Entry

時間

晃牙は授賞式以来のスーツを着て、お土産を提げて、左手と左足を一緒に出した。
「……笑うなよ」
精悍な横顔が項垂れるのを、それこそ零はいつぶりに見たか。
ひび割れたアスファルトを跨ぎながら、そっと横目で眺めていた。ピアスホールが寂しげだった。短い毛足が春風に揺れた。糊のききすぎた白シャツが裏地に擦れて音を立てた。右手を空けるのが癖になっていた。
「晃牙、ありがとう」
「何が」
「いろいろ」
涙もろくていかんのう。笑った零を、晃牙の右手が抱き寄せた。
「披露宴まで取っとけよ」
きつく寄せた眉間より、目尻の皺が深かった。それがふたりの時間だった。

 

 

Pagination

Utility

Calendar

05 2026.06 07
S M T W T F S
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -

About

【お知らせ】現在サイトデザインの一部が崩れております。ご不便をおかけし申し訳ございません。

Entry Search

Page

  • ページが登録されていません。