09


 それから三日後のパーティー当日。
「悠夜!早くしなさい!」
「おい、早いって!ちょっとくらいは待てよ」
「言葉っ!」
「あ。待って下さい」
 悠夜の口から生まれる敬語。やっぱり生まれが生まれなのかな。敬語とか、作法とか、とても素人とは思えなかった。美しい、まるで「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」。
、口紅が気持ち悪い」
「化粧くらいしたことあるでしょ?」
「あるけどさ。こんな色のは、流石に、ねえ」
「我慢しなさい」
 姉と弟、今は妹のような関係。の父さんの車のベンツに乗っていざ城へ。の父さんも母さんも、とてもおしゃれをしている。の家族はこれでも上級貴族の内に入る。父親は次期国王の父と酒飲み友達で、母親は悠夜の母と幼馴染である。ちなみに、悠夜は髪を長く見せるためにウィッグを使ってロングヘアーにしてあったり。
「俺さ、ノースの城入るの初めて」
「そう?あたしは何回も入ったことがあるわ」
「え、何で?」
「だって、出入り自由だもの」
 悠夜は驚いたように目を見開き、少し眉間に皺を寄せた。

 そうこうしている間に、車は城の外の駐車場に止まった。
「うっひゃあ、でかっ」
「悠夜!」
「あ、ごめんなさい。さん」
「ここに来たんだから、女の子でね」
「はーい」
 白い城、青い屋根、リンゴーンと鳴り響く鐘、空を舞う鳩、窓から見えるステンドガラス、回る風見鶏。絵本の中の城を、そのまま現実に引っ張り出してきたような城。
「うわ、流石ノース。シンプル・イズ・ザ・ベストですね!」
「やっぱり何だか抵抗があるわね、その喋り方」
が喋れと言ったんでしょ?」
「そうねー。じゃ、考えないことにするわ」
 受付で名前を確認し、いよいよ城の中へ。周りには警備員や兵隊がいて、その真ん中を通っていく感じ。
、悠夜君…じゃなかった悠夜ちゃん。先にパーティフロアに行っていなさい」
「あなた、危ないじゃないの」
 「ごめんごめん」との母に謝る父。ここでバレるわけにはいかない。
「まったく、父様ったら。行きましょ、悠夜」
「はーい」
 ダンスフロアにはもう沢山の人が集まっていた。が入った途端、その場にいた大抵の男性人は振り向く。そして「やあ」だの、「今日も綺麗だね」だの、グラスを片手に言葉を投げかけている。
さん、今日は一段と素晴しいよ。惚れ直す」
「ありがとう、ウォーカー」
「おや、こちらは見ない顔だね。名前は何て言うんだい?」
「悠夜です」
 「そうか悠夜か」と微笑むウォーカーと呼ばれた青年は、どうやらにお熱のもよう。そうやって悠夜が考えている内に、わらわらと男性陣が集まってくる。
「君、悠夜と言うんだってね」
「どう?僕と一緒にこの後のダンスにでも」
「いや、僕なんかとどうかな。ダンスも教えてあげられるし」
「ありがとう。でも、ごめんなさい。誰とも踊る気はないの」
 「悠夜、行きましょ」とに手を引かれ、その場をあとにする。もうすぐ、パーティーが始まる。