NOVEL Interplay of life 6

Interplay of life
第六話
〜後輩〜

俺は一人寂しく下校しようと、半ば自虐的になりながらも 帰路に着いた。 その時であった。 「せーんぱーい!」 つい最近聞いたその声。 振り返ってみてみると、その声の主は大魔女大林の後輩の馬瀬の物だった。 秋菜「先輩、一緒に帰りましょう!」 俺はその瞬間、噴出しかけた。 まさか行き成りそんな事を言う奴は居ないだろう。 流石大魔女の後輩、相当コイツもヤバいんだろう。 行き成り爆発するシャボン玉を見せられて唖然としている所に、 よくこう、馴れ馴れしく出来るな、と関心しながら一緒に帰る事にした。 勿論、そのやり取りは見られたくない奴にも見られていたのには気付いていた。 ヒソヒソ話も軽く聞こえた。 だが反応しては余計にややこしくなる事を悟り、取り敢えず無視した。 ・・・・・・ 秋菜「先輩ってどうして理科部に入ったんですか?」 和夫「ハァ!?」 俺は疑問符と感嘆符の両方を付けたリアクションをしてみた。 でもどちらかというと疑問の方が大きい。 俺が何時あの危険な部に入ったんだ? 和夫「誰も入っただなんて言ってないぞ。」 秋菜「え?そうなんですか?」 和夫「若しかしてあの大魔女・・・あ、いや、大林が勝手に・・・」 秋菜「勝手にって如何言う意味なんですか?」 和夫「まぁ・・・ちょっと色々あって・・・。」 秋菜「気になります〜。」 和夫「駄目だ。此処で教えたら入部してしまう。」 秋菜「ずるいですよぉ〜。」 和夫「ずるくても俺はサッカー部だ。理科部なんてあんな危ない部には入らない。」 秋菜「先輩ってサッカー部だったんですか!    なんか、サッカー部って格好良いですよね!」 和夫「そうか?」 秋菜「そうですよ!    あのボールを蹴ってゴールするその瞬間がたまらなく良いんですよ。」 和夫「まぁ、簡単に入らないけどな。」 秋菜「で、若し外してしまっても仲間との連繋プレーで    チャンスを伺って・・・シュート!ゴール!わーいやったー!!!」 この異様にテンションの高いこの少女の話に着いていくのがやっとだった。 和夫「あ、俺の家まで連れて来てしまったな。」 秋菜「えーっ!?家此処なんですか!?」 和夫「別にそんなに驚かなくても良いと思うけどな。」 秋菜「私の家は、先輩の家の裏だったんですか・・・。」 どうやら、俺の人生は急激に変わっていっているようだ。 そして、俺の無知は凄まじい物があった。 和夫「そうだったのか・・・。」 秋菜「じゃあ、これから一緒に登校しましょうね!」 とんでもない言葉が発された。 一体何を狙ってるのだろうか。 大魔女の配下と言う事もあり、どうしても迂闊な返事は返せなかった。 和夫「じゃあ、運良く会ったらな。」 秋菜「はい!    あ、そうだ!ちょっと先輩の家に上がらせてもらって良いですか?」 何でそうなるっ!と心の中で突っ込んだ。 和夫「別に・・・ッ!」 そう、俺は一歩たりとも自分以外の誰かを部屋に呼ぶ事は許されていなかったのだ。 若し誰かが入ってしまったら俺の人生は一環の終わり、 ロリコン扱いにされるか二次元ヲタクと呼ばれるかは知らないが、俺の人生が、 華の青春時代が終わる。 だから入れられない。 和夫「あ、いや、今散らかってるから・・・。」 秋菜「じゃあ私が掃除しますね。    先輩の部屋を掃除するなんて、ワクワクだなぁ〜。」 完全に話がイってしまった。 多分、この調子だと絶対家に入れなければ話が進まなさそうだ。 ・・・ん?でも何故俺の部屋に入りたがるんだ? 和夫「そういえば何で家に上がりたいだとか言ったんだ?」 秋菜「あ・・・その・・・    家に帰ったら・・・一人なんです。」 和夫「どういう事なんだ?」 秋菜「私は・・・一人暮らしなんです。」 彼女の表情が反転した。 今まで弾けそうなくらいに明るかったのに、 今では触っただけで倒れそうな力無い表情。 どんな辛い事があったんだろうと思ってしまう。 和夫「そうか・・・悪かったな・・・。」 秋菜「いえ・・・大丈夫です・・・。」 こうなってしまった以上仕方が無い。 大人しく家に入れて安心して貰うか。 和夫「ちょっと待ってろ。」 そう言って家の中に入った。 勿論、目的は只一つ。 あの、未知の生物だ。 ・・・・・・ 秋菜「はぁ・・・私、どうかしたのかな・・・。    あんな話、人にして良い訳がないのに・・・。    先輩に余計な気遣いをさせちゃった・・・。    私、後輩として失格よね・・・。」 とそこに、一人の少女が現れた。 人は、この些細な出来事をこう呼ぶ。 「不運」と。 夕菜「あれ?貴女誰?」 秋菜「あっ、こんにちは!    私は馬瀬秋菜って言います。」 夕菜「秋菜ちゃんかぁ・・・可愛い名前ね。    年は幾つ?」 秋菜「えっと、今年で13に成ります。」 夕菜「って事は私より一学年下ね。」 秋菜「そうですねー。」 その瞬間、夕菜に一つの疑問が思い浮かんだ。 何故、秋菜が今、私達の家の前に居るんだろうという最大の疑問。 それは、和夫にとっては何としても避けたかった展開だった。 ・・・・・・ 和夫「おい、ミルラ!」 ミルラ「はい、何でしょうか?」 和夫「隠れろ。」 ミルラ「えっ、何故ですか?     私は一応戦えますよ?     えーい☆」 そう言って指先から火の弾を飛ばした。 壁の一部分が焦げた。 和夫「あ゙ーーーーーーーッ!何やってるんだ!」 ミルラ「ですから、敵が出てきても大丈夫です!」 未知の生物は誤解が多い。 というか誤解しないと気が済まないらしい。 和夫「何でもいいから人が来るから隠れていろ!    主人命令だ!ほら、さっさと動け!」 ミルラ「何をそんなに焦ってるんですかぁ?」 和夫「・・・だーっ!もういい!」 そう言って和夫はミルラを鷲掴みにして、金属製の筆箱の中に無理矢理押し込んだ。 ミルラ「だ・・・出してくださーい・・・。」 和夫「我慢してくれ・・・。    これも俺の平和の為だ・・・。」 ミルラ「うぅぅぅぅぅ・・・。」 和夫「よし、迎えに行くか。」 ・・・・・・ 秋菜「えっ、先輩って彼女が居たんですか?」 夕菜「雀野って人に訊いてみて。」 秋菜「はい、また今度訊いてみます!」 扉を開けた瞬間、目の前の光景に、 そして自分が置かれている状況に、 彼は泣きそうになったのは言うまでも無い話だった。 >NEXT >目次へ