恋する先輩はせつなくて……
パス子さんお誕生日(1/21)おめでとうございます!!
パス子さんのお誕生日、21日なのに28日だとずっと思いこんでて……昨日初稿上げて「おっ3回は校正できるな余裕余裕」って慢心してました……あああああああ
本当に本当に申し訳ございません……パス子さんはわたしの誕生日当日にくれたのに……
本当に本当に申し訳ございません……パス子さんはわたしの誕生日当日にくれたのに……
わんこのことがだぁいすき。
わんこを想うと胸がきゅんきゅんってなって、いてもたってもいられなくなるのじゃ。
ホントじゃよ?
わんこのかわいいお顔を見ると、つい甘やかしたくなるのじゃよ。べたべたの甘々に可愛がったり、偉いのうかっこいいのう、って優しく頭を撫でてやったり……膝枕でお昼寝するのは嫌いかえ? 恥ずかしいって言ってそっぽ向くじゃろ?
わんこはいつもキリッと頑張っておるけど、我輩もっと甘えてほしいぞい?
だって我輩、先輩じゃもの。
先輩は後輩を甘やかしたい生き物じゃもの。……なんて❤
恋する先輩はせつなくて……
レオンも眠る午前2時。
かすかな物音、そしてすぐ傍の体温が離れていったので、晃牙の意識はしぜんとうつつに浮上した。
まどろむ頭に小さな音が響いて消える。
ぺたぺた。キュッ、ジャーッ、キュッ。ごくっ、ごくごく。
先輩、水飲んでるなぁ。またスリッパ履き忘れてる。フローリングなのに寒くね~のかなぁ。
床の『つめたい』感じを思い出して震えていると、足音がダイニングを渡ってベッドに戻ってきた。晃牙はあわてて寝たフリだ。夜中に先輩と顔を合わせるのはとても気まずい。大英博物館所蔵のルビーのように紅い目が晃牙を闇の深いところに連れて行ってしまうのだ。魅力的だけど断固として拒否だ、明日は早いから。
「……ふぅ……」
晃牙が息を詰めているとも知らず、先輩は悩ましげな溜め息をこぼした。冷たい空気が掛け布団に忍び込んだ。シングルベッドの軋む音。お揃いのパジャマが布団をかき分け、すっかり冷えた踵でシーツの波を押しのけるのを、音と気配だけで感じている。
先輩が頭を枕に預けると、晃牙はそっと息を吐き出した。
溜め息の音が闇にとける。その名残が消えるのも確認してから、ほんの少しだけ緊張を解く。
――先輩と同棲を始めて数か月。
大好きで憧れの朔間先輩の『悪癖』にも慣れてきたところだ。
『悪癖』、つまり悪い癖だと先輩が言うそれは真夜中に目を覚ましてしまうことで、真っ暗闇の寝室に寂しくなって襲うことだ。
誰を? 晃牙を。恋人だから当然だよなぁ、とさんざん搾り取られた晃牙が笑うのを、先輩はいつも申し訳なさそうに見つめている。頼れる先輩、あるいは主演ドラマで華々しい役を演りきった男と同じ顔で。
襲う方法は色々だ。布団に潜り込んで晃牙の股間に顔をうずめたり、ひんやりとした唇で顔じゅうにキスの雨を降らせたり。ギターの弾きすぎで出来たマメごと指をしゃぶられたときなんか、晃牙の方から襲ったくらいだ。
『晃牙……起きてる? 俺と遊んで……』
吸血鬼を吸血鬼たらしめる闇の中、ルビーみたいに美しい目が切なく潤んで見つめてくる。ひとりぼっちの先輩が、ひとりぼっちだと諦めていた先輩が、泣き出す前の顔で助けを求めてくれるのだ。無視するヤツがいたら人間じゃね~、と晃牙は思う。
そして翌朝の黄色い太陽にげっそりするのも晃牙だけれど。
喉が渇いただけなら、もう寝るかな。
