ミルククリームタルトの憂鬱

完全に自慢ですが↓を書いて渡したらパス子さんたいへん喜ばれたので「じゃあ真冬のデートコーデの零くん描いて」とふっかけて↑を奪い取りました、零くん最高にかわいくてシコいよね……海老で鯛を釣ったよね……
~これまでのあらすじ~
10月12日のSkype
わたし「イベント告知日なのでどこがくるか賭けませんか? 勝った方が負けた方に好きなものを書かせるんです」
タヌキことパス子さん「いいですね!」
わたし「じゃあわたしヴァルらびっつで」
タヌキさん「トリスタで!」
わたし「(ふふふ馬鹿め……最近きてないなず兄ぃとみかちの☆5で雪解けハロウィン間違いなしだ……スケベ小説はもらったぞ……)」
運営くん「ロックフェスやで」
タヌキさん「やったぁ! リクエスト考えておきますね!」
4日後
タヌキ「乳牛零くんでお願いします!」
~あらすじおわり~
どこまでも続く青い空、ゆったり流れる白い雲。
牧場らしい、のどかな景色。
「今日も仕事か~」
仕事場に向かうと乳牛たちが迎えてくれる。
文字通り犇めく舎内。いま可愛らしく鳴いたのは、朝一番の担当牛だ。
「朔間先輩、今日もいっぱい出せよ」
「もう~♪」
搾乳日和だ。
ミルククリームタルトの憂鬱
「もう~、前を向いて歩けと言っておるじゃろ~?」
「わりぃ……」
朔間先輩に振り向きざまに叱られ、晃牙は鼻を押さえたまま素直に頭を下げた。
「痛くなかったかえ?」
痛いの痛いのとんでゆけ~、と優しく頭を撫でられる。もう3度目だ。ころころ変わる歩行者信号に引っかかるたび、晃牙は零の背中につんのめっている。
「大神くんの気持ちもわかるよ。長丁場で疲れたんじゃない?」
先輩の隣で共演者の男が笑う。
――テメ~のせいだろ。
晃牙が不機嫌さを隠さず見るが、男の視線は横断歩道の向こうに移っている。晃牙たちの目の前を自家用車が通り過ぎ、窓ガラスに男の余裕ぶった表情を映した。
晃牙たちの今いるところは札幌市内の中心部で、大都市だからか観光客が多いからか、大通りを外れた場所にも信号が細かくついている。横断歩道のしましまは太め。晃牙たちと番組スタッフが固まって歩いてもまだ広い。そして、晃牙たちはグルメバラエティを収録していたのだった。
だがもう今日は寝に帰るだけだ。怒ってもいい。
「うっかりわんこはリードをつけねばな♪」
こぶしを握った瞬間、先輩がするりと腕を絡めてくる。
「おいっ」
押し付けられた胸から鼓動が伝わる。「寒いし不自然ではない」信号が青に変わって、先輩は普通に歩き出す。頬と鼻がかじかんだみたいに赤い。
「あっ」
しぶしぶ隣を歩くと、先輩が急に走り出した。
「ジェラート屋さんじゃよ!」
腕を取られているので引きずられる。慌てて振り向いてディレクターの意向を確認。OK。呆れ笑いで手を振られながら、晃牙は店のドアをくぐり、共演者の男が後ろにつづく。 中は雪の結晶のオーナメントで飾り立てられていた。ロケにうってつけだ。ディレクターが店員と撮影交渉している。腕を退かれて振り向くと、先輩が満面の笑みを浮かべている。
「わんこは何がいい?」
覗き込まれてドキッとした。咄嗟に目をそらすと、視界の端で白いコートの裾が揺れる。
先輩が他の店員からテイスティングスプーンを受け取るのを、そっと横目で盗み見る。
(かわいいよな……先輩)
いつもかっこいいけど、今日は服装のせいでめちゃくちゃかわいい。
