seven
 BTが相手では漫画のような展開は望めないと言うものだ。
 翌日はいつもにも増して学校へ行きたくなかった。でも母を心配させる訳にもいかないので、溜息をつきつつ重い足取りで学校へと向かう。私の周りを避けるように生徒達は登校していた。女子生徒の話を小耳に挟み、熊川卓也は退学したようだと知った。無理もない。あれだけの仕打ちを受けて学校に来れるなんてどんなにタフな人間なんだろう。
 そして学園掲示板の前で私は立ち尽くす。こうなることは大体予想が付いていたが、いざ直面してみるとどうにもこうにも、後先が思いやられるものだ。掲示板に貼られた赤いカードと黒いピン、それに「Checkmate」の黒い文字。ピンを取って裏返せば、ホラ、確かに私の名前、「」。第一発見者の私が、チェックメイトされたのは自分ですと学園中に言い触らせば良いのか?どんな羞恥ですか、良い笑い者です。
「どうにでもなれ」
 こうなってしまたのなら仕方がない。嫌だけど今更後にも引けない、前にしか進めない。に抵抗し続けるしか方法はないようだ。
「今の気分はどう?ちゃん」
「…御厨、先輩」
 可愛い笑顔からは到底想像できない性格の持ち主だと聞く。私より小さめの身長の彼は年上キラーだと言う話もある。大手電気メーカーの御曹司で趣味はサッカー。彼の父は裏で顔が利く人物らしく、情報を買ったり売ったりしていると言う噂もあるが、圧倒的な財政力と経済力でその噂を揉み消そうとしているらしい。その息子も同じく情報を盾にして生きている。彼が所有しているカードや手帳には、一体どれだけの人物の個人情報が書き連ねてあるのだろうか。知りたくもないけど。
「あまりいい気はしません。当たり前ですが」
 そう言うと御厨先輩は大声で笑った。
「アハハハッ、ほんと、君くらいだよ」
「何がですか?」
に面と向かって楯突いた子も、カードを貼られてそうやって悠長にしてる子も」
「別に悠長にしてなんか」
「僕にはそう見えるけどなー?」
 またニコッと笑う。何が言いたいんだろうか。
「何か私に用なんですか?」
「ううん。何も」
「じゃあ何で私に声を掛けたんですか?」
「うん?何となくかな」
 紫色の瞳から感情が読み取れない。
「ただ、との勝負の行方が気になってねー」
「はァ」
「勝負は楽しい方が良いでしょ?」
 ガツンと頭を横殴りにされた気分になった、つまりは自分が楽しめるよう頑張ってくれとのことだったらしい。楽しめなかったらまた何か手を打って来るんだろう。頭の回転が速い彼が一番のダークホースなのかもしれない。そう言い残して御厨先輩はどこかへ行ってしまった。
「面倒なことになったなァ」
 そしてスピーカーが、ザーザーと鳴った。ドキンと心臓が跳ねる。
『BTからお知らせ。皆は来なくて良いから、だけカフェに集合』
 ブツッと放送はそこで切れた。
 私だけ?嫌な予感しかしない。タコ殴りにされるんだろうか。変な薬でも盛られるんだろうか。武器の一つでも持って行った方が良いんだろうかと考えたが、あの人達相手じゃ歯が立たないだろうと思ってそのままカフェに向かった。