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甘くて紅いサマープディング

晃牙くん19歳おめでとう!の短編

!!ATTENTION!!
・零くんが晃牙くんの耳の穴を舐めて喘がせるシーンがあります!
・晃牙が零くんに挿れられる側だと勘違いして覚悟を決めようとするシーンがあります!


「晃牙や、明日はおぬしの誕生日じゃが、本当に何も欲しいものはないのかえ?」
「実はあんたの処女が欲しい。抱かせてくれ、朔間先輩」
 ……とか言えたらよかったんだけどなあ、恋人だし。
 大神晃牙18歳(明日で19)、そう思いながら床に就いたら、夢に先輩が出た。
「抱かせてやるよ、晃牙。けどホントに処女でい~のか? かっけ~シルバーアクセとか革小物とか、おまえの欲しがってた物いろいろ知ってるけど」
「……! ……!!」
 お馴染みの俺様口調で後輩のベッドに腰掛けた先輩に、晃牙はぶるぶる震えながら近寄った。
 感極まって言葉が出ない。いつでもかっけ~朔間先輩、晃牙の一番好きなデッドマンズ衣装で来てくれた。
 なんで夢に来てくれたんだ? さっき言われたことを思い出す晃牙の目の前で、先輩が立ち上がると灰色のジャケットを脱ぎ捨てた。
「朔間先輩!?」
 細い指がインナーのボタンを容赦なく外していく。
 濃紫のシャツの合わせ目から真っ白な肌が現れ、ハートのバックルに手がかかったところで晃牙はあわてて先輩の両腕を掴んだ。
「何すんだよ」
「こっちの台詞だよ! 何してんだよ先輩、その、抱かせてやるって……」
「朔間零の処女が欲しいんだろ? けど根は真面目な大神晃牙は付き合って半年足らずで言い出せなくて、昔の俺の動画でシコって寝たんだよな~? そんな可哀想な犬っころには俺が良い夢見させてやる♪ 魔王の処女は高くつくぞ~?」
「ツッコミが追い付かね~よ……」
 いや処女は欲しいけど、先輩で童貞卒業して~けど。いちおう晃牙は朔間零の彼氏だから、夢の中でも朔間先輩に操を立てたい。目の前のこの人も先輩だけど。
 晃牙が警戒して距離を取ると、先輩は「遠慮してんのか?」と小首をかしげた。遠慮してない。
「あ? もしかしてこっちのがいい?」
 パチン、と先輩が指を鳴らすとライブ衣装が夏服に変わった。真っ青なネクタイに半袖シャツ。真っ白いそれに格子模様の影が差して、部屋まで軽音部室に変わったことに気付いた。よく見たら窓ガラスに映る自分も赤ネクタイだ。シャツ越しにわかる先輩の肌の瑞々しさに、晃牙は思わず息を飲んだ。
 ――先輩、17歳だよな? 若け~……。
 晃牙に凝視された先輩が、どうだと言わんばかりに美しい顔でニヤリと笑う。
 かわいい後輩の好みを当ててみせたと自慢気だが、勘違いするところもかわいい。つまり、当時は憧れと眩しさで『世界一かっけ~朔間先輩』としか見ていなかったが、この春から芸能界入りした晃牙の目には、先輩の仕草ひとつひとつの『若さ』が映った。若さというか、無邪気さ、幼さ。魔王のように怜悧な美貌に年相応の無邪気がアンバランスで、彼を知る人にはひどく魅力的に思えたことだろう。晃牙にも、いやひとつ年上の晃牙にこそ、朔間先輩がかわいく見える。
 ……晃牙は興奮した。ちょっとだけ。真っ白な雪原に足跡をつけるような罪悪感も、ちょっとだけある。どうせ俺の見る夢だし、昔あっての朔間先輩だから、これは浮気じゃない。操立ってる。挿入までしたらわかんね~けど。
 想像してしまって前かがみの晃牙のネクタイを抜き取りながら、先輩が言う。
「安心しろよ、最後まではしね~から。おまえがちゃんと『我輩』を抱けるよう、セックスってやつを教えてやるよ……♪」
 最後までしないのに『処女をくれてやる』とはどういうことなのか。
 問い質す前に、キスの雨が晃牙を襲った。
 