ロングコートは真っ白のダッフル。そういうデザインなのか袖が余り気味で、細い指先がちらちら見える。コートの下もオフホワイトの分厚いセーター。薄水色のシャツの襟が首元に覗くのも、懐に迷い込んだ雪の結晶の趣がある。首元から頬にかけて飾り立てるのは純白のファーだ。キメの細かい肌をふわふわの毛先がくすぐって、朔間先輩がくすぐったそうに身をよじった。
「ふふっ、我輩はアイスではないぞ? ……なんて」
じっと見ているので食べたい気持ちが伝わったのかもしれない。先輩は甘く笑うとスプーンを咥えて幸せそうにため息を吐く。吐息といっしょに晃牙の怒りも萎んだのか、申し訳ない気持ちが湧き出てくる。
「……先輩、ご」
「朔間さんは何にするんですかぁ?」
男が現れて先輩の肩に腕を回した。嘘くさい笑みを晃牙に向ける。
「我輩はトマトとバニラかのう~?」
「じゃっ僕はロ〇ズコラボのチョコラータで! 大神くんは?」
「……俺は、余市リンゴとパンプキン」
コーンを店員に渡されながら、晃牙の胸にまたモヤモヤが現れる。怒りまで利用されてしまった。あれじゃムッとした晃牙は朔間先輩との仲を邪魔されて怒っているようにしか見えないし、男は年下の晃牙をからかっているだけになる。
「んじゃ、今度こそ今日の撮影終了!」
ジェラートを完食しても晃牙の怒りは続いていた。先を行く男を睨んでいると、利き腕が優しく抱き込まれる。
「我輩のことで気に病まないでおくれ」
先輩の囁きに反論しようとしたところで、周りの目があると気付く。通行人が晃牙たちを見て目を見開き、後ろのカメラに気付いて顔を輝かせる。男は気さくに手を振り返している。朔間先輩は愛想笑いだけ返している。動きのあることをして、晃牙に注意を引き付けないように。
気遣いが晃牙の心をかえって重くした。
晃牙たちがマイクロバスに乗り込むと、運転手は小樽方面に向けてハンドルを切った。明日のロケ地に合わせて小樽に宿をとったらしい。嬉しいことに朔間先輩とツインルームだ。
バスは小一時間でホテルに到着し、部屋の前で鍵を渡されたふたりは、はやる心を抑えてマネージャーを見送る。
「7時起床じゃな? 心得たぞい♪」
「よろしくね、大神くん。それじゃ」
「……」
「……」
「……おい」
「うん?」
低い声を出した晃牙に、朔間先輩が大げさに首をかしげる。
「もう暴れね~よ」
「組みたいから組んでおるのじゃ♪」
ぎゅう、と腕にしがみつき直される。バスで隣に座っても、その席が窓側でも、朔間先輩はずっと晃牙から離れなかったのだ。本当にリードみたいだ。
「そ、それに、まだ外だろ」
リードどころじゃない、と視線をふたりの間に落とす。朔間先輩のほっそりとした指が、晃牙の手の甲を撫でていた。見ている間に指の股に忍び込まれる。
「ふふっ、そうじゃのう」
すぐにほどけて、鈴の鳴るような笑い声が鼓膜をくすぐる。
中ならいくらでも繋いでいいというメッセージをわかってくれたらしい。はやくはやく、と声だけで甘えるかわいい恋人に、鍵を差し込む手が少し力む。
ドアを開けるとすぐに中に押し込まれた。もちろん朔間先輩に。鍵を後ろ手に閉めて抱き締められる。着ぶくれしてふかふかの体が、その下の肌の柔らかさまで感じられるほど晃牙にもたれかかる。
「晃牙……」
熱を帯びた囁きに身震いする。溶け合うくらい密着しているからか、甘い声が胸から染みて背筋を痺れさせる。甘い、紅茶に入れたばかりの角砂糖みたいにほどけた声。
