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ある町はずれの小事件

 

 俺様は名探偵・大神晃牙、かのシャーロック・ホームズに師事する名うての探偵だ。おっと、静かに! 捜査中にサインに応じる馬鹿は探偵じゃね~よな?しかも潜入捜査の真っ最中。そうここは大怪盗の根城、夢ノ咲のワトスンことレオンが黒々とした鼻で嗅ぎ当てたのだ。
 大手柄を鼻にかけない相棒の情熱的な視線を受け、俺様は慎重にドアを開けた。あっ! 靴が出ている、ヤツめ、俺様に探せないと踏んだな。しかも脱ぎ散らかして、アジトに着いて気が緩んだのがバレバレだぜ。ふむ、大きいのが1足、改めて見ると大怪盗にふさわしいサイズだ。横にひとまわり小さいのが1足どけてあるが、これは今はいいだろう、証拠は目の前だ……さあ来いレオン、お前のいかした武器が頼りだ。クンクン、クンクン……ほら見ろ、迷うことなく廊下を進んで左の部屋の前で立ち止まった。でかしたワトスン! またしてもお手柄だな。ヤツをつかまえたらとっておきのジャーキーで祝杯を上げよう、だが今は頭を撫でるだけで我慢してもらわなくちゃならない。あぁ、ちくしょう、なんといっても扉1枚むこうに大怪盗がいる。
 さあ、さあ! 知恵を絞れ名探偵、警察も少年探偵団も呼ばない正真正銘の2人きりだ。レオンと俺様でつかまえられるか? やれるか? やるしかない! オオカミの名に恥じぬよう大胆不敵に・探偵らしく勇猛果敢に、つまり決して逃がしはしない!
 いくぜ相棒、3つ数えて突入だ! 3! 2! 1――――


「突入じゃ!」
「うわっ!?」
 扉が開いて現れた男に、晃牙――名探偵は腰を抜かしてへたりこんだ。
「ほれ、大怪盗のお出ましじゃ、捕まえてみせんか」
 毛玉のような尻尾を振って近づくワトスンことレオンを片手で撫でながら、零がにんまり笑って頭に手を伸ばすのを、晃牙はバツの悪そうな顔で受け入れる。
「いつから聞いてたんだよ……」
「たぶん最初からじゃ。『俺様は名探偵』――これ顔を隠すでない」
「じゃああっち向けよぉ……」
 両腕からはみ出た耳が赤い。零に腕をどかされると、真っ赤な顔にほとんど涙目の晃牙が悔しまぎれに顔をしかめた。I don’t have fffffriends!
 見たばかりのドラマに触発される晃牙に、零は愛おしさがこみ上げた。優秀な相棒、つまり晃牙は零の相棒だからレオンは零の相棒でもある、その相棒にお座りをさせて、零は両手を晃牙の熱い頬に添えた。スモモのように鮮やかで柔らかい頬を、そうして、指先でゆっくり撫でる。
「大怪盗は何を盗んでいったんだ?」
「…………」
「晃牙?」
「…………大粒のルビーを、2粒…………」
「クッ」
「笑うなよう!」
「くくくっ、すまぬ、くくっ」
「ムカつく」
「ごめんって」
「声が笑ってんだよ!」
「くく…………ふふっ」
「……んだよ」
「我輩の、いや俺の心を盗んだ晃牙が、探偵なんだな」
「…………だってあいこだろ」
 名探偵の両手が零の手の甲を覆った。やさしく力を入れると熱っぽい、とろけるようなルビーの瞳が晃牙を見つめる。晃牙も蜂蜜の目で見つめ返した。
 大神晃牙は名探偵だ。助手のレオンは廊下で丸くなり、相棒のラブロマンスに文字通り目をつむっている。晃牙が探偵顔負けの行動力で大怪盗に口づけながら、持ち前の推理力でこの後の展開を推理した。大怪盗・朔間零の根城に招かれてセックス。なかなかの名推理だと思わね~か、レオンくん。

 

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