No.13

血界戦線

クラウスのお髭に興奮しちゃうマーカス・ロウ警部
 もすん。マーカス・ロウ警部はぬいぐるみのような感触に起こされた。
 さわさわ。くすぐったい。うちの毛布、こんなに毛は長くない筈だけど。
 思いながら手を伸ばす。
 ぺたり。人の体。双子の兄は夜中に仕事だと出ていっていた。マーカスはそれを行ってらっしゃいと見送った。ならば、これは。
「くらうふひゃん?」
「起こしてしまいましたか、申し訳ない」
 恋人に違いなかった。
 夜中である。眠い。目が開かない。
 マーカスは頑張って目を開けるふりをしながら、恋人に抱きついた。
 まだ二十代の恋人は、ぴちぴちのお肌に鍛え上げられた筋肉が詰まっている。マーカスはその体を撫でながら寝るのが好きだ。
 たまに撫ですぎて眠るどころではなくなるが、それでも止められない。
 そろそろと背中に腕を回し、肩を撫で、襟足をじょりじょりして、最後に頬を……じょり。
 おや?
 マーカスは首を傾げた。頬を撫でたつもりだったが、間違えただろうか。
 クラウスの可愛い耳朶を優しく撫で、そして頬へと……じょり。
「クラウスさん、どう、し」
 ぱちりと目を開けると、そこにはマーカスの可愛い年下の恋人。裸なのはいい。一緒に寝る時はいつもこうだ。家に上がり込んで布団にまで潜り込んでいるのもいい。合鍵は渡している。
 しかし、前回愛し合った時は、こんなに長い髭は生えていただろうか。
 マーカスは両手でクラウスの頬を包み込んだ。
 前回セックスしたのは昨夜。いかな男性ホルモンの強いクラウスでも、一晩でこの長さは伸びない。
 何事だ、とマーカスは眉尻を下げた。
「事件は、解決しました。これはただの副作用です。体に影響もありません」
「そう、なの」
 なら、いいけど。マーカスは指でクラウスの頬を、正確には髭を弄んだ。心配事がないのなら、この珍しい姿を堪能しなくては。
 髪質よりも固めの髭は、しかし長さのせいで柔らかい。
「ふふ、一〇年後……二〇年後かな? こんな姿も見れるのかな」
「今は似合いませんか」
「そんな事はないけど……駄目。格好よすぎるもの」
 ちゅ、と音を立てて頬にキスをする。
 髭をかき分け、唇にも。反対の頬。鼻の頭。
「んわっ」
 さて唇にもう一度と狙いを定めていたら、クラウスに抱き寄せられて、布団を背中に押し倒された。
「くら、っん……」
 クラウスから、先程の触れるだけのキスとは違う、深い口付けを求められ、マーカスは素直に受け入れた。角度を数度変えながら、ちゅぱちゅぱと舌を絡め合う。
 口付けが深くなるほど、頬を赤毛が擽っていく。
「くすぐったい」
 呼吸の合間に笑い声を漏らすと、何故か口付けが激しくなった。それと一緒に、マーカスをまさぐる手も動きを早める。
 クラウスは裸だが、マーカスはパジャマを着たままだ。布越しのもどかしい愛撫に、マーカスは腰をくねらせた。
 最近暖かくて助かった。でなければ、マーカスはパジャマの下にシャツを着こんでいて、クラウスの熱はもっと遠かった。
「クラウスさん、……胸も、触って?」
 ボタンを外すのももどかしい。上着の裾を捲し上げ、マーカスはクラウスにねだった。自分で触ってもいいけれど、クラウスに触ってもらう方がもっと気持ちいい。
 乳首は既にピンと上を向いていて、クラウスの指を今か今かと待ちわびている。
「固い」
「んっ」
 熱い指が、尖った突起を優しく押し潰す。腕力に自負のあるクラウスだが、それは力の加減に意識を割く必要があるということ。マーカスを傷付けぬよう、殊更丁寧に快感のみを与える。
「あっ、くら、す、さっ……もっと強くっ」
 しかしマーカスにとっては焦れったいだけだ。胸をなぞるクラウスの手に自分の手を重ね、指先にぐっと力を入れる。
「マーカス、こんなに乳首を固くしているのに、こんなに力を入れて、痛くないのですか」
「あっあっあっ、ったく、ないっ、からぁっあっ、ひぃん」
 マーカスはクラウスの指を自分の意思で胸の突起に押し付け、更に我慢出来ずに股間も太股に擦りつけて振りたくる。
「クラウスさん、クラウスさん、キス、キスしたい」
 このまま、クラウスとキスしながら射精したい。とっても気持ちいい筈だ。その後は口でクラウスジュニアを落ち着けて、うがいをしたらもう一度キスして抱き合って眠りに落ちよう。
 マーカスは素早く計算した。
 クラウスとのセックスは好きだけど、二夜続けては体力が持たない。何せ昨日は散々に貪られて、夜勤をダニエルに代わって貰ったのだ。夜勤の為の睡眠時間が全て体力回復に費やされた。
 可愛いクラウスを満足させる為に、マーカスも出来るだけ応えたいとは思うものの、年齢差と、そもそものフィジカルに差がありすぎた。警官として鍛えているとは言っても、肉弾戦を生業としている者にはどうしても敵わない。
 年々体力は無くなっていくし。
 だからここは日を於いて後日。そう目論んだマーカスは、しっとりとした感触に包まれた胸元に、目論見が失敗したことを悟った。
「あっ、クラウスさんっ、きす、はっ!?」
「ふぁなたのむにぇにひてひる」
「そっ、こで喋らない、でっ」
 乳輪ごと熱い粘膜に包まれ、マーカスはクラウスの髪をかき混ぜた。ふわふわと柔らかい髭が、唇に触れていない胸元を愛撫する。
 片側の乳首はまだクラウスの指が添えられている。しかし今度は、マーカスの指の上からだ。
 クラウスの指の動きに従い、マーカスは自分の指で自分の胸をなぶる。
「んっ、あっ、感じすぎちゃう、からっ」
「感じて下さい。そうしているのだから」
 少しだけ顔を上げたクラウスは、再びマーカスの胸をちゅぱちゅぱと舐めしゃぶり、舌先で突起を捏ね回す。牙が胸の膨らみを掠める度、マーカスは股間をクラウスの太股に押し付けた。
 駄目だ、このままではセックスしたくなる。マーカスは思った。いや、もう本当はセックスしたい。したいけど明日が辛い。セックスしたい。クラウスとキスしたい。
「クラウスさんとセックスしたい」
 思わず声に出ていた。
 与えられたのは優しいキス。
 顎にさらりと髭が触れて、すぐに離れてしまった。
「あなたは……」
 圧し殺した声が降ってくる。ぼさぼさの前髪をかき分けて、マーカスはクラウスの目を覗き込んだ。
 ぱた。ぱた。
 汗がマーカスの喉に落ちる。
 我慢していたのはマーカスだけではないのだと、思い知った。クラウスもマーカスを一度絶頂へ導いて、一人で始末しようとでも考えていたのに。なのにマーカスが誘うような真似をするから。
 マーカスの体調を一番よく知っているのは、鋼鉄の自制心を総動員させている、この哀れな獣だ。
 マーカスの手が揉み上げをなぞり、顎を伝って、鼻の下を親指で撫ぜた。そして緩く唇を開いて。
「come on」
 口付けを熱望した。
 
