02
 クラスに入った時も中に知っている人が全然いなくて少し戸惑っていたら、徐に隣から私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
…何て読むの?名前」
「え?」
「名前の読み方分かんない。俺はな」
「うん、って言うんだ。宜しくね」
 私の席は縦横六列ある席の、右から三番目の前から三番目。隣に座ったのはと言う男の子。背は少し小さく、格好良いと言うよりかは可愛いタイプの子だった。
「クラス活動とかマジやることなくね?」
「分かる、それ」
「だろ?」
 元気いっぱいで、喋るときも明るい。彼の席にだけ太陽が強烈に差し込んでいるように見えた。そんな社交的な子だったから私もすぐに打ち解けることができていて、いつの間にかお互い初めて会った人だとは思えないくらいに笑い合えていた。時々先生に「煩い」と注意されることもあったけれどすぐにクラス活動は終わった。無事新しい教科書も貰って、 のいるC組へ向かった。

、帰ろ」
「うん、ちょっと待って」
 C組に行ったらそちらものクラス活動も既に終わっていた。の席は右端の最前列。私はドアのスライドする部分に座ってを待つ。私の隣を通る生徒達を別段気にする訳でもなく、私はぼけっと何も考えずにただ座り込んでいた。
「邪魔」
「!」
 これからの学校生活が楽しみで少し顔を綻ばせていたら上から声が突然降って来た。学生服ボタンを第三まで外し、その制服の下からは白いカッターシャツがだらしなく覗いていた。そして明らかにありえない所までズボンが下がっている。これはやりすぎ。髪の毛は染めていないものの、隙あらば今にも染めそうな雰囲気がダダ漏れだ。
「あ、ごめんね」
 私は咄嗟に謝ったけど、彼は私に一睨み効かせて何も言わずに立ち去った。出入り口を塞いでいて邪魔していたのは謝るけれど、少しくらい何か言って立ち去って欲しかった。ムッとしたけど、触らぬ神に祟りなし、ああいう人とは知り合いにならない方が身の為だと直感した。
「ごめんね、。待った?」
「ううん、いいよ」
「どうかした?」
「何でもない」
 首を傾げていたは何ともなかったように帰ろうと言った。関わらなきゃ大丈夫。帰りは自転車を引いて歩いて帰った。クラスのこと、学校の雰囲気、隣の席の子、担任の先生。色々なことを話した。
 『邪魔』と私を睨んだその顔すら思い出せない。すっかり忘れていた。
 今では『俺はな』と笑った彼の顔や声や言葉が頭に焼き付いている。笑顔が魅力的だった。明日から楽しみにしていた中学校生活が始まる。