炎色反応 第五章・2



「あ……んっ」
ちゅぽっと音を立て、また唐突に指が抜かれた。
「やるか?」
息を乱しながら振り返れば、オルバンははしたなく口を開けたティスの白い尻をエルストンに見えるようにしてやっている。
「いや」
短く答えたエルストンは、そう言うなり横に動いた。
展開が唐突過ぎるのだ。
いくらなんでも気を悪くしたのだろう。
気まずい気持ちになったティスだったが、すっと元の位置に戻って来たエルストンの手にした物を見て目が点になった。
「新人の娼婦を仕込むのに使うらしいがな。仕込みというか、逃亡防止用に」
彼が手にしているものは、一見紐のような幅しかない下着である。
それだけですでに一般人の身に付けるものではないが、問題なのは股の部分にある異物だ。
だんごを五つ六つ縦にくっつけたようなそれは、どう見ても張り型だった。
おまけにぶるぶると細かく振動していて、表面に何か塗られているのか妖しい輝きを帯びている。
「これも魔法具の一種らしい。肉の悦びを強制的に教え込み、淫乱にさせるための物だそうだが、元から淫乱にはどう効くだろうな」
「……いや………」
青ざめるティスの腰を強くオルバンが押さえる。
するとエルストンはためらわずに近寄って来て、ティスの両足を持ち上げた。
痩せて見えるが案外彼の骨張った手は力強い。
足首に絡まっていたズボンと下着を取り払われる。
そして、苦もなく悪い玩具の付いたその下着を履かされ引き上げられてしまった。
前の部分は娼婦が使用するもののためか、ぱっくり開いているので性器が束縛されることはない。
とはいえ恥ずかしい格好であることは間違いなく、自分の姿を想像するだけでティスの頭には血が昇る。
しかし、今は見た目をどうこう言っている場合ではなかった。
「ひぁ……ッ…!」
ひくつくすぼまりに濡れた硬い物が押し付けられる。
そうと思った瞬間、ねちゃっと音がして穴が広げられる感触がした。
潤った内部を押し広げ、だんご状の塊が一つ、また一つと中に入ってくる。
「あ、あ………動く…、奥ぅ、だ、だめぇ」
元からぶるぶる震えるそれは、貫かれることを期待していた淫らな肉をかき分けすぐに根元まで埋まった。
ぱちんという音が聞こえ、ティスは完全に張り型を埋め込まれた状態で下着を固定されてしまったことを知る。
「あ、ぁ……っ…」
気付けばオルバンの手もエルストンの手も離れていたが、それどころではなかった。
紐としか言えないぐらいしかない布が白い尻に食い込む。
体が熱い。
うずいてたまらない。
「すごいな。完全に入った」
初めてのエルストンの感情のこもった声通り、ティスの中にはかなりの長さと太さのあった張り型がきっちりと挿入されていた。
「あ……あ、ぁ…っ……」
がくがくと膝が震え、とても立っていられない。
その場にへたり込んでしまったティスの頭にオルバンの指が触れた。
「ん、ん…」
大きな手が愛撫するように金の髪を撫でる。
それにすら感じ、熱い息を吐くティスの上で男たちは再び話を始めた。
「なるほどな。気に入っているのはよく分かった、オルバン」
相変わらずあまり感情の感じられない声でエルストンが言うのが聞こえる。
「面倒ごとになっているのが分かっているのに、足手まといにしかならない奴隷を手放す気はないか」
その言葉にオルバンは鼻を鳴らした。
「そこいらの魔法使いなら足手まといにもなるかもな。だがオレは火のオルバン様だぜ。こいつに何も出来なくても、オレ一人の能力で十分身を守れる」
ティスを庇うというより、自分の能力を誇っているようにしか聞こえない。
だがいかにも彼らしい台詞にもエルストンは何かを感じているようだった。
「分かった。風のグラウスの件だな。俺も少しは噂を聞いている。知っているだけのことは話そう」
そう言うと彼は、ひくひくと床の上で震えているティスをちらと見てから口を開いた。


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