「Stray Sheep」あらすじ


■-20 修復

Stray Sheep
 アースラとフィシアは最上階の開かない扉の向こうに何があるのかを確かめる為、塔を上る。臾僖とフェレス、ユーリには、アースラの存在を奪った後ろめたさから言えなかった。
 最上階へ辿り着くと突如扉が開き、為す術無く二人は吸い込まれる。
 向こう側には、天の柱の世界の中枢たる中央神殿があった。其処は塔の世界とは全く別の世界だった。
 この世界で生きる事を決意する。
 アースラはやがて世界を守る秘密組織・ガーディアンへ入隊、後に大佐となる。

 やがて二人の間に息子・パーズが生まれる。
 成長したパーズは帰ってこないアースラを探す旅に出る。旅の中で強大な力を持つ秘宝の存在を知り、秘宝を狙う新しき神々の企みへ巻き込まれていく。

 旅先で再会したパーズとアースラ。
 新しき神・アポロンの企みを阻止しようと中央神殿へ。アポロンは76個の秘宝を使い、真の神になろうとしていた。
 戦いの中、強大な力を持つ姿へ変貌するアポロンだったが、存在を隠していた最後の秘宝が足りない為に変化は不完全なものとなった。崩れ、爆発を起こすアポロン。爆発からパーズを庇い、アースラは重傷を負う。
 多くの秘宝を使った為に世界の均衡が崩れ、地震が起こる。アースラを助ける為にパーズが全ての秘宝を使用すると、秘宝は一つとなり女神の姿となった。
 女神は世界の修復システムであり、アースラを一瞬で治療するとパーズ達に中央神殿の最下層への同行を求める。
 最下層にて暴走する最終防衛システムを止め、中枢に辿り着いた女神は世界の修理を開始する。
 パーズはアースラと共に帰路に就いた。

 後日、アースラの元へ修復を終えた女神が現れ、告げられる。
「彼を止めてくれたのね」
 女神の言う人物とは、塔の世界を作り出した神の事だった。
 女神はアースラの神の力を完全なものへ変える。
「私が貴方へ出来る事は、これくらいしか無いから」
 力をどう使うかも全て自由だと言い残し、女神は再び77個の秘宝となって消えた。

やめられないしもどれない
 パーズの頼みでアースラとフィシアは塔の世界へ帰郷する。1階の時間は丁度天の柱の世界と同程度の早さだった。
 養父や旧友から歓迎を受ける中で、臾僖がアースラにだけ告げる。
「真実を知りたいなら、あの部屋においで」
 臾僖はテレポートして消えてしまう。アースラは覚悟を決め、臾僖を追いかけて一人テレポートした。

 臾僖がいつか案内した仕置き部屋へと飛ぶと、暗闇に臾僖の影を見付ける。腕に何かを抱えていた。
 アースラは光を生み出すと、見えた全容に息を呑んだ。
「何故、そんな」
「何故? どうして君が訊くんだい」
 臾僖の腕の中には、鏡の向こうがいた。
「君が一番解っているんじゃないのかい。自分がアースラでないと」
「君が一番解っているんだ……僕は誰を愛したか、愛されたのは誰か、その人は何処にいるか……」
 憎々しげに告げる臾僖へ、アースラは恐怖すら覚える。
「臾僖さん、だけど、それは」
「……だまれ」
 臾僖の怒声は重い。
「君が幸せになるのは喜ばしいよ。でも、君だけが幸せになっても僕は嬉しくないっ!」
 臾僖が今まで抱え続けた本心が溢れてくる。
「君を受け入れてしまったらこの子はどうなる!? この子だけの感情は!? この子だけの行為は!?」
「僕が愛したのは君じゃないっ、この子だああっ!」
 絶叫する臾僖にアースラは涙するしか出来なかった。そうして臾僖は自らを殺すようアースラへ告げる。
 だが何も起こらない。
「ふふ……どうしたの」
「……臾僖さんはアースラを愛してくれた。今もずっと」
 アースラの胸中で崩壊するものがあったが、臾僖の為に無視した。
「だから……」
 アースラの体が白く燃える。
「あの人を、再び此処に」
 驚愕する臾僖へ、アースラはそっと告げる。
「生きたかった。貴方と離れたくなかった。かなうものなら貴方と共にいたい。どんなにそれが罪深き下法でも。ただ貴方と共にいられるのならば、その道を選びたい」
 それは『アースラ』の言葉だった。
「……貴方がその体を残しておいてくれたから、出来るんです」
 神の力を以てすれば、体が無くとも再生は出来るのだろう。
「過ぎてしまった出来事に全て逆らおうとは考えていません。私が与えるのは命と、完全なる神の力です。失った体の殆どは、再生しません」
 最後の嫉妬心がそうさせる。
 臾僖は迷い無く告げた。
「それでも、僕はアースラだけを愛したいよ」
 アースラの死から18年目の事だった。



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