「悪いおてては」初稿っぽいもの
データを整理していたら「悪いおてては」の初稿らしきものが見つかったんだけど、あきらかにこっちの方がよくて「なんでこっちにしなかったの!?」ってショックだったので上げます……
書いたのが去年の今頃っぽくて、その頃からすでに「どうしてうまく書けないんだろう……」って悩んでたから、これも迷走のすえ書き直したのかな……
でも冒頭でセックスのこと匂わせてるのに口淫だけで終わるのはそりゃねーや!って思う
いつかセックスの部分(と解釈違いの部分)も書き足しますたぶん
「なんじゃい」
と、いつもの制服姿で零がとぼけた。
「……このままじゃ、何もできね~んだけど」
「?」
「手」
ああ、と驚いたように、紅い目が両手を眺めた。
晃牙の両手と指を絡めて繋がっている。零がそうしようと強請ってきたのだ。
「したくね~のかよ、セックス」
晃牙の部屋の安物のベッドの上に、ふたりで正座している。何をしていたのかというと、キスをしていたのだ。零たっての希望(「なんだか両手が寂しいのう~? ほれわんこ、気を利かせんか」)で、両手を恋人繋ぎにしたままで。時を忘れて相手の舌を突つき合い吸い合い、まるで抱き合うことを覚えたばかりの高校生のようだが、実際はじめてセックスをしてから1月も経っていない。
さあ次は前戯だと意気込んだ晃牙の体を阻んだのが、この恋人繋ぎだ。
「まさか」
慌てて首を振ったのち、零はそれでもゆるりと視線を逸らして口をつぐむ。
代わりに指の力を緩めたり、やっぱり強めたり。その度に擦れる指の腹の感触に、ちりちりと性欲を煽られる。
やっぱりやりたくないんじゃね~か、もしかしてずっと負担になってたのか、と思いを巡らせていると、「あ~……」と気まずそうな声。
「……その、こんなの、初めてじゃし。嬉しくてのう?」
離したくなくて、つい……。
そう困ったように笑う零は、いつもよりずっと年相応の顔をしている。
「――ッ」
19歳の、初めての恋に戸惑ったり喜んだりする顔で言われたら、たまらなかった。
繋いだ手が熱い。きゅ、と握り締めるのは、片時も離したくないからだと気付いた。
――愛おしい。キスしたい。
はやる心に素直になれば、自然と晃牙の唇が吸い寄せられる。
「だから口でしてやるぞい♪」
……が、空振りした。
「はぁ!?」
動揺を隠せない晃牙の股間に顔を寄せると、零は口だけで器用にボタンを外し、金具を咥えてファスナーをずり下げた。
(わんこのニオイで溢れておる……♡)
晃牙の股間からむわりと漂う性臭に、零はうっとりと頬を染めた。
雄の臭いに負けないほどの、ツンとした汗の臭い。秋風に負けないようにと体を動かし、夕方にはふたりきりのユニット練習に(色んな意味で)励んだお陰だ。
「クク、っふ、んん……っ♡」
濃厚な体臭は零の吸血鬼としての本能を呼び起こし、精を受ける最奥を甘く疼かせる。パンツ越しにわかるほどなのだから、きっと今夜も熱い精をたっぷり浴びせられるのだろう。
待ちきれずに前開きを鼻頭でかき分けると、月光色の恥毛とより濃いニオイが鼻を擽った。逞しい屹立目指して手探りならぬ鼻探り。まるで宝探しだ。
そろぉっ、と今度は舌を伸ばす。
「あ、っ!」
頭上であられもない声が上がった。ボクサーパンツの前開きから捻じ込まれた舌が、晃牙の竿に届いたのだ。
「っばか、ぅ、手ェ離せ……っ!」
「ひゃや……♡」
鼻先で布を押さえ、ひっかけた舌で逸物を引きずり出す。
慌てて手を振り払おうとしても遅い。いつもは楽器をうやうやしく掲げ持つ長い指が、晃牙の指にリリアンのように絡まり、ぎゅうっと握り締める。
「はふっ、ん、んっ」
(なかなか難しいのう?)