首筋に鼻を寄せると今度は先輩の肌が粟立った。息をそっと吐く音すら近い。その熱さも湿りもも今は自分のものだと思うと、掻き抱く腕に力がこもった。
体温を確かめ合う。触れるだけのキスをして、もう一度抱きつき合う。
――先輩はムカつかね~のかな。
晃牙は今朝のことを許せそうになかった。今朝、着替え中の朔間先輩が男に酷いことを言われたのだ。口にするのも躊躇われるようなことを、けれど先輩が忘れているなら思い出させたくない。黙り込んでいると、頬にキスされる。
「晃牙は甘えんぼうじゃのう……♪」
そう言いながら、晃牙と頬をくっつけ合うのは先輩の方だ。北風で冷えてしっとりした頬が、晃牙のささくれだった心をやわらかく慰撫する。
先輩が気にしてないなら俺も気にしない。ことにする。大雪原に頬擦りするような気分で、晃牙も先輩にぴとりとくっつく。
すると、不思議な香りがふと鼻を掠めた。
「先輩、すげ~甘い」
朔間先輩はとろんとしたまま首を傾げた。香りの出所は襟元、いや胸元だ。晃牙の体温でとろける今も、薄水色の襟の奥からミルククリームのような匂いが立ち上っている。甘くて懐かしい匂い。
「ジェラートでも零したかのう……?」
夕方食べたバニラジェラートを思い出す。違う。そ~いうのじゃなくて、と言う間を惜しんで匂いを嗅ぐ。
そういうのじゃなくて、きっと朔間先輩の体臭なのだ。それも、晃牙と付き合うようになってからの。夢ノ咲では嗅いだことがなかったから。こんなにおいしそうな匂いをさせられていたら、あの頃の晃牙は何も考えられなくなっていただろう。恋人限定の匂いでよかったと思いながら、深く息を吸い込む。胸いっぱいに朔間先輩が満ちる。
「これ、クンクンするでな――あっ」
「ハイハイ」
「ぁ、こ、こらぁ……っ」
柔らかいベッドまで連れて行って心置きなく押し倒す。のしかかる。胸に顔をうずめながら先輩のベルトに手をかけると、美しい細工が指の腹を冷たく押し返した。
カッとなって引き抜き、ファスナーを下ろす。
「……っ……」
むりやり前を寛げられた先輩は、辱めに耐えようと赤い顔を反らして震えていた。辱めだ。上質のツイードの合わせ目から、下着の確かな膨らみが垣間見えていた。
匂いを嗅がれただけで、こんなにも……。放心したまま触れた指先まで朔間先輩の刺激になった。「っ、ぁ、」さらに硬くなる。シンプルな黒の下着が性器の形をくっきり浮かび上がらせ、亀頭の先に濃い染みをつくった。
暗闇の中でも香る甘さに、先走りの生々しい匂いが混じる。
「あ、明かり……」
「あ?」
「明かりを、消しておくれ……」
目を伏せたままの朔間先輩に晃牙は戸惑いながらも部屋の照明を落とした。真っ暗では困るからと枕元の間接照明を点せば、先輩の悩ましげな横顔が照らし出される。睫毛の影がさざめくように震えている。たまらなくなって口づけると、先輩は晃牙にこわごわと身を委ねた。
らしくない儚さだ。まるで初めて体を重ねたときのような……。理性の困惑をよそに、晃牙の本能は利き手を朔間先輩の性器に伸ばす。
「はぁ、ふ、んんぅ……ぁ、……」
下はショーツごと激しく扱かれ、上は晃牙の舌に翻弄されるうちに、朔間先輩は羞恥心を忘れて晃牙を求めはじめた。
「んっ、ン、ぁ、あぅ、」
細い腰がくなくなと動く。晃牙の手の平に自分の亀頭を押し付けて、いつものように快楽を貪欲に得ようとしている。
