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告白

9_180氏

石牢から出されたのは、その日の午後だった。
ファルコーネ女子爵がレオナルトを『国外追放』を条件に釈放したのだ。
当座の生活費として幾分かの金を受け取り、馬車で『トブロア』との国境の門にたどり着いたのが夕方。
見送ったのは、ルカを含む数人の憲兵だけで
そこにユーリの姿はなかった。

(容赦ないな)
それがレオナルトの素直な感想だった。
何か言いたげなルカに微笑んで会釈をすると
トランク一つ持ち、エダナムから去った・・・。



「いい加減食事をお取りなさい。」
ファルコーネ女子爵────もといガルデーニアは
寝台に腰掛け、自分から背を向けて口も聞こうとしない東方少女に語りかける。
「今日でもう4日目しょう?
食事も取らず、水分だけで・・・細い身体がますますガリガリに────。」
「あにさんに会わせて。
───じゃなきゃこのまま食べないで餓死してやる。」
「・・・・・。」
ようやく口を利いたと思ったら子供じみた脅迫を吐き出したユーリに
ガルデーニアは呆れてため息を付いた。
「───あなたの医師は、もうとっくにエダナムを去りましたよ。」
「無実の罪を着せて追い出したんでしょ?
やることがえげつないよ。」
「だったら、普通は必死に訴えるでしょうよ。
でも、それをしなかった───あの医師、過去に疚しい事しているのでしょう?」
周囲に控えている者がいるため、女子爵の仮面を被り貴族の淑女になり、優しく丁寧な言葉遣い
で話すガルデーニア。


「───あにさんは上流階級の者や支配級の者に、訴えても向こうの都合の良い風に握りつぶされ
る・・・って。
だから、何を言っても無駄だって───知ってる。それで訴えないだけ。」
「ユーリ・・・・。」
ガルデーニアは、片手でドレスの裾を上げ、優雅、かつ、素早くユーリの隣に座り手にしていた扇を
広げ、耳元で囁く。

「だからと言って、長く連れ添った女性を手放して大人しく国外へ追放されるかい?」
「・・・。」
今度はユーリが黙る番だった。
「グレゴリーのルカから話を聞いたが、特に異存も唱えず抵抗もせずにさっさと国境門を越えたらし
いよ・・・。 
───本心は身軽になって清々したんじゃないか?」
ユーリの顔が垂れ、艶やかな黒髪が表情を隠す。
今、どんな顔をしているのかわからないが、ズボンを握りしめるその白百合のような手が震えていて、
かなりの動揺が見られる。
「もう、いい加減手放したかったんじゃないかい?───あんたの事・・・。」

この桃娘のために、一つの場所に留まることができず、転々としていたことは簡単に推測できた。
余程強い愛情がなければ
───それか余程の金づるだと思わなければ、続きはしない。
それも人というものは、余程の金づるでも維持するために逆に金を使ったり、厄介事をつくったりする
ような相手だと見切りを付けて放り出すものだ。

───経験上ガルデーニアは痛いほど知っていた・・・・。

「ルカが言ってたよ、笑って国境門を出たってさ。」

──決定打だ───
東方少女は崩れるように寝台に突っ伏して泣き出した。


この子も自分で危惧していたのだろう───このままだと捨てられると・・・。
憂慮が現実の物になってしまった・・・失望と悲しみ
ガルデーニアは泣き崩れるユーリの背を撫でながら
「もう、腰を据えなさいな・・・。
私が、高貴な男性達が魅了され、手放せなくなるほどの淑女に育てあげますよ・・・。
そうしたら、あの医師のことなど忘れてしまうわ・・・。」

布団に顔を伏せ、嫌々と首を振りながら泣き続けるユーリを
メイド達に命令をし、無理矢理寝台から引き離し、身ぐるみを剥がすと、風呂に入れた。
それは大変な抵抗だったが、風呂から上がり、粉をかけ、普段着用のドレスを着せる頃には諦めたのか、
すっかり大人しくなりメイド達のなすがままにされていた。

普段着用の装飾の無いドレスを着たユーリは清らかで無垢な少女そのものだ。
柔らかな紺色のドレスは胸下で浅黄色のリボンで縛られ、その下からは少ないドレープで質素だが、
上品に床まで流れている。
髪は耳元から脇を後ろに流し、ドレスの胸下に使ってあるリボンと同じ色の生地で縛った。