前開きのすぐ奥まで男根を引きずって来た頃には、前開きがぐっしょりと濡れていた。零が悪戦苦闘するうちに溢した涎のせいだ。陰茎の根元に張り付くそれは、冷たくてどこか背徳的。見様見真似でやっているにしては雰囲気が出ていて良い。
(難しいけれども……もうすぐじゃ)
もうすぐ、あの逞しい男性器とあいまみえる。
気を良くした零は、陰茎を横からぱくりと咥えた。
「くぅ……っ」
先ほど年相応の笑みを見せたのが嘘のように、零は晃牙に婀娜っぽい視線を投げかけてくる。
男を煽るようなこと、どこで覚えてきやがった――興奮と嫉妬の入り混じる頭で考えても、問い掛けは熱い吐息になって消える。
「……っクソ」
やり場のない怒りの中でも萎え知らずの陰茎に、しかし頭を抱える暇はない。
妙な刺激のお陰で、先までぶるりと出された頃には晃牙のそこは痛いほど張り詰めていた。
「は、はっ、……ほれ、出せた♡」
零は恍惚とした表情で晃牙を見上げた。
名画の女神のように整った顔が、醜悪な男根のすぐ上にあった。形の良い鼻をつんと上げる仕草は誇らしげだが、唇はてらてらと濡れている。そこで竿を挟み込んだのだ。
「ほれ、って……くぁ、」
抗議の声を上げる間もなく、陰茎が零の唇の向こうに飲み込まれていく。
「~~~~っ!」
「んっ、んじゅ、んン……♡」
零は丁寧に、愛おしげに男根を舐め上げた。
注送に合わせて吸い上げると、凹んだ頬の奥で粘膜が男根にへばりつき、亀頭をねっとり擦り上げた。まるで晃牙の精液が欲しくて仕方ないかのようだ。
年下の恋人のそこは、かわいい顔に似合わずグロテスクで凶悪だ。血管を浮かび上がらせ張り詰める様は狼の恐ろしさを感じさせる。本能で欲しがるのも無理はないだろう。
招き入れる期待できゅんきゅん疼く尻を、零は無意識のうちに揺らしてしまう。
しかし晃牙は、恋人の淫らな様子に気付けない。
「あっ! ひ、っくうぅ」
あの朔間零が、俺様の股間で、こんな――
夢のような、ともすると地獄のような光景を、晃牙は凝視するほかなかった。憧れの人がすすんで慰めてくれているというのに、それをひどく背徳的に思わせる何かが零の美貌にはあった。
「ぅあ、あっ、あっく」
あんたはそんなことしなくていい、俺様はじゅうぶん気持ちいいから、と押しとどめようとする度に、けれど恋人がその手を優しく握る。
「んむ……っはふ、ン」
「あ、ぅ、っ、」
ぬぷり、ちゅぽ、とわざと音を立てて、形の良い頭がまたひとつ大きなストロークを描いた。
快楽に耐える晃牙の雄顔を、紅い目が嬉しそうに見上げている。
――早く、おぬしの子種を堪能させて。
――我輩の口で、舌で感じて。
そんな言葉が届くように、零が視線に熱を込める。
「んん、う……んはっ」
ふと、男根が口から引き抜かれた。
「はっ、ぁ……?」
呆然とする晃牙を慰めるように、腫れ上がった先端に口付けられ、舌足らずに呼びつけられる。
「わんこ、わんこ?」
「っんだよ」
「きもちいいかえ?」
小首をこてんと傾げた零は、いつの間にかベッドにぺたりと座り込んでいる。穏やかな表情の中に、悪戯っぽい笑みを少しだけ混ぜて。長身痩躯に淫蕩な表情、子供じみた仕草。ちくはぐな零に興奮がおさまらない。
「……っ」
口にするのが恥ずかしくて、少しだけ顎を引く。
年上の恋人にはそれで十分だったらしい。
「ククッ、素直でよいこじゃ……んちゅ」
繋いだ右手が引き寄せられ、あっと言う間もなく甲にキスされる。
「たぁっぷり、ん、よしよし、んむっ、してやろう……♡」
そして見せつけるように根元から先まで舌で舐め上げられて、ぱくりと咥えられれば、あとは零の独壇場だ。
……と思われたが。
「んんっ、んっ」