 ☆
 
 土砂降りは英語でdogs and catsという。
「晃牙、こらっ、もういいって!」
 先輩に本気で胸を押されたので、土砂降りのdogsの部分になった晃牙はしぶしぶ先輩の上から退いた。胡坐を組んで、先輩がヨダレまみれの顔を拭うのをじっと睨む。
「キスしてみろっつったじゃね~か」
「おまえはそ~いうとこまで犬っころかよ。あのな、キスはムードを高めるためにするもんなんだよ」
「……あんたの真似しただけだろ」
「真似にもなってね~よ。ほら、起こせ」
 相変わらずの傲岸不遜な態度が少し懐かしい。朔間先輩は朔間先輩だが、『我輩』になってからは妙なところで一線引きたがる。俺とあんたの仲で今さら遠慮すんなよと晃牙は言いたいし、「自分の言うことを聞かないやつはいない」という自信たっぷりの朔間零が晃牙は好きなのだ。
 やっぱかっけ~なぁ、朔間先輩……。
 ニヤニヤを隠しきれないまま晃牙が先輩の手を引くと、逆に引き返されて胸元に倒れ込んだ。
 顎を取られてキスされる。
「んぐ!?」
 ――いきなりディープキスかよ!?
 強引に捩じ込まれた舌が晃牙の舌を捕らえてぬるりとうねった。犬にムードを求めてはいけないと悟ったのだろう、問答無用で腔内を責め立てる先輩に下半身が否応なく反応する。せめてもの抵抗で勃ち上がったそこを先輩の太ももに擦りつけてみたが、内股のやわらかさが先端を甘く包んだだけだった。
 もう一度、今度は強めに擦りつけようとしたところで、舌先をきつく噛まれて飛び上がる。
「~~~~っ!」
「はっ……躾のなってね~犬だな」
「あんたに教える素振りがね~からだろ!?」
 雰囲気作れるキスとか舌使いとか教えてくれるって期待するだろ普通……!
「教わる気がね~のはどっちだよ」
「ぐっ……!?」
 更なる衝撃に悶絶すると、嘲笑めいた吐息が鼓膜を撫でた。
 晃牙は顔を真っ赤にしながら自分の股を見下ろした。先輩のなめらかで長い指。マイクをまるで供物のように捧げ持ち、ときには後れ毛を気だるげに掻き上げる指が、俺のペニスを握っている。
 もっと優しく掴んでくれたら天国なのに、あろうことか先輩はそのままの力で晃牙の股間を扱き始めた。
「俺様が犬っころに教えてやる。ここはペニスだ。擦れば硬くなって、精液が出る。おまえもよく知ってるよなぁ?」
「あっ、あ! ぐうぅぅ……!」
「くくっ、顔真っ赤。気持ちいいか?」
 きもちいい。痛いのに先輩に抜かれてると思うとどんどん硬くなって、早く先輩の手に出したいと玉が張る。
 こくこくと頷く晃牙の耳の穴に、生温いものが侵入した。
「ひぁっ!?」
 ざらざらで濡れた何か――舌だ。とっさに女みたいなか細い声を上げてしまい、死にたい晃牙の耳を水音が襲う。
「こうひて、相手のきもひいいとこ探らなきゃな。んちゅ、れろ……くくく」
