炎色反応 第四章・22



するりと地面に滑った布の下から、若木のような手足にしどけなく引き裂かれた服の名残を残した美しい少年の裸体が現れた。
本来なら寒さに震えるはずの格好だが、身の内で燃え始めた火が白い肌を桜色に染めている。
切なげに寄せられた眉、紅潮した頬、潤んだ大きな瞳。
月明かりにきらきらと輝く細い金の髪を持つ彼は、まるで無理やり地上に引きずり下ろされてしまった天使のようだった。
頼りなげで、はかなげな姿でありながら、その性器は明らかな昂ぶりを見せ雫をしたたらせている。
肉欲を教え込まれ堕落しながら、いまだ汚れきれない天使。
清楚さと淫らさを兼ね備えた、この上なく嗜虐心を誘うティスの姿を見てオルバンは目を細めた。
「オレはお前が欲しい」
「……ぁ…」
強い瞳で見つめられ、てらいなくそう言われるとぶるっと体が震える。
胸元で乳首が硬くしこるのが分かった。
濡れた後ろの穴もまた、きゅうっと切なく締まっていくのを感じる。
視線で愛撫され、反応を示し始めたティスの太腿にオルバンの手がかかった。
「どうするかはもう分かるだろう。そうだ…………そのまま、腰を落としてみろ」
肉棒の先の、つるりとした丸みを受け入れる場所に当てた姿勢を取らされた。
こんな風に、座った形でオルバンを受け入れるのは初めてではない。
だが……こんな風に、あからさまに自分が動かなければならないのは初めてだ。
「し、失礼します……」
何となく、そんなことを言いながらティスはおずおずと体を沈めていった。
「……ンッ…………」
ひくつく肉の穴が、いっぱいに開いて男を飲み込んでいく生々しい感触。
いつもよりもひどく鮮明なそれを味わいながら、ティスは息を吐き力を抜いていく。
「よく見えるぜ、ティス。お前のいやらしい穴に、オレのが入っていくのが」
身も蓋もない言葉に一層顔を赤くしながら、完全にオルバンの上に座り込む格好になった。
「ほら、動けよ」
「んあっ…!」
深く入ったものを軽く揺すられ、悲鳴を上げる。
「今夜はお前がオレを楽しませるんだ。さあ、踊れ、ティス」
言いながらオルバンは、上に乗ったティスを小突くように軽く腰を上下に動かした。
「はっ、あっ……! ん、んんっ」
うながされるまま、ぎこちなくティスは足を踏ん張り体を浮かせる。
与えられたものに歓喜し、絡み付く肉が名残惜しげにそれを締め付けた。
「うう……んっ」
卑猥な音を立てながら半分ほど引き抜いた男根の上に、一拍置いて腰を降ろす。
最初はいかにも拙かったその行為に、次第にティスは溺れていった。
「ふあっ、アッ、ああっ……!」
ティスが腰を動かすたび、淫らな音が静かな丘の上に響く。
いつしかその手は自らの胸元と性器に周り、感じやすい箇所を愛撫しながら夢中でオルバンを貪っていた。
時には腰を深く落としたまま、小さな白い尻を彼の腰にすり付けるように動かす。
奥まで深々と入ったものの先端が気持ちいいところをこすると、頭の中が真っ白になるような快感が欲しいだけ生まれた。
「あん、ああっ、オルバン様、オルバン様ぁ…!」
羽をもがれた天使が悪魔のような魔法使いの上で狂い舞う。
肉欲に浅ましく乱れ、よがり続ける姿を見てオルバンは満足そうに薄笑った。
「可愛い奴だ………お前は最高の奴隷だ。いいぜ、ティス。もっと鳴け」
人間を奴隷としか思わぬ男は、彼にとっての最高の褒め言葉をつぶやいて無我夢中で尻を振るティスに小さな光を差し向ける。
「あっ、あ、あああっ!」
光の粒が白い尻の中に入り込み、狭い肉壁と肉棒の狭間で転がる。
「はあ、んっ………、ごりごり、するぅ…」
新たに生じた悦楽に少年は涙を流してよがった。
やがて一度目の絶頂を迎えたティスを、身を起こしたオルバンは抱き寄せる。
舌を絡め合う激しい口付けを受け、ティスは今度は彼の突き上げも受けながらもう一度腰を振り始めた。
「あう、んっ、深いっ……よお、オルバン様、オルバンさまぁ、いいっ、いい…!」
いつ果てるとも知れない交合が理性を飲み込んでいく。
その最中、ティスは主人を抱き締めて何度も何度も彼を呼んだ。
繰り返し精液を注がれ、全身にかけられ、白い液体にまみれて少年はうっとりと笑う。
いつしかその頭の中で、イーリックの欲情した瞳の残影はひどく遠いものへと変わっていったのだった。



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