睡魔と戦いながら朔間先輩の気配を探る。①布団に入った(=俺の体に跨らなかった)②頭を枕に預けた(=俺の顔にキスする距離じゃない)、つまりホントに水を飲みに起きただけらしい。起きたら毎回襲ってくるのに、珍しいこともあるものだ。朝から撮影あったらしいし疲れたんだろうか。先輩は疲れ知らずに見えるがそんなことはなくて、晃牙は先輩が太陽に弱いことをよく知っているから疲れ知らずだとは思ってないけれど、色んなメディアに出ずっぱりの先輩を世間はそう見ているらしい。たしかにこの前の連ドラと今度公開の映画は撮影期間だだ被りだし羽風先輩とシングル出すし、リップクリームとピザのCMにも出ていた。芸能界ってすげ~ブラック。こんだけ仕事立て込んでて先輩倒れね~のかな。俺を襲ったりせずたくさん寝てほしい。セックスしたいなら先輩がめちゃくちゃ元気なときに死ぬ気で抱くから。
と思ったけれど、そこでふと違和感に気付く。
③先輩の寝息が聞こえ
「……我輩、年上なんじゃけどなぁ……」
「――ッ」
咄嗟に息を詰めてやりすごした。あきらかに顔がこちらを向いているときの口の位置から先輩の声がした。見られている。ごそごそ、と衣擦れの音に続いてもう一撃。
「……甘えてほしいんじゃけどなぁ……」
誘ってんのか。先輩。
……と思いきや、どうやらそうではないようだ。晃牙は先輩が寝返りを打つ音を確かに聞いた。襲ってほしい相手に背中を向ける先輩がいるだろうか。朔間先輩のことだから晃牙がぎこちなく甘える様子を正面切って見て楽しもうとするんじゃないか。そしてキレて暴れる晃牙を「わんこは甘えんぼさんじゃのう~~❤」と馬鹿力で抱きかかえてデレデレするんじゃないだろうか。絶対そうだ。俺様は朔間先輩のことを誰よりもよく知ってるんだ、間違いない。
はぁ、と切ない吐息が聞こえて心臓が跳ねた。薄目を開けると丸い背中が見えた。朔間先輩の寂しそうな背中。晃牙は先輩全般に弱い。困った顔をしてたら駆けつけるし悲しい顔をしてたら狼狽えてしまう。切なく、梅雨の華のような憂いを帯びた吐息が聞こえたら、俺に出来ることなら何でもすると叫びたくなる。
そしてなんでもするのだ。
「……っ、晃牙……?」
――たとえば、背中に抱き付いたり。
あ~あ、と思った。
今夜も搾り取られるなぁ、と晃牙は諦めて、せめて疲れない体位でやることを考えた。腰を打ち付けるのはけっこうキツイのだ。明日はダンスレッスンがあるから特に。でも先輩のかわいいところを見たら騎乗位なんかで満足できなくなるんだろうなぁ。先輩の真っ白な太股を割り開いて押し入って、俺様以外を知らないソコに思い切り突き立てたり吐き出したりして、先輩の幸せそうに蕩けた顔をじっと見たくなるんだろうと晃牙は知っている。それもまた楽しい。先輩の尻に締め付けられるのは気持ちいいし求められている感じが嬉しくて、幸せになる。
晃牙を世界一幸せにする朔間先輩が、ゆっくり寝返りを打った。
困惑の表情で見つめられる。
「……甘えてくれるのかえ?」
頷くと、まず紅い目が見開かれた。零れ落ちそうなルビーの輝きに目を奪われる。ほんとうに、と唇がわなないて、口元からしだいに笑みが広がった。雪に覆われた生垣の中から薔薇のつぼみが顔を覗かせたようだった。
胸の甘い高鳴りを、晃牙はどうやり過ごそうか困ってしまった。
「甘えるとか、どうやんのかわかんね~け――んぶ!?」
「ふふっ、そうかや、甘えてくれるかや……❤」
胸に晃牙の頭を押し付けながら先輩がころころ笑う。やわらかい感触に石鹸と汗の混じった甘い匂い、先輩の『生きてる』ニオイと体温が晃牙の鼻頭に伝わってクラクラする。
そのまま布団を掛け直され、晃牙は胸の谷間からあわてて声を出した。