より強い刺激を腰にとねだる恋人を、晃牙はあえて無視して呼吸を奪う。舌同士をうねらせ絡め合い、寂しそうに突き出された舌を慰める。あ、とくぐもった嬌声を上げて、先輩は抗議するつもりで晃牙の股間に手を伸ばした。気の緩んだところを強く掴み上げる。「ぐぁっ」たちのわるい児戯にはお仕置きだ、と晃牙が学院時代の先輩を真似て言い、中年おやじのようにいやらしい手つきで胸を揉もうとすると、朔間先輩がきつく身をよじらせた。
「胸は、だめじゃ」
大きくなってしまう……。
晃牙は声を詰まらせた。見られないよう胸元を庇う腕を退かす気になれず、先輩のスラックスに手をかけて脱がせる。上質であたたかそうなハリスツイード。番組の貸衣装は汚せない。
腰を浮かせて協力的だった先輩が、セーターをたくし上げようとする晃牙の手には体を起こして対抗する。
背中を向けられる。
「……脱ぎたくない」
縮こまらせた背中を、枕元の明かりがたよりなく照らした。薄水色のシャツの裾がセーターから覗き、下着に包まれた尻のあわいを隠そうとしていた。
近寄って抱き締める。
「先輩」
「……っ」
胸に先輩の体温を感じながら、晃牙は濡れそぼった下着を器用に脱がせる。穿き口から飛び出した性器はすでに固く立ち上がり、先輩が切なげな顔で晃牙を振り返った。無言で頷くと、隠し持っていたコンドームを装着してやる。
晃牙もシャツ1枚になって同じように着ける。
「後ろからするか?」
「うむ……すまぬ」
「謝ることじゃね~よ」
離れる前にもう一度抱き締めると、朔間先輩は腕の中でそっと息を吐いた。前戯もそこそこに先輩の尻に自身を宛がう。きつい。拒む気持ちを、晃牙は責めることができない。
「あっ、あ、ぁ、こうがぁ……っ」
先輩はシーツに両肘をついたまま、揺さぶられるたびにか細く喘いだ。うなじのところで黒髪が跳ねていた。掻き分けて白い肌に口づけると、そのまま胸元に抱き付かれると思った先輩が体を強張らせ、後ろが切なく晃牙を締め付けた。
晃牙も先輩も、その夜はなかなかイけなかった。
晃牙がシャワーを浴び終えると、朔間先輩はバスローブのままベッドに横たわっていた。
近づくと寝息が聞こえる。早朝の現地入りに日の高いうちから街中ロケ。疲れない方が無理だろう。
せめて髪は乾かして、厚い布団にも潜り込んだ方がいい。ドライヤーを持ってきて肩を揺すれば、先輩は気だるげに身を起こした。そのまま晃牙の胸に頭をもたせかける。投げ出された手足は妙に頼りない。晃牙がむりやり着せたバスローブは裾といわず胸元まで寝乱れていた。緩んだ合わせ目から薄桃色の突起が見えた。
『朔間さんの乳首でけ~!』
思い出すな。晃牙は大きくかぶりを振った。
共演者の嘲笑が耳にこびりついている。今日の撮影前、着替え中の先輩に向けられたのだ。嫌らしいヤツだった。カメラの前では先輩と親しげに肩を組むくせに、人気のないところでは先輩の粗さがしをしていた。演技力だけは高いのだ。ヤツはのろのろと着替えながら先輩の日焼けしていない上半身を見つめ続け、そうして粗とも呼べない、先輩の乳首の大きさを勝ち誇ったように声に出した。怒りの余り白くなった晃牙の頭に先輩の困ったような笑いが届いたのをよく覚えている。
晃牙が指で先輩の髪を掬うと、くったりと濡れた毛先はすぐに指の間から零れ落ちる。先輩の心に似ている。アイドルとしての実力に絶対的な自信を持ちながら、一方で晃牙の恋人でいていいのか信じられなくなっている。こんなふうに嫌なことをされたら揺らいでしまうほどなのだと晃牙は気づけずにいた。不安は鼻で笑い飛ばしてやりたかった。先輩がどんな乳首でも、先輩のぜんぶが大好きな晃牙には関係ないというのに。けれど、そう口にしても先輩を傷つけるだけだとわかっていたから、晃牙はうまくできない自分が情けなかった。
