NOVEL Interplay of life 5

Interplay of life
第五話
〜混沌の理科部〜

雪乃「おはようございます。」 気付かれないように校門を潜ろうとしたが、それは無理な話だった。 俺は完全にマークされていた。 雪乃「おはようございます。」 和夫「あぁ・・・おはよう。」 態々二度言う必要も無いだろうにと思いながら返答をする。 はっきり言って早く逃げたい。 雪乃「あの、今日もう一度研究室に来てくれませんか?」 和夫「おう、分かった。」 行き成りその話題はタブーだろう。 俺の顔はまたしても極限にまで引き攣っていた・・・と思う。 何をしでかすか分からない奴相手の対応の仕方なんて知らないぞ。 ただ、素直に受け入れないと後々が怖い。 一瞬でポックリ行く可能性はかなり高い。 雪乃「では、お昼の12時50分頃に待ってますね。」 和夫「あ・・・あぁ。」 その時間は幾らなんでも早過ぎるだろう。 そう思いながら教室へと赴いた。 気のせいかも知れないが彼女の歩く先に人の姿は見えない。 丁度救急車がサイレンを鳴らしながらスローモーションで走っている感じだ。 彼女の姿を確認するなり道をおずおずと開ける。 若しかして、彼女、結構ヤバいんじゃ・・・。 和夫「あっ。」 夕菜「あ、お兄ちゃん。」 余所見して歩いていた所為か、人にぶつかってしまった。 しかも、選りにも因って妹と来た。 どうやら、未知の生物には運気を下降させる効果が供わっているようだ。 夕菜「なにボーっとしてるの?    若しかしてやっぱり、こ・い・・・」 和夫「違う。もっと性質が悪そうな悩み事だ。」 夕菜「えっ?」 和夫「なぁ、お前、大林雪乃って奴がどんな奴か知らないか?」 どうしても訊いておかなければ気が済まなかった。 丁度同学年だし、情報も良く入っているだろう。 夕菜「・・・その話は家でするね。    此処じゃ誰が聞いているか分からない。」 和夫「あ・・・そうか。分かった・・・。」 どうやら、彼女は相当性質の悪い人間だったようだ。 それだけは確信した。 ・・・・・・ ???(・・・・・・雪乃様への謀反か?     宜しい。私が直々に相手をしてやろうではないか。) 電信柱からその一連の出来事を見ていた不審人物が一人。 先生「こら!谷岡!降りないか!叩き落すぞ!」 谷岡「あ、はい、すみません!今降りるんで退学だけは!」 ・・・・・・ 谷岡「此処があの野郎の教室か。」 彼が立っているのは3年4組、要するに和夫達の教室だ。 扉は完全に閉まっており、中の様子は伺えなかった。 3時限目の休み時間の事であった。 谷岡(よし、突入するぞ。) 勢い良く扉を開けた! ・・・つもりだったが鍵が掛かっていて見事に尻餅をついた。 谷岡「ぐふっ!    く・・・畜生!」 その時、近くから誰か・・・というか集団が来た。 ・・・・・・ 和夫「体育ってだりぃよな。」 雄介「まぁそういうなって。体を動かすのは楽しいだろ?」 和夫「その思考が良く分からないな。俺には只の重労働にしか思えないがな。」 雄介「よっ、平凡!」 和夫「平凡言うな。」 このやり取りにも慣れてきたのか、平凡と呼ばれて当たり前の生活になってしまった この今という時間を少し恨んでみたくなった。 ・・・・・・ 谷岡(おっ!あいつだ!!!) 和夫の姿を見た瞬間、猛スピードで突進していった。 雄介「なんだあれ。」 和夫「・・・二年・・・だよ・・・な・・・。」 その嫌な色のバッジを見た瞬間、 俺は現実を突きつけられた気分になり、また鬱な状態になっていった。 和夫(思い出したくなかったんだがな。) あの迸る電光。 焦げ付いた壁。 そして不気味なオーラの黒髪少女。 まるで走馬灯のように脳裏を駆け抜けるワンシーン 谷岡「おい!そこのお前!覚悟!」 その先には、和夫が居た。 ・・・が、その間には校内一、二を争う程の危険人物の 萬屋 威が居た。 威「ん?何だあの糞餓鬼。   シメてやろうか?ハハハッ。」 彼は要するに暴力団長のような人間。 売られた喧嘩は必ず買うというポリシーの下で行動し、 そして相手を半殺しにするという伝説の男だ。 そのデカ過ぎる図体と筋肉、そしてトーンの低い声。 恐ろしい要素の塊だ。 ただ、此方から手を出さない限り襲っては来ないので安心。 谷岡「おいコラ退け!邪魔だこのデカブツ!」 彼は売ってはいけない喧嘩を売ってしまった。 威「んだとコラ。」 そう言って猛スピードの突進を蹴り一発で食い止め、 胸倉を掴んだ。 和夫「うわぁ、やっちまったよあの二年。」 雄介「今日は血の海が見れそうだな。」 まるで他人事だった。 優子「ち・・・ちょっと、何やってるのよ!」 男A「あぁ、雀野。あの二年度胸あるぜ?    萬屋に喧嘩売ったんだぞ?」 男B「完全に押されてるけどな!」 男C「ホント、力もねぇ癖に喧嘩売るなって感じ。」 谷岡(ももも・・・若しかして俺、超ヤバい?) 今更遅かった。 その後、先生が介入して事は余計にややこしくなり、 先生は出血多量で病院送り、 谷岡は頭を強打して失神した。 ・・・・・・ 昼休み、俺は震える足を根性で進め、遂にあのビックリボックス(屋上倉庫)に 辿り着いた。 和夫(よし・・・開けるぞ!) 扉を開けると噂の彼女と、もう一人別の少女の姿が。 少女「理科部の部室へようこそ〜。」 雪乃「こんにちは。」 和夫「あ、あぁ。」 少女の方は何気に可愛かった。 ただ、隣に居る素敵に恐ろしい方の目線はとんでもなく冷たく、 俺を仄々させる隙を与えてくれなかった。 少女「初めましてっ!私の名前は馬瀬秋菜です!」 雪乃「秋菜は私の後輩ですよ。可愛がって下さいね。」 和夫「ん・・・あぁ、宜しく・・・。」 その目、怖いですから止めてください。 体の芯から凍りついたような錯覚が・・・。 雪乃「では昼の部活動を始めましょう。」 秋菜「和夫先輩も一緒にやりましょう!」 和夫「あぁ・・・。」 俺はその時疑問に思った。 何故俺がこんな事をしなければならないのか。 そして、何故俺が仮入部紛いの事をしなければならないのか。 その謎は明かされる事無く、時間だけが進んだ。 雪乃「秋菜、何か思いついた?」 秋菜「先輩、ほら見てください!」 そう言って彼女はシャボン玉を噴出した。 そして爆発した。 秋菜「どうでしょうか。」 雪乃「素晴らしいわね。」 その俺には理解し難い感覚に戸惑いながらも 俺はその成り行きをずっと見守っていた。 俺は一言も喋らなかった。 というよりは、喋ったら殺されそうな恐怖心が芽生えてしまっていた。 >NEXT >目次へ