「あ、あのよぉ」
「なんじゃ? 甘えんぼわんこ❤」
「うぐっ……その、さぁ、してこね~の?」
「ふむ? 何をじゃ?」
「き……キスとか……」
ぽかん。
先輩の間抜け面は、花の蕾のような可憐な笑顔を消し去った顔は、晃牙に選択ミスを伝えた。
選択ミスだ。どうやらホントに甘やかしたいだけだったらしい。
「あああ……」
「そうかや……キス……口付け、のう……」
真っ赤な顔で頭を抱える晃牙をよそに先輩はしばらく首をひねっていたが、ふと手を叩いて晃牙の顔を上げさせた。満面の笑み、しかもどちらかというと誇らしげな顔が、うっとりと言葉を紡ぐ。
「甘えてるのじゃな!」
なんでそうなる。
……でも、そういうことにしといた方が都合がいいかもしれない。都合というか先輩の機嫌というか。ニコニコと晃牙を見つめる先輩に今更「先輩をかわいそうに思って抱き付いた」なんて言ったら泣かれるか怒り出すだろう。怒られるのはまだしも泣かれると弱い晃牙だ。
「……そ、そうだよ! 甘えてんだよ! キス!」
しろよ、と言う前に口を塞がれた。
「むぐ……っ!」
「んん……❤」
そこからは文字通り息もつかせぬ展開だった。先輩の唇が晃牙のおなじところに覆い被さり、柔らかさを楽しむように何度も繰り返し押し付けられた。綿雪のような心許ない口づけの後に舌が覗いて、晃牙がそっと口を開けると飲み水のつめたさのまま歯列の向こうに辿り着く。先端をちゅっ、ちゅっと触れ合わせる。「ん、」声を漏らす暇すら惜しんで甘噛みされる。舌同士が擦れ合うたびに、先輩の一部と縺れ合っているのだと興奮した。後頭部が熱く痺れた。つららみたいだった先輩の舌が晃牙のそこと擦れ合ったり捏ねられ合ったりするうちに、晃牙の温度でふやけて蕩ける。
「ちゅ❤ んちゅ、ん、んぅ……❤」
「……っ」
ふと、晃牙は薄目を開けると息を詰めた。
「んむ? ……ククッ、いけないわんこじゃな❤ そんなに我輩が気になるかえ❤」
答えられない。キスのときは目を閉じるのがマナーだと教えられて、そのくせ先輩は開けたままだよな~と思いながらも今まで行儀よくしていたから。
恍惚と舌を突き出す先輩を見た瞬間に、背徳感に襲われたのだ。
「べ、別に……っ、ぁ、んむっ」
その瞬間の吐息を、また奪われる。
「んン……っ、ちゅぱっ……んぁ……っ❤ はあぁ……んむぅ……❤」
先輩が晃牙の顎裏をねっとりと舐め上げ、そうかと思えば尖らせた先端でちろちろと擽る。晃牙が両腕で目の前の体にしがみつくと、先輩の片手が背中をやさしく撫でた。いやらしさのない手つきに体中の熱を煽られて、キスがもっと甘くなる。
ようやく先輩が唇を離したとき、ふたりの間を銀の細い糸が伝って途切れた。唾液は興奮すると粘度が上がると中3の頃のクラスメイトが騒いでいたのを、晃牙は遠い出来事のように思い出す。
もっと興奮させたい。
晃牙は先輩の指に唾液を拭われながら次の手を考えはじめた。キスの次は上半身の愛撫だ。さっそくベッドに押し倒そうと、先輩の腕を背中から外して抱き締める。
ところが先輩は晃牙の腕の中からするするとくぐり下り、
「ふふっ? か~わいいのう……❤」
晃牙の股間に頬擦りした。
「かわいい晃牙が甘えてくれて嬉しいぞい❤ 晃牙の勇気と優しさ、先輩として報いねばならんのう? ほれ、このように❤」
期待半分、怖さ半分……期待7割かもしれない、闇の中でも輝く瞳の紅に痛いほど張り詰めた晃牙自身を、先輩の指が扱き上げた。最初の三擦りはパジャマと下着越しに、その後は下着の中に手を入れて。晃牙が爛々と光る目で見守る中、下着を剥いて肉茎に対面した先輩が雌の顔で喉を鳴らし、布団の陰から晃牙を見上げる。