 耳の中なんて汚ね~ところ、どうして。だけどぴちゃぴちゃ言うのがこそばゆくてぞくぞくする。れろぉ、と舐められたら、ぞくん!と背筋に電気が走った。訳わかんね~くらいきもちいい。
 晃牙は気を紛らわそうと先輩を見た。失敗だった。先輩が手首を上下に動かす度に、袖口からすらりと伸びた二の腕に力がこもり、張り詰めた筋肉が盛り上がった。あぁ、先輩はこんなところまでかっこいい。だけど今はペニスを扱くためだけの力こぶで、それが股間にずくずくくる。
「はぁっ、は、あ、せんぱ」
 全身の力が抜けてしまい、辛うじて動く口で先輩を呼ぶと、先輩は耳の穴を犯しながら「ん~?」と返事した。ビロードのように心地良い声に愉快さが滲んでいる。手首のスナップもリズミカルに、けれどドラムスティックを振るときみたいに熱が入っていた。
 ……先輩は心底楽しそうに俺のペニスを擦ってるけど、これって俺の妄想なのか。だってこれは夢だ。俺の朔間先輩のイメージが、先輩に俺のペニスを握らせて、俺の耳の穴を舐めさせてる。俺の反応を見させてあまつさえ喜ばせてる。
 どうなってんだよ俺の脳内……。
「あ、あ、ぁ、あっあ、ア、い」
「……お~、イきそうか? んじゃ『待て』。次のステップを教えてやる」
 先輩はパッと手を離して晃牙の肩を両手で押した。
 棺桶の中で尻餅をつかされた晃牙は、立ち上がってガチャガチャとベルトを外す先輩を見上げて、うそだろ、と呟いた。
 嘘だろ、教えるってそっちかよ。俺童貞の前に処女捨てんのかよ。夢だからホントは捨てないはずだけど、起きたら絶対しばらく引きずる……。
 晃牙の体をサーッと血の気が下りていく。
 それでも、男ならなんとかそっちの覚悟もしようと、晃牙はぎゅっと目をつぶって寝転んだ。足元はすでにフラフラだ。
「んん? 何してんだ? 出してね~のにおねむか?」
「夢だったらいいんだけどな……」
「訳わかんね~けど、ちょうどいいや。んしょ……ほら、寝てたら教えらんね~だろ。目ぇ開けろ」
 晃牙がしぶしぶ薄目を開けると、目の前に尻が迫っていた。
「!?」
「ほぉら、よく見ろよ。おまえのを可愛がってやる穴……『ここ』に挿れて~なら、解さなきゃな」
 晃牙の頭の上でしゃがんだ先輩は、そのまま尻たぶを割り広げてみせた。両手の指の間で尻の肉がたわみ、むっちりとした双丘の奥に……薄桃色の窄まりが見える。
 緩んだり、窄まったりしている。
 唾をのむ音が遠く聞こえた。
「な、晃牙。挿れたい?」
「……! 挿れて~よっ!」
 先輩が肩越しににんまりと笑った。
「ふふん、そうかそうか♪ けど、まだ指も入らね~し……っあ!?」
 おまえが解せよ、と言われる前に尻肉を掴んだ。指はいつの間にかローションで濡れている。親指の付け根のところで谷間を広げ、親指2本で皺を伸ばすと「馬鹿、がっつくなよ」と余裕ぶった先輩の声がわずかに震えた。
