「想いだけでも、力だけでも・・・」
彼は、とても潔い人だった。
迷いながらも、懸命に自分の信じた道を行く。
ボロボロに傷つきながら、それでも前へ進む。
では、アスランは・・・?
無謀な賭けだとは分かっていた。それでも、期待していた。
自分に。彼を信じる自分に。
「ラクス・クライン!」
彼はラクスに銃口を向けた――――
「・・・貴方の信じるものは何ですか?」
私が今まで信じていたものとは・・・一体何だったのだろう。
アスランに問いかける傍ら、同じものを、自分にも問いかける。
「お父様の命令ですか?」
少なくとも父の言葉を信じていたわけではない。
・・・父のことは、信じていた。
だから“希望”を演じた。“婚約者”を、演じていた。
では婚約者のことは・・・?
今目の前にいる、この揺れる瞳の持ち主のことはどう思っていたのだろう・・・
「アスラン」
答えは、あった。
自分は初めから、この人のことを信じてなどいなかった。
だから――――――
「・・・さようなら」
分かってしまった以上、自分を偽ることなどできない。
私は、アスランのことを何とも思っていなかった―――――
自分の心ほど不確かなものは無いと、そう感じた。
信じていたつもりであっても、結果、彼女はアスランを裏切ったのだ。
アスランが悪いわけじゃない。ただ、キラを好きな自分に気がついてしまっただけ。
―――――だからといってキラに自分の想いを告げたいわけでもなく。
ただ傍で、彼を、彼の心を守ることが出来ればそれでいい。それいいのだと、思っていた。


「ラクス・・・・・・」
父が・・・死んだ、ことは、無理に心の奥にしまいこんでいた。
自分のことにばかり構っていられるときではないから。
けれど、本当は声をあげて泣きたかった。
泣ける場所を探していた。
キラはそんなラクスの心を無理矢理こじ開けることなく、ただ、優しく押してくれた。
辛い心に気づいて、それを包んでくれた。
ラクス・クラインを、見つけてくれた。
ただ歌うことが好きなだけの女の子に戻してくれた。
・・・そしてそれはシーゲルのたった一つの望みでもあった。
けれどそれを叶えてくれたのは、シーゲルの用意した婚約者ではなく、キラだった。
ただ、それだけ。
最初から、ラクスに必要なのはキラだったのだ。


「エターナル、発進します」


彼女は彼に剣を与えた。
彼は彼女に力を与えた。


2人は共に、なくてはならない存在であった。
2人は、出逢うべくして出逢ったのである―――――














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自分的、キララクへの突破口。
キララクを認められるかもしれない・・・という希望を胸に、思いつくまま書いてみました。どう・・・だろう・・・。


ちなみに本編を知らないと話がまるで分からないのはいつものこととして、今回自分の気持ちの整理のために書いている部分が大きいのでいつもより更に本編に委ねている部分が多いです。(だって、キラの胸で泣くラクス、とかいう描写を頭の中で思い描くことはあっても、そんなシーンはこの小説にはひとっかけらも出てきていないですからね。困ったもんだ。)
まぁ、SEEDに関しては大体全作品そんな感じなんで諦めてもらうしかないのですが。・・・私もがんばります。


ところでこれに付随してアスカガもどき



2005/2/26


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