この清艶極まる少女が、あの医師に夜な夜な抱かれ大人と同じ快楽に乱れた表情をしたのかと思うと、
背徳に似た感情が沸き上がり顔が綻ぶ───男は昼と夜の顔に差があればあるほど溺れる・・・。
(良い娘を手に入れた)
ガルデーニアはほくそ笑んだ。

「───さあ、とにかくお食事を取りなさいな。」
ユーリの背中を優しく撫で促すがユーリは頭を振ってガルデーニアに言った。
「今日1日・・・一人にさせて・・お願いします・・・。」
俯いて話すユーリの瞳からは今でも涙がこぼれそうに大きく波を打ち揺れていた。

───まだ、泣き足りたいのか・・・
この4日間、泣いたり拗ねたり喚いたりを、繰り返されてもううんざりしていたが「今日1日」という
台詞をユーリに再確認し、了承した。


食事はきちんと取るように、と、念押しされユーリは頷くとガルデーニアは安心したように目を細め、
部屋を後にした。

卓に置かれた銀食器の蓋を開けると、食べやすいように一口サイズに切り分けられた、肉や野菜、果物
が並べられていた。
消化の良さそうな果物を摘んで口の中にゆっくりと入れ、噛みしめる。
何処かで食べた味だ・・・。
────思い出す。
確かメロンと言うものだ。
自分の口の大きさに切り分け、食べさせてもらったことがある。
桃娘が必ずかかると言って良い『腐病』を、警戒してユーリの普段の食生活に気を配っていたレオナルト
だが、寝込んだときはどこらか珍しい果物を手に入れてきて食べさせてくれた・・・。

滴が頬を伝い、卓上に落ちる。

ごめんなさい
ごめんなさい───此処にいないレオナルトに何度も謝る。

いつもそうだ
私の存在が何時でも厄介事を作る。
それは体臭に関しての事だけじゃない。
よく寝込むし、
自分が良かれと思い行動したこと
周囲に同情し、つい手を差し伸べてしまうこと
───結局は自分自身の力ではどうしようもなく、レオナルトが後処理をする・・・。

いつか
そういつか私はあにさんから離れる事になるだろう───理解していた。
その時は、彼がその後の人生を満喫できるようにしたいと───そう思っていたのに・・・。


罪人として、国外追放だなんて・・・。
お金だって、そう持たされていないだろう。
こんなつもりじゃなかった
こんなはずじゃなかった
いつもそうだ
私はそうやってよく考えたつもりでも、災難を起こすんだ───

きっと、ガルデーニアにも災難がかかる。
私を桃娘として扱うのなら、きっと。

死んでしまいたい。こんな自分が嫌。
死んでしまいたい。もう、あにさんに会えないのなら───。


西に向かって日が沈む
あにさんは今どうしてるの―?

窓越しに空を見る───涙で窓が霞んでぶれて、まるで鉄格子に見えた・・・。





夜が更けて月が輝く。
メイドが持ってきた寝着に着替える気力もなく
寝台で横向きで寝転がり、弓のように細い月を眺めていた。何をする気力もなく、ただ、ぼんやり
と月を眺める。

ふと、タッセルで結いてあるカーテンの裾が揺れているのに気づいた。
(窓・・・開けてたかしら?)
ゆっくりと起きあがり、カーテンが揺れている側の窓を閉めた。
部屋の方に向きなおし、寝台に目を向けたその時
「───?!」
薄闇の中、寝台に座っている人の影が見えた。
ユーリは思わずカーテンを握りしめ、その影を凝視する。
暗闇と同じくらい濃い色のマントで身体を覆っていてわかりづらい。
こちらが怯えているのが分かったのだろう。
首をちょんと傾けた──おどけるように・・・。
首を傾けてくれたおかげで月明かりに顔がさらけ出された。
「───あっ!!」
ユーリは声を上げそうになったのを慌てて押さえ、震えて、倒れそうになる身体を必死にカーテン
を掴み支えた。

黒みがかった金髪を整髪料で丁寧に後ろに流し、余った襟足は縛り上げているが
自分を見つめるその露草色の瞳は責めることなく、この上なく優しい・・・。

「こんばんは美しいお嬢さん。」
低く通る甘い声はいつもと変わりなくユーリの耳に響き、

早く行きなさい
早く胸に飛び込みなさいと───心が囁いている。


───でも、反面
理性が警鐘を鳴らしている

また愛しい人を厄介事に巻き込むつもり?