「こうが、おやすみ……」
晃牙が髪を乾かし終えると、先輩はもういちど晃牙の胸にもたれかかった。ふわふわの髪が寝息に合わせて上下するので、朔間先輩を抱えたまま晃牙も布団に入る。
むかむかした気分のままでは眠れない。仕方なく羊を数えるうちに、群れは100匹の大所帯となり、広くとった囲いにいっぱいになる。そこへなぜか白黒の牛が混じりはじめ、黒ブチ模様が晃牙を夢へといざなった。
☆ ☆ ☆
そうして搾乳器を着けたところで我に返った。
「さ、朔間先輩!? なんで牛に……!」
「もう~?」
干し草と泥水で汚れた床に先輩が全裸でしゃがんでいるのを、晃牙は絶望的な目で見つめた。全裸、本当に全裸だ。Tシャツも下着も身に着けず、靴も履かない。ふんわり柔らかそうな両胸と、むっちり剥き出しの太股が白くて眩しい。細い尻尾が太股の間でゆらゆら揺れて、ときおり恥ずかしそうに股間を隠す。尻尾があるならと頭を見れば、小さな牛耳がぱたぱたしていた。白い毛に黒ブチ。羊に混じった問題児は先輩だった。
晃牙は痛むこめかみを押さえながら、剥き出しの背中に上着を掛けてやった。
「もうもう♪ うもう~♪」
先輩は嬉しそうに目を細め、顔を晃牙のお腹に押し付ける。甘えているらしい。素肌にジャンパーを羽織ってされるとたまらない。おもわず頭に手を伸ばすと、どこからともなくチャイムが鳴る。
「ほれ、始業時間じゃ。精を出すのじゃぞ♪」
言われてたしかにと晃牙は思った。たしかに朝9時、乳搾りの時間だ。晃牙の夢の体が搾乳器のスイッチを入れ、うももももと器械が音を立てる。
――搾乳器ってなんだ。晃牙がふたたび我に返る頃には搾乳が始まっている。
「ん、んっ……♪」
ジャンパーを着た背が反らされ、カバーを被せた乳首から白い液体が飛び出した。牛から出るのだから生乳だ。お乳は黒いチューブに吸い込まれ、晃牙の足元のタンクに溜められていく。ちょろちょろと音がするのが生々しい。
ジャンパーが水たまりに落ちたが、晃牙は気にならなかった。朔間先輩の噴乳を見るのに忙しいのだ。
「んぅ、んっん、ぅ、うもぅ~……っ」
先輩はまた人間語を話せなくなっていた。もうもうと鳴きながら、悩ましげに身をよじらせる。搾乳器が乳首を刺激するのだ。透明なカバーが規則的に形を変え、肥大した胸の蕾をますますしこらせる。今の今まで気づいていなかったが、先輩の乳首はお乳を搾りやすいよう大きく太く突き出ている。乳牛だ……。後頭部をガンと殴られたような衝撃に頭をふらつかせていると、先輩が乳首をきゅっと摘み上げられ、ひときわ切なく鳴いた。
「んうぅ……っ」
――勃ってる。
真っ白な太股の付け根に息づく肉欲から、晃牙の視線は離れなかった。
先輩乳首好きだもんな。頭の冷静な部分で妙に納得する。乳首を舐められたり扱かれたりするのが好きで、晃牙に正常位で抱かれていると胸を擦りつけてきたりする。乳首好きにしたのは晃牙だ。先輩の乳首をこねたり嬲ったりして、胸で感じるように調教してしまったのだった。だからあんなに大きくなったに違いない。
もっと強く摘まんでやったらよがるだろうな、扱きて~な……。晃牙の正直な気持ちに呼応するように、搾乳器がゆっくり止まる。
見るとお乳が出ていない。
「ん~? 出がわり~のか?」
