばん下を順になぞって脇腹の、肉の付きだした肌に手の平で触れる。
「けど、めちゃくちゃ抜いたのは腰かもな。セックスアピールっつ~か、この細い腰を掴んでガツガツやりたくなる。……何してんだ?」
「……っ恥ずかしいこと言うな! バカ!」
わんこの癖に!と自分の肩に顔を伏せて罵る零に、晃牙はわかってなさそうに「犬じゃね~よ」と言う。
「あと、『死人に口無し』っつってさ、インストで踊ったことあったろ。デッドマンズだから死刑囚(デッドマン)モチーフで、首に縄とか巻いて。その縄を掻きむしる手つきとか、呼吸したくて喘ぐ唇とか胸とか、すっげ~エロくて、ステージ下りたらトイレにダッシュして抜いた」
「……あれ、そういうことだったのか」
顔を上げた零が、複雑そうな心境を面に出す。
「朔間先輩、トイレから出たところで『ステージで漏らすんじゃね~ぞ』って笑ってたもんな。バレたかと思ってめちゃくちゃ焦った」
「俺様は今焦ってるよ……」
そんな昔から俺様のこと……、と言いたげな視線を受けて、晃牙は慌てて手を振った。
「いや別に、昔は純粋な憧れだったから! なのに勃ったから焦ったんだよ! ……っつ~か、あんたも興奮してんじゃね~か。話聞いてただけなのに」
「わり~かよ?」
「別に!」
ニカッと、真夏の太陽みたいな笑い顔。零もつられて笑ってから、ふたりとも妙に真面目な顔になり、お互いに性急な手つきで相手の服を脱がし始める。
「ん、なぁ、準備……してるからよ、そのまましよ~ぜ?」
「準備って……」
言葉を続けようとして、晃牙はそのまま何も言えなくなった。
晃牙に背を向けて四つん這いになった零が、片手で尻たぶの割れ目を広げてみせたからだ。
肉付きの良くなった尻の秘奥に、熟れた孔が息づいている。風呂場で散々嬲られて、トロトロに蕩けたそこが。
晃牙の熱い視線を想像すると、零の腰はひとりでに揺れた。男を誘うように尻を振るなんて『朔間先輩』らしくないが、それがきっかけとなったようで、
「ほら……なぁ、晃牙、っあ、あーーーっ!?」
晃牙のペニスでひと思いに貫かれる。
「あっ、はぁっ、奥きたぁ……っ」
「……ッ!」
待ち焦がれた刺激を得た零は喉を反らして悦んだ。
内壁が晃牙のものに吸い付いて離そうとしないのを感じる。奥へ奥へと咥え込もうとする、淫らな動きだ。抜かれそうになると縋りつき、押し込まれれば亀頭も肉竿もかまわずしゃぶりつく。貪欲な反応は晃牙を求める自分そのもので、零は羞恥に肌を震わせた。
零の肉筒は賢く、たった数度のまぐわいで晃牙の形を覚えきってしまった。初めての夜はあんなに苦しんだのに、今や晃牙のペニスにぴたりと寄り添い、お互いの性感を高め合えるよう熱心に扱いてみせる。いっそ献身的な動きのおかげで晃牙に毎夜求められるのだと思うと、自分の名器に誇りすら感じる。 今もまた、晃牙が零の背後で息を詰めた。自分で感じてくれているのだ。切なくなって体の力が抜けると、その隙に晃牙のペニスが抜かれてしまう。
「あっ……」
ちゅぼっ、と卑猥な音を立てて、亀頭が窄まりを通り抜けた。途端にお尻に空虚さを感じる。
「こ、晃牙ぁ……あぐぅっ!?」
零の不安は一瞬だった。すぐにペニスは勢いをつけてブチ込まれ、零の脳髄が否応なくシェイクされた。
「あっ、イ、あぁっ!? あぅっ」
亀頭が腸壁を押し上げるたびに、熱烈にキスされたそこが疼いている。まるで晃牙に欲しい欲しいとねだられているようだ。朔間先輩の奥が欲しい、朔間先輩の全部を俺のモノにしたい……。自分に憧れ慕ってくる後輩の、愛しくも不遜な欲望に下腹部が甘く痺れるのだ。
晃牙、俺も欲しいよ、お前の全部をこの身に浴びたい。体もお前に抱かれるために念入りに洗って、求められたくてウズウズしてたんだ。だってお前の憧れの『先輩』になったら、いつもより激しく食ってくれる気がしたから……。
なのに……。
「……いやだ。やだっ」
「朔間先輩?」
零は晃牙の手から逃れようと腰を勢いよく捻った。
いざ性急に求められると、寂しくなる自分がいたのだ。『本当の朔間零』が置いてきぼりにされたように感じてしまうのだ。矛盾する自分の心に驚きながら、それでも悲しい気持ちが強くなるのを止められない。
自分は晃牙の憧れの人じゃない。この体は自分のものなのに、自分じゃない『朔間先輩』がこんなにも愛されて求められているなんて……!
