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キトサン学術情報 

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脂質代謝とキトサン    熊本県立大学環境共生学部教授 奥田拓道

キトサンは、D-グルコサミンが、5000以上1-4結合した物質であり、かにやえびの甲羅に含まれるキチンをアルカリ処理して得られたものである。われわれがこのキチンに注目したのは、プラスに荷電した食物繊維として利用できる可能性をもっていたからである。

広島女子大学の加藤教授とわれわれは、食塩による血圧上昇が、Na+によるのか、Cl―なのかという問題に決着をつけるために、プラスに荷電した食物繊維を探していたのである。マイナスに荷電した食物繊維としては、アルギン酸が知られている。食塩とともにこれらの繊維を動物に投与することによって、Na+,CL―を糞中に排出させ、血圧に対する効果をみようというのである。食塩とともにアルギン酸を投与すれば、Na+が糞中に排泄され、Cl―が体内に吸収される。一方、食塩とともにキトサンを与えると、Cl―が排泄されNa+が体内に吸収される。

結果は、食塩とともにキトサンを投与すると血圧は上がらず、アルギン酸とともに与えると血圧は上昇するというものである。つまり食塩中のNa+ではなく、Cl―が血圧を上昇させるのである。Cl―は、アンジオテンシン転換酵素を活性化し、アンジオテンシンⅡを生成し、これが細動脈を収縮して血圧を上昇させる。これまで、クエン酸ナトリウムや塩化アンモニウムを用いて多くの研究がなされてきたが、Na+やCl―と結合したクエン酸やアンモニウムの毒性のため、一定の結論を得ることができなかったのである。キトサンを食物繊維として使用することによって、食塩の害を除く可能性を明らかにしたわれわれは、次にキトサンのその他の生理作用について検討することにしたのである。

脂肪の腸管吸収とキトサン

食品の脂肪は、十二指腸で胆汁に含まれる胆汁酸やリン脂質と混合され、小さな油滴になる。脂肪は、決してそのままの形で腸(空腸)から吸収されることはない。必ず膵臓から分泌されるリパーゼによって分解された後、その分解産物(脂肪酸とβ-モノグリセリド)が吸収される。

脂肪は水に溶けないので、多くの脂肪分子が集合して油滴の形で存在する。一方、リパーゼは水溶性なので、脂肪に対するリパーゼの反応は、油滴の界面で行われることになる。界面が広ければ広いほど、リパーゼの反応は進む。胆汁に含まれている胆汁酸やリン脂質は、食品中の脂肪と混合して小さな油滴をつくることで、リパーゼが作用しやすい状況をつくっているのである。胆汁酸やリン脂質は油滴の界面に存在しているので、生理的な界面活性剤である。胆汁酸は界面活性剤としての作用の他に、リパーゼの働きを強める活性因子としての作用もあわせ持っている。
キトサンは図1に示すように、リパーゼの脂肪を分解する作用を10μg/mlの濃度で阻害する。脂肪は分解された後に、空腸から吸収されるのだから、リパーゼ作用をキトサンが阻害するという成績は、この物質が脂肪の吸収を阻害する可能性を示すものである。リパーゼの阻害機序として、2通りの仕組みが与えられる。1つは、キトサンがリパーゼに作用する方法であり、他は油滴の方に作用する仕組みである。

そこで脂肪としてトリオレインを用い、胆汁酸とともにレシチンを用いた場合とアラビアゴムを用いた2種類の油滴を調整した。つまり、トリオレインの周りの界面に、胆汁酸とレシチンが存在する油滴と、胆汁酸とアラビアゴムがある油滴である。このような油滴にリパーゼを作用させる系に、種々の濃度のキトサンを作用させてみた。図2にみられるようにキトサンは、レシチンを用いた油滴に対しては阻害作用を示すが、アラビアゴムの油滴に対しては全く阻害を示さない。十二指腸の中でできる油滴は、アラビアゴムではなく、レシチンを持つ油滴である。もし、キトサンがリパーゼに作用して阻害しているのであれば、両方の油滴の分解に対して阻害作用を示すはずである。しかし、レシチンを用いた油滴に対して阻害作用を示し、アラビアゴムの油滴には阻害作用を示さないという事実は、キトサンはリパーゼではなく、油滴の方に作用してその反応を阻害することを示している。おそらく、マイナスに荷電したレシチンの燐の部分に、キトサンのアミノ基(プラスに荷電している)がイオン結合することで、リパーゼの反応を邪魔しているものと思われる。

