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夢心地カラメルリボン(未完)

ミルククリームタルトの憂鬱でいただいた絵を元に後日談を書こうとしたところ、プロットの立て方が甘かったのか迷走してしまい、けっきょく1か月半以上も書きかけで放置してしまったので、断念してここに供養します
そういう経緯なので起承転結の承あたりで終わります、具体的に言うと晃零がセックスしようとするところです
やっぱり二匹目のドジョウは狙っちゃ駄目だね……

 晃牙の手からコンビニの袋が落ちた。
 口も両目もぽかんと開けて、零を見つめていた。視線がじりじりと熱を帯びていた。鍋底でとろけるキャラメルみたいだった。零ははにかんだ。愛しい晃牙に見つめられている。零というより零の体、雪のように白く輝く上半身、コートの前を寛げ、胸元までたくし上げたセーターの裾から覗く、引き締まったすべすべのお腹を。
 もうひと押しじゃな? 確信した零は、照れを捨ててもう一度言う。
「今日も、するのかえ?」
 良く見えるようもっとコートをひらけた。少しだけ胸を突き出した。双丘というには控えめなそこが、視線の熱に焦がされる。エアコンの温風が脇腹をくすぐる。腰骨のあたりが心もとない。おへそから下もすーすーする。いつでも弄ってほしいと、スラックスの金具を外しておいたからだ。
 浅ましいヤツだと幻滅されたじゃろうか。零の胸が切なくなった。晃牙は朔間先輩の全部が好きだと言ってくれて、先輩を気持ちよくしたいとも囁いてくれたのだ。体の芯が熱を帯びる。晃牙はあんなにやさしいから、すぐに肌を撫でてくれるに違いない。ギターの弦で硬くなった指先が、零は好きだった。
 触れられたい。愛してほしい。くしゃくしゃになったシャツの下で、胸の蕾がぷっくりと立ち上がる。寒いからではなく、晃牙に食べられてしまうのを期待して……。

