おかわり。
「ただいま~」
「おかえり。お風呂沸いてるぞい」
「サンキュ~。言ってたヤツ買ってきた。風呂場に置いとくぜ」
「ふむ? あぁ、寝ぼけて何ぞ頼んだようじゃな。お遣いありがとう」
「うおっ!?」
「そんなに警戒せんでもよかろう。ご褒美の口づけじゃよ」
「いらね~よ馬鹿!」
「つまらんのう~」
「フン!」
「わんこ~ただいま~」
「おうお帰り。メシ出なかったろ、風呂入る前に食えよ」
「生ハムサラダにトマトスープじゃな。優しさが身に染みるのう~」
「食い切れなかったら明日にしろよ。俺も食う……って、いらね~っつっただろ」
「トマト味のキスは嫌かえ?」
「そういう問題じゃね~よ!」
「おうおう、大神晃牙様のお帰りだぜ! 仕込んだカレーは残ってんだろ~な!?」
「おかえり~。美味しかったぞい。二次会まで出たのにまだ食べるのかえ?」
「あんなのメシのうちに入んね~よ! それよかコレ、頼まれたヤツな」
「いつもすまんのう~」
「んっ……ついでだから気にすんな」
「ただいま帰ったぞいーーって、なんじゃこれ」
「あぁ? あんたが欲しがってただろ~が」
「また寝ぼけて何ぞ頼んだのかのう……?」
「おうよ。感謝しろよ」
「それにしても、なんとも大量に……お礼のキスは幾つで足りるかや?」
「自分で考えろよ」
「ふむ……あんまりしても嫌じゃろうし、1つかのう」
「…………」
「ふむ……あんまりしても嫌じゃろうし、1つかのう」
「…………」
「……ただいま」
「遅かったのう~。レオン寝ちゃったぞい」
「なあ……これ」
「うむ? ーーこれは! 素材を厳選しすぎて100本しか生産されなかったという幻のトマトジュースではないか! 幾度の抽選にキャンセル待ちでも手に入らなかった逸品を、まさか我輩に……!?」
「他に誰がいるんだよ。心して飲めよ」
「ありがとうわんこ!」
「…………」
「お礼にたくさんキスしようぞ!」
「……おう」
「ただいま~……?」
「……! おかえり!」
「ふふっ、そんなところでうたた寝したら風邪引くぞい? 一緒にお風呂であったまるかえ?」
「ああああったまんね~よ!」
「そうかや? ……おや、もうお遣いしてくれたんじゃな。ありがとう」
「お、おう」
「それじゃ寝るかのう~」
「へ? あ、おい! ……何もね~のかよ……」
「ただいま」
「……お、おかえり……」
「んだよ」
「…………あの、なにゆえ我輩、玄関先で押し倒されて身動き取れないんじゃろう……?」
晃牙はなんだそんなことかと言うように鼻を鳴らし、零の服をたくし上げる。
胸元をひと噛み。鎖骨にざらりと舌を這わせ、そうっと歯を立てる。歯型がつくくらい、零を疼かせるくらいの強さで。
まるで零は、犬に囓られるオヤツの骨だ。
「気づいたんだよ」
今度は首筋。薄い皮膚越しに唇の柔らかさと吐息の熱を感じる。
「褒美は、取りに行くもんだって」
頬。鼻。額。
荒い息が、唾液が、下腹の熱の塊が、零の全身を『ご褒美』にする。
組み敷かれる直前ーー廊下の奥にプレゼントの山が見えた。ご馳走も、食卓に所狭しと並んでいた。どれも零が欲しがっていたものだろう。とうに忘れたが、食べたいと言ったかもしれない。
聞きたいが唇も『食べられている』。舐めて、歯を立てて、捏ねて、絡めて……とろとろにされている。
ご褒美を組み伏せているご主人様とその飼い主の元に、レオンが嬉しそうにやってきた。自分も遊んでもらおうと、ちょこんと前足を出す。
お手。
おかわり。
「レオン、ハウス。俺が貰ってんだからな」
(躾の仕方、間違えたのう……)
蕩ける理性を手放しながら、零は熱い溜め息を吐いた。