「ククッ、心配は無用……悪魔も逃げ出す快楽地獄、泣いても喚いても最後まで楽しませてやるぞ……❤ ……ぁむっ❤」
屈託のない擬音と共に、亀頭が唇の中に消えてゆく。
「~~~~ッ!」
晃牙は頭を打ち振った。熱くぬめって蕩ける粘膜がじゅっぷりと雄に吸い付いていた。吸い付くのだ。亀頭の先から根元まで、雄の象徴をひと飲みされて口全体で扱かれる。唇はきつく窄まり頬肉は添わされ、おいしくて仕方ない、はやく精液が欲しいというように舐めしゃぶられた。ねだるどころか奪い尽くす動き。口腔で晃牙を抱くようなものだ。
晃牙は内腿で先輩の頭を挟み込んだ。これ以上は好きにさせないと意思表示したつもりなのに、抵抗むなしく両手で股を割られる。開脚を強いられながら口淫される。いっそ屈辱的だ。
「んんぅ❤ ん❤ ンっ❤ んむぅ……っんぶ❤ っは、ふふ、気持ちよさそうじゃのう❤ おちんちん、おぬしみたいにぴくぴくしておる……❤」
「っくそ、――あ!」
悪態をつく暇も与えないとばかりに昂ぶりを啜り上げられた。湿った内頬、ざらついた舌の肉感が晃牙の欲を引きずり出す。
負けてたまるか。これはもう勝負だ。されるがままかやり返すかの。
男のプライドと股間に関わる一夜に晃牙は打って出る。
「う、ぁ、んん゛……っ、ばっ、せんぱい……っ」
「ん~? なんひゃぁ?」
喘ぎ声を堪えて呼ぶと、先輩がのん気に布団の中から返事した。もぞもぞ、頭の動きに合わせて布団が上下している。
晃牙は頭らしき部分を両手で掴んだ。力加減は控えめに、だけど先輩が口淫を中断するくらいには。
「ん、んう?」
予想通りに先輩の頭がぴたりと止まる。その拍子に舌が裏筋を掠め、晃牙はまたしてもダメージを喰らった。必要な犠牲だ。
ところが、
「っぷは、ん、ここかえ❤」
先輩の唇が亀頭に吸い付いた。
「ひっ!?」
咄嗟に脚を閉じた晃牙を布団越しに先輩が笑う。そして追撃。はむはむと柔らかい唇で愛撫され、尖らせた舌が鈴口をくじると雷のような快感が晃牙を襲った。
「あ……っ! っぁ、ちが」
「違わんのう~? ククッ❤」
「あっあっぁ、く、ぅくうぅ……っ!」
――どうした晃牙、その程度か。
いつかの返礼祭で先輩に煽られたのを思い出した。至極愉快そうな声音が晃牙をふはははと笑う。くたくたの晃牙を。もっとやれるだろと期待する眼差しで。
反撃だ。どうやって? 布団に邪魔されて敵陣が見えない。
寝転んだままの晃牙が掛け布団を勢いよくはぎ取った瞬間、時間が止まる感覚を味わった。
唾を飲み込む音が妙に響いた。晃牙のではなく、朔間先輩の。肉茎をしゃぶっている。唾液まみれで血色の良い頬を滑稽なほど凹ませた恍惚顔、ステージ上では絶対に見せない、晃牙が独り占めできる少ない表情。悩ましげに眉を寄せて、雄に奉仕している。
昂ぶりに血が集まるのを感じたのか、先輩が目だけでとろんと見上げてきた。そうしてわざとゆっくり肉竿を抜いてみせ、出てきた亀頭を唇で挟む。やわらかい感触が股間を襲う。普段は紫色の先輩の口が、晃牙の股間を出し入れしすぎてぼってりと腫れ上がって赤い。先輩の唇はもう、晃牙の亀頭を受け止めるためだけのベッドだ。
独占欲に股間をたぎらせたところを、ふたたび一気に飲み込まれる。
「んん……っ!」
「んむっ、ウ、ンは、っ、んちゅぅ……っ❤ はぁっ……わんこのここぉ、ガチガチ……❤ んっ、はん、っちゅ? もっと❤ もっと硬くして……っ❤」
獣のように頭が上下する。