夢心地カラメルリボン


 わんこ、我輩ミルクアイスがいい。北海道限定の、いちばんおいしそうなやつ。
 北海道にいるのにいちばんもクソもね~だろ、と言いつつホテルの外に買いに行ったので、零は準備をすることにした。愛される準備だ。男の体が女の子のように愛されるには、たくさん手順を踏む必要がある。
 晃牙の雄を、受け容れる手順。体をリラックスさせて、結ばれる場所を解して……最初は指1本すら痛かったのを、晃牙自身の太さまでゆっくり広げる。愛しい人に何の心配もかけたくなかった。気持ちよく奥まで突き入れさせたいから。零が苦しんだり痛がったりすれば、晃牙は慌てて泣き出しそうになってしまうから。
「……ん……」
 やさしくて、かっこいい晃牙……。靴を脱いでベッドに上がりながら、零の頬がぽーっと染まる。
 3回目に抱かれた夜も晃牙は優しかった。寝ていられないほどの熱帯夜で、零は何度も寝返りを打った。節約しようとクーラーを切っていた。頬にも額にも汗で髪が張り付くので、おもわず唸って目を開けたら、晃牙とばっちり目が合った。
「おはよう」
 おもわず挨拶すると、笑われた。
「俺達の時間だな」
 あんたの時間だな、と言わないところが優しかった。胸に甘い疼きを感じながら、零は恋人の顔を見つめた。月明かりが差し込んでいた。カーテンに細長く切り抜かれ、晃牙の頬骨のあたりに落ちていた。下まつげをキラキラさせたり、零を愛おしそうに見て笑う頬の、なめらかな感じを教えてくれた。
「こっち、こいよ」
 晃牙の指が、銀の明かりをすくうように伸ばされた。月の光はこぼれ落ちて、暗がりで零の頬を包み込んだ。ゆっくり撫でるだけだった。無理強いはしね~けど、できるなら抱きたい、という手つきだった。どんなときもそうだった。仕事で疲れた日の夜や、朝早くから収録予定のある日の前は、抱き合うだけで寝ることにしていた。この日は疲れた日だった。10時に帰ってシャワーを浴びて、麦茶を飲んで、暑いから少し離れて目を閉じた。隣に晃牙の存在を感じるだけで良かったのに、少しだけ体が疼いていた。街の灯りが零の芯に火をつけたのだった。昼からオフの晃牙はもっと熱かったにちがいない。真昼の太陽に燃やされてから零の帰宅を待ち構えていた。今は、肌が触れないくらいの距離にいる。「おやすみ、先輩」熱い吐息で囁かれる。手の平まで優しかった。
 この男に抱かれたい、と、強く願った。
「はぁ……」
 零は自分の体を抱きしめた。思い出しただけでも胸がせつなくなった。自分の指でも欲しかった。スラックスごと下着をおろそうとして、やっぱりコートを脱いだ。もっと慰めたいところがある。
 スラックスの前を寛げると、両手を入れてシャツの裾を探り当てた。利き手を中に忍び込ませて胸の蕾を目指した。きのう大きくしてほしいと言われたところだ。晃牙の代わりに弄ることはあっても、自分で慰めたことは一度もなかった。俺様の縄張りだ、と吼えられる気もしていたけれど、吼えられなくても任せたかったのだ。でも、零も任されたから。
 肌が汗ばんでいる。空調は暑すぎず寒すぎず、コートも着心地が良かった。早く愛し合いたくて、早足で帰ったのだった。
 指先が腹筋を掠めたら、ためらいは溶けて消えた。
「……、ん……」
 甘やかな息がこぼれた。やわらかい乳輪に触れ、乳首のまわりを焦らすようになぞっていた。晃牙と同じ触り方。零のなめらかな頬が朱に染まる。
 指先は持ち主の意に反して零を高めはじめた。晃牙の真似をすればよいだけだった。零の表情の変化を窺いながら、意地悪に乳輪を撫でるのだ。金色の目が年相応の好奇心をたたえて零と乳首を見ていたのを思い出し、胸の奥がきゅうとなる。そして、「っ、」零に口づけるせいで、こんなふうに、ときどき指が乳頭を掠めるのだった。蕾のように窄まったそこから甘い痺れが背筋に走った。激しすぎる刺激に指を離してしまったが、もう一度、おそるおそる擦りつける。媚びるような声が鼻から漏れた。
「あぁ……っ」
 気持ちいい……。零はセーターをまくり上げた。真っ白な胸元で淡く色づいた蕾がツンと尖り、零に刺激されるのを待っていた。女の子のようじゃな……。零は男だから乳首で感じない。そのはずなのに求めてしまう。
 今度は摘まんでみようか、それとも……そう考えてた矢先にエアコンの熱風が乳頭を舐め、零の胸を切なく責めた。
「っ、は、うぅ……っ」
 晃牙の吐息を、荒くなった息を感じたときの昂ぶりを、肌が思い出す。
 きゅうっと摘まんで捏ねる。嬲られている。晃牙に……。
「ン、んっ、ぁっ」
 後孔を解すことも忘れ、零は乳首の自慰にふけった。
 下腹部に感じる快楽とも後ろの気持ちよさとも違っていた。雄としての種を出すときの解放感も、満たされ求められる充足感もない。胸の奥をざわめかせ、そこにヌガーのような濃い甘さを置き去りにする感覚。胸にまとわりついて離れない。晃牙に抱きしめられるまで、抱きしめられて口づけられ、ギターの弦で硬くなった指先で胸の切なさを?き乱してくれるまで、晃牙に愛されたいと泣き続けるのだ。
「こ、こうがぁっ……あぁ……っ」
 真っ白なベッドに身を投げ出し、太ももを擦り合わせながら胸を弄る。どうしようもなく昂ぶる体を持て余す。晃牙が欲しい。気を散らそうと乳頭をつねれば、晃牙の優しい手つきを思い出して泣きたくなった。
 早く帰ってきておくれ。そういえばどうして晃牙はコンビニに行くなどと言い出したのじゃろう、晃牙も欲しそうな目でずっと見てきたのに。我輩のことを喰らい尽くしたいと、渇望しておったのに……?
「――晃牙?」
 鍵を開ける音がする。晃牙だ。慌ててロングコートに腕を通し、前をぎゅっと閉じたのと、晃牙がドアを開けたのとは同時だった。床に下りて晃牙を迎えた。息を切らしているのを見たら、体が燃えるように熱くなって、震える手で浅ましい体を晒していた。


