炎色反応 第五章・1
じろじろじろじろ出会い頭からたっぷりティスを眺め回した後、その青年が言ったのはこうだった。
「確かに美しい」
金髪と大きな水色の瞳が白い肌に映える、類い稀なる美少年に対する声にはあまり抑揚がない。
「どこで拾ったか知らないが、皆噂しているぞ、オルバン。あのオルバンが人間の子供を奴隷にしているとな」
半ば眼を覆ってしまうような長さの黒髪をかき上げてつぶやく、彼の名はエルストン。
中肉中背、というよりはやや痩身で、聞き取り辛い小声でぼそぼそとしゃべる。
今はオルバンの出した光に容赦なく照らし出された、雑多な小物が所狭しと並べられた陰気な小屋の主である。
陰気な雰囲気に似合いの陰気な主の住むこの場所に、黒衣の魔法使いと共にティスが来たのには訳があった。
「噂な。お前ら情報屋の中だけじゃなくてか?」
短い黒髪と金の瞳を赤い火に輝かせ、尋ねてくるオルバンにエルストンは気のない声で答えた。
「皆が噂していることをまとめるのが情報屋の仕事だ。ふん、しかし思ったより年が下だ。オルバンの玩具になるぐらいだ、少年と言ってももうちょっと年上だと思っていたがな」
細い黒い瞳でなおも見つめられ、居心地が悪そうにしているティスの腕を不意にオルバンが掴む。
「あッ」
「こいつは見た目よりは頑丈だぞ。おまけに可愛い顔をして、とんだ好きものだ」
「らしいな。それも噂に聞いている」
平然とうなずくエルストンの前で、オルバンはいきなりティスの上着の前を開いた。
白い肌、その頂点にある珊瑚の色をしたとがりが魔法使いの火に照らされる。
たちまち忍び込む冷たい夜気と嫌な予感に彼はぶるっと震えた。
「オルバン様…」
怯えたような声を上げるティスをいきなり後ろを向かせ、オルバンはその手を近くの台の上につかせた。
台の上には何か得体の知れない小瓶や器具が散らばっている。
それらに気を取られたのも束の間、腰に触れてきた手に身体が硬直した。
「あ、やぁ……っ」
胸をはだけられたまま、今度は下肢を剥かれる。
下着ごとズボンを引き下ろされ、初対面のエルストンの前で足まで開かされた。
「や……、恥ずかしい…、です……」
オルバンの指が尻肉を掴み、それにつられて奥に隠されていた桃色の穴が広がる。
恥らうティスに低く笑い、オルバンは軽く舐めた人差し指を深く差し込んできた。
「んぅ………っ、んん、急に…、んっ」
「もう一本ぐらいすぐいけるな」
「だ、だめ……あ、あっ」
二本の指を挿入され、中をかき回される。
まるでエルストンなどいないような素振りだが、エルストンもそれを特に咎める様子もない。
「なるほど。噂通りの淫乱だ」
事実を確認するのみ、といった感じで冷静につぶやくエルストンの指に指輪はない。
暗い森の側のこの小屋で隠者のような暮らしをしているが、彼は普通の人間だった。
ただしエルストンは腕のいい情報屋であり、オルバンのこともティスのこともある程度はすでに話を聞いているらしい。
元々オルバンは情報者としての彼を利用していたことがあり、今回もそのためにここへ来たのだ。
風のグラウス。
先日会った地のディアルが言い置いていった、最強の魔法使い。
火のオルバンを始末することで己の権勢を高めようとしていると、噂の男の情報を得るために。
……のはずなのだが、オルバンはまだそんなことを一言も彼に言わない。
「あ、あ、あ……っ…」
右手で尻の中をえぐりながら、左手でティスの性器を扱く。
先走りを取っては奥に塗り付ける、を繰り返していたため、オルバンの指は濡れそぼり抜き差しするたびにくちゅくちゅと卑猥な水音が上がった。
「んあ、あっ……オルバンさまぁ…………」
二箇所を同時に愛撫されれば、犯され慣れたティスの身体はたやすく燃え上がる。
だが当然、エルストンの存在は気になる。
まさかこの情報屋に対し、噂が真実であるかどうか確かめさせようとしているのだろうか。
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