キトサンがリパーゼではなく、油滴の方に働いてその分解反応を阻害するという事実は、重要な意味をもっている。リパーゼは、セリン酵素と呼ばれる一群の酵素の中の1つである。このセリン酵素と呼ばれる一群の酵素の中の1つである。このセリン酵素の中には、トリプシンやモトリプシン等、たんぱく質を分解する酵素も含まれている。もし、キトサンがリパーゼに作用しているなら、トリプシンやキモトリプシンも阻害され、たんぱく質の腸管吸収の低下で、栄養障害におちいる危険性がある。しかし、油滴に作用しているのだから、その阻害は油滴の分解に限局されることになるわけである。

キトサンが油滴の分解を阻害することによって、果たしてその腸からの吸収が抑制され、血液の脂肪が低下することになるのだろうか。コーンオイル(6ml)をコール酸(80mg)、コレステロールオリエート(2g)および水(6ml)とともに超音波処理し、油滴をつくる。10頭のラットを5頭づつ2群に分け、1群には、対照として0.8mlの水を投与し、他群のラットには、キチン・キトサン(キチン20%、キトサン80%)水溶液(125mg/ml)を0.8ml経口投与する。

図3に示すように、キチン・キトサンの投与で、血清中性脂肪は、統計的有意(P<0.05)に低下する。一方、コーンオイル投与後1時間50分の時点で、大腿静脈からヘパリン(60u/kg)を注入し、10分後に採血し、血液中のリポタンパクリパーゼ(LPL)を測定した。LPLは、血管の内膜にある内皮細胞の表面に存在する酵素で、血液の中性脂肪を分解し、血管の外に運び出す働きをしている。コーンオイルと共にキチン・キトサンを投与しても、このLPLには差はにられない。コーンオイル投与後の血液中性脂肪は、腸から吸収され血液に流入する脂肪とLPLの作用で血管外に出て行く脂肪によって規定されている。LPLに差がないのは、血管外に出て行く脂肪には、対照とキチン・キトサン投与群の間に差がないことを推測させるものである。したがって、キチン・キトサン投与で血清中性脂肪が下がるのは、脂肪の腸管吸収の低下によると考えられる。

肥満とキトサン

肥満とは、脂肪細胞に異常に多くの脂肪が蓄積した病態である。この脂肪は、脂肪細胞の中で合成され、分解される。脂肪は単独で存在しているのではなく、血液中のリポたんぱくと同様に、複合体である。すなわち、脂肪の表面にレシチン、ホスファチジルエタノールアミン、たんぱく(ペリリピンを含む)、コレステロールをもつ複合体として存在している。脂肪をつつむレシチンの単層膜は、リパーゼの接触を阻害している。リパーゼがあっても、ホルモンが作用しなければ、脂肪分解が起こらないのは、このためである。このリパーゼ(ホルモン感性リパーゼと呼ばれている)がリン酸化されても、脂肪の複合体(油滴)に接触できるようにはならない。ホルモンによって、油滴の界面が変化し、リパーゼが接触できるようになるのである。リパーゼは、油滴周辺の小胞膜に存在している。0.25Mスクロースを含む溶液中で遠心沈殿(105,000×g)すると上清に認められるがpH5.2にすると沈殿する。

一方、脂肪の合成にかかわる酵素は、上清画分とミクロゾーム画分に分布している。脂肪の合成は、グルコース経路とリポたんぱく経路で行われる。グルコース経路では、インスリンが脂肪細胞に作用すると、小胞体膜のグルコーストランスポーター4が細胞膜へ移動し、血糖の細胞内への取り込みが高まる。取り込まれた血糖(グルコース)は、細胞質の解糖系で代謝され、α-グリセリン酸とピルビン酸になる。ピリビン酸はさらにミトコンドリアに取り込まれ、アセチルCoAを経て、クエン酸になる。クエン酸は、ミトコンドリアの外に出て、クエン酸リアーゼの作用を受けてアセチルCoAになる。このアセチルCoAが、細胞質にあるアセチルCoAカルボキシラーゼと脂肪酸合成酵素の作用で縮合し、アシルCoAになる。さきに解糖系で生成したα-グリセロリン酸と3分子のアシルCoAが、ミクロゾームにある酵素の作用で縮合し、脂肪ができる。できた脂肪は油滴の中に取り込まれる。これまで、多くの研究者が、ヒトの脂肪細胞にはクエン酸リアーゼは存在せず、グルコースから脂肪酸への合成は、もっぱら肝臓で行なわれると考えていたが、それは誤りであることが証明されている。

