two
 「トップ会談」、それは学園のトップに君臨している人間が施行する会談の名称。「生徒指導室」、それはトップ会談を施行する場であり、トップの人間の溜まり場。生徒を指導すると言う本来の部屋の目的を見失っている。
 その生徒指導室には四人の青年がいた。
「じゃーん、今日の獲物候補ー!」
 黒いキャスケットを被った少年は、机に青と緑の二枚のトランプ大のカードを置いて言った。キャスケットから覗く淡い栗色の髪の毛は少しパーマ掛かっていてフワフワと風に靡く。濃い紫色の大きな瞳は笑うと山なりになる。にんまりと笑った口から覗く八重歯がチャームポイントの小柄な青年、御厨博喜(ミクリヤヒロキ)。
「うげ、マジでコイツら?やめた方が良いんじゃねェの、博喜」
 明るいアッシュブラウンの髪の毛を掻き上げ、髪と同じ色の瞳で名護龍助(ナゴリュウスケ)は博喜に言う。精悍な顔立ちにスッと伸びた切れ長の目、怪訝そうに歪められた顔はカードに表示されている主を心配してのことだろうか。龍助は二枚のカードを交互に見た。
「瞬はー?」
「…どっちでも」
 どちらのカードでも「良い」のか「悪い」のか、それともやめた方がが「良い」「悪い」についてどちらでも良いのか。瞬と呼ばれた少年の北欧の人間を連想させるような、白いに近いブロンドの髪と、長い睫毛に覆われた薄い碧眼を持つ。鷲見瞬(ワシミシュン)は博喜の持ち出した話題には興味がないように、舐めていた棒付きの飴を口の中で転がしていた。

「あ?」
 と呼ばれた少年は「名前は?」と言うと、二枚のカードを横から奪い取った。艶めかしい黒髪から覗く漆黒の鋭い双眼から伺える表情はなく、光も映らない。学園の影の支配者、
「青カードは三年E組、庄野一浩(ショウノカズヒロ)。この前、龍助にぶつかった子」
「あー、アイツか。、コイツにしようぜ」
「こっちは?」
「緑カードは二年B組、熊川卓弥(クマカワタクヤ)。の悪口言ってた」
「じゃ、緑」
「オイコラ!!テメェ!」
 ギャンギャンと騒ぐ龍助を横目に、は緑色のカードを博喜に返した。博喜はカードの表に「Checkmate」と黒いペンで書く。赤は一年、緑は二年、青が三年、白が教師、黒がこの四人の色を示してある。黒のペンで書くのもこの四人が「黒」を意味しているから。ちなみに、カードの裏には個人データがびっしりと書き連ねてある。博喜お手製のカードだ。
「俺はどうでもいいのかよ!!」
「明日な、明日」
「じゃ、明日も決まりだね」
 四人はこの学園の中でも超が付くほどの大金持ち。多額の寄付金をこの学園に送っていると言うもんだから、誰も彼らに逆らおうにも逆らえない。だから敬意を持ってこう呼ばれる、「ルースの暗幕、ブラック・トップ」通称、略して「BT」と言われる。

「はい」
 生徒指導室のドアが開き、何の変哲もない普通の少年が顔を出す。
「学園掲示板だ」
「はい」
 はカードをに渡して命令した。佐藤はBTに仕える人物で、いつもBTのすぐ傍に存在し、名前を呼べば即座に顔を出す。BTの傍にいればいるだけで脚光を浴びてしまう訳だが、平凡すぎる見た目のお陰で誰も彼に目に留めようとはしない。故に誰彼のも気付かない。その存在感の無さ、空気と同化できる能力をBTに買われたのだ。
 は「失礼します」と言って生徒指導室を去って行った。学園掲示板は誰もが通る職員室前にある。
「カフェだ。行くぞ」
「オッケー」
「おう!」
「ん」
 生徒指導室を後にして、四人は学園掲示板と反対方向のカフェテリアへと向かった。