忠犬
泊まっていくかと聞かれたので、零はどうしようかと答えた。
「えっ」
「なんじゃ」
「どうしようって……他に何があるんだよ」
首を傾げる。
「泊まらないとか」
「泊まってけよ!」
肩を揺さぶられてくらくらした零は、
「えぇ~? お泊まりセット持ってきとらんぞい?」
とか言う。
「……ッ!」
晃牙が何度も口を開いては何も言えずに俯くので、だんだん可哀想になった零は後ろを向いた。こらえた笑いが吹き出そうだった。
「冗談じゃ」
「はあ?」
「とうぜん泊まってくぞい」
「最初からそう言えよ!」
悔し紛れの怒声が背中にぶつかる。
零はこう言って浴室に消えた。
「お伺いを立てるようでは狼とは言えんのう?」
零は洗濯機の回る音で目を覚ました。
起き上がって服を着ようにも見当たらない。そこらへんに脱ぎ散らかしたのに。
「起きたか」
洗面所から出てきた晃牙はニヤニヤしている。
「あんたの服、洗ってやったぜ!」
微笑む零を、不思議そうに晃牙が見ている。