返事の代わりに晃牙は首を横に振った。もう無理だ。精液が出口めがけてこみ上げてくる。
「でっ、でそう……っ、ぁ、ぐぅっ」
「うむっ❤ ぢゅっ❤ がんばれ❤ ぁむ、んン、いっぱい❤ っだすのじゃよぉ❤」
イかせることに集中した先輩の口腔がますます熱を帯びる。晃牙自身にねっとり絡みつき、粘膜で根元から先まで包み込んだまま扱き上げる。女の子みたいな自分の喘ぎ声と、じゅっじゅっとわざとらしい水音とが晃牙の鼓膜を犯す。先輩にフェラされてる。先輩に口の中で支配されて恥ずかしい声を上げている。
「んむぅっ❤ ん゛っ❤ んぐ❤ んじゅっ、んぷ❤」
一方の先輩は息苦しそうに柳眉をひそめ、鼻水をすすっては頬をこけさせる。涎で髪が張り付いている。じゅるりと音がした。真っ赤な唇をグロテスクな肉塊が出入りしている。晃牙のペニスだ。先輩の顔が陰毛の茂る股座に沈み、鼻先で縮れ毛を掻き分ける。
乱れた髪の合間から、紅い目が晃牙を捉える。
「ぁっ、でっでる、ぅ、――!!」
「んぐ……っ!」
目の前がホワイトアウトした。放出感。陰嚢にたまった精子が尿道を通り抜けると喉の奥に勢いよく飛び散る。空気に精液のニオイがぷんと混じった。
先輩は反射的にえずくのを、無理やり押さえ込んで飲み干した。
「――ぁ――……❤」
喉を垂れ落ちるそれにイかされたように、先輩は雌の顔をして倒れ伏した。が、すぐに座り直して萎えた(が射精前より敏感な)性器をぱくりと咥える。
晃牙が声なき悲鳴を上げてもお構いなしだ。
「ふざけっ、あ゛ぁ゛~~ッ!」
「ちゅうぅぅっ、んちゅ……よ~しよし、大人しくしておれ」
尿道の中を精液が吸い上げられる感覚は名状しがたい。イったばかりでひりつく感覚を刺激されるから、気持ちよすぎて死にそうに痛い。
「んちゅ、ちゅぅぅぅっ…………ぷはっ❤」
一滴も残さず吸い尽くすと、先輩は満足そうに唇を舐めた。いやらしい仕草だが興奮する気力は晃牙にはない。
脚の間で先輩がズボンを脱ぐのをぼんやりと眺める。
ゴムの穿き口が膝立ちの太股から滑り落ちる。白い太股の付け根を黒いボクサーパンツが隙間なく覆っている。いっそ禁欲的なそれに目を奪われていると、先輩の指先が宙を掻く。
ほっそりとした指先が太股にそっと這わされ、膝頭から足首の先へとズボンを下ろすと……パンツに包まれた尻で晃牙の腹に跨った。
「……っ」
「ククッ、そうじゃ、わかっておるようじゃな……おねだりしておくれ? 我輩のお尻が欲しいじゃろう……❤」
笑いながら先輩は下着をずらした。脚の付け根まで穿き口を下ろし、尻たぶを?き出しにする。柔らかいあわいに挟まれて、雄がむくむくと硬さを取り戻すのがわかった。
「んっ❤ ん……ほれ、こやつは素直じゃぞ……っ❤」
先輩が尻を揺するのと同時にむっちりとした柔らかさが肉竿を襲った。晃牙が顔を歪めて感じてしまうのを、猫のような笑みを浮かべて覗き込まれる。
亀頭が尻たぶの奥の窄まりを掠めた。わざとだ。わざと擦りつけられたとわかっていても腰が揺れる。晃牙自身にまとわりついた唾液が潤滑油になり、ずっ、ずっ、と割れ目を行き来する。
「……ぁっ❤ んぁ、あ……ぁ❤ あはぁっ……晃牙ぁ……っ❤」
気まぐれに窄まりを掻かれるのが気持ち良いのか、先輩は蜜のような嬌声をこぼしては尻をきゅっと引き締めた。尻たぶの谷間に昂ぶりが沈み込み、果物に似た弾力に揉まれて押し戻される。きもちいい。先輩が尻を揺する。挟み込まれる。尻穴を掠める。
