神様に乾杯 プロローグ

プロローグ

もし神様がいるのなら
巡り合わせは笑い話で
その後は多分悪戯で
終わりはきっと失敗だ。
そうしてできた物語は
とても奇妙な二人の話。

雨が止んだばかりのぬかるんだ土の上を、足を取られることもなく人影が疾走する。
両の手でしっかりと大切に大切に抱えた少女の体は、彼が動くのに合わせて揺れるだけで、自分の意思のある動きは全く見せない。
後悔と、諦めと、未練と、怒りと、悲しみと、絶望と、色んな物が交錯する表情で、彼はただただ走った。
どれくらい走っただろうか。走り続ける内に、目的地が見えてきた。
彼は名残惜しそうに少女の体を抱き締める。彼の黒い髪と、少女の淡い金の髪が少しだけ絡まった。
動かない少女の体を抱えなおすと、彼は顔を上げて目的地を見据え、再び走り出した。
その顔からはもう、表情はなくなっていた。