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どこをどうきたのか、気がつけばブゥーンという機械音だけが響くスペースに倒れこんでいた。商品販売車両、ミスラを挟む左右の棚には強化ガラスがはめられていて、お金を投入すれば物品が買える、要は自販機。

商隊のメインであるせいか、随分と広い。というか、広すぎる。こんなスペースがどこにあるのか、おそらく魔術的な空間操作、それ以外に考えがたい。

「…なんか、すげぇ疲れた…」

隅っこにはベンチがあった。何でもいいから休みたい、ミスラは倒れこむように横になる。わずかなニスのにおい。ひんやりとして心地はいいが、眠り込んだら風邪を引きそうだった。
寝ようかなどうしようかな、でも今寝たら死ぬかもしれんしな…ふと、そのまま視線を奥にやると、凹型にくぼんだスペースに女の子が座っていた。先客がいたのだ。

「あ…す、すいません」
「……。」

灰色の髪を、おかっぱに切りそろえた少女は、チラリとミスラを一瞥して、手元の本に視線を戻す。沈黙。相変わらず聞こえてくるのは自販機の音ばかり、ミスラは身体を起こして立ち去ろうとする。

「……なぜ?」
「へ?」
「なぜあやまるの?」
「あ、いや…邪魔したかな…っと思って」

突然の少女の質問で、ミスラその場を動くタイミングを失ってしまった。再びの沈黙。しゃべるのは少女の番だ。

「座ったら?」
「う、うん…」

いわれた通りにする。並んだ2人。この車両では自販機の明かりだけが光源となっている、してみれば、少女が本を読んでいるのはこの光だよりなわけだ。
うっすらと仄めく燐光が、少女をこの世ならざるものに仕立て上げる。彼女が頁をめくるごと、ミスラの世界も次へ次へと誘われていくような。

「眼、悪くならない…?」
「……。」

ジャブはかすりもしなかった。

「……キミ、この商隊の子だよね?」
「…そう」

次に放ったのは9割9分ハズレのない質問だったが、意外にも答えが返ってくる。制服は着ないのか、今は時間外だから、ブツ切りの質疑応答が続き、その間も少女は頁をめくる手を止めない。

「飲む?」
「え?う、うん」

やがて初めて、少女の方から質問を切りだした。差しだされたのはプリン牛乳という名のけったいな飲み物、無論、この空気で断わる勇気はミスラにはない。

「…ロト」
「へ?」
「名前…聞かないから」
「あ、ああ…、そっか、…オレはミスラ…」
「知ってる」
「そ、そう…」
「それ」
「ん?…ああこれ美味いね!初めて飲んだよこんなの…」
「まずいからあげた」
「…そう、うん、よく考えたらなんだろうねこの粘っこい後味…もごもご」

そういえば間接キスか、と気づいたミスラは思考の迷路に迷い込む。もしかしてオレに気が…ばかな気にしすぎだぜ…しかしこの異空間ならあるいは…。

結局、時間だ、といって少女は立ち去り、後にはぽつねんとミスラだけが残った。牛乳の後味も残った。

少女の座っていたところを触ってみる。もう既に、体温は残されていなかった。


・・・・・・。


そういえば小便をしていない。

でもあのゴメンナサイ少女にでくわしたらどうしよう、その前になんでこんな入り組んでるのだこの商隊は。まぁでも膀胱が破裂したくらいなら治るだろうから…でもそしたらにおいが…云々。

「――――――ぁ…ん」

「ん?」

「――――――ぁ―――んぁ…」

キャタピラが小石を粉砕する音に紛れて、くぐもった呻き声が聞こえてくる。なにかしら、特に大した考えもなくフラフラと誘われるミスラは右へ左へ、魔術的回廊を行ったりきたり。

「倉庫…?」

着いた先はキャラバンの最後尾。ボコボコになった盾や、薬の空き瓶が箱や棚に突っこまれ、首のもげた人形が恨めしげに光源であるランプを見ている。
車両自体が、木枠と皮を強引に鉄板で固めた感じのポンコツで、ところどころ開いた穴から外が見える。
気のせいかな?幻聴くらい聞こえてきても不思議じゃない、そんな風にボンヤリしていたから、最初目の前のソレがなんなのか良く分からなかった。

「ふぁ…ぁ、…――き…あぅぅ」

2つの影が交わっている。少女の影と少女の影。禁断の愛。

なんのいまさら、たかだか見知らぬ女の子がコソコソ乳繰り合っていたからといって、何を驚く事があろう。だがミスラは腰が抜けた、砕けた。その異常な情景。

「…キゥリートのここ…きれいだよぅ…」
「……。」
「…キゥリートこそ…ここ…もっと見せて…」
「……。」
「好きだよ…キゥ…」
「……。」
「私もぉ…」

キゥリートと呼ばれた少女はキゥリートと呼ばれた少女の舌を舐める。胸を押付ける、股間を押付ける…
不思議なことにキゥリートはキゥリートと同じ動きをする。右手は左手、左手は右手。図ったように、示し合わせたように…まるでそう、鏡と同じ―――ってか、鏡。

