NOVEL Interplay of life 3

Interplay of life
第三話
〜屋上倉庫〜

和夫「・・・・・・余計に汚くなったな。」 ミルラ「御免なさい御免なさい御免なさい!」 床にはシミが。 多分、バケツの水が零れたんだろう。 横には倒れた金属製の古びたバケツが。もっと小さいのあったろうに。 和夫「まぁ、いいか。直ぐ乾くだろ。」 ミルラ「御免なさいご主人様!」 和夫「そういえば、何で俺がご主人様なんだ?」 ミルラ「ご主人様だからです。」 和夫「あぁ、そうか。」 それで納得してしまった事を後悔している。 ・・・・・・ 学校には、早速昨日の話を切り出してくる奴は、大抵居る。 多分、学校でいってきますとかほざいてたんだろう。 俺は集中すると周りが見えなくなるタイプだ。しかもかなり重症。 学校に行くのが少し怖かったが、俺の事だと割り切ってくれるだろう。 そう願いつつ、登校した。 教室に入ると、当たり前のように俺の席を囲んでいるサッカー部の奴ら。 因みに、俺はサッカー部所属だ。 雄介「正井!昨日はどうしたんだ?」 ・・・やっぱり居た。 どうしたと聞かれてもかなり言い難い事情だ。 ここを誤魔化さなければ俺の人生はパーフェクトに散るだろう。 まさか行き成り小人の羽が生えた少女が居候し始めただなんて信じる奴はまず居ない。 更に少女って辺りがあらぬ噂をたてられそうで尚更言えなかった。 因みにコイツは黒田雄介。俺と同じくサッカー部所属。 何かと俺につるんで来る。よく俺に責任転嫁するので 仕返してやろうと思いつつ、中々出来ないという屈辱感を持っている。 ・・・要するに、迷惑大王だ。 今回も要らぬ事を質問した所為で、迷惑大王性10%UP(当社比) 和夫「ん、何の事だ?」 取り敢えずセオリー通りに白を切る。 最も効率の悪い対応だが、安易に思いつくのは其れしかなかった。 雄介「あのいってきま・・・」 和夫「あ、あぁ、思い出した気がする!」 最も恐れていた事実。 さて、どうやって誤魔化すか。 和夫「いや、効率の良いいってきますの言い方をだな・・・」 優子「はい、冗談言わないの。」 こいつは雀野優子。ルックスは良い。その辺りは俺にも分かる。 ただ、俺から見ると性格に難があると思う。 半ば無理矢理サッカー部のマネージャーに入った。 理由は「サッカーが好きだから」らしいが、本音は 「楽で尚且つ見てて楽しいから(和夫のミステイク目当て)」らしい。 和夫「人には言えない事情ってものがあるんだ。」 雄介「親友だろ?教えてくれよ。」 俺は言う言葉を間違った気がする。 何故なら、親友というのを建前に深く問い質そうとする奴が必ず居るからだ。 優子「そうよ。で、結局どうなの?恋煩い?」 女ってのは何時もそういう方向に持っていきたがる。 困った奴らだ。 和夫「まぁ・・・その、何だ、言えないものがあるんだよ。例え親友だろうと。」 もう逃げる事しか出来なくなった。 和夫「そ・・そう、俺は軽い鬱病にかかってたんだ。」 適当なデマを言ってみる。 雄介「あぁ、そうなのか。分かった。また今度教えてもらおうか。」 納得してくれたのは、誰一人居なかった。 寧ろ、余計に好奇心を掻き立ててしまった。 向こうから忘れてくれる事を祈ろう。 ・・・・・・ 昼休み。 俺は何時ものように友達と話す・・・つもりだったが、 早く食べ終わり過ぎたようだ。 暇だし・・・屋上でも行って暇潰しするか。 屋上にはたまに金が落ちてるしな。時々ヤンキー共がポーカーしているのが目撃出来る。 娯楽中の彼等は、此方から手を打たない限り襲っては来ない。 金も取られない。イカサマを除いて。 和夫「・・・久しぶりの屋上だな・・・。」 哀愁耽ってみる。 性に合わないのが無性に悲しい。 ・・・と、その時何か物音が。 