────と。

「・・・あっ、・・・あっ。」

迷うユーリにどうしたらいいのか、理性がユーリに告げる
「ごめんなさい・・・。」
「?」
ユーリの第一声に今度は不思議そうに首を傾けた。
「・・・どうか、辺りにある調度品を適当に見繕って持っていって下さい・・・。」
涙をこらえ、ようやくレオナルトに言った台詞・・・。

レオナルトは、暫く黙りこみ、じっとユーリを見つめた。
ユーリはその視線に答えられずに、俯いて顔ごと反らした。
「・・・今夜は調度品を頂戴しに来た訳ではありません。」
そういうと、のっそりと寝台から立ち上がり、ユーリに迫った。

そして、立ち尽くす彼女の右手を恭しく触れ、指に口づけをする。

「麗しい香りを放つ少女を閉じこめている───との噂の真相を確かめに参りました。
今の生活にご不満がおわりのようなら、この屋敷から脱出するお手伝いをと・・・参上した次第です。」
ユーリは、レオナルトの胸に飛び込みたい衝動を必死に押さえ、首を横に振る。
「ご不満はない?」その問いにまた、首を振る。
困りましたな、と、肩をすぼめるレオナルト。


「・・・私はいない方が良い・・私が側にいると・・・いつもレオナルトさんに災難がかかって
しまう・・・。」

───だから、お願い、その辺の調度品を持っていって、お金に換えて。
私が罪を被るから───せめてもの罪滅ぼしに・・・・。

「───そんなにぼろぼろ泣きながら言われましてもね・・・・。
それに、貴女の側にいると災難がかかると言うが、それを今度は此処の女主人が被って、解決を?」
「・・・いずれ、国王殿下に私を献上するようですから・・・最高権力者の殿下なら特に・・・。」
「───問題ないと?」

もう、頷くだけで精一杯だった。
そんなに近寄らないで
話しかけないで
理性が負けてしまう───心と身体が、愛して───と泣いている。



「───気に入らんな。」


レオナルトの声音が急に鋭くなった。
驚いて涙が止まり、顔を上げる。
せっかく整髪料で整えた髪をくしゃくしゃと手でかき分けて、いつもの自然な髪の流れに戻してしまった。
その表情は明らかに不愉快さが滲み出ている。


「・・・ユーリが起こす厄介事を、私以外の者に処理させるのかね?
───それは、私の役割だ。その役は誰にも譲る気など無い。
───例え、国王殿下だろうとな。」

ユーリは泣くのを忘れ、ぽかんと口を開けてレオナルトを見た。
「それに、何だ?
他人行儀に『レオナルトさん』? 私は君が『あにさん』と呼ぶのを気に入っていた。
───すごくな!
それを、4日・・・たった4日だぞ?
細かく言うと3泊4日だが───そんな事はどうでも良い!
問題なのは、そんな短い期間会わなかっただけですぐに他人行儀になるのかだ。」

時々、自国の言葉を交えながら早口でまくし立て、落ち着きなく、ぐるぐると弧を描いている彼
を、初めて見たユーリは言葉を無くしていた。
ふいに彼は立ち止まり、ユーリに身体ごと向けると声を低くし、こう訊ねた。
「・・・そんなに国王殿下の所へ行きたいのか?」

ここで、『はい』と言ってしまえばいい───そうすれば、レオナルトは自分の元から去り、二度
と顔を合わすことがなくなる───

しかし、ユーリは彼の表情を見て返事ができなかった。

辛そうな、泣きそうな、どちらにも取れる表情をユーリは初めて見たからだ。

「どうなんだ?」
再度訊ねられる

自分の呼吸が荒くなる。
また、涙が溢れてくる。
あにさんは───もしかして私を・・・?
私を?


「私は体も考えも幼くて・・・迷惑ばかりで・・一緒にいたって・・・良い事なんて無―!!」
いきなり、腕を捕まれた。
「体の育ちが悪くったって、世間を舐めているのかと思うほど幼い考えだろうと、泣き虫だろ
うと、よく寝込むだろうと・・・・・・。」

「・・・?」
話の途中で途切れた。
自分の腕を掴む力が、少し強くなった気がする。
何処か緊張している様子に見えるのは、気のせいだろうか?

