six
 この世の中は狂っている。素行も人間性も関係ない。学歴と財力が全てを決める。一生懸命生きている人の方が圧倒的に偉いと思うのに、全て無視される。財政力が何?経済力が何?そんなの私には関係ない。この世界の根源は金銭だけでは動かない。
「自分の好き勝手やって、人の気持ちを考えもしないで気分任せ。人を踏み躙る行為だよ」
「何が言いたい…」
「部下の話も聞かずしてどうやって会社を纏め上げんのよ」
「部下は所詮、下僕だ。命令を聞いてさえいればいい。部下の話を聞く必要なんてねェよ。全てを決めんのはこの俺だ。異論は認めねェ」
 嗚呼、この王様の未来はどう足掻いたってギロチンの前に立たされる運命だ。絶対王政で政治が成り立つ訳がない。その制度すらとっくの昔に滅んで民主主義が謳われるようになったと言うのに。
「世界は金で動くんだよ」
「動かないものだってあるわよ」
「んなもんねェよ。じゃあ言ってみろよ、金で動かねェもんとやらをさ」
 愛だなんてありきたりなこと言うなよと、浅はかな笑いを残した。何で今になってコイツと張り合うことになっているのだろうか。普通が良かったのに。今まで怖いと感じていた奴なのに。無論今も怖いと思っている。拳を握っていなきゃ今にも卒倒してしまいそうな程。だけど、何かが引っ掛かる。その捻じ曲がってしまった性格の裏に垣間見える、深い深い心の闇。
「貴方の目の前にいるじゃない」
「は?」
「私は絶対にお金では動かない。動く必要がないの」
「庶民だからこそ金で釣れるんだよ」
「今までお金がなかったのよ。今更あったって今の生活は何も変わらない」
 今の私には恐怖より、こんな奴に負けたくないと言う気持ちの方が強かった。私は絶対に金銭には靡かない。
「貴方には負けない」
「ハッ、それで漫画のような展開をお望みで?」
「そう思って貰って結構よ。私がその漫画の主人公になって宣戦布告してやるから」
「そうして貰っても別段構わねェが、俺はその相手役みたいにお前を好きになるなんてことは天地がひっくり返ってもねェからな」
「別に貴方に好かれたくないわ。こっちから願い下げよ」
 そう言って私は踵を返した。もうこんな場所にいたくない。気付いたら心臓が口から出そうな程緊張していた。後ろから冷めた笑い声がした。心底こんな学校に入るんじゃなかったと思った。ねえ、父さん、何を考えているの?どうして私をこんな所に送り込んだの?ねえ、今、どこにいるの?教えて。