晃牙は震える声でそう言うと、ニプルカバーをそっと外して先輩の乳首を擦り上げた。
「あぅっ」
ぴゅっ、とお乳が飛び出す。おかしい。きのうは触らなくてもだらだら出たのに。
「ンんぅっ!」
潰れるほど強く摘まんでも、充血した乳頭からは何も噴き出さない。
乳腺炎だろうか。仕事鞄からマニュアルを出して読む。先輩が晃牙に顔を寄せ、舌で頬をぺろぺろ舐めた。
「う、うもぅ……」
「気にすんなよ、これも仕事だし……なになに、『乳頭を口腔で継続的に刺激し、噴乳を促す』だってよ」
右乳を揉んでやりながらそう言うと、一瞬だけお乳が迸った。大ぶりの蕾の上を垂れる体液に、おもわず喉を鳴らしてしまう。
そういえば飲んだことがなかった。朔間先輩の生乳は乳白色の聖水とも呼ばれ、100mlあたり1万円で売れるのだ。胸元からただよう香りは芳醇で、味も想像に難くない。世界一甘くて濃厚な生乳。俺の先輩。治療中に口に入ったそれを……あやまって舐めてしまっても仕方ないだろう。
唇を寄せる。呼吸が刺激になってむず痒いのか、可憐な耳がピクピク動いた。
熟れた蕾に吸い付いた。
「はうぅ……!」
先輩は体をぴちぴちと跳ねさせると、晃牙の頭を抱いて胸に押し付けた。「あっあっ、うぅ、うもぅ……っ!」緩急つけて吸ってやるたびに、先輩の細い体が切なくくねる。
「ぁ、ウ、うぅう……っんん!」
晃牙が舌で蕾の先をほじくる。お乳の通り孔を広げるのだ。晃牙の思惑どおり、すぐに舌先に乳臭い甘さが広がる。生乳だ!
晃牙は目を閉じた。
はじめて味わう先輩のお乳は、水っぽく、牛乳っぽく、なのにこってりとした甘さが口の中にふわりと広がる妙味だ。蜂蜜ともチョコレートとも違う甘さ。失われても多幸感の続く味。牛乳だから口の奥が乳臭くなる。けれどそれは子どもの頃に母親から抱かれて感じたあたたかさのように、晃牙の胸を甘く満たしていくニオイなのだ。
もっと味わっていたいのに、たった5mlのお乳は舌の上から喉へと滑るように流れていく。晃牙は夢中で乳首にしゃぶりついた。
「ひ、ぁあ、う! うもっ、うくぅう……っ!」
出ない。ぴゅっと出たのは最初だけで、乳搾りみたいに上手くいかない。乳首が口の中で柔らかくしなるが、先輩の性感を刺激するばかりだった。
傍らのマニュアルを拾ってめくる。
「『口腔刺激が有効でない場合、対象と交合し、乳牛ホルモンの分泌を促すこと』」
乳首から顔を離すと先輩を干し草の山に寝かせた。先輩の紅い瞳が期待と不安で潤んでいる。後孔を解そうと手を伸ばしたが、そこはすでに柔らかく濡れそぼり、晃牙の雄を今か今かと待ち望んでいた。
「先輩、力抜いてろよ……っ!」
「あ、――」
貫く。
「~~~~っ!」
挿入の衝撃で先輩の体がびくびくと跳ね、胸が突き出された。鬱血した乳首から体液が漏れ飛ぶ。晃牙は舌を伸ばして生乳を舐め取ると、腰を激しく動かした。
「アっ、ぁ、っ、もうぅ、うっ、あっ」
先輩の眉がせつなく寄せられる。気持ちよさが苦しさを上回ったときの表情だ。中が動いてもっととねだり、扱き上げられた晃牙は短く喘いだ。牛になっても先輩らしい。仕返しに唇で乳首を挟んで吸い付く。
「んんぅうっ」
反らされた喉が美しい。
「もぅっ、ウ、んうっ、ぁっ、あぅう」
ぴゅっぴゅっと右乳からお乳が飛んだ。晃牙が突くのと同時だった。もうひと突きすると口の中にも甘みが広がる。
晃牙の昂ぶりで前立腺を捏ねられるたびに胸が張り、生乳を蓄える感触があった。もうすぐだ。唇で愛撫しない方の乳首を指先で捏ねる。