レオナルトは何かを決心したようで、深呼吸で広く弾力のある胸が大きく揺れる。
そして、ゆっくり、はっきりユーリに告げる。

「愛してる・・・。」  と


アイシテル―

足がガクガクして、体が崩れそうで、必死にレオナルトの背に腕を回し捕まる。
「・・・・あ、あ・・・。」
呂律が回らなく、足だけではなく身体全体が震えている事に気づく。

あにさんが?
私を?

悲しくないのに涙が滝のように流れて止まらない。
どうにもできずに、レオナルトの胸に顔を埋めた。
レオナルトは全身に嬉しさを表し、ユーリに、額に、艶やかな黒髪に何度も口づけを繰り返した。

「───呼んでおくれ・・ユーリに呼んで欲しい、私のお気に入りの呼び名を。」


「・・・あ・・にさ・・・ん。」
「うん・・・。」

「本当に?あにさん愛してるの?私を?」
「───愛してる。」
「一緒にいて良いの? ずっと、一緒にいても良いの?」
「・・・側にいてくれ。」
泣きすぎてヒャックリを上げているユーリを抱き上げ、寝台へ運んだ。

「・・・だから、私の役目を取り上げないでおくれ。
私からの『お願いだ』・・・。」
おどけたように言うと
こつりとユーリの額に自分の額を合わせる

ようやく、自分に笑顔を見せたユーリを見てレオナルトは安堵の息を付いた。


安心すると、ユーリの甘い体臭の効果も手伝い、欲望が目を覚ます。
───しかも、男装ではなく見目麗しい少女の姿だ。
スクエアに縫われている首周りは、深めに縁取られ、上げて寄せた胸元の割れ目がレオナルトの
視線を釘付けにした。
「・・・随分寄せたな・・・。」
余分な肉どころか、誰からか肉を貰ってきた方が良いのでは?と心配するほど細身なのに下着の
技術と着せたメイド達の技に感心する。
「・・・いや・・・・ん。」
頬を染め、両手で胸元を隠そうとするユーリの手を掴み、口づけをする。
そしてレオナルトはその手を自分の肩に回させた。


ユーリの髪と首筋に埋めるように顔を寄せ、唇と舌で味わうように首筋に食らいつく。
「・・・ん。」
首から顔の輪郭、細い喉元―この桃娘が何処が敏感で感じるのか知る男は自分一人だと、
独占欲が満たされ、優越感に浸る。

香りに刺激され何度かユーリは襲われかけた事があるが
皆、己の性欲を満たすが為だけあって
ユーリの身体の事など気にも止めない。

───だからこそ

彼女の身体の快楽を快感を、目覚めさせた───自分が。
二人で性欲を満たし、高みに昇れる・・。
自分だけがユーリに触れる権限があるのだと
感じさせ、労れるのだと
体臭に誘われ誘蛾灯のように群がる男達に知らしめたい───。

上半身を起こし、技で寄せた胸の谷間の隙間に舌先を入れ、小刻みに動かすと
「・・・はあ・・・・・。」
ユーリの背筋が弓なりにのけぞる。

「胸元が唾液で濡れるな・・・。」
そう言うとお互い少しの時間も離れがたいと、舌を絡めながら口づけを交わし、ユーリの胸下
を結いてあるリボンをはずし、裾を上げドレスを脱がす。
ドレスの下は窮屈さのないステイズと薄いペチコートで、透き通ったレースの向こうに白の
下着に負けない白さのユーリの生足が見えた。

「───あっ・・・。」
レオナルトの視線にユーリは慌てて足を窄めて、膝を横に曲げる。


メイドがドレスの時は肌着は入りませんと譲らなかったのだ。
ペチコート越しからはっきりと分かるユーリの黒い恥毛で覆われた秘丘は、ますます男の情欲
を駆り立てる。

レオナルトは逸る気持ちを抑え、マントを外し、シャツと黒いベストを一気に脱ぎ捨て、横
に曲げた足を掴み、大きく広げる。
「・・・あにさ・・。」
ペチコートの中に潜り込んだレオナルトの頭を布越しに触れるユーリ。
一瞬ひやりとした感覚に短く声を上げたが、抵抗はしなかった。
片手を後ろについて自分の体重を支え、自分の股の間に埋もれている愛しい男が小刻みに動く様子を、
ぼんやりと見ていた。
「・・・ん・・ぅん・・ぁ。」

