03


様、どうかなされたんですか?」
「…あ、いや、何ともない。心配かけてすまないな、メイ」
「いいえ、私はただ…」
 ディナー中でも頭を離れなかった。そのせいでメイまでにも心配をかける羽目になってしまう。
 メイ・ワーズワースはワーズワース家の世継ぎでもある、大事な存在であった。ワーズワース家は、おもに王直属の護衛部隊の長だ。リリー家は城内での仕事に、ワーズワース家は外出時に王に従える仕事に。そんなワーズワース家の中でも、メイは特別戦闘能力が低かった。だが、人を思う気持ちは誰よりも深く、誰よりも寛大だった。
「何か悩んでいらっしゃるようですが」
「メイにも全てお見通しか」
「あ、いえ。申しわけありません」
 最後の方は言葉がはっきりしなくて聞こえなかった。メイの気持ちは、よく分かる。
「ありがとう、メイ」
「いえ、私めこそ」
 俺はメイに向かって微笑み、そう言い残した。そして席を立って、メイに調べたい物があるから書斎へ行く、といって部屋を出た。

 書斎なんぞザックが普段いるくらいで、自分は殆ど入ったことがない。しかしこの書斎の書類の位置は、大方把握できていた。
「まったく、何でこんな所にあいつはいつもいられるんだ」
 俺は愚痴を溢しながらも、謎に包まれたパーティーで出会った子を思い、名簿のページを捲る。
「あいつはノースではないな」
 ノースカントリーはない、それは確か。ノースの住民なら自分は大体知っているつもりだ。大体そんな奴、今まで生きていてあのパーティーでしか会ったことがない。ノースカントリーに暮らしている住民はザックが付けている名簿にしっかりと記されているはず。十年前の八歳の時にパーティーで出会い、今は俺と同じ十八歳。名簿を片っぱしから目を通した。
「ウェストカントリーか」
 大きな国を片っ端から探していくしかないのか?でもいなかったら?だとしたら、小さな村だろうか?村だとしたら少し悔しかった。村からの情報はあまり入っては来ない。いくらザックの情報網でさえ、そこまでは行き渡ってないこともある。
「あーもう!くそっ!!」
 俺は名簿をソファーの上に乱暴に投げ捨てると、その隣に座った。
?」
「何だ?」
「何してんだ?めちゃくちゃ珍しいじゃねーか。明日は雨か」
「お前な」
 俺だって調べ物はするんだ。ただそこに至るまで時間がかかるだけだ。ザックはついさっき俺が投げ捨てた名簿を拾い上げて、手慣れた手付きでパラパラとページを捲ってみせた。俺を見てニヤリと笑う。
「お前より俺の方が書類系は向いてる。言ってみろよ、そいつの特徴」
「特徴?」
「ああ、名簿の中身は大方頭に入れ込んであんの。ひょっとしたら当たるかもしれない」