「…………」
「んぷ、んン、んく」
「…………」
「……まだ出ぬのか?」
気まずそうな、怒ったような顔で尋ねられる。
「『よしよし』し足りね~んだろ」
突き放して言えば、信じられないとでも言うように目を見開かれた。怜悧な目元が仕草ひとつで幼くなり、晃牙をじとりと見つめる。
「むう……我儘じゃのう? けれども我輩、そろそろ疲れてきたのじゃ……んん」
「……っは……」
それでも口での愛撫を続けようとする零を見下ろしながら、晃牙はこっそり息を吐いた。
いくらそれらしく振舞っても、零も閨事は初めてなのだ。だから無理に年上ぶろうとして失敗する。耳年増になってまで恋人を気持ちよくさせたい健気さの、どこに嫉妬していたのだろう……。
自分もそれに応えたい。
じんわりと湧き起こる性欲が、腰を甘く痺れさせる。
「……っん」
もぞ、と身じろぐと、亀頭が零の舌で擦れた。
……これだ。
「ん、う? んぁ……?」
居住まいを正した晃牙に、零が上目遣いで訝しむ。腰を浮かしたせいで、陰茎が口の中で下を向いたのだ。代わりに根元の近くが零の歯列に引っかかり、上顎を持ち上げる。
「えあ、」
亀頭を舌に押しつけると、揃いの紅玉がとろりと蕩けた。
「口、すぼめろよ」
「ひゃひふ……んっ、指図するでない」
「いいから……」
わざと耳元で熱っぽく囁く。零の細い指がびくりと強張り、一瞬の後にぎゅっと絡め直された。縋るような、もどかしがるような強さだ。
「……っ仕方ないのう」
そう言いながら、双眸は快楽への期待に濡れている。
「苦しかったら言えよ。すぐに止めるから」
「言う前に止めるという発想がおぬしにはないのかえ? ……ン」
ぐうの音も出ない程の正論を告げた口が、鬱血した亀頭を招き入れる。命令通り舌で鈴口を塞ぎ、唇を竿に添わせると、晃牙がゆっくりと腰を動かし始めた。
「んぅ、ウ、」
「はぁっ……はっ……」
「うぁ、う、ぅん……っ」
思った通りだ。激しく突き立てようとするのを抑えながら、晃牙は下腹部を襲う感触に神経を研ぎ澄ませた。
にちゅ、くにゅ、と口腔を犯す音が聞こえてきそうだ。舌の微細な凹凸が裏筋を擽り、抜き差しするたびにカリ首が柔らかな唇をめくり上げている。生理的な刺激からか、舌は生き物のように時に縮こまり時に強張り、亀頭の先端を喜ばせた。
ふかふかの肉床を突き擦りいたぶられて、零はさぞや狼狽していることだろう。まるで後ろを犯しているかのような充足感があるのに、亀頭に感じているのは口内の湿り気と圧迫感ばかりだ。口淫とも後孔とも異なる感触を求めずにはいられず、晃牙は浅い突きを繰り返している。
「はっ、は……」
それでも吸血鬼ヤロ~が苦しがっていたらやめようと、突き入れられる方の様子を窺った。
「ウ、ぉ、っ、」
零は、眉根を寄せて喉を鳴らし……熱に浮かされたように口腔を捧げている。
「ぐっ、んむ、うぅ……っ」
「……っ」
口腔を犯される恋人の様子に、晃牙の心臓は鷲掴みにされていた。
恐ろしく整った顔には、今や凄絶な色香が漂っている。鮮やかなルビーの瞳は既に焦点を合わせていない。目尻には苦悶の涙が滲み、瞬きの度に睫毛に弾かれ上気した頬に星屑を散らす。頬をこかしてしゃぶるのが男の亀頭だというのに、下品さはかえって零の魅力になっている。
「ぁ、ぅぐっ、ウ、うぇ、っ……は、くぅ……!」
『お』の形に開けた唇は、雄に散々いたぶられて充血している。時折えずくように顔が強張ると、唇が反射的に開き、すぐまた晃牙の竿に添わされた。
股座に気を取られてばかりいたが、絡めた指は矢継ぎ早の注送に耐えて白くなっていた。零は腕までぶるぶると震えながら、晃牙の突きから体全体を支えている。晃牙を投げ飛ばす力のある男が、口内をいいように荒らされ、されるがままになっている……。