「やっ、やだっ。やめろっ! 晃牙っ! あっあぁっ!?」
逃げ腰を掴まれて、張り詰めた剛直で内壁を抉られる。
気持ち良すぎて痙攣する零の耳を噛みながら、晃牙は切羽詰まった声で吼えた。
「やめるワケね~だろ……ッ」
「ひぐっ!? あっあ、このっ、言うこときけよぉ……!」
目の前がチカチカする。爪先はとっくにしびれて感覚がない。まるで体全体が性感帯で、腸壁で感じた快楽を受け入れるためだけのラブドールみたいだ。ラブドールのお腹の中で、ローションと晃牙のカウパーがネチャネチャ混じり合っている。愛液のように白く泡立って、晃牙のペニスで壁に塗り込められているに違いない。晃牙、晃牙の精液が欲しい、孕ませてほしい。抱くなと言ったばかりなのに、こんなにもはしたなくねだっている。アナルの奥まで晃牙の熱を感じたい。柔らかい亀頭の先で、腸壁の粘膜をいつまでも愛撫してほしい……。
「アっ、いくっ、俺いっちゃうっああぁ、ああぁあぁーーっ!」
望まぬ絶頂はすぐに訪れた。
「ぅ、あ、せんぱい……っ…………先輩?」
肌を波打たせる零の背後で息を詰める気配がする。零のドライオーガズムにつられてイきそうになったのを、ギリギリのところで堪えたのだろう。
荒い呼吸が耳元まで近づいて、気づけば晃牙が心配そうな顔で覗き込んできた。
おっかなびっくりの手つきで頬を拭われる。
「泣くほどイヤだったか……?」
晃牙の細い指の背が涙でキラキラしている。
零は慌てて晃牙の首に腕を回し、体全体で抱きついた。
「ちげ~よ、気持ち良すぎて泣いてんだよ……。それだけだよ。だから……もっかいシよ~ぜ」
今度は前戯からじっくり始まった。
ストライプのシャツの裾に両手を忍び込まれて、胸の飾りを摘まれる。後ろを突かれるよりずっと優しい、ほの甘い刺激がもどかしい。おもわず腰をくねらせれば、あやすように頬に口付けられた。
ぷっくり立ち上がった乳首を舌で愛撫され、音を立てて吸われたので、「お乳が欲しいのか? 出ね~からな」とからかう。
「じゃ、出る方から貰うかな」
「あ! ぁ、ぅああ……っ!」
ニヤリ、意地悪な笑みのままフェラチオされて、零の口から甘い悲鳴が上がった。
じゅっじゅっと、乳吸いより下品な水音に耳を侵される。「やめっ、あっあ、あうぅっ」零は晃牙の頭をぎゅっと太ももで挟み込んだ。
「ひもひい~か?」
「んっ、ぅんっ、んーっ!」
「んじゅっ……ククッ、マジで気持ち良すぎて涙出てきたろ。さっきまで悲しそうだったもんな。……ごめんな、零さん」
太ももを撫でていた手が、零の頬に伸びる。今度は目尻を優しく拭われたので、零は晃牙の指先にそっと唇を寄せた。
内側に押し入るときも、晃牙は零にねだられるままに唇を塞いだ。
お互いの体温で蕩けた舌を絡めながら、これではどちらが誕生日か分からないと零は思う。
「んん、零さん、キツくね~か……?」
晃牙は……優しい晃牙は、気づいていないんだろうな。さっきから朔間先輩の顔しか見ないようにしてるとか、名前で呼んでくれてるとか。
デッドマンズのシャツはたくし上げられて皺くちゃで、ブレスレットもどこかに行ってしまった。かろうじて足首に引っかかったスラックスと、ベルトのバックルは晃牙の背中にぶつかっては宙を舞うのだろう。
『朔間先輩』らしからぬ、カッコ悪すぎる姿。なのにさっきよりも愛されて、零の胸に泣きたくなるような幸せが押し寄せてくる。
「こうがっ、こうがぁ……っ!」
「零さん……っ!」
そうして睦み合ううちに、さっきよりも早く後ろでイく。
晃牙も、いつまでも続く零のオーガズムに引きずられるように、最奥めがけて吐精したのだった……。
☆ ☆ ☆
ふたりが重い腰をさすりながら予約の店に行くと、霜降り肉がこれでもかというほどふたりを歓待した。
「こちらの品は、日々樹渉様からでございます」
とワゴンで運んできた給仕が言う。
10人前をゆうに超える量のステーキは、誕生日会を聞きつけた友人からの差入れだったらしい。
「家ではなく胃を爆発させる気か……」
「あん?」
「なんでもなかろ」
「ふ~ん? 冷める前に食えよ」
肉の焼ける匂いの充満する個室で、ふたりの前に次々と肉が焼かれていく。
晃牙が食べ、零が笑う。笑う暇なんてね~ぞと言われて零も一口で肉を食う。
「晃牙」
「うん?」
「誕生日おめでとう」
「ありがとよ」
ふたりに降り注ぐ幸せのように、真夏の夜は更けていく。