「いらっしゃいませー」
あたしがバイトを始めたコンビニは、マンションにも大学にも近い。おまけに道路に面する場所に建っているから、比較的客の出入りが多い。ただしまったと思ったのは、大学に近いということが逆に祟ってしまったということだ。
「あ、」
「…………」
そうだよ、忘れてたよ。コイツも同じ大学だったじゃん。
「温めますか?」
「や、そのままで」
「…計三百二十円になります」
「ん」
「二百円のお釣りです」
目も合わせず淡々と、感情も込めずに棒読みに、書かれた台詞をなぞらえるだけのように言った。一回あたしの方を見た君は、一回短く溜息をついてコンビニを出て行った。
「………よし」
小さくガッツポーズをした。これで明日からは隣の席に座らなくなるだろう。そしたら声をかけられることも、名前を呼ぶこともなくなる。
「ちゃんの知り合い?」
「いえ!全然違いますよ」
「そう?」
「ただの、クラスメイトです」
ただの、の所を強調していった。声をかけてきた店長は面食らったように笑い出す。
「あ、もう上がっていいわよ」
「え、でもまだ…」
「いいのよ。短大生は忙しいでしょ?それによく働いてくれるし、可愛い子が入ったって専らの噂で商売繁盛してるんだから!」
店長はあたしの背中を軽く叩いて笑顔で言った。頼れるお姉さんという感じだ。店長の割に歳は若いと思われる。噂では四十を越えてると聞いたことがあるけど。信じられないくらい綺麗だ。おまけに優しい。こんな具合にいろいろ言い訳つけて早くあたしを返してくれる。だけど時給はちゃんとくれる。いいような悪いような。いつも身が引ける。
「…い、いいんですか?」
「まだまだ未成年でしょ?遠慮なんかしなくていいのよ」
「…じゃあ、お言葉に甘えまして…」
「あ、そのかわりこのゴミ捨ててってね」
「はい、分かりました!着替えてから捨てに行きます」
そして控室に戻って行って素早く更衣を済ませ、あたしはゴミ袋を持ってコンビニを出た。外はもう真っ暗だった。それはそうだ、まだ春と言えど日は短い。しかももう午後九時を回っていた。
「…ちょっと寒いな」
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