 いくらでも解してやる。頑張ればここに挿れられる。頑張らなきゃ挿れられる(受け身)ってことでもある。だったらヤるしかね~だろ。幸い男同士のやり方はネットで何度も調べたから、解し方はよく知っている。童貞(おおかみ)の力舐めんなよ!
「……んだよ、穴見て満足か? 犬っころには刺激が強すぎ――」
「先輩、わりぃな」
「へ? ――ひゃあっ!?」 
 短く謝ると、晃牙は先輩のアナルに舌を這わせだした。予想外の刺激に尻がきゅっと締まるが気にせず舐め解す。「きたね~だろっ!?」夢だから汚くない。犬呼ばわりされるほどの忠誠心と恋慕とがあれば、恋人の尻にだって顔をうずめられるのだ。
「ぁっ、く、ぅぅ、あ……っ」
 皺がふやけきるのを待って、唾液でてらてらのアナルに指を差し込む。最初は人差し指、なじませたら中指も挿れて中を責めた。最初は息を詰めるばかりだった先輩も、次第に声を漏らし、じれったいといわんばかりに腰をくねらせ始めた。あ、あ、と鼻にかかった喘ぎ声。同じリズムで尻を突き出し、はっと我に返って尻肉が熱くなる。恥ずかしがる先輩なんてめったに見られない。
 先輩は、しばらく晃牙の上でじっとすると、「……今、押してるところ、『我輩』も気持ちいいから」と消え入りそうな声で呟いた。
「こんな感じか?」
「っ! あぁ、そこ……っ」
 3本に増やした指で強く押されて、先輩の口から悩ましい溜め息が出た。きゅう、とかわいいアナルが指を締め付ける。
 ホントに気持ちいいんだな。リズミカルに刺激していると尻がくなくなと揺れだしたので、晃牙は指先をさっとずらした。
「……あ……? な、なんで」
「他にも気持ちいいとこ教えてくれよ。セックスを教えてくれるって約束だろ、朔間先輩」
 慌ててこっちを振り向いた先輩が、紅い瞳を蕩けさせる。ちょうど人差し指を曲げた先も気持ちいいポイントだったらしい。
 ここもいいのか。じゃあここも?
「はっ、あっぁ、んっ、こうがっ、うまいじゃね~か……っふ、は、ははぁ……っ」
 先輩は後輩の顔に跨りながら、魔王っぽく笑おうとしてる。途中で吐息に変わってすげ~エロくて、上気した尻が目の前でバウンドするのもめちゃくちゃエロい。
 晃牙は黙々と生徒に徹した。指で色んなところをやさしく押して、たまに当たりっぽいところで強く抜く。そのたびに尻が顔のぎりぎり近くまで突き出されるから、鷲掴みにして強引に突き入れたくなるけれど、俺はリアルの朔間先輩で脱童貞するんだと心を鋼にした。
 でも挿れて~よ。こんなにエロいのに。気持ちよすぎて心細げに振り返る先輩の、真っ赤な顔と切なく寄った眉、だらしなく開いた唇が誘っている。柳眉の下で瑞々しく輝くルビーも、唇の奥から無防備に突き出された舌も、俺のペニスが欲しくてそうなってるんだって思いこみたくなる。
 夢の中ならノーカンじゃね~かな。いや駄目だろ、俺の先輩に申し訳ね~だろ。
 けど、なあ、先輩……。
 
