コウモリ柄のエプロンに
肉の焼ける匂いで目が覚めた。カーテンから朝日の薄く透ける部屋、にそぐわぬ濃い匂いは、その続きの一口コンロのキッチンから漂っている。夜の疲れを引きずる足で向かうと、エプロン姿の吸血鬼ヤロ〜が朝っぱらからフライパン相手に苦戦していた。
「……はよ」
「もう少し寝ておれ」
踊り狂うように跳ねる油と焼肉のタレ。その高カロリーの海に漂う炭の塊。グラム500円のラベルと空パックの転がる中に、記憶の底に眠らせていた弁当箱。
「……それかあっちを見ておれ」
困ったような怒ったような顔の恋人が愛おしくて、気づけば体をかき抱いていた。
「……うまそう」
焼肉もあんたも。
こんなにも欲情しているのに、コウモリ柄のエプロンに染み付いた糊と油の匂いが、いつか嗅いだ母親の匂いを思い出させた。