和夫「この静けさと時間から例のポーカーでは無さそうだ。    ・・・と、なると思い当たるのは・・・無いな。    この場所に人が来るなんて滅多に無いからな。」 そう思いながら屋上を歩き回っていた。 ・・・・・・ 屋上倉庫。別名ビックリボックス。 校内で一番怪しい場所だ。 俺は真っ先にこのビックリボックスを調べる事に。 勿論、鍵はかかっている。 なので、俺は一度職員室に立ち寄り、さり気無く鍵を持っていった。 以前職員室掃除をしていたのがこんなどうでもいい事で役立つだなんて、 当時思いもしなかっただろう。 和夫「よっと。」 難なく扉は開いた。 中は・・・意味不明な道具と、不審過ぎる白衣を羽織った女子生徒が一人。 ???「あ・・・。」 和夫「・・・・・・誰だ。」 俺はあの不条理で不思議過ぎる生物(ミルラ)と出会った所為か、 この程度のアクシデントには難なく耐えられるようになっていた。 以前の俺なら、多分驚き焦って何も見なかった事にするだろう。 若しくは、人形を見たんだと勝手に自分に思い込ませて。 ???「あの〜・・・誰でしょうか。     先生であれば撃ちますよ。私は退学にはなりたくないので。」 そういって銃を構える謎の少女。 とんでもなく話が大きくなっていっている。 和夫「・・・大丈夫だ・・・先生ではない。」 この平均的な身長、この若さ溢れる顔。 更に制服を着てても先生かどうかも見分けられないとは。 こいつも要注意人物だろう。 ???「なら安心ですね。     生徒ならこの事を知られても私が黙らせられますし。」 そう言ってまた銃を構える。 和夫(何でそうなるんだ!) 心の中で叫んでも、相手には聞こえる筈が無かった。 ???「大丈夫、殺しませんから。」 そう言っても銃口を此方の心臓目掛けて向けている時点で、 殺す気満々としか解釈出来ない。 寧ろ、安静で居られる俺も俺だ。半ば人生諦め状態に入っている。 和夫「いや、殺す気満々だろ。」 口を滑らせてしまった。 ???「本当ですよ。試しに撃ってあげましょう。」 銃に試しも何も無いと思う。 当たれば貫通、場所に因っては即死。 そんなもの、幼稚園児でも分かる事だ。 ポンッ! 銃とは掛け離れた間抜けな音が響いた。 標的は、ダーツに使う的だった。 多分、銃の練習に使ったんだろう。所々凹んでいる。 その銃弾は眩しく光り、稲妻を迸らせた。 はっきり言って、即死するより恐ろしい体験をしそうだ。 下手をすると、脳性麻痺を起こすかも知れない。 ???「どうですか?」 和夫「危ない。」 ???「ほら、大丈夫でしょう?安心しました?」 出来るわけが無い。 しかも、屋上倉庫の壁が所々焦げている。 恐ろしくて声も出ない。 ???「あ、もう直ぐ五時限目が始まりますよ。     ・・・放課後此処に来て下さい。鍵は開けておきますから。     そうだ、部活には所属しているんですか?」 嘘を吐いて逃げようかと思ったが、 若しバレたらとんでもなく恐ろしい罰が待って居そうな気がしたので 素直に吐く事にした。 和夫「サッカー部。」 文章には出来そうになかった。 早く逃げたい。怖い。 未知の生物は無害だが、此方はかなり来ている。 ???「そう、じゃあ迎えに行きます。     その顔じゃ来てくれそうにありませんし。」 一応、行かなきゃ殺されるから 行くしかないと思うんだが。 うっすらと見えるバッジからは2年だと分かった為、 同学年では無い事に胸を撫で下ろしたが、それでも安心は出来ない。 和夫「あ・・・ああ、宜しく。」 何を言ってるんだと思いながら、思いつく言葉はこれしかなかった。 部活に行くのがとんでもなく怖くなった。 それ以上に、なんでこんな奴が退学にならないのかと疑問に思いながら、教室に戻った。 多分、俺の顔は極限まで引き攣っていただろう。 >NEXT >目次へ