07
「―――でっきたァ!」
 最後の文字を書きあげて、もう一度読み返してみた。そしてもう一度両手を振り上げて万歳をする。やった、やっと終わった!時計を見たらもう午後七時を回っていた。
「げ、やっば…残りすぎた」
 レポートを書くのにどれだけ時間かかってるんだよ。あたしは素早く筆箱をしまって身支度をしたら、そのまま教室から走り去った。
「うーわー……真っ暗」
 あたしホラーとか幽霊とか嫌いなんだよね…。いやいや、すっごく怖いんだよ。
「こんなの、絶対アイツには知られたくないなあ…」
 そしてちょうど階段に差し掛かった。目はこの暗闇に慣れてきてはいるものの、やっぱり目の前には暗闇が広がっていた。階段の段差の境目が曖昧で、恐る恐る足を踏み出した。

「あーもう…最悪」
 コツコツとゆっくり階段を下りていく。そして五段くらい下った所で、あたしの足音じゃない、誰かの足音が後ろからした。まだ誰か中にいるの?でももう七時を過ぎてる。本来なら誰もいるはずがないのに……まさか、
「……だ、…れ?」
 返事は、ない。なおもあたしに向って…階段を下りるだけかもしれないけど、歩いてくる。
「――――っ!」
 そして伸びてきたものが、あたしの肩を掴んだ。
「―――っわああああああっ!!!」
「おわっ!?」
「………え?」
 叫んだ途端、さっきまでの恐怖が一瞬のうちに吹っ飛んだ。分かりながらもやっぱり怖くて、あたしはゆっくりと振り向いた。
…君」
「おま、ちょ…俺の方がびっくりするっつーの」
「はァ!?びっくりしたのはあたしの方だよ!もう、何…いきなり…」
「はい?あ、オイ…?」
 そのまま力なく座り込んだ。緊張が解けたのと当時に体の力が抜けた。驚いてまだ心臓がバクバク鳴っている。何、何なの、何でいるの?
「……つかぬことをお伺いしますが」
「……何でしょう?」
「お化け怖い?」
「大ッッ嫌い!!」
 一瞬静かになってその次の瞬間には君の笑い声が、真っ暗で物音一つしない廊下に木霊した。隣でその笑い声を聞きながら、君がここにいて良かったと思えた反面、そこまで笑うことはないだろうとも思って腹が立った。
「…悪い?」
「いや…、お前がまさかなー」
「うっさいな!」
「そう怒るなって。レポート提出すんだろ?付いていってやるよ」
 急に真顔になってあたしの腕を掴んで立たせてくれた。まだ足はガクガクと震えている。ああ、うん、君がいて良かったよ。