―――そう、影の一つは少女の鏡像。少女は、古びた姿見に映る自分の姿を眺めながら、自分に問いかけ、自分でよがって、自分に愛を囁いているのだ。全部が全部、独り言の一人演技。

キゥリートは陶酔した瞳で、鏡の中の自分に、よだれまみれの舌を絡ませている。とろとろの果肉、その汁を、自分で口に含み、自分の胸に垂らして塗りたくる。

「私…好きぃ……好きなのぉ…自分大好きぃ……」



(やばいやばいやばいやばい……!!!コレはだめこれはだめこれはだめこれはだめ…)

この世で最も見てはいけない地獄の妄念、文字通りの独りよがり。砕けた腰で這いずりよたよた、角を曲がって心臓をなだめる。

「おおおお…忘れろぉ…忘れろオレ…」

それでもむくむくとおっきするちんぽこに、コイツ蹴り飛ばしてやろうかと思うミスラであった。

「だめですよー、そんなかわいそうなことしたら…」
「………誰?」

もうビビらない。心の芯から煮崩れした身体は、突然斜め横に現れた少女にも無反応。

「……ニヤリ。」
「な…なんだよ」
「私の名前はドミニク、ドミニク・コードウェル。人呼んで漆黒の新聞記事」
「……なにその印刷ミスみたいな通り名」
「…ニヤリ。やりますねミスラさん」
「だからなんだよ…わき腹をつっつくなよ…」
「この商隊でわからない事があったら私に聞いてくださいね…うふふふふ」

ドミニクという自称3文もの書きは、黒い帽子を深々と被り、眼鏡はまさしく牛乳瓶の底。多分あんまり洗ってないみつあみはパサパサしていて、だらだらに伸びきった服の袖でときどき鼻をすする。

「お兄さん、キゥリートに魅入ってましたねぇ…」
「な…そんなこと…」
「いいですよぉ隠さなくたって…ここだけの話ですがね」
「ふんふん」
「あの娘、普段はこれでもかってくらい堅物でしてねぇ…この隊での地位は保安チーフ。趣味は商隊の綱紀粛正ときたもんだ…」
「マジでか…」
「おっといけね…ウワサをすればなんとやらでさぁ」

こそこそとしゃべっているところに当のキゥリートが現れる。なるほど、先ほどまでの艶っぽい印象はどこへやら、つりあがった眼に度のきつそうな眼鏡をかけて、ピカピカのおでこは法の番人が引き抜いた刀剣のようだ。

「なにをしているのかね、ドミニク君?」
「い…いやぁなんでもありませんよぉ…へっへへ」
「フン、どうだか。私の仕事を増やさないでくれたまえよ、まったくこんな大変なときに…」
「へへぇ、ダンナにはかなわねぇや」
「オヤ?アナタは…例の。…アナタもこんな娘とつきあうのはおよしなさい、ろくなことにならない」
「え…?あ、…はぁ…」
「どうせまたくだらないゴシップ話でしょう?苦情が殺到しているんですよ、こんな小さな隊でも最低限のプライバシーがあるのでね」
「あ、はい、すいません」
「アナタが私の頭痛の種にならないことを祈りますよ」

法の番人はそういうと、イライラしながらいってしまった。

「こえー…」
「そしてこれがあの女のエロ動画」

『あ、ぁっぁん!キゥリート…初めてなのにぃ…!!』

「うぉぉぉおおおおぉ、お前…すごいな」
「……ニヤリ」

なんか魔法の円盤の上で、キゥリートの恥ずかしい姿がありありと照らしだされる。局部のアップ、俯瞰、限界まで延びた舌。

「お役にたてまして?……つきましてはね、ご協力願いたい事が…へっへへ」
「うんうん、オレにできることなら…」



こうしてミスラ、ザクロ団のいわなくてもいいことを、ペラペラペラペラしゃべってしまった。性癖、性感、あの女はオレのちんこがなきゃ3日といられねーんだ云々。

もう、アホばっかりだ。


・・・・・・。


「お、メロ、何してんだ?」
「や、や、こ、これはミスラさんこんにちわ」

小用を足したミスラはようやく当初の目的を思いだし、クリステスラを探し始める。横にはドミニク・コードウェルの姿。なんかすごく仲良くなった。友達ってこんな感じだよね、ミスラはドミニクの肩を抱き、ドミニクもそれに応える。

現在3人がいるのは植物プラント車両。この場所も、間違えて外にでてしまったと思うくらい空間が広い。足元は戦車の中なのにも関わらず土が覆われているし、なにやら見たこともない南国のフルーツが、空を埋め尽くさんと実っている。