……先輩の頭には、晃牙に反撃される可能性は残っていなかった。当然だ。晃牙はされるがままに仰向けに寝転び、オヤツを『待て』する犬そっくりの顔で喘いでいたから、命令を無視されるなんて思いもしなかったのだろう。
だが晃牙はオオカミだ。
「ほれ、おねだり――ひゃうっ!?」
先輩が嗜虐的な顔から一変、体を跳ねさせた。すぐに目尻を朱く蕩けさせ、口がだらしなく半開きになる。突然窄まりを襲った刺激――閉じたままの後孔を亀頭で抉じ開ける感覚に、背筋を震わせ感じ入る。
先輩の腰を掴んだ晃牙が、無理やり窄まりの位置を亀頭の前に固定させたのだった。
「っあ、ァ❤ あぁ……っ❤」
歓喜と恐怖が思考を塗り替える。花の蕾のように閉じ、指で解されてもいない窄まりに入る訳がないのだ。無理やり捩じ込まれたら壊れてしまう。なのに亀頭の先が孔に吸い付き、期待に膨らんだ肉の柔らかさを最奥に教えようとしてくる。
「だめじゃぁっ❤ おねだりっ❤ まだじゃろぉ❤」
「誰がねだるかよ! 後輩のわがままくらい許せよ、先輩……っ」
「せ、せんぱい……っ❤ わがはい、せんぱいじゃけどぉ……❤」
身も心も蕩けた隙に先輩を組み伏せると、晃牙はサイドボードから手早くゴムとローションを取り出した。しかし脚でしがみつかれて解せない。
「こうがぁ……❤」
「わかった! わかったよ、ゴムつけるから離せよっ」
「ゴムもいいからぁ……❤」
「駄目だろっ!?」
そう言った瞬間、胸倉を掴まれた。冗談みたいな力で引き寄せられて耳朶を噛まれる。湿った吐息が鼓膜を濡らし、リップ音。驚く晃牙に顔を離して微笑みかけると、今度は両腕で晃牙を抱いて、
「……きて?」
砂糖衣をまとった睦言が、熱でかすれて鼓膜に届く。
「……どっちが」
「うむ? ――ぁ」
窄まりはゆっくりと押し拡げられ、待ちかねたように肉茎を飲み込み始めた。ずぶずぶ、あるいはぬぷりと、皺を広げたそこからローションが溢れる。潤滑剤を追い出した分だけ晃牙と先輩は深く繋がり、性器と粘膜で擦れ合う。お互いの愛を確かめるように痛みに体を焼かれる。
「っ、ぅ、く……っ」
先輩が喉を反らせて耐えた。ぎちぎちのそこで皮膚が張り詰めた。なぞるとひくつき、晃牙自身を締め付ける。ねだっている。
泡立ったローションが白く濁って垂れている。根元まで収まった頃には晃牙の下生えまでぐっしょりと濡れて輝いて、まるで先輩から愛液が漏れたみたいだ。
はいった、と先輩が息を吐く。
「はいっちゃったのう……ふふっ❤」
「おう……」
「ね、うごいて? わがはいでイって?」
「言われなくても」
あんた以外でイけね~よ。そう返事する代わりに最奥を突いた。
「あ❤」
内壁が亀頭にキスされてたわむ。もう一度。締め付けられすぎて腰は引けないからすぐ隣を、抉るように突き上げる。
「ぁ……っ❤」
恍惚の表情で見つめられるとたまらなくなって、晃牙は目の前の唇に噛み付いた。蕩けて柔らかくなった舌を掬い上げて捏ねる。「ふぁ、ン、んぅ、」先輩が脱力したところで腰を動かす。きつすぎてぐぬぐぬとしか言わなかった結合部が動き始め、口淫よりも激しい水音を立て始める。
根元まで勢いよく突き入れると、先輩がキスしながら甘く喘いだ。
「ン❤ んむ❤ んぁ……っ❤ はぁっ、こうがぁ❤ ア❤」
「先輩……っ」
「あっぁ❤ ぁ~っ❤ いいのじゃ、すごいぃっ❤ あぁっ❤」
後孔がびくびくと痙攣した。同じところを突くと酷くなる。直腸がうねり、もっとと昂ぶりを扱き立てる。爪先を丸めて感じ入る先輩の右脚、張ったふくらはぎに噛み付けば、牙の下で筋肉がきゅううと硬くなるのがわかった。喜んだのも束の間、同じ強さで根元を締め付けられて声が漏れる。