徐々に研ぎ澄まされる感覚に、たまらず漏らす声も
痺れ出す下半身の疼きに身を捩り、支えきれなくなった身体を寝台に倒し舌の強弱に合わせ、シーツを
握りしめるその姿も―欲望の快感を知っている女そのものだ。

「ユーリ・・・。」
果実の香りと一緒に放つ女の匂い。
───堪らない
余計な物全て取り去り、極上の絹肌を身体全体で味わおう───

ユーリの股から身体を離し、ペチコートを外し、ステイズの両脇の紐を、一気に解き腰から
引きずり落とす。
その手際の良さにユーリは呆然とされるがままであったし
レオナルトが自分を見失いかけてた。
「あにさん・・・。」


まだ薄いが形良く成長してきている双丘を脇から揉みし抱く。
さわさわと揉む指が、薄い桃色の突起に触れると食するように口に含み、舌で包むように転がす。
「ぅうん・・・。」
―まだ、余裕がある・・・。
自分に触れる仕草で分かる。

唇と舌は白い双丘を逃がさず、何度も絡め、甘噛みし
レオナルトの長い指はユーリの腹を伝い、黒い秘めやかな茂みへ侵入を進める。
既に先ほどの愛撫で、程良く湿っているそこは
くちゅ くちゅ と淫らな音を立てレオナルトの指に絡んだ。
「はあ・・・あぁあ・・・良い・・ん。」
「・・・良いか・・・?」
ユーリの耳元で、ささやくレオナルトの声音は
欲望が全開するのを押さえているように響く。
「・・・あに・・さん・・・。」
ユーリはレオナルトの頭を抱くと、しがみつくように絡み付く。
「・・・ユ・・。」
以前より、骨ばった部分が減ったユーリの身体は
女特有のしっとりと柔らかい肉と
桃娘特有の体臭が溶け込むようにレオナルトを包む。

―良いの、あにさん―

「えっ・・・?」
聞き返す。
「平気だから・・・私、あにさんが自分を見失ってもちっとも怖くない。
あにさんの心行くまで抱いて・・・ううん、抱いて下さい。」

「可愛いことを言う・・・。」
レオナルトはユーリと向き合い、
いじらしい台詞を告げたふくよかな唇に食らいつく。


「心配はいらない、絶対ユーリに酷いことはしない。」
「・・・でも・・いつも、自分を見失わないように我慢しているように見える・・・。」
「───ああ、それはな・・・。」

見ていないようで見てるのか

ユーリの髪の毛に顔を埋め、声を出して笑いそうになるのを堪える。
そうして、笑いを抑え、顔を上げたレオナルトは不思議そうに眉を寄せるユーリに言った。
「男なら、誰でもそうなんだ。」
「あにさんだけじゃないの?
途中から酷く苦しそうになるから、体臭で自分を見失わないように頑張っているのかと・・・・。」
「確かに──ユーリの体臭は私の性欲を駆り立てるがね・・・。
その問題はとっくに解決しているさ。」

「────えっ?どうやって?それは他の人にもできることなん?」
驚いて、事の最中だと言うことも忘れ、起きあがろうとするユーリの肩をレオナルトは押して、再び
寝台に沈める。
「できるだろうが・・・それは私が困る。大変嫉妬に苦しむことになる。」
「────?」
そう言うと、ユーリの両股の後ろを掴むと
ぐいっ、と、上に持ち上げエビ反りの格好にする。
「・・・あっ、や・・!こんな格好──!」
足を蹴り上げ下に下ろそうとするが
レオナルトがしっかり押さえどうにもならない。
「丸見えだな・・・。ユーリの──知ってるかね?
君の此処・・・桃を真っ直ぐ半分に切ったときの断面に似ている事・・・・。」
「───やっ!?」
そう言われ、身体全体を赤く染め、顔を両の手で隠すユーリ。


見られている羞恥心もあるせいなのか
桃色の秘所から愛液が果汁のように、しとしとと溢れている。
それを舌先を尖らせ、すくうように舐める。
鼻を近づけると、匂う女の香り。
身体からは甘い果実の香り。
混じって、狂おしくなる。

