08


 メイに会いたい、でも役人に追われてる。だからパーティーには出れない、でも。メイの気持ちは本当に俺のものなの?心配で心配で、ここまで来たんだ。いつから俺はこんなにも小さくなってしまったのだろう?
「あ、いいこと考えた」
「え?」
「パーティ、女装して行けばいいじゃない。あんたもともと女顔だし、問題ないでしょ?」
 一瞬、自分の耳を疑った。は何を言っているんだろう?
「は、ええええええ――――!!?」
「あら、いい反応」
「え、いや、ちょっ、ちょっと待て!」
 ちょっと待てよ、と何回も繰り返している俺を横目に、はタンスをあさる。は完璧に女装させる気満々だ。
「何でそこで女装が出てくんだ?」
「まったく、頭の回転が悪い人ね。あんたを追ってる役人はあんたのこと男だって思ってるでしょ?」
「うん、そうだ」
「だからその考えを逆転してやるのよ。女装してパーティーに出れば何の問題もないじゃない」
「うん、そうだ」
 俺は口に指を当てて悔しそうに唸った。
「メイにだけバラせばいいことよ」
「う…、うん」
 渋々縦に首を振る俺を見て、は上機嫌だ。タンスから一着のドレスを持ってきた。
「私、今日ロザリーとドレス買いに行ってきたの。でも一着しか買ってこなかったから」
「これ?」
「そう。従姉妹からもらったんだけど、サイズが大きくて。だから一回も着たことないの」
 純白だった。ショートスカートだが、サイドから長い襞が伸びている為にロングスカートに見える。腰のあたりには長さの様々なリボンが折り重なるように巻きついている。正直いえば、可愛かった。メイが着たらどんなに美しく、どんなに可愛く映るのだろう?ただ、自分が「着てみたい?」と聞かれると、答えは否だ。
「き、着たくねー!」
「やだ、絶対に似合うのに。当日、三日後はこれに生花を付けましょうよ」
「絶対嫌だ!」
「メイに会いたくないの!?」
 俺は、うっ、と言葉をつまらせた。無理もないさ。俺にとって「メイ」という単語は弱点でもあるのだから。だから、どこかの国で五月のことを「メイ」といっても、叔母の子供が「姪」だとしても。俺にしてみれば大好きな「メイ」なんだ。
「き、着ます…」
「それでいいのよ。じゃあ、試着してみて。これでサイズ合わなかったらどうしようもないけど」

「キャ――――!!可愛いっ似合う!」
「これが似合う男なんて男じゃねー」
 俺はどんよりと項垂れる。傍では「当日はメイクもしようかしら」なんて、わけも分からないことを抜かしている。
「マジで?これ着るの?」
「メイに会いたいんでしょ?」
「まあ、そうだけど」
「ま、様に気に入られないようにね!」
 「様?」と俺が怪訝そうに聞くと、は黙って軽く睨みつける。
「ああー、あいつか」
「あいつって失礼よ」
「同じような部類じゃん」
「ひっど」
 は俺を三百六十度、ぐるっと見回して、変な所がないか確かめる。
「オッケーね。当日まではここで匿ってあげるから」
「匿う、か。嫌な言葉だ」
「指名手配犯だし。逃げなきゃ罪軽かったかもしれないのにね」
「そう言うなよなー。でも人一人亡くなってんだ。どう転んでも死刑か良くて終身刑かだな」
 少し俯いて、頭を掻く。
「まあ、そのことは一先ず置いといて。振る舞いはあくまで清く美しく!女の子のふりするんだから」
「もしかして、言葉遣いも?」
「当たり前よ」
「げー」
 わざとらしく舌を出して俺は嫌そうに答えた。当日までの三日間で、立派なレディーになること。難しいかもしれないけど、やってみる価値はある。何事にも、挑戦していく勇気がなくっちゃ。それは、例え女装から始まるものだとしても。