 ***
「んっ、んっんっんっ」
 マーカスの喉からこぼれた音が、クラウスと合わさった唇から微かに漏れる。下履きは既に剥かれ、クラウスの太い指が後孔へずっぽりと突き刺さり、厭らしい水音を立てていた。
「んひゅ、ふっ、ふぁっんくぅ」
 明確な意思を持って良い所を潰されて、外されて、マーカスのアナルはすっかり蕩けている。
 昨夜もたっぷりと愛されていたのだ。一昼空けた所で、クラウスの大きさに馴染んだ愛穴は、主人の帰りを待ち望んでくぱくぱと三本の指を食みしゃぶる。
「んきゅぅっ!?」
 ぐり! と前立腺を一際強く潰され、マーカスは悲鳴をクラウスの口内へ放った。ペニスから少量の精液が垂れ落ちた。
 クラウスはそれを鈴口に練り込むように、親指で亀頭を撫で続ける。
「んーっ、んっ、ふひゃう、ん!」
 いやだ、もうやめて、同時に責めないで。抗議は全てクラウスの喉に吸い込まれる。
 一度も唇を離さないまま、寝間着のズボンを剥かれ、下着を剥かれ、ペニスとアナルを責め立てられ、マーカスはクラウスの腕を力なくかりかりと引っ掻いた。
 口付けを望んだのは確かに自分だけれど、言いたい事も全て飲み込まれ、ひたすら興奮を高められるのが辛い。
「(助けて、クラウスさん)」
 音にも出来ず、くふんと喉を鳴らすと、目尻から涙が溢れた。
「マーカス」
 絡めていた舌をちゅるんと離し、ようやっと唇が解放される。唾液でべとついた口元が、薄暗い中でも微かに濡れ光る。
「キスは?」
「いじわる……悪い子」
 散々キスで嬲っておいて、もういいのかと問うてくる。
 皮膚の薄い鼻の下を敢えて選び、指先で髭を摘まんでちょっと引っ張る。前髪をの隙間から覗く翡翠色が少し歪み、蕩けた。
「あっ、拡げないでっ」
「マーカス、キスは?」
 両の人差し指で、孔の縁をかぱりと拡げられる。熱い粘膜に外気が冷たい。
 こんな意地悪教えてない、とマーカスは内心悲鳴を上げた。
 兄の恋人のように恋愛達者というわけではないが、マーカスとて大人の男としてそれなりの場数は踏んできた。だから真っ更なクラウスをリードしたのもマーカスだ。面白がって吹き込んだ事がないでもない。
 でも、こんな。こんな!
 後孔は既にクラウスを欲しがって、くぱくぱと開閉している。クラウスも指でそれを感じ取っている筈だ。
 なのに、マーカスの言葉を待っている。言わせようとしている。言わないと、くれない。
 はく、とマーカスの唇が震えた。
「please……」
 クラウスの目がギラギラと輝く。捕食者は、慎重に獲物の言葉を待った。
「ここに」
 マーカスが恐る恐るクラウスの指に手を伸ばす。触れた秘部は、想像以上に開かれていて、顔に血が昇った。
「クラウスさんの、おちんちん、ちょうだい」
 もう一度、pleaseと呟く。
 吐息と悲鳴はクラウスの唇に奪われた。
 