「あっ、あっ、ぁ、」
先輩が焦点の合わない目で晃牙を探している。真っ赤な唇が寂しそうにはくはく動く。晃牙が乳首から口を離して答えてやると、柔らかいそこと肉厚の舌でむしゃぶりつかれる。ねぶられる。愛される。愛を乞うキスの合間に囁かれる。
「……すき……っ!」
は、と晃牙が息を飲んだのと、噴乳は同時だった。
「ぁ、あぁぁ……っ」
大きく育った両乳首から生乳が噴き出し、放物線を描きながら、晃牙の作業着を濡らしてゆく。滴った生乳は先輩の裸体をも白く輝かせ、牛舎に甘くさい匂いが充満する。乳だまりの中で先輩の体ががくがく揺れている。恍惚の表情で、雌の顔で絶頂している。
晃牙は思い出した。生乳の匂いはミルククリームだ。朔間先輩の体臭。甘く懐かしく、優しく晃牙の心を撫でる匂い……。
…………。
……。
…
☆ ☆ ☆
「晃牙……我輩はママではないぞい」
晃牙がぱちりと目を開けると、下で先輩が困った顔をしていた。下? 先輩の体を晃牙は下敷きにしていて、口で何かを咥えているとわかった。なんだろう。弾力がある。まさか。ありえない考えに慌てて顔を離すと、先輩が乳首を唾液まみれにして笑っていた。
「ああああああわりぃ! ごめん! 俺こんな……!」
「寝ぼけておったんじゃな」
ベッドの端で正座する晃牙を先輩がよしよしと撫でる。
「ご母堂の夢でも見たのかや?」
夢。
はっと顔を上げた晃牙は、床に下りてもう一度正座した。そして、上半身を起こした先輩に土下座する。
「朔間先輩! 責任は俺がとる! だから俺のために乳首を大きくしてくれ……!」
「はえ……?」
困惑の声をよそに額を床に擦りつける。やわらかいカーペットが肌をくすぐった。ぐい、と押し付けて、床にめり込むくらい頭を垂れる。
「先輩の乳首はぜんぜん大きくね~し、もし大きかったら乳首を弄り回した俺の責任だ! けど、あんたが嫌なこと言われて悲しんでも、俺は先輩の乳首を大きくしたのをぜんぜん後悔してね~んだ! もっともっと大きくして、あんたを感じさせて、気持ちよくなってるとこ見たい! だから……ごめん!」
「晃牙……」
罵声、あるいは失望の溜め息が、いくら待っても頭に降ってこなかった。代わりにベッドの軋む音が聞こえて、先輩の手が晃牙の顔をやさしく上げさせた。
愛しさのこみ上げる笑顔のまま、口づけられる。
先輩は唾液すら甘い。
「……お前になら、俺はなんでもされたいよ。お前のおかげで乳首がデカくなって、誰かに何か言われても……誇らしくてさ、嫌な気持ちになんてなれね~もん」
先輩はバスローブを脱ぎ捨てると晃牙に跨り、猛り立ったそこを後孔に宛がった。一度交わって解れた秘奥が晃牙をやわらかく飲み込んだ。
「ぁっ……はぁ……っ」
「先輩……っ」
「晃牙、好き。大好き。俺のために悩んでくれて、ありがとな。……うあぁっ」
抱き付いて腰を持ち上げる。落とす。つたない自慰に声を上げた先輩を、晃牙の腕が支えて代わってやる。
「はぁ、あっ、んっ、すきっ」
唇で応える。
「んんぅ、ン、ぁ」
「……っ」
先輩の瞳が目の前にあった。寝る前のセックスでは伏せられ続けた目。晃牙がおもわず見つめると、ふるりと揺れて伏せられる。俺様を見てほしい。俺様の瞳の中に答えを見つけてほしい。先輩の心も体もぜんぶ大好きな本心をさらけ出そうと最奥を突いた。ペニスの先っぽと先輩のS字結腸がキスしてる。やわらかい。コンドームに邪魔されない気持ちよさが、じんと晃牙の腰に響いた。先輩も同じ気持ちで腰をくねらせている。