ガニメロはなにやら山盛りの石版ととっくみあっていた。

「勉強してんのか?」
「は、は、はい、部屋はなんだか騒々しい連中がふ、増えてしまって…」
「あー…」

容易に想像が着く。死体とかミサイルとか髑髏とか。

「へっへぇ…アイーサウルベンたぁ…お譲ちゃんやりますねぇ…」
「え、え?わ、わ、わかるんですか?」
「コリャすごい。ご丁寧に文化軸ごとに仕分けてある。いやぁ部屋に引きこもってなにやってるかと思ったら…要チェックだなぁお譲ちゃん」

「ドミィ、頼む分かるように…」

「あ、あ、アイーサウルベンというのはですね…!!!」

ガニメロ、えらく活き活きと話し始める。


―――アイーサウルベン。

この世界のあらゆる文化圏にする通底する世界観、それに基づく主義、神話の総称。世界はミクロにもマクロにも拡大し続けている。永劫、閉じることもなければ繰返すこともない。大なるものから見れば小なるものは存在しないに等しい。無限の時空格差。
絶対確定不可能世界。世界は観測から逃げ続ける。神は生まれ続ける。神は殺し続ける。人間は生まれ続ける。人間は殺し続ける。世界を広げているのは生と死の車輪。すべての存在は安定を夢見て、それゆえに崩壊する。安定の存続が生か死か、安定の崩壊が生か死か。
宇宙は固まりやがて砕ける。星は固まりやがて砕ける。大気は固まりやがて砕ける。生命は固まりやがて砕ける。死を望むものは自ら死に、生きようとする者だけが生きることに適した。なぜ生きるかではない、最初に回った車輪の方向を我々は生きるといったのだ。
人間は固まりやがて砕ける。アイーサウルベンもやがてそうするだろう。



「……ぜんぜんわかんない」
「あ、あ、え、えぅ…そ、そうですか」

小さな学者は予想外にしょんぼりする。悪いなぁとは思っても、分からないものは分からない。

「へっへ…この後まだまだ続くんですよ。…この世になにものもないのであれば、我々は結局サラエの元に集うだろう」
「サラエ?」

一瞬ドキリと、心臓をつかまれたような気がした。まぁ、実際死にかけだし。

「神様みたいなもんですな。アタシからいわせりゃ邪神ですよ、この世の始まりとみなされて、あらゆる存在を孕ませる。どこに逃げても孕むんですな、過去にいようが未来にいようが、こりゃたまりません。今こうしている間にアタシも孕む」
「そりゃぁ…すげぇな」
「アイーサウルベンありきで考えると、今度は文化圏を共時的にだけでなく通時的に考えなきゃならんのですわ…これが文化軸」
「わかんね」
「ししし、簡単にいうと、7層文明を7つと見るか、7つで1つと見るかの立場の違いですな」
「はぁー」

「あ、あ、あ、ドミニクさん…ヒューヘンの『サラエニズム』はお、お、お読みになりましたか!」
「…ニヤリ。まぁ教養の範囲内ですがねぇ」

ガニメロがすごくはしゃいでいる。考えてみればこの娘、いつもミルケロルなどと一緒にいるが、話の内容を人と共有しているところを見た事がない。ミスラとしてみても、なんだか娘に友達ができたみたいでうれしいものだ。

「ははぁ、この文化は表面上似てるように見えるけど、軸で見ると違うのか」
「は、はい!そうなんです!!!」

というか、こんなにかわいかったかこの娘、とミスラ思う。

「じゃぁこれは?メロ…」
「は、はい!こここ、これはですね…!!!」
「こっちは?」
「ここ、これはですね!!!」

これはのっかるしかあるまい。なるほどミスラの頭でもいろいろ聞いてればなんとなくいわんとしていることがつかめてくる。同時にこのちっこい頭に詰まった知識量に圧倒され、尊敬の念すら抱く。

「はぁー、なるほど奥が深いんだな…じゃぁこの手は?」
「はいはい!この手は…この…テ、て、手ぇ!!??」



石版の間、地面から、人間の手が生えていた。



「わぁっぁああああ!!!ほ、ほ、本物か!!」
「ふぃ…ふぎゅ…て、って、手…」
「お二方、そこを動かずに…こりゃぁ事件のにおいがするぜ…」

ドミニクが耳に挿していたボールペンで手をツンツンする。動く。生きてる。

「お、おい、掘りださなきゃ!!」
「ははぁ、こりゃぁさては……なんだハズレか。まぁ、ほっといても問題ないですけどね」

そういわれてほっとくわけにはいかない。あわててミスラ、土を掘り返す。二の腕、腋の下、マンと、おっぱい、おっぱい…

「あひー?はらひらぁ〜」

やがて現れたのは世にも面妖なメイクを施した、黒やら深緑やらの髪の毛をした女の子。マントの下にはなにもはいていないという痴女スタイルで、メイクのせいで歳は定かでない。が、案外いってそう。なんというか、肌の張りが。