「……いいぜ、晃牙。こいよ」
 
 ずくん、と心臓が跳ねた。
「なっ、先輩……!?」
「前戯はもういいから、次を教えてやる。つっても尻に挿れるんじゃね~けど。『素股』って知ってるか?」
「そっちか……」
 晃牙が仰向けのままうなだれると、先輩が晃牙の体を端にやりつつ「期待したか? 悪ぃな~?」とニヤニヤした。
「ごちそうは誕生日までとっとけよ♪」
 太股の処女はおまえにやるんだし、と先輩。つ~か自分のことご馳走って言ったぞこの人……。
「……『我輩』も、その方がいいし」
 まんまと晃牙を処女で釣った先輩は、棺桶の中にしどけなく寝転ぶと片腕で自分の太股を抱え上げた。起き上がった晃牙の前に今度は真っ白な太股が来る。真っ白で、柔らかくて、汗できらきらと光る太股。汗の甘酸っぱい匂いが晃牙の鼻をくすぐるから、おもわず「うまそう……」と呟いてしまった。合わせた太股の隙間から、朔間先輩が薄く笑うのが見えた。
 ここに挿れていいのか。擦りつけていいんだよな。俺のを、そういうことに使ったことがない先輩の太股に、ぶっかけていいんだ。
 股間がかーっと熱くなって、気付いたらブチ込んでいた。
「っ、は、先輩……っ!」
 思いきり腰を振ると先輩の顎がクッと仰け反った。喉仏まで綺麗で興奮する。先輩の体はどこも綺麗で、晃牙のペニスを挟み込んだ内股もなめらかに波打ち亀頭に甘い刺激を伝えてきた。でも太股はアイドルだからそれなりに細い。よりきつく挟んでもらおうと、両腕で太ももを抱え込んだり根元まで捩じ込んだりしてみたら、その度に欲張りな犬だという顔で先輩が口の端を吊り上げた。
 先輩の余裕を奪いたい。
 男の矜持がめちゃくちゃに腰を振らせる。勢い余って腰が落ち、亀頭が先輩のペニスの裏筋をかする。
「ひ……っ!?」
 ――これだ、と野性の勘が働いた。
「ひ、あっ、あ!? う、はぁ、あ、っ」
 先輩は突然の刺激に口を塞ぐのも忘れて喘ぎ出した。内股が震えている。尻からふくらはぎまでピンと力がこもり、爪先が切なげに丸まった。
 きもちいい、と薄い唇が紡いだのを、晃牙は見逃さない。
「ぁ、ば、ばか、この……っ!」
「先輩、気持ちいいだろ」
「~~~~っ!」
 晃牙が腰をカクカク振ると、快感を逃がせないのか耳まで真っ赤にして髪を振り乱した。前髪が額に張り付いて顔を隠したからわざと掻き上げて、泣きそうな顔を見つめてやった。
「くくっ、顔真っ赤」
 朔間先輩、すげ~かわいい。そう言ったら、赤い眦を吊り上げて睨まれた。かわいいからぜんぜん怖くない。世界一かっこいい先輩が怒ると世界一怖え~けど、今は悔しそうだから怖いというより愛しかった。
 先輩の処女はもらえないけど悔しがらせた。男として認められた感じがけっこう嬉しい。
「はあっ、ん、んぐ、は……っ!」
 先輩が今さら両手で口を押さえる。めくれ上がったシャツの裾から綺麗に割れた腹筋が見えた。筋肉の溝が濡れてテラテラしている。反り返ったペニスが先走りを零しているのだ。先輩が気持ちよがっている証だった。
 晃牙も最高に気持ちよくて、素早い抜き差しを繰り返す。先輩のペニスで擦れる亀頭、くびれた部分は内股に引っかけて扱く。先輩の紅い瞳がじっとペニスを見つめているのは、繋がる様子で興奮しているからだろうか。
 そうだ、俺は先輩と繋がってる。セックスしてる。
「はっ、はは、なあ先輩っ! 俺、あんたとセックスしてんだな! 変な感じするっ、悪い意味じゃなくていい意味で! 先輩っ、すげ~好きだっ、先輩……っ!」
 素直になれない彼氏がこんなに気持ちを吐き出したのに、朔間先輩、大好きなこの人は本当に悲しそうな顔をした。
 店頭の食品サンプルを見て「持って帰って食べる!」と騒ぐ子どもを見かけた大人のような悲しそうな視線、というのがぴったりの目で、晃牙をそっと見上げたのだ。
 なんでだよ先輩。あんたは夢の中の先輩だけど朔間零だろ。だけどやっぱり幻なのか。切ない気持ちが胸にこみ上げ、息を詰まらせる。
「……っ、先輩、出すぜ……っ」
「っ!? あ、うぁぁ……!」
 返事も聞かずにペースを上げる。先輩の胸の上で青いネクタイが波打った。17歳の先輩とセックス。ここは軽音部室で、俺は先輩のテリトリーを荒らしてる。罪悪感が腹の底でマグマになって熱い。虚構を現実にしたがる感情。
 先輩。先輩に出したい、先輩を抱きたい。先輩を俺でいっぱいにしたい。
「ひっ、ぁっ、アっ、あ――」
「先輩……っ!!」
 先輩の最奥にぶちまけるつもりで晃牙は勢いよく射精した。
 素股だから奥なんてない。精液はびゅるびゅる飛んで、ネクタイとシャツにぱたぱたと落ちた。
 薄黄色の粘液が真っ青なネクタイに染みていくのを眺めながら、
「明日もこんな風に抱いておくれよ、『わんこ』」
 ……『先輩』はそっと目を伏せた。
 
