NOVEL Interplay of life 1
Interplay of life
第一話
〜天を見上げて〜
和夫「あ〜・・・暇だ。
何で俺だけ家が正反対なんだよ・・・。」
一応自己紹介しておくと、俺は正井和夫。
至って平凡な中学三年。何を取っても平凡と良く言われるが、実際その通りだ。
何か突出した能力が欲しいとはたまに思ったりする。
ただ、これも個性なんだと割り切って生活している(つもり)。
しかし、やはり突出した能力が・・・
和夫「せめて、何か俺に変わった能力があったらな・・・。」
そんな憂鬱な気分で家のドアを開ける。
母親「おかえりー」
和夫「ただいまー」
何ともない日常。好い加減マンネリ化している。
仕方の無い事だが。
・・・・・・
俺は自分の部屋のドアを開ける。
いつもと変わらない日常。
家に帰って寝る。これが俺の生活スケジュールだ。
文句言う奴は例え親だろうと無視する。
無視程度しか出来ない自分は、やっぱり平凡だなと落ち込んでみる。
和夫「何にも無い一日だったな・・・。」
そう言ってベッドに仰向けに転がる。丸い電球が俺を見下している。
和夫「はぁ・・・。」
ため息を吐いて寝返りを打つ。目の前には机。プリントが山積みになっている。
勿論、疚しいものは何も無い。ただ学校で貰ったプリントが山積みになっているだけだ。
よく考えてみれば、学校のプリントって不必要なものが多いんだよな。今度からプリントを取らずに
後ろに送ろうかな、と考えてみた。
和夫「ん?」
俺は一瞬我が目を疑った。
何故なら、俺のプリントの山の中に緑色の物体があったからだ。
とりあえず近づいてみる。
和夫「・・・何だこの人形。」
緑色の物体は、プリントの山に「刺さっていた」人形だった。
実際、何処までもリアルな、人形という感じがしない小人の人形だったが。
髪は緑色で、時折寝息が聞こえる・・・のは気のせいだ。
和夫「何だよ、この人形。」
そう言って、頭を持って人形をプリントの山から引き抜いた。
大きさは掌サイズ、身長は15〜20cm程度だ。何故か羽が生えてる。
顔は可愛い。当たり前か。そういう風に作られてるんだからな。
???「痛っ!首が抜けます!止めてください!」
和夫「・・・・・・ハァ。」
きっと俺は疲れているんだろう。クッキーでも食べて気分転換するか。
そう思って部屋を出て、俺のクッキーを持ってきて再び俺の部屋に戻ってきた。
扉を開けると、さっきの人形が空中に浮かびながら目の前に突進してきた。
???「あっ!ご主人様!」
俺は慌てて扉を閉めた。
声が聞こえたのはこの際無視するとしよう。
???「わわわわわわわわわわわっっっ!!!」
コンッ、と何か音がした後、恐る恐る俺は扉を開けた。
きっと妹の夕菜が投げたんだろう。
・・・・・・
現実は、違ったみたいだった。
部屋の中は誰も居なかった。
俺の部屋はベッドの下くらいしか隠れる場所がないような質素な部屋。
そんな事をしてもバレるのは時間の問題だし、更に気まずくなるのは百も承知だろう。
じゃあ、何でだ・・・。
と、考えながらベッドの下を除く。古びたラジコンカーが一台あるのみだった。
???「この部屋には誰も居ませんよ?
それとも、何か探しているんですか?」
和夫「現実を探している。」
???「現実って・・・あの〜現実って、何の事ですか?」
仕方なくベッドに座ってその空飛ぶ不思議な人形と向き合ってみる。
和夫「・・・そうだった、クッキーを食べに来たんだった。」
敢えて無視する。これは閻魔の大王だ。
関わらない方が無難だろう。そう俺の直感が悟った。
無言でクッキーを頬張る。
美味い。やはり疲れている時のお菓子は最高だ。
???「これ、美味しいですね!
何ていうお菓子ですか?」
俺は一瞬吐きそうになった。
和夫「さて、お前は何者だ。」
俺は誰に向かって話してるんだろう。
返事なんて来る訳無いのに。ただ、そう言わなくてはならない気がした。
???「やっとその事を訊いてくれましたね〜。
ご主人様は呑気ですね。私が出てきた瞬間にその台詞は言うべきでしょっ。」
妙な感覚を覚えた。
隣でクッキーを食べている人形が喋っているのは火を見るより明らかだった。
俺は横目でその仕草を見ながら、固まっていた。
人形はクッキーを食べ終えると同時に口を開いた。
???「私の名前は「ミルラ」って言います。
宜しくお願いしますっ。」
妙に張り切ったその声は何処と無くファンタジックだった。
和夫「あぁ、宜しく、ミルラ。」
それしか言えなかった。
それ以外に言葉が思いつかなかった。
ミルラ「これから私、この家に居候させて頂きますが、宜しいですか?」
和夫「ハァ?」
ミルラ「ですから、私、この家に居候させて頂きますが、宜しいですか?」
和夫「居候って・・・どういう事だ?」
ミルラ「簡単に言えば、家族の仲間入りです。
お願いします!何でもしますから!」
悲願の表情を浮かべながら土下座し始めた。
これを承知してしまえば、俺の人生は180度曲がってしまう気がした。
和夫「何で俺なんだ?」
ミルラ「・・・あ、いえ、その・・・んーとですね・・・えっと・・・その・・・何と言うか・・・」
迷いだした。
和夫「言えないような理由なのか?」
ミルラ「あ・・えっと、あ、はい!そんな感じです。」
・・・・・・無茶苦茶だ。
和夫「何で居候しなきゃならないんだ?」
ミルラ「・・・えっと・・・あー・・・あのですね、その、何と言うか・・・」
また来た。一体どういう理由で来たんだ?
記憶喪失か?
まぁ、人畜無害っぽいし、早く寝たいから仕方ない。
和夫「分かったよ、OK。居候しても構わない。」
ミルラ「ありがとうございます!ありがとうございます!」
和夫「・・・これは夢なんだ。
きっと、夢だ。
ハハハ・・・。」
ミルラ「あ、夢って何の話ですか?」
嫌な予感がした。
和夫「あ、一つだけ条件がある。」
ミルラ「はい、何でしょうか。」
和夫「俺以外に存在が知られないように。移動範囲は俺の部屋のみ。
そして、俺以外の誰かが来たら隠れる事。バレそうになったら人形のフリでもしておけ。」
ミルラ「はい!わかりました!」
和夫「それじゃ、寝るか。」
ミルラ「はい!」
・・・別に君に言ったわけじゃ無いんだけどな。
気がつくと、俺の隣には緑髪の人形がすやすやと寝息をたてながら寝ていた。
これが夢である事を願いながら、深い眠りについた。
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