「な、な、な、なんでしょうか、こ、ここの人…」
「さ、さあ…大丈夫ですか?」

「はひー…うにゅぬぱ………ビックリした?」

「は?え、…しました」
「やたー!!!」

なんだろう、この出来損ないの根菜類みたいな間の抜け加減は。

「この人はシェロソピ・ミステリオーノ・ロンドンドン。数年前に雇ったサーカス一座……に、さりげなく捨てられた女性です」

ドミニクが鼻で笑う。ああコイツ、この女の人を下に見てる。



「えへん!さあさご開帳!!プリンセスシェロソピが不思議な世界にご招待!!超絶悶絶イリュージョン、はーじまーるよー!!!」

そうこうしているうちになんか始まってしまった。逃げようとしたガニメロをとっつかまえ、あのセールスマンにありがちな、相手に間を与えない割り込みトークでまくしたてる。

「お譲ちゃん、何か世界で一番大切なものとかってあるー??」
「は、は、え?こここ、これですけど…」
「やぁさ、なんだい汚らしい石っころをだしてきたね!さてはキミ、幼少時代にお腹がすき過ぎて、一人ママゴトして自分を紛らわしてたタイプだな!!
「あ、あ、そそ、それはじいちゃん達のお骨を固めたもので…この遺跡に埋めてあげようかと…」

さらっととても重いことをいうチビ学者。そう、彼女の祖先は皆、この7層文明の探索を夢見て死んでいったのだ。今、一族の集大成がついにこの地に足を踏み入れた、泣ける話ではないか。

「わかるよお譲ちゃん…私もね、子供の頃家に帰っても誰もいないから…ずっと一人で手品やってたのよう…よし!!おねいさんがお譲ちゃんの空っぽのお腹と心を満たしてあげる!せーの、チーポンカン!!」
「え、え、え?」

歯車はどこにも引っかからないまま回り始める。プリンセスがてのひら振ればアラ不思議、極彩色の身体に悪そうな煙がもりもり噴きでて…

ぽわわわわ〜ん

「ヘイ!カツ丼おまち!!」

なんとじいちゃん方の骨の塊がアツアツのカツ丼になったではないか。これには一同拍手でこたえる。ご満悦なプリンセス。

「あ、あ、すす、すごいです!すごい!!」
「ありがとー!ありがとー!!」
「あ、あの、それで…ぼ、ぼぼ、ボクのじいちゃんは…」
「じいちゃん?あなたのじいちゃんはねー…」
「は、はい…」
「じいちゃん…」
「……。」
「……。」
「……。」
「……アレ?」
「え、え?え?」
「……ん、やべ」
「え?あ?やばい?」

「以上!プリンセスシェロソピのショートコントでしたぁ〜〜!!!」

「え?え?ええええ!???」
「……コントなんだ」

ガニメロ一族の夢。その思いの詰まった結晶は、こうしてキャベツと炭水化物になって散った。プリンセス、そのまま走って逃げる。

「み、みみみ、ミスラさぁん!!!」
「め、メロ…これは…なぁドミィ」
「残念でさぁ…やつはとりかえしのつかないものを盗んでいきましたねぇ」

よしよしとガニメロを慰めるミスラ。だが彼は知らなかったのだ、こんなキワモノはまだ序の口であるということ。はたしてこの黄金猫商会、魔窟である。


・・・・・・。


「オメタチ…」

「ん?」

場所は変わらず植物プラント。斜面になった小道の先に、麦藁帽の小さな女の子がいる。

正直ミスラは魅入ってしまった。黄金色の髪、ほつれた髪がわずかな照明に輝いて、白熱のプロミネンスを思わせる。白いワンピースは翼のようで、大理石のように白い肌は、人々が顕在化を求めてやまなかった天使そのものではないか。
丘の上に降臨した彼女を前にして、誰がかしずかずにおれようか。我々は彼女によって審判を待つ土くれにしか過ぎないのだ。裁くのはそう、その手の中でフル稼働する―――芝刈り機。



「オラの畑でなにしてるだ!!!」



「わああぁぁぁっぁぁああああ!!!!」

それからのこと、ミスラはよく覚えていない。

なぜなら記憶をするための器官を根っこから引っこ抜かれたからである。どことはいわない。おかげであんまり痛くもなかった。

目覚めた後で聞いた話では、少女の名前はトメキチというらしい。

あんなサラサラした金髪の女の子がなぜトメキチか、ミスラは軽い眩暈を感じながらもドミニクに問いただした。そこで明らかになったのは、涙涙の出生秘話。



昔々あるところに、マコマコンドと呼ばれる豊かな村があった。村には一人の男と一匹の犬がいた。男の名前は知られていない、犬はトメキチといった。
男は変人として町人から笑われる存在だった。自分がどんなに餓えて苦しんでいても、トメキチには上等のゴハンをだす。毎日毎日だ。