 ☆
 
「晃牙、今日はおぬしの誕生日ゆえ、何でも注文しておくれ」
「……つっても、この後ステーキ食うだろ。甘いもん食わね~し、紅茶くらいだな」
 誕生日当日。
 晃牙は仕事が早く終わったからと先輩に連れられて、英国式のティーサロンに来ていた。
 外観が純イギリス建築のサロンは内装も英国家具で本格的だ。小花柄のクロスを広げたテーブルに、まわりの客はケーキスタンドとティーセットを載せてのアフタヌーンティー。軽食のメニューも扱うここは5時を過ぎても満席で、客も給仕もトップアイドルの晃牙と先輩に気づいているだろうが、紳士淑女らしく知らないふりをしてくれている。
 晃牙は幸せな溜め息を吐いた。自分の大好きな英国に似せた場所をデートスポットに選んでくれる先輩。愛を感じる。
「ふむ。ならばこれなんか良さそうじゃな。すみません、注文お願いしますぞい」
 先輩はてきぱきと晃牙の分まで注文してくれて、「楽しみじゃのう」とメニューの陰で笑った。
「なに頼んだんだ?」
「内緒じゃよ」
 そう言って視線を落とす仕草の儚さが、『昨日』の先輩によく似ていた。
「わんこは紅茶に一家言あるかや? 我輩、吸血鬼だからと差入れで紅茶をいただくようになってのう、勉強してみようと思うのじゃけど」
「先輩」
「うむ?」
「……なんでもね~よ」
 抱かせてくれなんて、優しいこの人に言ったら無理やり叶えちまうよなぁ……。
 晃牙はテーブルの下で拳を握った。優しさにつけ込むのは卑怯だと思う。たしかに頼めば処女のひとつやふたつくれるかもしれないけれど、先輩の心の準備もなしに貰うのはぜんぜん違う。明日も抱いてくれと夢の先輩に言わせたのだって、そうして罪悪感を軽くする自分に気付くと恥ずかしかった。
 晃牙がこの茶葉はこうだとメニューを覗き込んでいると、注文の品が運ばれてきた。先輩が頼んだのはアイスティーと夏季限定のサマープディングだった。サマープディング、薄く切った食パンをプディングの型に張り付けて、その中にミックスベリーとベリージュースを注いで冷やしたお菓子だ。もともと療養施設の患者に食べさせるものだったが、今や立派な英国デザートになっている。
「血のように紅い見た目が宴の始まりにぴったりじゃろう♪ 遠慮せずお食べ」
 誕生日を宴と言われるとこそばゆい。真ん中で分けた片方をくれたので、照れ隠しに一口で食べた。すると。
「~~~~っ! 酸っぱすぎんだろ!」
「おぉ、たしかに酸っぱいのう……なにゆえ一口で食べてしまったのじゃ?」
 そう聞く先輩の口の端がぴくぴくしている。絶対知ってただろ。俺が狙い通りの反応したからって笑うなよ!
 晃牙がギロリと先輩を睨むと、先輩はサマープディングのように真っ赤な瞳で流し目をくれた。
「しかしまあ……酸味で迷いも吹き飛んだじゃろう?」
「は?」
「晃牙、『今日のごちそう』は決めたか?」
 
 呆然とする晃牙の目の前で、朔間零はサマープディングの残りを優雅に片付けた。
 ミックスベリーの弾ける舌触りを堪能し、甘酸っぱい生地は添えられたアイスと共に唇の奥に滑らせる。
 アイスティーで喉を潤していると、晃牙もぎこちなく飲み始める。顔を覗き込めば真っ赤な頬がかわいかった。きのう味見した通りの、初々しくて生真面目な恋人。愛しい犬っころ。
 宴は始まったばかりだ。

「甘くて紅いサマープディング、教えた通りに食い尽くせよ?」


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