――なんでそんなに我慢してんだよ。
目の前の男は、昔みたいに自分ばかり犠牲になりたがっている。
そう感じてしまうと、もう駄目だった。
「……っやめだ、やめ!」
「ぅあ……ッ!?」
あわてて性器を引き抜けば、零が体勢を崩した。
「なん……」
鍛え抜いた胸板で体を受け止めると、零が目を白黒させながら見上げてくる。
抱き締めたくても両手は繋がったままで、だから晃牙は叫んだ。
「テメ~と俺様は恋人同士だろ!」
「……っ」
――男の体液に濡れても未だ美しい顔立ちを、苦しませないと決めたのはいつだったか。
晃牙はそう遠くない、決して忘れられない過去に思いを馳せる。
五奇人の栄華華やかなりし頃から、このひとりぼっちの吸血鬼は傷だらけになって生きていたのだ。華奢な背中に弟や晃牙、まだ見ぬ後輩の幸せな未来を背負って。
あの頃の憧憬は肉欲を伴う親愛に変わり、いつしか零を求めるようになった――だからこそ、晃牙は零を苦しませてはならなかったのだ。
「……っくそ」
言い慣れない言葉を使うと頭が冷えて、深呼吸する余裕が生まれた。
「なんであんただけ苦しいの我慢してんだよ。ふたりとも気持ちよくなりゃいいだろ」
こつん、と額を合わせた。脂汗に冷やされた零のそれは、絡ませ続けて汗ばんだ両手より冷たい。
――はやく心の熱が伝わるよう、強引に口付けた。
「ん、んぅ」
「っ……ふ、んん」
「ちゅ、んむ、……ぅ、んはぁ……」
舌先を甘く捏ね合い、唾液を交わす。
合わせた唇から砂糖菓子のような喘ぎ声が漏れ出た。もっと欲しくて裏顎を擦れば、お返しとばかりに舌を吸われて甘噛みされる。
「んんぅ……っん、んちゅ……っ」
すりすり、と痩せた胸が晃牙の胸板に甘えるように擦りつけられる。
絡めた指ばかりか、全身を使って零は身悶えていた。キスの合間に腰をくねらせて、まるでキスで溢れた快楽を逃すような動きだ。そのくせ晃牙が舌を休ませようとすると犬めいて噛み付いてくるのだから、貪欲すぎる。
晃牙の蛮行に苦しんでいた零は、すっかり口腔快楽の虜。
どちらともなく夢中になったキスは、前戯で散々したのに飽き足らない。
「はっ……はぁ、っ、なあ……」
それでもそっと離れると、ぽってりと熟れた唇から銀糸が垂れて晃牙の唇にしがみつき……ぷつりと切れた。
零はキスの余韻に浸るように目を伏せている。晃牙の強引な優しさに呆れたのかもしれない。
……どちらにしても、年上の恋人には晃牙の愛が届いたようで。
「…………うん、そうじゃのう?」
困ったように、眉を寄せ――にっこりと、笑った。
「じゃが……我輩、結構気持ちよかったぞい?」
その笑顔が、淫らに蕩ける。
「は? やせ我慢……」
「しとらん。ククク……おぬしのそれで、舌の上を突かれると……ゾクゾクしてのう? 頭がぼぅっとなるのじゃよ」
亀頭に犯される感触を思い出すように、零の舌が唇を舐めた。
紅く、弾力のある媚肉……晃牙を夢中にさせたそこが、晃牙の雄を誘っている。
「長生きしていると、可笑しな性癖を身につけるものじゃのう……?」
「~~~~~~っ!」
「ふははは……♪」
一瞬で首まで赤くした晃牙に、零はひどく機嫌を良くしたようだった。
絶世の美貌に妖しく微笑まれて赤面しない男がいるだろうか。むしろ晃牙以外だったら理性を失い己の人生を狂わせていたかもしれない。
……いや、晃牙の人生もとっくに狂っているのだ。
「ほれ、仕切り直しじゃ♪ たくさん突いておくれ?」
「それでいいのかよ~~~~!?」
悪魔めいた吸血鬼の『ご奉仕』に、狼の遠吠えが夜通し響き渡るのだった……。