炎色反応 第五章・9



ぜいぜいと喉を鳴らしながら手近の木にすがり、がっくりと座り込んでしまう少年の体にはもうほとんど衣服が残っていなかった。
腕と足、それと腰周りにかろうじて布切れがまといついているだけ。
そうしている内ぴしっと頭上で音がして、小さな小枝が数本近くの地面に降って来る。
ヴィントレッドが近付いて来のだ。
分かっていたが、ティスはもう立ち上がれなかった。
「もうおしまいか? 兎ちゃん」
笑う声は、上から降って来ることは分かるが相変わらずその姿は見えない。
喉の辺りを苦しそうに押さえ、ティスは力なく彼がいると思われる方向を見上げる。
大きな水色の瞳は潤み、頬は紅潮し、忙しない吐息が漏れる唇は紅く色付いていた。
ヴィントレッドがピィ、と軽い口笛を吹いて言う。
「…たまんねえな、その顔。もの欲しそうな目で見やがって」
「あッ」
足が持ち上がった。
足首を何かが掴んでいる。
その感触、わずかに残った布地に刻まれる指先の跡、間違いない。
ヴィントレッドはティスのすぐ前に屈み、その両足を掴んで持ち上げている。
でも、姿は見えない。
感じられるのは声と、かすかな気配だけだ。
「見えない…、魔法……? あっ!」
今度は両手が上に引っ張られる。
慌ててそちらを見上げたティスは、手首に輝く光の鎖を見た。
赤い炎で出来たそれは、間違いなく火の魔法。
「陽炎。オルバンも使うだろう? 熱で周りの空気を歪ませて幻視を……まあ、野暮だな、こんな説明は」
中途まで姿を隠す魔法の説明をしかけたヴィントレッドは、割り開いた足を更に広げさせた。
見えずとも感じられるあけすけな視線にティスは堪らず叫ぶ。
「や、見ないで!」
尻が浮くほど持ち上げられた足の狭間では、うなだれた性器とその奥に潜むすぼまりがさらけ出されている。
全てを目で犯されていることを感じると、恐怖と羞恥、そして恥ずべき官能は増すばかり。
「可愛い穴だな。使ってる割にはきれいじゃないか。大事にされてるなぁ」
くつくつと笑いながら下品な言葉を吐く、ヴィントレッドがいる辺りでちかりと光がひらめいたのが分かった。
足首にかかっていた指の感触が消え、自動的に元の位置に戻るはずの足を再び光の鎖が固定する。
両手両足全てを高く持ち上げられ、辱めの態勢を取らされたことに気付いたティスはかっと顔を赤らめた。
「見られて感じてるか? ひくひくして…………早く大きいの入れて欲しいか、兎ちゃん」
「やだ……ゆ、許して」
思わずつぶやくが、答えは無遠慮に触れてくる硬い指先。
舐めて濡らしたのか、ぬるつく太い指が引っ張られて薄く口を開いた穴にいきなりねじ込まれた。
「いたっ…!」
「嘘つけ、処女でもあるまいし………ふん、やっぱりな。絡み付いて来るぜ」
「らん、乱暴にしな…や、アッ」
掌が背に回り、胸を差し出すように軽く押される。
そして、すでに硬くなりかけていた乳首にぬるりとした感触が触れた。
「あう、あっ…………はぁ、すっ、吸うの……だめっ」
魔法で姿を消した男の舌は胸のとがりを舐め転がしは吸い、しゃぶっては軽く歯を立てるを繰り返している。
「ここもだいぶ開発されてるな。女より敏感じゃねえか」
尻の穴を攻め、乳首を攻めながら、彼は言葉でティスの心も攻める。
「こっちの穴ももう欲しそうだ。オレに食べて欲しいか? 兎ちゃん。骨まで残さず、全部食べてやろうか」
舐めたかと思われていた指にはどうやら何か塗られているらしい。
ぬるぬるするそれを塗られた部位が、むずがゆいような感じがする。
奥がうずく。
欲しい。
「だめ…」
一瞬頭の隅で明確に形になった言葉を、ティスは必死に否定しなければならなかった。
だけどそれがいつまで続くか、自分で自分に自信が持てない。


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