07


「何なの?」
「俺、イーストで人を殺した」
「…え?」
「だから、政府の役人に追われてる。今も」
 人を殺した?何で、何で?私達の中で、メイの次に心優しい子だったのに?
「…何で?何があったの?」
「健斗がカツアゲされてた。だから助けるつもりだったんだ」
「つもり?」
「軽く顔を殴った。それだけで良かったんだ、早く逃げれば…」
 悠夜が前話してた時、健斗はまだ九歳だったはず。九歳の男の子にカツアゲなんて、普通の神経じゃできないと思う。
「健斗が、泣いて抱き付いて来たから…。俺言ってやった」
 『馬鹿じゃねーの、頭冷やせよ!』
 『何だと、てめー…』
 『それとも何だ、てめーはこのくらいじゃなきゃ手が出せねー臆病者なのか?』
「掴み掛かって来たから、足払って頭掴んで地面に叩きつけてやった」
 そしたら、動かなくなった。悠夜は哀しそうに言った。まさか、自分が人を殺してしまうなんて思ってもいなかっただろう。私達の誰もそんなことを思ってなかったし、ましてや、自分で予想できるはずもない。
「一回サツに捕まったよ。だけど、何でかな。気付いたら逃亡中で、ここにいた」
 悠夜はまるで自分を嘲るように笑った。
「人の命を俺が奪ったんだ。この俺が…」
「悠夜」
「世界中の誰よりも命を奪うことを禁じられていた、俺が…」
 ああ、そうか。私は優しく悠夜の頭を撫ぜた。