からかう側もトメキチにだけは手をださない、前にそれをやって、男に指を食いちぎられた者がいたからだ。トメキチにさえ手をださなければ男を人一倍働く。朝から晩まで休みなく働く。
だから彼を笑うことはあっても、追いだしたりする者はいなかった。村の畑は男が切り開き、男が耕しているようなものだ。男のおかげで、村人もずいぶん楽ができた。豊かになった。

ある時トメキチが天寿をまっとうした。当然男は泣いた、トメキチにしがみつき、朝から晩まで泣いた。男は仕事をしなくなった。ずっと泣いてばかりいるからだ。村には男の鳴き声がいつまでも響き渡った。
それでもトメキチが土に還れば、男も諦めざるをえないだろう。しかし不思議なことに、トメキチの身体は一向に腐らない。男は泣き続ける。いつまでもいつまでも泣き続ける。やがて村人は男をやっかむようになった。気味が悪かったのだ。

男は殺され、トメキチとともに山に埋められることとなった。村人は男のことを忘れようとした。しかしそれはできなかった。豊だった村を、未曾有の飢饉が襲ったのだ。
土が腐り、毒の雨が降る。井戸からはなにかの骨が湧きでるようになり、夜な夜な、トメキチに似た犬の影が村中を徘徊するようになった。
村人は一人逃げ二人に逃げ、ついには誰一人として、その地に足を踏み入れるものがなくなった。マコマコンドの名はしだいに人々の記憶から忘れられていった。

ある時徳の高い僧が現れ、呪われたマコマコンドの話を耳にした。彼の僧は魍魎跋扈する山中におもむき、発狂したモンスターを千切っては投げ千切っては投げ。男とトメキチの墓に達すると、念仏を唱えんと座禅をくみ、えいやとばかりに喝をいれた、その時である。
うすぼんやりと墓が燐光を帯びている、さはなんぞと、元々は木杭を打っただけの粗末な墓だから、ずぼりと抜いて土をどけやる。なんたることか、現れいでたのは玉のような幼女であった。その手には人間のされこうべ、ああその奇跡をなんと解釈すればよいだろう。

僧は神仏のなさりように畏れおののき、少女を生き仏に据えて、再びマコマコンドを再生すべく尽力したという。その努力は実り、彼の村はこれまでになく幸にあふれ、長く長く栄えたのだ…。



「…ニヤリ。で、そのマコマコは代々巫女を祭っていやして、これが皆トメキチを名乗るんですな」
「へー、で、なんでここにいんの?」
「これがね、ウチのアネキがマコマコについた時には、必死に畑を耕すあの子がいただけで…まぁ、結局滅びたんですな。時代です。そこがあまりにも危険な土地だったから、うまいことだまくらかして土ごと移動させてやろうって…今はその途中でさ」
「アネキ?ドミィ姉さんいるのか」
「…ニヤリ。いちお、この商隊のリーダーでさ」
「え?シャマニさん?」

驚いたところで、車両の入口に隠れてミスラをうかがう影に気づいた。トメキチである。手には芝刈り機の変わりに、人間の髑髏を持っている。

「うおおお…と、トメキチ…ちゃん?」
「……オメぇ」

あいかわらず、思わずナデナデしたくなるようなちっこい顔をして、それを左右にひょこひょこ振りながら不信そうに近寄ってくる。ちなみにミスラ達がいるのは医療用車両。だってぶっ殺されたからね。

「……似てるダ」
「…なにが?」
「……なんで気づかなかったダ」
「…ど、どうしたの?」
「……ぶっ殺して初めて分かったダ…オラ…オラ…」

少女の瞳に大粒の涙がたまっていく。ははんこれはアレか、泣くな。



「会いたかったダ……にくひこぉ!!!」



「どあぁぁあああ!!!なんだなんだ、どうした!!」

悪い気はすまい。軽いしやらかいし、ふわふわしてるしかわいいし。よだれでベッタベタにされるのもいいだろう、そこら中噛みつかれるのもいいだろう。さらさらの髪の毛が口の中にいっぱい入ってくるのもいいだろう。

ただ何度も何度も、手持ちの骨とミスラの頭骨を比べようとするのはどうなのだ。最終的になんとかやめてくれるようにはなったが。


・・・・・・。


恐ろしい話だが、ミスラがクリスを探しだしてからまだ一時間もたってない。

時の流れすら、魔法の回廊に閉じ込められてしまったような、不可思議な感覚。羽みたいなトメキチを背中に抱いて、ドミニクとともにクリスを探す。

連結戦車の中は探せば探すほど広がっているような感じがする。戦車だといっているのに出窓があるし、外から見たときは当然そんなものなかったから、またなんかごにゃごにゃなっているのだろう。ミスラはもう、難しいことを考えるのはやめた。

