ずっとずっと忘れてたんだ。信じる、信じないのは自分自身を信じる、信じないことだって。母が昔教えてくれた。でも、信じるのなら理由がいる。疑問は晴れてもらわなくちゃ。
フミは女神のような人じゃよ」
「女神?」
「…ひょいと現れて、この国をを救い、民衆に命を捧げた偉大なる女性じゃ」
「…命?」
 老師は哀しそうに首を縦に振った。目には哀れみの色が浮かんでいる。
「フミ様の最期は偉大じゃった。ただ、遺体は見つかったおらんから、亡くなったとも言い切れなんだけど」
「じゃあ、生きている可能性も―――…」
「今から百余年前の話じゃぞ?」
 ぐっ、と言葉を飲み込んだ。老師が余りにも哀しそうに話すものだから、励ましたかっただけなのに。逆に、もっと哀しませてしまったみたい…。
「お主がこちらに来た以上、もうフミ様は生きてはおらんのだろう」
「…老師」
「お主は何かの意味を持ってこちらに来たのじゃと、儂は思うよ。」
「何かの…意味?」
 老師の顔が、また優しさに包まれた。
「こちらで生きる意味を見つけなさい。いつか帰り道が見つかるじゃろうて」
「…はい!」
 まだ信じられない部分もある。だけど老師がそう言ってくれるのならば、言うとおりにしよう。まだ、友達に言っていない言葉があるんだから。

「では、老師。これ以上はお体に触りますので」
…儂はまだまだ若いて。お主も弟を見習って儂をサッカーに誘ってはどうだ?」
「ベルナールの奴…そんなことを!?」
 老師が…サッカー?いや、絶対無理っぽい。
「老師…サッカー何て、やっていいの?」
「何、まだまだ動けるぞ」
 さっき、よっこらせ、と言って腰を下ろしたのは誰だったっけ?
「…帰ったら厳しく言ってやります」
「そんなことをしたら儂の唯一の楽しみがなくなってしまうじゃないか!」
「うーん、老師。ぎっくり腰になっても知らないわよ?」
 見捨てんでくれよ、と老師の癖して言っていることが矛盾しまくりだ。放っておいて欲しいのかかまって欲しいのか。…サッカー好きなのは変わらないみたいだけど。
、行こう」
「え、でも老師が」
「もうぎっくり腰になるまで放っておいてあげましょ!」
 驚いた表情を見せただったが「すぐにそうだね」と微笑んだ。そして老師に向かって「どうなっても知りませんよ」と半ば呆れて言うのだった。
「また来るんじゃぞー」
「もう来ませんよ!」
 ビアージョ老師は去り行く二人の背に向かって、手を振った。まだまだ死ぬわけにはいかんな、と独り言を呟いていた。




 
足跡 05