「あっぁ、ウ、そこっ、あっ、いいぃっ」
先輩が晃牙の代わりに胸を弄りだす。摘まむ。捏ねる。扱く。強すぎる快感に震える手は、それでも乳首を育てることをやめない。
晃牙は先輩を押し倒した。上から押し潰すように突き入れる。「あ! あ、っぐ、あぁうう……っ!?」悦いところに当てる。先輩の足が空を蹴った。ふくらはぎが固くなる。快感に耐える証拠。後孔の締め付けが強くなり、窄まりと晃牙自身が擦れ合う。先輩がもっとほしい。
先輩の顔を見た。
「……っこうがぁ」
バスローブに背中を擦りつけながら、快楽に喉をくっと反らしながら、先輩は笑っていた。満ち足りた顔だ。蜂蜜よりも甘い微笑み。ミルククリームの香りがぷんと立つ。
「ひっ、ア、あぁっ!」
「ぁ、んぐっ、せんぱいっ、すきだっ」
「だしてっ、イくからだしてぇ……っ」
「うんっ、だす、せんぱいっ、う、あ――」
「あ、ぁ……あぁ……っ」
先輩の奥に精液が浴びせられる。直腸を満たして晃牙自身に絡みつく。
晃牙は朔間先輩の腰を掴み、いちばん奥まで届くようにと射精しつづけた。
☆ ☆ ☆
「フレッシュミルクのクリームタルトでございます。こちらのスポイトで、コクのあるコンデンスミルクを掛けてお召し上がりください」
朔間先輩が顔を綻ばせた。冬の小樽に似つかわしい、やわらかいが華やかな笑顔だ。熱のこもった視線の先にはミルククリームタルト。手のひら大のタルト生地はきつね色に焼き上げられ、ミルククリームをたっぷり絞られている。ずっしりと重いのは下にチーズクリームを重ねているからだ。北の恵みの詰まったスイーツが、トップアイドルの視線を独り占めしている。
タルトを見つめる横顔に、共演者が気さくに笑いかける。
「僕これ好きなんですよ」
「けっこう来るのかえ?」
「ええ、小樽に来たときは必ず」
「我輩も北海道に住みたいのう……」
朔間先輩の唇からため息がこぼれた。夢見るような手つきでスポイトを押すと、細長い先からコンデンスミルクがぷっくり溢れる。あわててタルトの上で構え、美しく絞り出されたクリームの溝にミルクを垂らす。とろりと流れる乳白色に、隣に座った晃牙は昨日の夜のことを思い出した。
「晃牙の分も掛けさせておくれ♪」
「お? おう……」
朔間先輩はそうでもないらしい。有無を言わせぬ微笑みに気圧されて、晃牙は目の前のタルトを押しやった。
「では、いただきます♪」
たっぷりミルクのかかったそれを、晃牙は自分で食べる前に先輩を見た。先輩は口を大きく開けていた。真っ赤な唇が円く伸ばされ、白い前歯がちらりと覗く。歯ごと唇がクリームに沈み、繊細なミルク細工が押しつぶされてゆく。
タルトを口から離すと、先輩は咀嚼に専念した。白くなめらかな頬が膨らんだまま動き、中で舌が踊っているのを予感させる。吊り上がった目尻が赤くとろける。頬が緩む。唇が物足りなさそうに揉み合わさり、次の一口を待ち焦がれている。
「…………」
晃牙は男を見た。陶然と先輩を見ていた双眸が、晃牙に気付いて慌てて逸らされた。自分のタルトを食べ始める。晃牙も男に倣いながら、視線だけでメッセージを送る。
――あんたも朔間先輩が好きなんだな。わかるぜ。
ミルククリームタルトが潤んでいる。唇の温度に溶かされて、あるいは晃牙たちの視線を避けるように。朔間先輩の美しい唇に飲み込まれていく。
濃く甘い匂いを感じ取り、晃牙は獰猛に笑って完食した。