窓枠の中では、ダンジョンが緩やかに流れていく。そんな景色の中に、少女が一人。

少女は巨大な、血まみれのモンスターの尻尾を持って、ガタガタガタガタバウンドさせながら、どうやら戦車と並走している。
その無慈悲さたるや。現れるモンスターのことごとくを表情一つ変えずに叩き潰し、まるで次遊ぶオモチャを物色するように、ひっ捕まえてはポイポイと放り投げる。死体に飽きたら次の死体。向かってくる獣を素手で止めたり、逃げる獣を矢で射たり。

窓を画面に、端から端までいったりきたりするから、ミスラとしては少女を操って遊んでいるような錯覚まで感じる。

「あ…あの子は…」
「ありゃー、みつけっちまいましたね。まま、多分この商隊で一番目立つ人ですけどね」

少女が何気なく振り返り、ミスラと眼が合う。まっすぐな眼、真円の黒点。その視線は時間と空間を貫き、ミスラと少女の2点を結ぶ。

死んだな、ミスラは思った。狩られる者の感覚。くちばしが、今まさに己の首をつままんとしている。肌の泡立ちが止まらない。

そんな反応に満足したかのような笑みが少女に広がり、次いで跳躍、どこへ行ったと探すミスラの前に、頭上から装甲をぶち破って出現する。

「やほー」
「おわぁ!びっくりした…」

水平にザックリ切っただけの前髪をして、肌の色は黄色人種。我流で着こなした簡易の鎧からは、思わず触りたくなる二の腕が伸びている。年のころはミスラと同年代か、ついでに背も同じくらい。

「ムナク・ジャジャさん、この隊の守備隊長でさ。…どうするんですかい?隊長が率先して魔法障壁をぶち破っちまって」

ムナクと呼ばれた少女はドミニコの問いには答えず、ジロジロとミスラの顔を覗き込む。左下から右下から。ミスラの方も、なんなんだコイツはとばかりにこの少女のバカにできる要素を探そうと見返すが、見事なまでに欠陥がない。

「汗かいちったぜ」
「ん?」
「ムレムレ好き?」
「む…ムレムレ?」

少女はミスラの脇からはみでたトメキチの足を掴み、ふくらはぎにほおずりをすると、やわらかさが気にいったのかカプカプと噛みついた。トメキチに反応はない。寝てるのか。

「背中かいてくれよー」
「背中?」

いいながら少女は鎧を放り投げている。全体で見ると少し華奢な体つき。これでモンスターをギタギタにしていたのか、ミスラの眼からは、少しかがんだ少女をうなじから見下ろす形になって、余計細く見える。

「そうそうそこそこ」
「ここ?」
「もっちょい、下」
「こ…こう…?」
「もっちょいもっちょい」

わずかな布の上から、少女の身体をなぞっていく。背骨のでこぼこ、腰のくぼみ。少女は床にヒザをつき、両手をうにーっとやる猫のポーズでかかれ続ける。

「そこ、そこ」
「……ここ?……ここ!?」

指示通りに指を下ろしていくと、いつの間にか尻についてしまった。パレオみたいな腰巻に、多分それより下はないであろう、ビキニ。少女はパレオをヒラリとめくり、少しだけ尻を突きだす。

「このへん?」
「違うよー、もっと下だよ」

最終的にたどり着いたのは、どうみても尻の穴。ちょっとま、息をするのを忘れて眩暈がする。

「はやくはやく」
「あの…でも…」

ミスラは拒みながらも、しっかりとその形のいい尻を撫で回す。誰だってそうする、ミスラもそうした。
中指をビキニに引っ掛け、ちらりとめくる。問題の紅点は確かにかゆそうにしている。尻をもぞもぞさせる少女。中指は周辺の、すこし粘った部分をなぞり、中央へ。

「おっ、そこ。クイってやって、クイって」
「こ…こう?」
「おうぅぅ…」
「…どうでしょうか」
「ん、あんがと」

少女は服を調え、脱ぎ捨てた鎧はそのままに、魔法の回廊を走っていった。手を振りながら。

「……ああいう人でさ」
「……ぜんっぜん、わかんない」
「……多分、においづけでさ」
「……におい」

もちろん、中指のにおいをかぐ。


・・・・・・。


「散策は終わりましたかいダンナ」
「あ、シャマニさん…」

結局クリスには会えずじまい。妙な異空間に紛れこんだせいで、なんだかのぼせてしまった。トメキチをドミィに預け、ザクロ団の面々の元へと戻る、今途中。

「クセの強いのが多いでしょう、ウチは」
「はは…まぁ確かに」
「何か足りないものでもあったらいってくださいよ、すぐにそろえさせまさぁねぇ」
「ん…ってか、なんでそんなに親切にしてくれるの?」
「にゃはは、なぁ〜にをみずくさいことおっしゃる!ダンナは今予断を許さぬ状況なんですぜ?もっとわがままにかまえてつかぁさい!!」
「は、はぁ…」