そのまま尖らせた舌先を、ヒクヒクと別の生き物のように動いている魅惑的な入り口に侵入させる。
「ぁあ!あっ!・・・・ん、いいぁああん。」
舌を伸ばし、入れられるだけ入れ暖かく蠢く艶めいた体内を舌でかき回すと、自分の体内で動く舌
は、ユーリの性感を激しく揺り動かす。
中で自分が出す熱の他に、感じるレオナルトの熱い舌が次々に新しい性の疼きを生み出した。
「あ、あ、ぁぁに・・・さ!駄目ぇ・・・そんな・・・・!」
快感の波が小刻みにきて、そのたびにユーリの身体が震える。
瞳をぎゅっと閉じ、いやいやと首を振る───白百合の手は、ずっとシーツを強く握っているせいか、指
が赤くなっていた。


ユーリの呼吸が荒く短くなり、控えめな乳房が小刻みに波打っている。
──そろそろか───

舌はそのまま、生暖かい中の壁を沿うように舐め続け、鼻の先で充血し、めくれている突起を刺激してやる。
刺激するたびに、紅く充血した突起は愛液と交えグチュグチュと音をたてレオナルトの鼻の濡らした。


「───う──ぅんんんんん!!」
びくん、びくん
とユーリの身体が芳香を放ちながら大きく反りたった。


ユーリの秘所から身体事離れると、彼女の下半身は力無くドサリと寝台に横たわる。

白い肢体が快感の果てに、力無く横たわる姿は淫靡で艶やかだ・・・。
レオナルトはその様子を満足げに、見つめる。
誇張している自分のものが、早く彼女の中へ入れと背筋から脳裏に命令しているようで、熱い
痺れが身体を支配した。
見られているのに気付いたユーリは、のろのろとレオナルトに顔を向けて、両手を掲げる。

「・・あにさん早く抱いて・・・欲しいの・・・。」
「・・・ああ・・・。」
ズボンに手をやり、さっ、と脱ぐと既に誇張して更に赤黒くなっている自分の物をさらけ出す。
ユーリは、仰向けに身体の向きを変え、下半身の蕩けた部分と正比例してトロンと涙で潤んだ瞳で
レオナルトを見つめていた。
ユーリの太股を掴み広げると、欲しいと汁を垂らして誘う秘所に一気にあてがう。

「・・・はあ・・・。」
どちらともなく、歓喜の声を上げお互いの身体を抱きしめる。
「あにさん・・・。」
「ん・・・・?」
「気持ち良いん?」
「最高だ・・・・・・。」
「良かった・・・。」
「ユーリは、聞かずとも分かるな・・正直な身体だからな・・・。」
頷くと、頬を染めレオナルトに口づけをした。

レオナルトに口づけした時、自分自身の野性の香りがした・・・。

お互いの舌が交差し始めると同時、繋がっている下半部が揺れ始めた。
それは徐々に大きな揺れになり肉と肉のぶつかる音が出る。
「はあっ!ああん!ううぅん・・・いいっ!ぃいのぉ!!」


こんな細い腰の中に、よく自分の物を受け入れられると、いつも彼女の身体の柔軟さと
体内の伸縮に感服しながら、身体の中を突き抜けているであろう快感に身悶えするユーリの
姿を鑑賞する。
規則的に反復する彼女の身体は、内と外の熱で薄桃色に上気し、あの、誘う香りを放っている。
切なげな声とは裏腹な、欲情をさらけ出しそれに浸るユーリは、無垢な少女ではなく女の性欲を
知り、受け止めた者の表情を恥ずかしがる事もなくさらけ出している。

───私がそうさせたのだ───
この快楽に浸る表情も、この淫靡な声音も、身体の完成より早く目覚めた性も
私だけの香る娘・・・。

「・・・あにさ・・ん、良いんよ・・・・。」
「?」
「苦しそう・・・私は、平気だから・・・。」
無理しないでと、断続的に震える快感に身を委ねながら伝えるユーリに、
「・・・ユーリの体臭の誘いを我慢している・・・わけではないさ・・一緒に果てた方が、良いだろう?」
それを我慢しているだけだと告げ、
ユーリの口を自分の唇で塞ぐ。
ユーリのふっくらとした舌を絡め、舐め、吸いつく。

もっと深い侵入を得ようと、手持ちぶたさのレオナルトの腕は、ユーリの膝裏を抱き寄せ上に持ち上げた。

「────。」
喘ぎ声全てレオナルトの咥内にに吸い取られている気がする・・・。
歯茎や歯の一本一本舐められている。
そんな気もするがつながってる部分の感覚の方が強すぎて、よく分からない。
奥深く子袋に当たり、痛いようなむずいような快感が止まることなくそこから背中を通り脳内を
支配し始めた。