「…………」
 晃牙がコンビニの袋を拾うのを、零は息を殺して見つめている。白い袋から北海道Walkerの表紙が透けていた。零が観光に行きたいと言ったからだ。番組ロケは今日で終わり、函館に泊まって明日は遊び倒すのだった。見どころはたくさんあった。このホテルもそうだ。背後の窓から美しい夜景が一望できた。
 ――夜景よりも、我輩を見ておくれ。なんて、願うまでもないと思っていた。晃牙は零が世界で一番大好きなのだから、目を離す余裕なんてないはずだった。
「……うまそ~だな」
 それが今、晃牙が見つめているのは零ではなかった。観光雑誌を袋から出し、表紙を眺めて、中をめくった。ぱらぱらと最終ページまで斜め読みして、どこかのページを大きく開いた。何が晃牙の心を奪ったのかわからない、知りたくもない。ただ、目を逸らされて、上の空の口調で、
「明日、どこ行く」
なんて、零のプライドに障ることを言った。
「……ッ!」
 なのに……
「……カニでも、食べに行こうかのう……」
 零は、魔王としてのプライドにかけて、いつも通りの笑顔を浮かべた。
「他に何ぞおいしいものはあるかえ?」
 わざと明るい声音で尋ね、晃牙の手から雑誌を取り上げる。零よりこちらを選んだというのに、広げていたページは牧場特集だった。どの牧場も乳牛ばかりでジンギスカンが食べられる訳でもない。
「牧場? 行きたいのかえ?」
「…………」
 我輩が惨めな気持ちで振る舞っておるのに、こやつはどうして黙っておるのじゃ。怒ったらいっそう情けなくて、そっとコートの前を閉じた。
 零がひとり盛り上がっていただけなのだ。アイドルとしての時間も密かに身を焦がしていたけれど、全部好きだと言われた喜びが忘れられなかったけれど、晃牙の気持ちはそうではなかった。「そうじゃ、函館は夜景が見事じゃな!」雑誌を抱えたまま窓辺に走り寄る。薄暗がりのそこでなら涙がこぼれてもわからないから。胸の奥の悲しみを、愛しい晃牙に知らせて心配させたくない。
「ククク、我輩たちの住処にぴったりの美しさじゃ。のう晃牙、……ッ!」
 背後から晃牙の腕に閉じこめられる。
「朔間先輩……」
 呼び声が低く擦れていた。夜明け前に何度も聞いた睦言とは程遠い、何かをこらえるような唸り声だった。そのくせ背中のぬくもりは酷く近い。
 やめておくれ……。零がそう念じたのを知ってか知らずか、晃牙の腕がふと強張った。大人の男に近づく手が、零の胸に伸びる。触ってほしい、愛してほしい。矛盾する心が体を震わせている。
「……ぁ……」
「……夜景、綺麗だな」
 しばらく彷徨った手はお腹の上で、ゆるく指を組んだ。


「その気もないのに憐れむな……っ」
 自分の腕を振り払った零を、晃牙が呆然と見つめていた。無防備なその仕草も憎らしかった。
 ――俺から夜景を眺める余裕を奪ったのに。苛立ちが零の腹の底でごうごうと燃え盛り、眦を朱に染める。
 触れられたかった。昨日抱き合っただけでは足りなかった。零の不安も戸惑いも全部包み込んで好きだと言ったこの男と、深いところで愛し合いたかった。けれど、それはしょせん我儘なのだ。零が先走っただけだった。勝手に思い込んで、勘違いしただけだった。
 零が吸血鬼で、人の心がわからないから間違ってしまった。腹を立てるなんて思い上がり、人間じゃないからできることなのかもしれない……。
「……っ」
 踵を返してベッドに駆け寄った。なるべく体が隠れるように潜り込む。暗がりの中、冷たいリネンが零の頬を、指を、背中をそっけなく包み込み、晃牙ではないことを否応なく教えてくる。
「すまぬ、妄言じゃ……忘れておくれ……っ」
「……無理だろ」
 固い声。白い隠れ蓑がばさりとはがされた。
 晃牙の泣きそうな、怒った顔と目が合う。
「あぁ~~やっぱ無理だろ!」
 掻き抱かれる。
「……ッこ」
「両手上げろ!」
 訳も分からず従う零からむりやり衣装を剥ぐと、晃牙は自分の服も脱いで畳んで隣のベッドに投げた。コートは広げたまま、これまた投げた。折り重なるそれに倣うように、押し倒しされて手首を縫いとめられる。
 体温が上がる。唇で噛み付き合う距離に、晃牙の顔がある。蜂蜜色の瞳。熱を孕んでとろけた零を、零ひとりだけを映している。
「朔間先輩。朔間先輩、朔間先輩……って、犬みて~だけどよ。あんたを骨の髄までしゃぶりたくて、朝からずっとうずうずしてんだよ。わかるだろ、あんた俺の方ばっか気にしてたし……。昨日はクソヤロ~に悩まされて不完全燃焼だったし、今日もあんたはすげ~かわいかったし。
 けど、ここで抱いたら、ぜって~あんたに無理させる。せっかく函館くんだりまで来て、俺と丸1日デートできるって楽しみにしてくれてたんだからよ、あんたを抱き潰して動けなくさせたら最低だろ。
 ……って思い込んでたけど、あんたを泣かせる方がもっと最低だ。それに、あんたもその気でいてくれたのが……すげ~嬉しい」
 真剣に見つめて、歯噛みして、項垂れて、微笑んで……目の前でころころ変わる表情に、零の胸が締め付けられる。
 晃牙も同じ気持ちだった? 俺と? ずっと抱き合いたくて、我慢してた? 俺のこと考えてたんだ……。
 たまらなくなって口づけた。すぐに舌が触れ合い、思いの丈をぶつけ合うように縺れ合う。絡まる熱が心のわだかまりを解かしていく。
「んっ……我輩……俺も、ごめん。勘違いしてた」
「へへっ。似た者同士だな、俺たち」
「……そうかもな。なら、俺の欲しがってるものはわかるだろ? 晃牙」
 虚を突かれた晃牙がすぐに獰猛な笑みを浮かべる。
「先輩、覚悟しろよ」
 獣の笑みで応えた零の喉笛に、晃牙は舌舐めずりして噛み付いた。



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