「…で、いい娘は見つかりましたかい?」

「へ?」
「クセは強いが粒はそろえてますでしょ?ちゃんと全員生娘ですから…」
「お…おいちょっと」
「そのまま買い取ってもらっても結構ですよ?にゃはは、今時の男子たるもの、穴奴隷の一人や二人…」
「なんの話をしてるんだ!!」

「なぁに、商隊そっくり持っていって貰ったってツリがでまさぁ。今後ともごひいきにお願いしますよ…」
「だからなんの話を…」
「やだなぁダンナ、商売の話に決まってるじゃぁないですか。アタシが売って、ダンナが買うんだ」
「買う…?」
「おやーん?ホントにご存じない?冗談抜きで?するってぇと、モナメテオさんのいってたことは本当だったんで」
「ご存知ない。買うもなにも金なんて持ってないぞ」
「ははーん。ま、隠すことじゃありませんがね。ダンナ、ダンナは少し御自分の価値を知ったほうがいい」
「オレの価値?」



シャマニが会話に間を挟む。ここからはマジメな話、といったところか。

「なんでウチの隊は女ばっかりだと思います?なんでそろいもそろって処女ばかりだと思います?なにもそろえようと思ってこうなったわけじゃない、簡単ですよ、健康な男子は皆魔族にさらわれて実験材料にされるからだ。
今世界は慢性的な男不足、辺境ではそれほど危機感ないかもしれないが…そういやリリィ姫もそんな感じでしたかね。ご自分達の祖国がどうして魔族に狙われたのか分かってなさそうだ」

「そ…そうなの?」

「そうですよ、そうですとも。もっぱら、魔王が子孫を残すのに躍起になってるって話でさぁね。魔族には男がいない、人間を婿にするわけにもいかないから魔族化しようと試みる。魔力を注入してね。ところが女はこれで魔族化するが、男だとうまくいかないんだな。
大概が爆発する。今のあなたなら分かるでしょう?だから狩る。うまくいくまで狩り続ける。あっという間でしたよ、一度バランスが崩れると人間は人間で勝手に自滅しますしねぇ」



青天の霹靂。

考えたこともない話だが、考えてみて当然の話ではあった。

最後に男に会ったのはいつだろうか。祖国ルルカナンの地で、城壁を追いだされる隣人の背中が最後。あとはもう皆死体かアンデットだ。
ザクロ団に男がいないのは、せいぜい前線に立つから死にやすいのだろうくらいにしか思ってなかったし、処女ばかり続くのは、度々意識を失っている間に非処女にもでくわしているだろうくらいに考えていた。

「今じゃ、生きた精子は大体一回の射精分で金200Kgに相当しますぜ」
「…いやいやいや」
「だ・か・ら、アタシらがミスラのダンナをもちあげるのは当たり前」
「うう…」
「男の子でも孕もうものなら人生変わりますしね…にゃはは」

シャマニが、意味ありげにシャツの第一ボタンを外す。普段のかしましさは演技なのか、開いた胸元から、押し込められた色香があふれだす。

ザクロ団の面々は知っていたのだろうか。少なくとも主要メンバーは知っていてもおかしくない、ヘルザクロは過保護のきらいがあるから、わずらわしそうな事実は選別してミスラから遠ざけそうだ。

「そうではない、確信がもてなかっただけじゃて。ワシらとて長い間孤立しておったおじゃからの」
「モナ…」

モナメテオとスケアクロウ、その後ろには、クリス。

「これからが本番じゃ。これよりワシ等は宝剣メルズヘルズを手に入れて参る。それまで生きておるのじゃぞ、なんとしても」
「おおっと、もうつきましたかい?じゃぁさ、ミスラのダンナ、残念ながらアタシは宝剣の方に…っと」
「うけけけけ。やいシャマニ。オレ様かドミニクに隊長権限おいていけよ。テンネはダメだ、あいつぁエロにぁ疎いから…」

「まったまったまった!整理を、話の整理を」たまらずミスラ。

「土鍋のときと同じ要領じゃ。慣れきった魔力よりは新しい魔力が良い。処女であれば勝るものはない。丁度ここにはそろっておる」
「ややや、お買い上げで決心なさいましたか?それじゃここにハンコを…」
「まてまてまてまて!!勝手に…なにを勝手な…!!」
「やぁや、ありがとうございます!これで黄金猫商会はミスラのダンナに服します。煮るなり焼くなり犯すなり、なんなりと…あ、ハイこれ猫バッジ」
「話を進めるなって!オレ抜きで…オレの金なんだろ!?…オレはなにも…!!!」