──あにさん
──あにさん

好き───大好き──愛してる
多分、一目惚れだった。
施術の後、生死の境を彷徨っていた私の側にいてくれて、本気で愛してしまったんだ。
─── 子供のような愛情表現しかできない私を、彼が女として愛してくれるなんて無いと思っていた。
金儲けの為に私を使うまで、側にいられれば良いと思ってた。
「愛してる」 と、言う、西方ではよく愛する者に囁かれる言葉は彼から聞いた事はないし、
私も期待していなかった。

嬉しかった、嬉しくて、心だけじゃなくて身体も震えた。
私も愛してる、愛してる────あにさんから私へぶつける身体事全て───

レオナルトを抱きしめる腕の力が更に籠もる。
華奢な指が、レオナルトの肩に爪を立てるように押した―瞬間。

「─────!!!」
ユーリの背中が反り、震え
レオナルトは彼女の中、奥深くに精を放った───。




ユーリは自分があんな霰もない声を出して
扉の向こうに人がいたら・・・と、赤くなったり青くなったり目まぐるしく変わる表情を
可笑しそうに眺めながら
「誰もいなかった。」
と、レオナルトは告げた。


ユーリの部屋を探す際に、ファルコーネの屋敷を探索していたのだ。
「君が、屋敷から抜け出さない自信があったのだろう。」
例え、抜け出したって頼る人がいないユーリが路頭に迷うのは目に見えているし
エダナムに長いこといるガルデーニアの方が地理に明るい。
探索網を張り、瞬く間に捕まるのは目に見える

ユーリは安心して、弾力のある寝台にくたりと横たわっているレオナルトの側に座ると、
ようやく空腹の合図が出た身体を満たす為、メイドが夕食用に盛ってきたトレイから葡萄
を取り食べだした。
レオナルトはユーリの月明かりのみの部屋で、ぼんやりと白く輝く背中を自分に引き寄せ、
腕枕をしてやるとユーリの手自ら葡萄を貰う。
甘酸っぱい味覚を、たまに口移しで味わいながらお互いの喉を潤した。

そんな甘い時間を過ごしながら
ガルデーニアの商談の中身を聞いた。
「香水か・・・『だけ』じゃないだろうな、当然・・・。」
一人心地呟く。


「・・・ユーリ、暫くこの屋敷で行儀見習いをしていてくれないか?」
「───えっ・・・?」
てっきり、この後、連れ出してくれるのかと思っていたユーリは意外なレオナルトの言葉に
顔を曇らす。
「・・・このまま、君を連れだしたらガルデーニアはしつこく追っ手を差し向けるだろう・・・。
──少々、痛い目に遭わないと実感しないだろうと思う。
それに彼女は、私の職業も馬鹿にしたしな・・・。」
「・・・・。」
気位の高いレオナルトは、自分に関した事で馬鹿にされるのをとても嫌う。
例えその場で穏やかに微笑んでやり過ごしていると思っていても
後に直接的でも間接的でも、不愉快にされた仕返しをする。


にやりと何か一物考えている、抜け目無い笑いを見てユーリは
こうなったら、彼は目的を果たすまでやり通す事を良く知っていた。

でも
────多分、ガルデーニアも同じ気質だ
とも、彼女は感じていた。
根競べの勝負になるなと・・・・も思った。
「・・・全然懲りなかったら?」
起き上がり、潤んだ瞳で自分を見るユーリの顔を引き寄せ、
「否応なしに連れていく──もしユーリ自身が居心地が良くなって行きたくないとごねても。」
おどけてそう言うと
「そんな事、絶対ならないもん。」
ユーリは拗ねた仕草をして、レオナルトを睨むが、口元は微笑んでいる。
「頻繁に来て見つかると面倒だから、毎日は無理だが・・・なるべく会いに来る。」
何せ、国外追放の身ですからと肩を竦める。

「・・・どのくらいの・・頻度で来てくれるん?」
レオナルトの胸に頬を寄せ、寂しげに問うユーリの肩を愛しげに擦り、慰めるように彼は言った。

「───私の身体に移った君の香りが消えないうちに・・・必ず。」

部屋に漂う、甘い香りは二人を包む。
暫く続くであろう二人の逢瀬を
見届けるつもりなのか
隠すつもりなのか
───弓のように細い月は高く高く空を上り、ファルコーネ女子爵の屋敷の真上で薄雲に紛れて
行った。


                                               告白 終


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