「…。だから一緒に帰ろうって言ったんだよ」
「一緒に帰ったって、バイトやってちゃ一緒じゃない」
「まあ、元気そうで何より」
君だった。コンビニのレジ袋を手に提げたまま、服装もそのままでそこに立っている。帰らなかったの?待ってたの?
「誰だ?テメェ…」
「ただの、クラスメイトです」
ただの、の所を強調させてそう言った。ニヤリと不敵に笑ってみせる。…話、聞いてたんだね。罪悪感に苛まれた。
「やんのかァ!?」
「それー」
拳を一振り。あたしの前に立ちはだかっていた男が、脆い砂の城のように崩れ去った。コンビニの駐車場に転がる三人の男は、もう暫く眠っていてもらうことになりそう。目が覚めた頃には日は高く昇っていて、酔いも醒めて今日のことなんてこれぽっちも覚えてはいないんだろう。
「大丈夫かよ?」
「あ、うん…」
「しっかし…平手とはなァ。やるじゃん、お前」
まるで子供のような笑顔をあたしに向けた。毛嫌いしていたのに助けてくれた。あんなに嫌な態度を取ったのに、またこうやって笑ってくれる。何で?
「…何で、そこまであたしに関わろうとすんの?」
「言ったじゃん」
「何を?」
「興味あるって」
興味あるからと、教室に微笑んだ君を思い出した。興味本位であたしを助け出すなんて、本当にどうかしてると思う。それでも、あたしは嬉しかった。
「物好きだね」
「そうかな。そうかもな」
「そうだよ」
「そうか」
今度はあたしも一緒になって笑った。都会に出て来てから、今日が初めて心から笑えた日なんだろうな。
「じゃ、ゴミ拾うか!」
「あ、いいよ。あたしが片付ける」
「一人より二人の方が早く終わるだろ」
「単純」
散らばったゴミを拾いながら、少しだけ、少しだけだけど君のことが好きになれた。第一印象は間違ってはいなかったけど、第二印象は前言撤回だよね。
「の家どこ?」
「近くだからいいよ」
「本当に?」
「本当!」
君はあたしを見て、コンビニのレジ袋を見た後に一呼吸を置いて、じゃあと片手を挙げた。
「俺、これから寄る所あるから」
「……彼女?」
「いねェよ。まあ、悪友…かな」
またフワリと優しく笑って君は踵を返した。
「あ、お礼言ってない」
明日会ったら言おう。
← →