もしかして助けたことを、後悔してる?まさか、
「―――ッ死にたかったわけないじゃん!」
大きな声が出た。
「何で、そんなことになんのよ!?私は――」
「だったら、何でそんな顔してんだ」
「…は?」
また目線か重なった。
「生きてて良かったなんて顔、してねェ」
「………え?」
「そんな顔してる奴に礼を言われても、嬉しくも何ともねェよ。生きる希望も、何の夢もない目…。お前、そんなんでよく礼を言いたいなんて言えたな」
反論の余地が、なかった。全て図星だった。彼の言う通り、生きてて良かったなんて心から思っていたわけじゃない。死んだ、運が悪かった。生きていた、運が良かった。私にとってはただそれだけのこと。別にあの時死んでも良かった。そんな言葉は唾と一緒に飲み込んだ。とてもじゃないけど、言える雰囲気ではなかった。あの時死んでも良かったなんて、この時代の人に言ったらそれこそ怒らせる要因だ。
「図星、だと?それは俺に対する侮辱か」
「……」
「オイ」
悔しい、くやしい。言いたい言葉が見付からない。沈黙は肯定を意味する。だけど違う、違うと言いたい。帰れなくともいいと思ったのは事実。生きてて良かったとは思えなかったけど、助けて貰ったあの時、私は安心したんだ。ホッとした。ただ、これがどういう感情かは分からない。安心という言葉だけでは何かが足りない。
「言いたいことはそれだけか?黙ってんなら出てけ」
「…ッじゃあ、何で助けたんですか、…私を」
だったら、生きる希望も何も持ってない顔をしていた、見慣れぬ衣装を身に纏った女を、なぜ助けたんだ。放っておけば良かったのに。そうしたらこんなことを言って、自身が傷付くことはなかったのに。今あなたがどんなにつらい顔をしてるか、自分じゃ見えないんでしょう?
「ほっとけば…良かったじゃん」
ほっといて、放っておいて、誰も私に構わないで。手を差し伸べて欲しくない。誰も私の存在を知らなくていい。知らなくていいのよ。少しの間の沈黙。それを裂いて彼はその重い口を開いた。