「あるじじゃないよ」

主体なき会話の流れを断ち切るように、クリスがミスラの前にでた。



「売ったのは私」



「クリス…?」
「私を売って、あるじにあげたの」
「クリス…お前…」

「にゃははは、宝剣クリステスラ、確かにいただきました!いい取引でしたよ、にゃはは」

「待てよクリス…待てってば!!」
「私のせいだもん」
「クリス!!」
「ごめんねあるじ…」
「クリス!!!なに勝手なことしてんだよクリス!」
「さよならあるじ」
「クリス!お前は…お前はオレの…!!」

「うけけけけ。お前はこっち」

連結戦車が動きを止めた。クリスは振り返ることなく歩いていく。ミスラはそれを眺め続ける。叫べども叫べども、クリスの背は遠のいていく。


・・・・・・。


「離せ!離せよ!!あんな勝手なマネ…」
「うっせーバカ、テメェが不甲斐ねぇから悪いんだろがバカ、騒ぐなバカ」
「う…」
「どの面下げて主人面してやがる、お○んこ三昧でうかれてんじゃねーぞバカ、テメェは生かされてる身なんだよ、自覚しろバカ」
「うう…バカバカいうなよ…」
「まぁアレだ、生きりゃぁいいんだよ生きりゃぁ、さっさとそのしちメンドクセえ力をテメェのものにしちまえ」
「うぐ…やります、やりますすいません、つねらないで…」

結局、ミスラにできるのはちんこをおっ起てること。

「33人」
「ん?」
「オレ様いれて33人だ。一片に集めてもいい、端から順番にでもいい。そんなに悪ぃ状況じゃねぇだろ?33のお○んこがどれ一つ逆らわねぇんだ。そういう条件で集まってんだからなオレらは」
「さ…さんじゅ…」
「遠慮はいらねぇぜ、犯せ犯せ!ぎゃははは……おっ、丁度いいや、ホレそこの角」
「かど?……あいたっ!」

スケアクロウに押出され、出会い頭に人にぶつかる。どうみても人殺しの強面の、主食は生肉ですといわんばかりのオリエンタリズムにのっとった偏見丸出しの価値観でかんがみるならば野蛮一直線の顔中傷だらけの女性。

「っだコルラァっ!!!っっ殺すぞこんのガキ…」
「チッ…やめろユイラ。例の客人だ」

強面の横には女性がもう一人。その格好は昔カリンザに聞いた事がある、東方月国の民族衣装和装喪服。眼が青いから、生まれが月国というわけではあるまいに。

二人とも、なんだか知らないが殺気の量が尋常でない。台所でもないのに包丁を握って徘徊している人間くらい怖い。

「どどど、どうすんだよスケアクロウ!なんかすごく怒って…」
「うけけけ。ち○こ舐めろっていってみろよ」
「なに?ちんこ舐めろ?」

「ああゴラ!?ッテメ、っとぼけたことぬかしてっと…わかりました」
「はい?」
「…っくそ。その猫バッジ…、そうかよ決まったのかよ先にいえよ…ちきしょ」
「ムッ…ここでするのか?」

喪服の女性の方が前をはだけさせると、けしからんことになにも履いてない。見せつけるような、黒々とした陰毛。

「うけけけけ。そっちの、オレ様の頭を悪くしたような単細胞がユイラ、もう片方の、死人みたいに線香臭いほうがユキボタル。んあ?なんだオメェ、ガタガタぬかした割には簡単なち○こだな」
「うぐ…」
「なんてお呼びしたらいいでしょうかねぇー、ミスラ様?親分?オレのコトは穴でも肉でも呼んでくださいねぇーん」

強面の傭兵ユイラは、さっきまでのこれから野ウサギの皮を剥ぎますよ的なギラついた眼もどこへやら、なんだか少女のように飛跳ねている。装備がガチャガチャ、そうそう軽いものでもあるまいに、それが親戚の結婚式に出向く女の子に見えんこともない。

「すごい変わりよう…」
「この商隊にはいってからいいことがなくてな…そういうことでもしなけりゃぁやってられんのだ」

ユキボタルがしなりとミスラの肩にもたれかかる。さりげなく組まれる腕。耳元で囁かれる声。いわく、例によって処女だそうで、年甲斐もなく胸が高鳴ってしょうがない云々。確かめてみるかと導かれた腕は冷たいおっぱいに着地し、奥の方で、コトコトいう心臓の音が聞こえる。

「うけけけけ。オメェは神なんだよ。命令しろよ、こいつらにもオレ様にも…ホレホレ」
「うぐぐ…」


―――かくして。

そういうことだから、そういうことが始まった。

いいだろうやってやる。例えちんこが擦り切れようとも、今はこの、自分の中で膨れ上がる力を制御することに全力を注ぐのだ。


・・・・・・。



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