次にリポたんぱく経路では、血液中のカイロミクロンやVLDLも脂肪を多く含む複合体(たんぱく、リン脂質、コレステロール等との)であるが、カイロミクロンは、食品中の脂肪由来の、VLDLは、肝臓でつくられた脂肪由来のものである。血管、特に脂肪細胞周辺に分布する毛細血管の内膜にあるLPLによって、カイロミクロンやVLDL中の脂肪が分解され、脂肪酸や愚リセロールを生じる。グリセロールは、肝臓で代謝されるが、脂肪酸は、脂肪細胞に取り込まれ、アシルCoAになる。このアシルCoAが、グルコース由来のα-グリセロリン酸と縮合して脂肪になるのがリポたんぱく経路である。

ところで、キトサンが膵臓リパーゼを阻害し、食品中の脂肪の腸管吸収を抑えることが明らかにされたが、キトサンのこのような作用は、食事由来の脂肪を含むカイロミクロンを低下させ、リポたんぱく経路を抑制し、ひいては肥満を予防する可能性を推測させるものである。つまり、現在社会的問題になっている脂肪摂取の増大にともなう肥満の増加を予防する可能性である。

雌マウスに、牛脂40%を含む高脂肪食を10週間投与すると、肥満が発症し、生殖器周囲の脂肪組織重量が増加する(図4)。高脂肪食に2.8%のキチン・キトサン(キチン20%、キトサン80%)を含む飼料を10週間投与した場合には、脂肪組織重量は有意に低下する。キチン・キトサンが飼料中の脂肪(牛脂)の腸管吸収を阻害することによって、肥満を予防したものと思われる。一方、キチン・キトサンの一部(20%前後)は腸内で分解され、オリゴ糖や単糖になって吸収される。キチン・キトサンの単糖であるアセチルグルコサミンやグルコサミンは、門脈を経て肝臓に至り、迷走神経の末端を刺激する。この刺激が求心線維を経て視床下部に至り、空腹中枢を刺激し、空腹感をもたらすのである。つまり、キチン・キトサンには食事中の腸肪の腸管吸収を阻害するという抗肥満作用と、食欲を増進するという肥満促進作用が存在するのである。

おわりに

体の健康を維持する原理原則の一つに陰陽の原則がある。例えば、食欲を調節する空腹中枢と、満腹中枢、自律神経としての交感神経と副交感神経、血糖を上げるカテコールアミンに下げるインスリン、脂肪の合成と分解等々である。不思議なことに、天然物に含まれる健康性機能物質にも陰陽が存在する。例えば、薬用人参には、肥満を助長するインスリン作用を示すアデノシンと脂肪の吸収を阻害して肥満を予防する酸性多糖体が存在する。魚の白子には、肥満を助長するインスリン作用をもつDNAと膵臓リパーゼを阻害するプロタミンが豊富に含まれている。キチン・キトサンも抗肥満作用と肥満促進作用をあわせもつ機能物質である。そこで、ヒトに投与する場合には、その要望に応じた方法を考えなくてはならないことになる。やせたいと思う人は、ダイエットしながらキチン・キトサンを摂取するとか、逆に、太りたいと願う人には、キチン・キトサンと共に高糖質食をすすめるなどの方法である。いずれにしても、機能物質の生理作用を正確に把握することによって、その多彩な活用が可能になるのである。

参考文献

1) Kato,H.,Taguchi,T.,Okuda,H.,Kondo,M.and Tanaka,M.,Antihypertensive effect of chitosan in rats and humans.J.Traditional Med.,11,198-205,1994

2) Tsujita,.T.and Okuda,H.Fatty acid ethyl ester synthesizing actinity of lipoprotein lipase frome rat pasthepain plasuma.J.Biol.Chem,,269,5884-5889,1994

3) Okuda,H.,Morimoto,C.and Tsujita,T.,Rale of endogenous lipid droplets in lipolysis in rat adipocytes.J.Lipid Res.,35,36-44,1994

4) Okuda,H.,Morimoto,C.and Tsujita,T.,Effect of substrates on the cyclic AMP-dependent lipolytic reaction of hormone-sensitive lipase. J.Lipid Res.,35,1267-1273,1994

5) Suzuki,M.and Okuda,H.ATP citrate lyase in human adipose tissue,J.Nutr.Sci.Vitaminal,27,595-598,1981

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