わざと浅く突きながら、晃牙は先輩の体を見下ろした。シーツに散り乱れた黒髪、蕩けた顔、筋張った喉は突かれる度にぐいと反らされ白さを晒す。汗ばむ肌は淡く上気し、晃牙のくれる快感を逃そうと必死に腰をくねらせていた。
人間に恋する先輩。皆に慕われ、愛され、『先輩』であり続ける人。
全身で快楽に狂う先輩を、今だけでも俺のものにしたい。
「っなあ、先輩っ」
「んぅ……っ?」
雄の証をぎりぎりまで抜くと、窄まりが亀頭に必死に縋りついた。先輩も呆然と晃牙を見上げる。
「中に出したい。頼む」
水面のように揺れる瞳の紅を晃牙は覗き込んだ。見据えて、乞うように口づけた。身をかがめたせいで亀頭が急に押し込まれ、先輩の口から嬌声が漏れ出る。
この位置から射精しても白濁は獣の獰猛さで奥を拓き、晃牙すら知らない場所をマーキングするだろう。精液の鼻をつくニオイはそのためのもの。朔間零は大神晃牙のモノだ、あんたは俺に独り占めされるんだと叫ぶ代わりにニオイを刻むのだ。
先輩もそれを理解したのか真っ赤な顔で押し黙る。中で出すなんて普段の晃牙は絶対言わない。誰よりも先輩の体を気遣う優しい子で、先輩がねだっても決して応じてくれないくらいだ。その晃牙が……。
「……おねだり、上手になったのう?」
弾かれたように顔を上げた晃牙の唇に、今度は先輩が噛み付く番だ。キスで愛しい後輩を翻弄しながら両脚で腰を引き寄せる。肉茎が沈み、体を侵してゆく。「ゥ、ん、んぅ……っ?」ぬぷ、と根元まで導き入れると、先輩は背中を撫でてあやしてあげた。主導権は晃牙に返す。先輩だから。
「――先輩っ」
「あっ、あぁ……❤」
「先輩っ、せんぱい……っ」
晃牙は夢中になって昂ぶりをぶつける。突き入れ、捏ね、打ち付け、擦りつける。そうして腰を引くたびに、内壁が自身に縋りつくのを確かめる。
「ぁっ❤ ぁ、あっ、あ~……っ❤」
先輩の声がふわふわしはじめた。悦すぎて我を忘れ、体だけで絶頂にそなえるときの声だ。
晃牙も限界が近い。一緒にイきたい。
「っ、ぁ――」
先輩の顔に怯えが走る。誰も知らないところに、絶頂に上り詰める前の恐怖に腕を伸ばす。晃牙の体にしがみつき、ぎゅっと目をつむった瞬間、後孔が収縮する。
「~~~~~~ッ!」
絞り出すような嬌声を上げて先輩がイった。快楽の波が体を包む。最奥から指先に押し寄せ、晃牙自身もそれに巻き込まれる。
最奥に何度か突き入れると、晃牙もそこで吐精した……。
☆
「…………」
「…………」
「……出せたかえ?」
「うおっ!?」
覗き込まれて仰け反ると、先輩はいつもの笑顔で繰り返した。
「ふふっ、最後まで出せたかえ?」
「お、おう」
すげ~出せた。数秒間は気絶するほど。
「いいこ、いいこじゃ……?」
尻に晃牙自身を挿れたまま、先輩の手が晃牙の頭に伸びる。くしゃくしゃと撫でる手つきもいつもの先輩で、この人わかってんのかな、と少し悲しくなった。征服はいつもほろ苦い。
せめて肌に残る自分のニオイを嗅いでおこうと凭れ掛かったとき、先輩がふらりと身を起こした。おぼつかない足取りで歩き出すので、
「水なら持ってくるから」
「ん……シャワーじゃ」
「…………」
「ほほう?」
一瞬寂しがったのを、まんまと見破られる。
「……大丈夫じゃよ、晃牙」
手の平が頭を掠めて頬に触れた。
晃牙の2歩先、先輩が闇の中に佇んでいる。白い肢体。薔薇色の頬。闇より深い黒髪から、至高の紅玉が覗いている。
「また『おまえ』を刻んでくれよ、何度でも……❤」
そうして先輩の背中は闇に溶け、晃牙はひとり立ち尽くすのだった。