 ***
 
 ベッドの軋む音と、激しい水音が鼓膜を犯す。
 肉がぶつかり合う音がする度にとんでもない快感を与えられ、マーカスは呻き声を上げる。
 しかしそれは全てクラウスの喉に吸い込まれ、外に漏れる事はない。
「んーっ、んーっ、んーっ、んーっ!!」
 ずぱん、ずぱん、ずぱん、ずぱん。深く深く杭を打ち込まれ、マーカスの背中がベッドから浮き上がる。
 それで快感を逃がせる筈もなく、クラウスの腹にペニスを擦り付け、余計に自らを追い詰めた。ぷしゅぷしゅと先端から透明な液が漏れ出す。
 しかも浮いた背中にクラウスの腕が入り込み、ぴたりと胸と胸が密着する。尖りきった乳首がクラウスの胸に擦られ、マーカスは堪らずクラウスの背に回した手で爪を立てた。
 同時に両足をクラウスの腰に回し、きゅっと力を込める。
 ずちゅずちゅずちゅ。
「んひゅぅ、んっんっんっ!」
 マーカスの足で動きを制限されたクラウスは、小刻みに腰を打ち付け出す。
 腸のひだを張ったえらでこねくり回されていたのが、腹の奥の奥を犯す動きに変えられ、マーカスは首を振って暴れた。少しずつ、少しずつ入ってくるその先には、結腸がある。
 経験はある。あるから、そこを抜かれた時に、自分がどう壊れるかを、マーカスはよく知っていた。
「ひゃっ! ん〝! ん〟ん〝ん〟ん〝ん〟ん"!」
 こつん、と。クラウスの切っ先が結腸の口を突いた。ぶしゅ、とペニスが潮を噴く。
 こつん、こつん、こつん。
「ん〝! ん〟っ! ぶっ、むっ……ぷぁっ、やっ、やだっ、クラウスさん、だめっ、いれちゃ、だめっ!」
 いざ、いざ、入れるぞ、犯すぞ。と。意思を押し付けられ、マーカスは無理やりクラウスを引き剥がして訴えた。
 今だって既に腰がびりびりと震えている。ペニスも出しすぎて痛い。
「やだっ、お、ねが……お願い、だから……やだ……こわい……んぷっ」
「ん……昨日も入りました。貴方は悦んでいた。そうでしょう?」
「だ、からだよっ! きもちすぎて、変になるっ」
「変になったマーカスは、とても淫らで、とても可愛らしい。私はもっと見たい」
 ぐ、とクラウスが腰に力を入れる。
 勢いを殺し、ゆっくり、じわじわと奥まで入り込んでくる切っ先に、マーカスは首を振って泣き叫んだ。
「入れないでっ、止まって、止まってぇ……! いゃぁ……奥……ずんずんしないで……!」
「マーカス」
 名を呼ばれる。それだけで分かった。亀頭の半分が、奥にめり込んでいる。
 これは許可要請ではなく、宣言だ。
「あ……あ……いや……いやぁっ!」
 ぐぽんっ!
「ひっ……あ〝あ〟あ〝あ〟あ〝あ〟あ〝あ〟あ〝あ〟あ〝あ〟あ〝あ〟あ"!」
 腰の力だけで結腸を抜き、クラウスの剛直がマーカスの胎を割り開いた。
 マーカスの足は指先までぴんと伸び、閉じようとしてクラウスの腰に阻まれるという仕草を繰り返す。
 力の入らない腕で、せめて顔だけでも隠そうとするが、クラウスに軽く封じられ、顔から出るおよそ全ての体液を垂れ流した顔を晒された。
「やだぁ……見ないで……変な僕見ないで……」
「マーカス、鼻水が」
 はらはらと涙を溢すマーカスの顔を、クラウスは自分の舌で舐めとり、浄める。鼻も、目元も、口元も舐め終えると、くったりとベッドへ身を沈めたマーカスを抱え直した。
 くぽんっ、ずろろろろ……。結腸から亀頭を引き抜き、腰を引いて後孔の縁まで戻る。
「あ……あ……あ……」
 ずぱんっ!
「んぎぃっ!」
 そして一気に結腸の奥まで貫いた。
 くぽんっ、ずろろろろろ……。
「あ……ひ……やだ……やっ!」
 じゅぱんっ!!
「ぎゃうっ!!」
 くぽんっ、ずろ、ろろろろ……。
「あっ、ひっ、ひっ、ひっ、いゃぁ……いや、いやぁ……」
 ぐぱんっ!!
「あ"っ……ぎ……ぃ……」
 たり……とマーカスの唇の端から涎が溢れ落ちた。
 クラウスはそれを舐めとりながら、上目遣いにマーカスを見た。ちろちろと涎を舐め続けると、伸びてきた舌が絡み付いてくる。
 クラウスは遠慮せずにその誘いに乗ると、唇を合わせて腰を激しく振りだした。
「ふぁっ、くら、ひゅ、あっ……あっ」
「マ……ーカス」
 ぐぽぐぽと剛直を結腸に出し入れしながら、クラウスはマーカスの耳元に唇を寄せる。マーカスは意識を飛ばしながら、「にゃに?」と辛うじて応えた。
「私はまだ、オーガニズムへ達していない」
「はぇ?」
「マーカス、貴方の胎に、出したい。いいだろうか」
「くらぁふしゃ、いってない、にょ?」
「ええ」
「いきたい、ねぇ」
「ええ、とても」
「ぼくの、おなか……いっぱぁい、だして、いいよぉ」
「全部?」
「ぜんぶ」
 マーカスはクラウスの手を取り、自らの腹に掌を乗せさせると、へにゃりと笑った。
「いいよ、ここに」
 両手を伸ばす。クラウスの頬を、髭を、両手で包むと、死刑宣告をした。
「だして」
 自分への。
 
