炎色反応 第五章・10



「あ、あ…………やめて下さいっ…」
顎を仰け反らせ、甘美な責め苦に耐えようとするティスに無情な愛撫は続けられる。
「やめていいのか? 前ももうこんなだ。気持ち良くして欲しいんだろう?」
含み笑いをしたヴィントレッドの唇は執拗にティスの乳首を吸う。
吸われていない方もつままれ、引っ張られ、撫で回されて同じように硬くなっていた。
尻への攻めも激しくなるばかり。
ぬちゃっ、ぬちゃっという音を立てて抜き差し揺れる指に合わせて腰が勝手に揺らめいてしまう。
その上いまだヴィントレッドの姿は消えたまま。
見えない獣にいじられる体は、はた目にはどう見えているのだろうか。
ぷるぷると乳首を震わせ、最奥まで覗き込めるぐらいに穴を広げられてよがる自分の姿が脳裏を過ぎった。
「あぁ……」
想像がますます官能を煽る。
ヴィントレッドの声は、ティスのその淫らな想像を更に追い立てるように高めていく。
「指で犯されて気持ちいいか? すけべな体だぜ、全くいい仕込みだ」
「ふぅ、んっ、あっ、あぁっ」
ねじ込むように指を使いながら吐かれるいやらしい言葉が、耳を通して心を侵食する。
「犯して下さいと言ってみろ、ティス。ヴィントレッド様のをぶち込んで孕ませて欲しいってな」
くく、と赤毛の男が低く喉を鳴らした。
「腹が膨れるぐらいまでオレのを飲ませてやるよ。上の口も下の口もふさいで、よがり狂わせてやる。さあ言え、兎ちゃん」
ヴィントレッドの指の動きが変わる。
円を描くようにぐりぐりと中をかき乱し、こすり上げられるとたまらなかった。
「いっちゃうっ…………やっ…、オルバン様ぁ……!」
びくんとつま先を反り返らせてティスは達した。
「あ……、ぁ」
いつしかきつく勃ち上がっていた性器からとめどなく蜜があふれ出す。
恐ろしい状況のせいか逆に絶頂感は強く、その反動ですぐには動けない。
「ご主人様の名前を呼びながらイくとは、本当にいい仕込みじゃないか」
ヴィントレッドの声は相変わらず楽しそうだ。
「一途なところが燃えるね。これからはオレが飼ってやろう、兎ちゃん」
身動きままならない体を太い指が呆気なく裏返す。
四つん這いにされ、両手は背中でまとめて固定された。
両足を大きく広げられ、尻の奥の奥までヴィントレッドに見えていることはよく分かる。
「嫌です、やめて…」
か細い声でうめいても、嘘つくなよ、とヴィントレッドは気にも留めずに笑う。
「指で満足出来る体じゃないだろう。それにさっき塗った薬は遅効性だ、しばらく効くぜ……どうだ、何か入れてこすって欲しくてたまらないんじゃないか?」
情けないことに彼の言う通りだった。
指で向かえた絶頂を通り過ぎた内壁はまた蠢き始めている。
犯してくれる棒を欲しがり、恥ずかしげもなく穴がぱくぱくと開くのが分かった。
「……う…」
羞恥に思わず声が漏れる。
ヴィントレッドは白い尻の肉を片手でやわやわと揉みながら言った。
「恥ずかしがるふりが上手だな。男を誘うやり方をよく知ってる」
「違う……恥ずかしい、です…………本当に……」
いつだって男に抱かれるのは怖くて恥ずかしい。
オルバンに抱かれる悦びを半ば自覚した今となっても、彼以外にされるのはまた違う。
…………けれどきっと、違う男に犯されることすらもどこかこの身体は求めている。
恥ずかしさも怖さも本物だけど、最終的に全てを凌駕するのは貫かれる悦楽。
それにもまた気付き始めているから、ティスはここに至ってもヴィントレッドの言葉に逆らおうとする。
それまで認めてしまったらおしまいだと、心のどこかで知っているから。
「…それが誘ってるって言うのさ。淫乱の男好きの癖に、どっか妙にきれいなんだよな、お前は」
ヴィントレッドの手が尻の割れ目をなぞる。
「……ん、んっ」
「名高い火のオルバンが可愛がっている奴隷だ。ただの人間のガキじゃないだろうと思っていたが、ふうん、なるほどなあ」
彼の声には本気で興味深そうな調子があった。


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