 ***
 
 閉じきれない穴から、こぽこぽと白濁が滴る。
 少しでも腹に力を入れると塊を産み落としそうで、マーカスは首だけを緩く動かし、隣で汗だくになりながら、マーカスを見つめる年下の恋人と目を合わせた。
 運動した故の汗と、冷や汗を同時にかくとは、我が恋人殿も器用なものだ。マーカスはぼんやりと思案する。
 確かに。
 下半身には殆ど力が入らない。今は快感で麻痺しているが、一眠りした後にはきっと尻穴が痛む。あと腰も。
 喉も酷使したから、声が出ないかもしれない。
 しかし、これは同意の上であることだし。
 そしてふと思い至る。
「やだって言ったのに」
 びくりと大きな肩が跳ねた。やはり気にしていたのはそこなのだ。
 途中の制止を、我が儘で振り切ったと。
 くすりと笑うと、マーカスはケダモノの髭をつんと引っ張った。
「いいんだよ、最初にセックスしたいって言ったのは僕なんだから」
「しかし」
 つんつん。引っ張る。
「それより、可愛いお髭の子猫ちゃん、今日はいつもより強引だったね。何で?」
 つんつんつん。言うまで離さないからな、とちょっと睨む。もちろん本気ではないのだけど。
「む……ぅ……。その、以前、スティーブンが」
「スターフェイズさん?」
 おやまあ。何でここで兄の恋人が出てくるのだろうか。ピロートークで他の男の名前を出すのは礼儀がなっていないのでは? と、思いはしたが、クラウスに悪気がない事は分かりきっている。
 マーカスは黙って続きを待った。
「数日、髭を剃る時間も惜しんで、とある愉快犯を追い詰めました。その後、ダニエル・ロウ警部補と過ごしたそうなのですが……」
 ここで兄の名前である。可愛い恋人にあのハレンチカップルは何を吹き込んでくれたのか。
 マーカスは一言も聞き漏らさぬよう、耳を澄ませた。
「ダニエル・ロウ警部補が、スティーブンの髭を気に入って、いつもより甘やかしてくれたのだ、と。
 だから、私も髭が生えて、マーカスに甘やかして欲しくて、髭を剃る前に慌てて訪れたのです」
 マーカスは一言も聞き漏らさなかった。
 聞き漏らさなかったので、腹に力を込めて叫んだ。
「Jesus!!」
 可愛い恋人を甘やかすべく、毛むくじゃらの唇に吸い付いたマーカスのお尻の孔からこぽりと白い塊が溢れてベッドを汚した。

#血界戦線 #クラマカ

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